人権だより

子どもの権利条約について 5

配布日 1998年11月 日

発行 人権教育係


人権だより
子どもの権利条約について 5                         1998・11月 所沢高校 人権係  驚くほどたくさんの種類と数のある「子どもの権利」の中で、どの権利を最も大切 に思うかということは、その国や状況によって違います。南米のエクアドルで、6歳 から12歳までの子どもたち19万人を対象に聞いたところ、第1位は「麻薬、性的 虐待、あらゆる種類の暴力からの保護」だったそうです。さて、日本ではどうでしょ うか?そして、所沢高校ではどうでしょうか?  この「人権だより子どもの権利条約1」でアンケートを取った結果、皆さんが最も よく知っていた権利は、第12条の「意見表明権」でした。それだけ、現在の状況に おいて関心を寄せている権利項目であるということでしょう。  今回は、この12条の英文、そのあとに、左側に川崎市人権尊重教育推進会議(川 崎市教職員組合・川崎市公立学校校長教頭組合・川崎市立校長会、川崎市総合教育セ ンター・川崎市教育委員会)が発行したパンフレット「子どもの権利条約ってなに?」 による翻訳文、右側に日本政府の翻訳文を載せます。さらに、教育法の研究者の方々 による解説を併せて掲載します。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― Article 12 1.States Parties shall assure to the child who is capable of forming his or her own views the right to express those views freely in all matters affecting the child, the views of the child being given due weight in accordance with the age and maturity of the child. 2.For this purpose, the child shall in particular be provided the opportunity to be heard in any judicial and administrative proceedings affecting the child, either directly, or through a representative or an appropriate body, in a manner consistent with the procedural rules of national law. ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  ┌─────―――――――――――――─┐  │  自分の意見を 自由に言えます   │  └─――――――――――────────┘                           (第12条 意見表明権)  子どもは、家庭・地域・学校などで自分に関わりのあることについて、自分の意見 をはっきり言う権利があります。  例えば、学校では学級会や生徒会など、子どもたちどうしで話しあったことが生か されていますか。学校のきまりを決めたり変えたりするときも、生徒の意見が十分反 映されなければなりません。  子どもだからという理由で、自分の発言が制限されることはありません。この条約 は、子どもがひとりの人間として尊重され、社会参加できることをめざしています。 したがって、自分の言葉で自分の気持ちや意見を遠慮することなく言うことができま す。そしてその意見は年齢などに応じて最大限尊重されなければなりません。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 第12条(意見表明権)  1.締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼす   すべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合   において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮され   るものとする。  2.このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の   手続きにおいて、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若   しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― “本条の「意見表明権」は、単に大人の権利を子どもに適用したものではなく、子ど もに関する今日的な国際文書の趣旨を受けて、子ども特有の権利として、本条約が明 示したものといってよいでしょう。子どもは大人とは異なり、将来への発達の不可能 態であるという独自性をもっています。子どもは発達しつつある存在であるため、そ の判断能力がまだ不十分であると思われる段階では、子どもに完全な決定権を付与す ることが適当でない場合もあります。ただ、そのようなときでも、国や親などが子ど もにかかわる重要な決定を下すさいには、その決定過程にできるだけ子どもの意思を 関与させ、その意見を尊重することが必要です。子どもにかかわる諸問題を解決する ときに、子どもの意思を無視しては、「子どもの最善の利益」(本条約3条)を実質 的に確保することは困難でしょう。また、子どもが将来、「十分に社会の中で個人と しての生活を送れるようにすべき」(前文より)ためにも、子ども時代において、自 己にかかわる決定に自ら参加し、その判断能力を形成していくことが重要な意味を持っ ているのです。しかも、本条では、ただ意見を表明することを保障するにとどまらず、 「その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、正当に重視される」ことを うたっています。この点も、子どもの発言権を高めたものとして注目されるところで す。”   『解説|子どもの権利条約』 永井憲一(法政大学教授)                 寺脇隆夫(長野大学教授)編/日本評論社 より
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