TKOPEACENEWS
 3面 NO.35/03.3.5発行

狭山事件の再審を求める東京集会

・03年2月7日 18:00〜20:30
・千代田区公会堂

 狭山東京実行委員会は2月7日、狭山事件の再審を求める東京集会を千代田区公会堂で開き、都内各地から500人が参加し、特別抗告審で何としても勝利を勝ち取ろうと決意を新たにしました。
 狭山東京実行委員会の本郷議長は冒頭のあいさつで、「裁判所が事実調べをおこない、新たな証拠を総合的に審査すれば石川一雄さんの無罪は明白である。今年は不当逮捕から40年となる。私たちの狭山東京集会も10年目を迎える。引き続き最高裁への闘いを強化し、不屈に闘う石川さんとともに決意を新たに再審実現、完全無罪まで闘う決意を新たにしたい」と訴えた。
 講演「狭山事件と差別の視点」では、ノンフィクション作家で「狭山事件の再審を求める知識人の会」の一員として積極的に狭山再審に取り組んでおられる鎌田慧さんから講演をうけた。鎌田さんは、裁判官は字を書くことができない人間のことに余りにも無知だと問題点を指摘し、狭山事件の証拠の主軸とされる「脅迫状」の文章の文体などを客観的に分析し、石川一雄さんが書いたものでないことを明確に示した。また、お役所勤めの裁判官には、例えそれが真実であろうとも前例をひっくり返す勇気がない。運動的にも裁判官が公正な判断できる状況にすることが重要である。そのためにも裁判官が真実から目を背けることのないように世論を盛り上げることが必要であるとした。
 また、石川一雄さんは「残念ながら昨年の1月には棄却決定が出てしまった。この狭山東京集会も今年で10回目を迎えると伺いましたが、最高裁で何とかえん罪をはらし勝利したい。そうした不退転の決意で私たち夫婦も闘っていきます」と述べ、支援と協力を訴えた。
 集会決議では、狭山事件の真実を明らかにするには無実を示す証拠に関する事実調べが重要な役割を果たすとし、裁判所が事実審理に踏み込むように全力で闘いを進める事を示し、「一人でも多くの人に狭山事件の真相を知ってもらう取り組みを進める」とした。
 集会カンパは総計92,792円で今後の狭山闘争に使用する事としました。カンパのご協力ありがとうございました。(この報告は解放新聞東京版を活用させていただきました。)

▲2・7狭山東京集会で決意を表明する本郷議長


狭山事件の再審を求める東京集会基調


1.不当な棄却決定1カ年糾弾、最高裁に事実調べを求める
 昨年1月23日、東京高等裁判所第5刑事部・高橋省吾裁判長は、狭山事件の異議申し立てに対して不当な「棄却決定」を出しました。
 「斎藤指紋鑑定」など科学的で客観的な新証拠を無視し、十分な証拠調べも、検察に対する証拠開示命令もおこなうことなく、強行した棄却決定でした。このような不当な決定はありません。私たちは「高橋決定」を断固糾弾するとともに、最高裁における特別抗告の闘いで再審開始を勝ち取るために、直ちに活動を開始しました。
 狭山弁護団は、02年10月31日、特別抗告申立書を補充する総合的な補充書を提出し、最高裁に対して事実調べを求めました。
 この補充書の中で、弁護団は、東京高裁の高橋決定の誤りを強く批判しました。高橋決定は、石川さんが起訴後に出した手紙などを資料にして「石川さんに脅迫状が書けた」とか、再審段階になって検察側が持ち出してきた「石山鑑定」を引用して確定判決の認定する殺害方法を事実上変更したりする強引な論法を用いています。一方で「斎藤指紋鑑定」などの客観的で科学的な弁護側鑑定に関しては、「一つの推論である」として退けたのです。まさに非科学的で推論に満ちた決定と言うほかなく、取り消しは免れないものです。

2.明らかに不公正な裁判
 昨年10月・11月、政府は、最高裁で狭山事件の審理を担当する第1小法廷の裁判官3人の異動を発表しました。この人事で政府は、退官した井嶋判事の後任に、現職の東京高検検事長である甲斐中判事を任命しました。東京高検はついこの間まで直接の係争相手であった検察庁であり、証拠開示については現在でも主務官庁です。「石川は有罪だ」「証拠開示は断固拒否する」と主張し活動してきた人物が、いきなりその事件の裁判官になったのです。このようなことは欧米では絶対に考えられませんが、日本の司法制度では慣例として容認されています。
 また検察庁は、事件発生から40年目を迎える今も、狭山事件の多くの証拠を隠し持っています。
 これらの証拠には、(1)確定判決が「犯行現場」と認定している雑木林の血痕反応検査報告書、(2)真犯人が現れた畑から収集された足跡の写真、(3)証拠全体のリストなど、開示されていないこと自体に驚かざるを得ない重要証拠が多数含まれます。日本の検察が狭山事件について取っているこの不当な態度については、国際人権規約委員会も問題にし、正式な改善勧告を行っていますが、検察庁はこの勧告も無視しています。
 市民常識で考えても明らかなことです。証拠を隠し、そのうえ直前まで有罪立証をしていた検察官が裁判官になって、いったいどんな事件で無実が証明できるのでしょうか。
 このような司法の反動性、不公平性を根底から変えなければ、狭山の勝利はありません。私たちは具体的な狭山再審闘争を通じて、司法反動を打ち破り、司法の民主化を求める闘いを行っていきます。

3.真実を武器に不主義を糾そう
 闘いは現在、最高裁における特別抗告審として展開されています。
 特別抗告審では、再審申立に対する最初の審理や異議審と違って、東京高裁の決定が憲法や最高裁判例に違反しているかどうかが争点となります。しかし弁護団は、憲法判断だけではなく事実調べを求めて闘っています。狭山事件の真実を解明するためには、証人尋問などの事実調べが絶対に不可欠だからです。私たちも、最高裁が事実審理に踏み込むことを求めて引き続き全力で闘います。
 私たちは、今日集会に来ていただいた全ての皆さんとともに、次のことを再確認します。
 まともに証拠を調べようともせず棄却決定を出し続けている裁判所の不当性、不公正な裁判官人事や法廷運営がなされていること、無実の証拠を隠している検察の不当性をより広く訴えます。国際社会が非難を強めているとおり、狭山事件の捜査や裁判はきわめて不公正なものです。こんなことは決して許されてはならないことです。そして私たちは、改めて一人でも多くの人に狭山の真相を知ってもらう取り組みを、今日を起点に進めます。


狭山事件の再審開始を求める決議


 2002年1月23日、東京高等裁判所第5刑事部・高橋省吾裁判長は、狭山事件の再審請求を棄却する決定を出しました。「斎藤指紋鑑定」などの新証拠について、一度も事実調べをおこなわず、ただ書面審理だけで「弁護側の論旨は採用できない」と棄却したものです。石川さんと弁護団は、ただちに最高裁判所に特別抗告を行い、2002年10月31日にはこれまでの主張を補強する補充書を提出しました。そして、今度こそ真実を認め再審を開始してほしいと強く訴えました。
 狭山事件に関しては、事件発生から40年になろうとする今もなお、検察による証拠隠しがおこなわれています。このことについて国際人権規約委員会は、「重大な人権問題である」として、2度にわたって改善勧告を出しました。ところが日本政府・検察庁はこの当然の勧告を無視しています。アメリカやヨーロッパと違って、日本の刑事訴訟法には、証拠開示を義務づける規定がありません。このため日本の検察は、国際的批判に対して「証拠を開示しなくてはならない義務はない」「国内法上違法ではない」と、開きなおっているのです。
 また昨年10月11日、最高裁の人事異動が発表されましたが、その中で狭山事件の担当裁判官の一人に、現職の東京高等検察庁検事長が任命されました。東京高検はついこの間まで直接の係争相手であった検察庁であり、証拠開示については現在でも主務官庁です。「石川は有罪だ」「証拠開示は断固拒否する」と主張し活動してきた人物が、いきなりその事件の裁判官になるなどということは、欧米では絶対に考えられません。日本の司法制度ではこのようなことが平気で行われているのです。
 私たちは今日、鎌田慧さんの講演を受け、狭山事件の無実の確信を深めました。狭山事件の再審無実というあたり前のことを勝ち取るためにも、非民主的で不公平な司法制度を変えて行かなくてはなりません。今後狭山事件の再審を求める闘いの一貫として、私たちもこの活動を積極的に取り組んでいきます。
 東京高裁の棄却決定を受けた記者会見で石川さんは、「無念だ。なぜ真実を認めてくれないのか」といきどおりを語りました。そして「しかし私は無実で。この事実だけは誰も変えられない。皆さんと一緒に最高裁の場で全力で闘う」と訴えました。私たちも石川さんと同じ気持ちです。
 2003年5月1日、狭山事件発生から40年を迎えます。あまりにも長く、重い日々です。このように長期にわたって不正義が行われていることを、これ以上許しておくことができるでしょうか。私たちは今日を起点に、石川さんとともに、真実が認められる日まで、全力で闘います。そして必ずや勝利を勝ち取ります。
 右決議する

2003年2月7日
狭山事件の再審を求める東京集会

▲狭山東京集会で不退転の決意で闘うと決意を表明する
 石川一雄さん夫婦

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