都立学校等あり方検討委員会報告書   ―校長のリーダーシップの確立に向けて―      都立学校等あり方検討委員会 はじめに  昨秋、都立新宿高校において、計画した習熟度別授業が行われていないという事実 が発覚し、さらにこの問題を契機として実施した全校調査によって、多数の学校で、 非常勤講師時数の水増しや、都教育委員会に対する時間割票の虚像報告などが行われ ていた実態が明らかになった。  時間割票の虚偽報告をしていた学校が全体の半数を上回ることからも明らかなよう に、これらの問題は都立学校の体質の根本に根ざしたものであり、これまで学校の内 部のみで処理されていたものが、今回の事件を契機として、外部の眼に触れるところ となったと言える。したがって、そこには現在の都立学校が抱える問題が凝縮されて いるとともに、学校を指導・支援すべき都教育委員会のあり方も問われているもので ある。  本検討委員会は、新宿高校の事件を契機に明らかとなった様々な事柄の原困を究明 し、改善策を策定するとともに、都立学校に対する都教育委員会のあり方についても 検討することを目的として、平成9年12月11日に設置された。  与えられた課題は広範であり、また困難なものが多かったが、現状の分析と問題点 の摘出に当たっては都立学校の現状をありのままに述べるとともに、改善策の提示は、 実現可能性を考慮しつつ、可能な限り具体的なものにするよう努めたところである。  現在、都教育委員会は、昨年策定した「都立高校改革推進計画」に基づき都立高校 の改革に全力をあげて取組んでいるところであり、この推進計画に掲げた事項に加え、 本報告書で提言した改善策の推進を図ることにより、改革は学校の体質改善をも含む 総合的な内容になると考えている。  この報告書の内容を具体化するには、都教育委員会における関係部課の連携・協力 はもちろんのこと、学校現場の理解と主体的な取組みが不可欠である。改善の方策を 実施していく過程では様々な課題が生じることも想定されるが、「都民に信頼される 魁力ある都立学校」の実現に向けて、それぞれが全力を尽くすことを強く期待するも のである。 平成10年3月                          都立学校等あり方検討委員会            目  次 はじめに 第1 問題の概要とこれまでの経緯 …………………………………………………  1 第2 開かれた学校の推進 ……………………………………………………………  3 第3 校内意思決定プロセスの明確化  1 現行校内「内規」の見直しと職員会議の位置づけの明確化 ………………  5  2 校長の(経営)方針に基づく人事・予算の決定 ……………………………  7 第4 学校運営体制の強化  1 教頭の管理職機能の強化 ……………………………………………………… 10  2 主任制度の改善と適正な運用 ………………………………………………… 11  3 事務室機能の強化 ……………………………………………………………… 13  4 校長不在時間の解消 …………………………………………………………… 14 第5 教員研修の活性化  1 校内研修の活性化 ……………………………………………………………… 16  2 教員研修制度の見直し ………………………………………………………… 17 第6 人事任用制度の見直し  1 定数等管理体制の改善 ………………………………………………………… 19  2 教員の人事配置の適正化 ……………………………………………………… 21  3 管理職任用制度の改革 ………………………………………………………… 24  4 教職員顕彰制度の改善 ………………………………………………………… 26 第7 都教委による学校支援体制の確立  1 学校に対する窓口組織の設置 ………………………………………………… 28  2 学校改革への人事・予算面での支援 ………………………………………… 30  3 教育庁組織の見直し …………………………………………………………… 31 資 料 ・都立学校等あり方検討委員会設置要綱 …………………………………………… 35 ・職員会議に関するアンケート集計結果 …………………………………………… 37 ・主任制度アンケート集計結果 ……………………………………………………… 50 ・都立高校における習熟度授業実施状況調査の結果について …………………… 54 ・校内内規の例 ………………………………………………………………………… 57 第1 問題の概要とこれまでの経緯 1 習熟度別加配教員等に係る不正問題と全校調査の結果   平成9年9月、都立新宿高校において、習熟度別授業を実施する目的で教員2名  の加配を受けながら、全く実施していないという事実が明らかになった。   新宿高校に習熟度別授業に関する加配教員が配置されたのは平成4年度からであ  り、当初は教員1名が加配され、平成6年度からは2名に増員されながら、この間  一切こうした授業は行われてこなかった。加えて同校は、毎年度、計画段階におい  て習熟度別授業を行う旨の申請をし、新年度に入ってからは計画どおり実施してい  るとの虚偽の報告を続けてきた。   都教育委員会(以下「都教委」という。)は、新宿高校のこうした実態が明らか  になったことから、全都立高校について実態を調査する必要があると判断し、同年  10月、各校に対して学校で使用されている時間割表の提出を求めた。また、平成  10年1月には直接学校に出向き、事務室で使用している時間割表の提出を求め、  これらの資料を基に全校の校長、教頭に対してヒヤリングを実施した。   この結果、習熟度別授業を全く実施していない学校が新宿高校を含めて8校、申  請した計画の一部しか実施していない学校が62校あることが判明するとともに、  調査の過程で新たに、非常勤講師の請求時数を水増しすることにより正規教員の持  時数を軽減した疑いのある学校が70校、平成9年10月の調査で都教委に対して  虚偽の時間割表を報告した学校が108校にのぼるなどの事実が明らかになった。 2 都議会における質疑と住民監査請求   この新宿高校の問題及び全校調査の結果については、平成10年第1回都議会定例  会において取り上げられ、多くの質疑が行われた。主要な事項は、こうした問題が  起きた原因と背景、閉鎖的な都立高校の体質、職員会議のあり方、教育委員会とし  ての指導責任、改善に向けての今後の方策などであるが、総じて質問は批判的であ  り、都議会のこの問題に対する厳しい認識を示すものであった。   また、平成9年12月には、新宿高校の問題に関して住民監査請求が提出された。  これに対して、平成10年2月、人件費の返還請求は理由がないとの監査結果が出さ  れたものの、その中で新宿高校が行ってきた適正を欠く行為及び都教委のこれまで  の対応については極めて遺憾であるとの厳しい意見が示されるとともに、速やかに  必要な措置を講じるべきであるとの要望が出された。 3 都立学校等あり方検討委員会における検討   習熟度別授業の未実施、非常勤講師時数の水増し、時間割表の虚偽報告などは、  一部の学校で発生した特殊な問題ではなく、都立学校全体の運営体質そのものに起  因する問題である。とりわけ、生徒が受けるべき教育サービスを、学校内の事情か  ら教員の持時数軽滅に転用していたことや、良識と信頼関係で成り立つべき学校の  場で、事実を隠蔽するために虚偽の報告が行われていたことなどは、極めて深刻な  事態であり、厳しく批判されるべきものである。   「都立学校等あり方検討委員会」は、新宿高校の問題を直接の契機として、平成  9年12月に設定されたが、検討の過程でこうした事実が明らかになったことから、  全校調査の結果を踏まえ、都立学校の運営全般に関してあらゆる角度から分析し、  解決の道筋を提示することを目指して、鋭意検討を進めてきた。   主要な論点は、学校に関しては、外部に対して閉鎖的な学校の体質、職員会議や  校内内規などで校長権限を制約する学校特有の慣習、社会の一般の常識と乖離した  教職員の意識、主任制度の形骸化などである。また、都教委に関しては、今回の問  題の発端となった定数管理のあり方、「希望と承諾」が強く残る人事異動のあり方、  見直しを要する管理職任用制度、校長に対する支援の方策、学校に対する教育庁組  織のあり方などであり、これらの課題について現状を踏まえて問題点を分析すると  ともに、具体的な改善策の検討を行った。また、職員会議や主任制度、管理職任用  制度等、こうした問題の多くが小・中学校にも関わることから区市町村教育委員会  との連携を考慮しつつ、改善策の検討を行ったところである。   検討の過程では、学校の実態を把握する必要があることから、職員会議と主任制  度については、都立学校長に対するアンケート調査を実施した。無記名のアンケー  ト調査としたこともあって、調査の結果は、都立学校の実情をほぼ正確に表すとと  もに、運営の課題を浮き彫りにするものとなっている。   本委員会は、都立学校の諸問題を解決する上で最も重要かつ緊急な課題は、「校  長のリーダーシップの確立」であると考えている。都立学校を改革し、都民に信頼  される魁力ある学校づくりを進める原動力は、校長のリーダーシップのもとに教職  員の力を結集するところにあるからである。したがって、このことを基本的理念と  して、論点を整理するとともに検討項目の体系化を行った。   次項以下に述べる様々な改善策は、こうした考え方のもとに、取りまとめたもの  である。 第2 開かれた学校の推進  現在、都立学校においては、不登校・中退対応、進路指導、個に応じた教育等多様 な教育課題に直面している。これらの問題を解決するとともに魅力ある都立学校を創 造していくためには、学校内の努力にとどまらず、保護者、地域、関係機関等との連 携・協力を大胆に求めていく必要がある。  従来、開かれた学校づくりに関しては、施設開放や公開講座の推進などが主として 提唱され、推進されてきた。しかし、本来、学校での教育活動そのものを開かれたも のに変えていく必要があり、その中心となるのは授業の公開である。都立高校の現状 は、管理職である校長・教頭でさえ教室に入ることが難しい実態にあり、習熟度別授 業の実施についても大半の学校で保護者に周知されていない。  今後の学校運営のあり方を考える場合、校内運営体制を改善し、都教委と各学校と の連携をすすめると同時に、学校を、校内の関係者はもとより、保護者、地域等に対 しても開かれたものとしていくことが不可欠の前提である。 1 現状  (1) 都立高校には、学校内外に対し閉鎖的な体質がある。   @ 校内の教職員間で授業公開を行い相互に研修する機会がなく、管理職が授業    を参観し指導することも困難な状況がある。   A 中学生の体験学習における授業公開は徐々に増えつつあるが、保護者に対し    て、授業公開を行っている学校はごく少数に止まっている。   B 学校行事等における地域社会との交流や連携が不十分である。  (2)都立盲・ろう・養護学校においては、学校の開放が進みつつある。   @ 「心身障害児理解教育の推進」事業に伴う、学校公開、地域講演会、体験入    学等、学校の開放が進んでいる。   A 保護者参観や授業参観週間が実施されている。また、個別指導計画の作成に    おける保護者の意見・要望の反映の横会が整備されつつある。   B 進路フォーラム、早期教育相談などにより、福祉局など他局との連携が進み    つつある。 2 問題点  (1) 教員相互に授業を公開し、研修活動等に生かしていく機会が極めて少ない。  (2) 学校の課題解決のために外部の情報を得たり、支援を求めたり、講師を招聘し   ようとする姿勢が不十分である。  (3) 学校教育や学校運営に、地域社会や保護者などの意見を取り入れるためのシス   テムがない。 3 改善策  (1) 校内研修の一環として、教員相互の授業参観を実施することなどにより、全教   員が校内の授業公開を行う。  (2) 学校公開、授業参観期間、学校説明会における授業公開などを教育課程に位置   づけ全校で計画・実施する。  (3) 学校の運営・教育内容に関して地域・保護者の意見を取り入れる。   @ 学校週5日制が完全実施される予定の平成14年度までを目標に、全校で学    校運営適格協議会を設定することを検討する。協議会は、学校、保護者、地域    関係者等が定期的に一同に会し、学校運営方針、指導方針、授業開放、地域と    の連携等について協議や情報交換を行う場とする。(当面、各学区2校をモデ    ル校に指定する。)   A 日常的な学校見学、入学相談等に対応できるサービス窓ロを各学校に設置し、    地域や保護者へのPRを行うとともに、各種の問い合わせ、要望等に応じる。  (4) 新しい学校評価システムを確立する。    学校運営連絡協議会の成果を踏まえて、学校評価制度を新設する。学校運営連   絡協議会の組織を母体として都教委の任命する者を加え、学校開放の度合い、教   育課程の創意・工夫にかかわること、生徒の成就感・満足度、指導体制等につい   て、評価を実施するとともに、広く都民への公表も工夫する。  (5) 学校内外に開かれた学校とするため、開放型の校舎、教室等施設のあり方につ   いてさらに検討をすすめる。 第3 校内意思決定プロセスの明確化 1 現行校内「内規」の見直しと職員会議の位置づけの明確化  (1) 現状   @ 校内「内局」について     各学校ごとにさまざまな名称があるが、概ね以下の内容が盛り込まれている    のが一般的である。    ア 教育目標、学則等に関すること    イ 職員の勤務条件、服務等に関すること      勤務時間に関すること、出勤簿の取扱い、出張・研像等の手続きなど    ウ 校務運営に関すること      職員会議の位置づけ・運営方法、各種校内委員会の役割、校内人事の選出     方法など    エ 教務に関すること      教科・科目の履修、卒業の認定、評価・評定、留学制度、転編入、休学、     定期考査など    オ 生徒に関すること      生徒指導方針、生徒部運営方針、生徒心得、特別指導の方法、服務規程、     生徒会・部・同好会など    カ その他      親睦会、PTAなど     学校運営上の重要な事項が、校内「内規」に規定されており、校長は、それ    に従わざるを得ない状況にある学校が多い。従って、学校運営上の方針は、職    員会議の議決等校内「内規」で定めた手続きを踏まないと決定できないケース    が多い。   A 職員会議について     本委員会では、職員会議に関するアンケートを都立学校の全校長に対して実    施した。その結果の主なものは、次のとおりである。    ---------------------------------------------------------------      職員会議に関するアンケートの集計結果(平成10年1月、一部抜粋)       (高等学校207校、盲・ろう・養護学校56校)    1 職員会議についての内規がありますか。     ある   高校181校(87.4%) 盲・ろう・養建学校13校(23.2%)     {職員会議の位置づけや運営方法については、事実上各学校に任されており      校内「内規」に規定されて運用されている。}    2 職員会議をどのように位置づけていますか。(実体上の問題として)     事項により、事実上の意思決定機関となっている。          高校165校(79.7%) 盲・ろう・養護学校36校(64.3%)     {意思決定機関としての法的根拠がないにもかかわらず、事実上、校長に代      わる校務の最終決定機関になっている。}    3 協議・審議事項の決定については、多数決方法を取っていますか。     取っている          高校200校(96.6%) 盲・ろう・養護学校14校(25.0%)     {協議・審議事項の決定を教職員の多数決によっている。}    ---------------------------------------------------------------   (2) 問題点   @ 校内「内規」について    ア 本来、校長の権限である学校の管理運営に関する事項が、職員会議の決定     に基づき策定された校内「内規」により処理されている。      特に、職員会議を意思決定機関と定めていることにより、提出した案件が     職員会議で決定されると、校長はその決定を覆すことができなくなる。この     ようにして校内「内規」は、校長のリーダーシップを事実上阻害する役割を     果たしている。    イ 条例、規則、都教委の通達等に基づき処理すべき教職員の勤務条件や服務     が、校内「内規」により処理されている例がある。    ウ 教務関係や生徒指導関係の中には、各学校の自主性に委ねるべき性格のも     のもあるが、校内「内規」を都教委が把握できないために、内容の妥当性に     ついて検証することができない。   A 職員会議について    ア 職員会議において、教職員が学校運営の重要事項を多数決で決定している。      教職員には、学校運営に関して最終責任と決定権限が与えられておらず、     したがって責任を負えないはずの職員会議が審議・決定権を有しているとい     うことである。また、こうした職員会議の多数決による決定に、校長は事実     上拘束されている実態がある。    イ 特別昇給の問題など本来議題とすべきでない事項が職員会議の議題にあげ     られたり、協議に長時間を費やしたりすることなど運営に問題がある。  (3) 改善策   @ 「管理運営方針」の策定について     現行の校内「内規」は、法令との整合性や制定手続き、運用などに問題があ    るため、これに代わるものとして新たに各学校において「管理運営方針」を定    めることとする。    ア 校長は、学校運営に関する基本的事項については、意思決定文書により     「管理運営方針」として明確に定めるものとする。なお、決定に当っては、     都教委と協議することとする。    イ 教務、生徒等に関する具体的事項については、必要に応じて、管理運営方     針に基づき、校長が、意思決定文書により定める。      校長の権限を制約する事項や法令や通達に抵触する事項を、学校独自で内     規等により定めてはならない。    エ 都教委は、「管理運営方針」の標準的な内容を示すこととする。   A 職員会議の適正化について     職員会議の性格は、校長の補助機関である。判例においても、同様の判断が     示されており、その技能は、おおむね次の3点であるとしている。     ・ 教育委員会や校長等の上司の指示伝達     ・ 教職員間の連絡調整     ・ 校長の意思決定を適正なものとするために教職員の意見を聞く    ア 職員会議の位置づけ等を「管理運営規則」に定める。    (ア)職員会議の位置づけを校長の補助機関とし、その機能を明確にする。    (イ)招集等の運営方法について明確化する。    イ 職員会議の運営方法の決定      校長は、職員会議の具体的運営方法について、上記@、アの「管理運営方     針」において定めることとする。 2 校長の(経営)方針に基づく人事・予算の決定  (1) 現状   @ 都立学校の大半に、校内組織として「人事委員会」又は「人事対策委員会」    及び「予算委員会」又は「財務委員会」が設定されている。   A 一般的には、職員会議で選出された人事委員が、校務分掌構成案、主任案を    作成し、職員会議において決定し、校長がこれを承認するという手順で、進め    られている。   B 校務分掌の原案を作成する過程で、校長の意向が反映されることは稀である。     また、校長自身の判断により校務分掌の組織を改正したり、主任等の人選を    行うことは、極めて困難であり、校長は、人事委員会の作成した人事案を追認    せざるを得ない状況にある。   C 予算委員会は、人事委員会で選出された予算委員と教頭及び事務職員(事務    長又は経理担当)で構成される。     予算委員会の検討の対象となるのは、学校予算の使途についてであるが、教    科関連経費のみを対象とする学校から、管理経費まで含めたすべてを対象とす    る学校まで、さまざまな形態がある。   D ほとんどの都立高校の校長は、校内予算の編成方針を示すことはなく、予算    編成に関与していないのが実態である。  (2) 問題点   @ 「人事委員会」が実質的に校長の人事権を侵害している実態があり、校長が    学校経営の方針に基づき、校務分掌に関係する組織の編制、担当者の選任及び    運営を行うことは極めて困難である。   A 校務分掌の決定に際しては、教員の希望が優先されるため、適材・適所の配    置と計画的な人材育成が図れない。   B 校長は、一般的には予算編成に関心が薄く、自らの経営方針に基づいた予算    を編成しようとする意識に乏しい実態がある。また、予算委員会が学校予算を    編成することが慣例化しており、校長がリーダーシップを発揮したり、事務室    が主体的にかかわることが難しい状況になっている。   C 予算編成方針が示されない中で、教員から選出された予算委員会が中心となっ    て予算編成を行うため、各教科の要望や前例が重視され、真に必要とする分野    への重点配分や新たな分野への取り組みが困難になっている。  (3) 改善策   @ 都教委は、通達により、学校運営のための標準的な校内組織、校務分掌を示    すとともに、人事委員会を設けてはならない旨明示する。   A 校長は、本来の人事権に基づき、関係教職員の意見を参考にして、校内人事    を決定する。     なお、主任については、校長の具申に基づき、都教委が任命するよう改める。   B 人事委員会と同様に、「予算委員会」を設けてはならない旨を都教委の通達    で明示するとともに、新たな学校予算編成方式を、各学校ごとに校長が決定す    る。   C 新たな学校の予算編成方式は都教委がまとめる「都立高校の予算事務の改善    について」に基づき、各学校で決定する。具体的には、以下の考え方を基本と    する。    ア 校長は学校の経営方針とそれに基づく予算編成方針を毎年必ず明確に示す。    イ 予算は、校長の方針に基づき、事務室が主体となり、各教科、各分掌のヒ     ヤリングを実施し、事務室の責任で編成・調整する。 第4 学校運営体制の強化 1 教頭の管理職機能の強化  (1) 現状   @ 教頭の職務について、学校教育法では、「校長を助け、校務を整理し、必要    に応じ児童生徒の教育をつかさどる」、「校長に事故があるときはその職務を    代理し、校長が欠けたときはその職務を行う」と規定している。   A 教頭は、東京都立学校事案決定規定及び東京都立学校事案決定規程実施細目    により、行事の計画に関することや教育職員の休暇等を承認することなどの事    案決定権を有しているにもかかわらず、実際にはこれらの規程等に従った事務    処理が進んでいない学校が多い。     また、教頭は校長を補佐しているにすぎず、一般教員を管理監督する立場に    ないという意識が教職員の間に広範に存在している。   B 教頭の職務は、学校の置かれた状況により、処理すべき業務の範囲及び責任    の度合いが異なる場合がある。具体的には、分校設置校や校長併任校の場合に    は、日常的に校長が不在であり、実質的には教頭が運営責任者になっている。    また、複数の教頭が配置されている部制をしく定時制高校や盲・ろう・養護学    校の多くでは、それぞれの教頭の責任の度合いが異なっている。  (2) 問題点   @ 教頭は、教員を指揮命令できる権限を有しているということが必ずしも明確    ではなく、ラインの管理職としての位置づけが曖昧なことから、その機能が弱    いものとなっている。   A 校長、教頭等の権限を定めた事実決定規程が事実上機能していない。   B 分校設置校や校長併任校、部制をしく定時制高校等においては、教頭の職責    に応じた任用体系になっていない。   C 教頭の職務は大量かつ多岐にわたっており、教頭は校内の管理的業務に十分    時間をかけることができない。  (3) 改善策   @ 教頭のライン職としての位置づけを徹底するため、教員を指揮命令できる旨    の規定を「管理運営規則」に明記する。   A 事実決定規程を学校に定着させるため、監察指導の対象項目とするなどの改    善策を講じる。   B 分校設置校や校長併任校、部制をしく定時制高校等における教頭に、校長の    権限の一部を付与し、新たに副校長として位置づけ、あわせて必要な処遇につ    いても検討する。また、将来的には大規模校に副校長と教頭を置くことを検討    する。   C 教頭が管理職として必要な業務に力を注げるよう、嘱託員を活用し、教頭の    職務の補助を行わせることとする。具体的には、教頭業務のうち軽易な報告、    調査等を嘱託員に担当させ、負担軽減を図る。 2 主任制度の改善と適正な運用  (1) 現 状   @ 主任の設置目的     主任の設置は、児童・生徒の指導の充実を図るために、学校運営における指    導組織を整備し、調和のとれた創意のある学校運営を目指すものである。   A 主任の職務     主任の職務については、学校教育法施行規則に規定されており、校長の監督    を受け、教育活動を円滑かつ効果的に展開するため、教務主任・生徒指導主任    或いは学年主任等がそれぞれの担当する事項について、企画立案及び連絡調整、    必要に応じて指導・助言を行うものである。   B 都立学校における現状    ア 校長に対するアンケート結果(平成10年1月)の主なものは次のとおりで     ある。 ┌─────────┬─────────────────────────┐ │  事  項   │  アンケート結果                │ ├─────────┼─────────────────────────┤ │ 主任の人選   │ア 校長白身の判断で人選          4.8% │ │         │イ 校務分掌内の互選           56.9% │ │         │ウ 職員会議の選挙            19.7% │ ├─────────┼─────────────────────────┤ │ 校長の任命   │ア 人選された者をそのまま任命      77.7% │ │         │イ 校長の意向で調整して任命       16.3% │ ├─────────┼─────────────────────────┤ │ 主任の担当期間 │ア 1年間を通して担当          86.5% │ │         │イ 学期或いは月ごとの輪番制        4.1% │ │         │ウ 主任がいない              5.2% │ ├─────────┼─────────────────────────┤ │ 都教委への報告 │ア 任命した主任をそのまま報告      74.1% │ │         │イ 任命とは異なった教員を報告      24.6% │ ├─────────┼─────────────────────────┤ │ 主任制度の連用に│ア 任命した主任は有効に機能       63.2% │ │ ついて     │イ   〃    まあまあ機能      26.0% │ │         │ウ 主任の人選に校長の意向が反映できない 63.5% │ └─────────┴─────────────────────────┘    イ 任用制度上の位置づけ等      主任の職務は校務分掌の一つであり、その任命は、任用制度に基づく任用     としては位置づけられていない。また、管理職の任用等に際して、主任の経     験が考慮されていない。    ウ 主任手当の拠出      主任手当(特勤手当)として日額200円が支給されているが、主任手当     を一旦受領の上、多くは職員団体等に対して拠出されている実態がある。  (2) 問題点   @ 校長の「主任任命権」が実質的に失われている学校が大半である。   A 学校によっては、職員団体の要求により、実態とは異なる教員を主任として    都教委に報告しており、校長に主任制度の趣旨が徹底されているとは言えない    状況にある。   B 現行の任用給与制度においては、主任の職や処遇が、その職務と責任に応じ    たものとなっていない。   C 主任手当は主任の職務の困難性に着目して支給されているが、職員団体等へ    の手当の拠出により、その趣旨が形骸化されている。  (3) 改善策   @ 任命方法の改善     主任の任命を履歴登載事項とし、主任は校長の具申に基づき、都教委が任命    することとする。   A 管理職選考における資格要件化     学校の管理者である校長及び教頭は、学校運営において重要な役割を果たし    ている主任から任用することが適切であり、一定の主任経験を管理職選考の資    格要件とすることを検討する。   B 主任の授業持時数の軽滅     現在、生徒指導主任及び進路指導主任には授業持時数の軽滅が措置されてい    るが、教務主任に対しても、その職務の困難性等から授業持時数の軽滅を行う。   C 国への要望等    ア 職の設置      学校における適切な組織体性を確立し、円滑な学校運営を図るため、「主     任職」の設置とその職務の明確化について要望していく。      なお、都教委としても「職層としての主任」を設定し、一定の経験及び能     力を有する者の中から主任を任命する方向で検討する。    イ 給料表の等級の新設等      給与面においても、職の設置と連動した評価をする必要があり、主任の職     責に応じた新たな給料表の等級の設定や「手当の引き上げ」を要望していく。  3 事務室機能の強化  (1) 現 状   @ 事案決定規程の制定     都教委は、昨年4月に「東京都立学校事案決定規程」及び「事実決定実施細    目」を定め、事案決定区分及び起案者を明確に示した。これにより、教頭が主    管する事項については、教頭及び教育職員が、事務室長及び事務長が主管する    事項については、事務室長、事務長及び事務職員がそれぞれ起案することとさ    れた。   A 事案決定規程の不徹底     教員には、職員会議の決定がすべてであるとする考えが根強く、また文書に    よる意思決定が、情報開示の社会的要請に応える手段であるとの認識に乏しい    ため、特に教頭が主管する事項について、決定対象事案の起案が進んでいない    学校が多い。   B 校内予算編成の現状     第2−2で述べたとおり、予算委員会による予算の編成が慣例化している。  (2) 問題点   @ 起案に基づく意思決定という考え方を学校内に定着させるため、事務室が中    心となって、「起案マニュアル」や「事例集」を作成するなど、教員に対して    積極的に普及啓発を行っている学校もあるが、全体として事務室が決定対象事    案の起案について主導的な役割を十分に果たしているとは言えない。   A 校内予算の編成及び執行管理について、多くの学校で、事務室が主導的な役    割を果たすことができない状況にあり、学校事務職員のモラール低下の原因に    もなっている。   B これらの問題に対し、都教委による学校事務室への支援体制が十分とはいえ    ない。  (3) 改善策   @ 情報開示の窓口である事務室が都教委と連携をとり、各学校に事実決定のシ    ステムを定着させる。    ア 都教委は、各学校の実態を把握した上で、第6−1で述べる学区担当事務     室長を通じて、「起案マニュアル」及び「事例集」の各学校への浸透を図る。    イ 各学校の事務室は、事実決定対象事項を精査し、「起案マニュアル」等を     活用して、対象事項については、確実に起案するよう教員を指導する。    ウ 都教委は、校長、教頭に対して、説明会や研修を定期的に実施し、起案の     意義や必要性、対象となる事案、具体的方法等を周知徹底する。      また、一般教員に対しても事案決定についての研修を実施していく。   A 校長の方針に基づき、事務室が主体となって校内予算を編成し、執行管理す    る方式を各学校で定着させる。    ア 校長が的確な予算編成方針を示すことができるよう、都教委が適宜説明会     を開催したり、第6−1で述べる学校窓口組織において、相談に応じる体制     を整備する。    イ 校長の予算編成方針に基づき、事務室は、当該年度における予算の重点項     目や長期的な視点で整備すべき事項などを具体的に示す。    ウ 事務室は、各教科、分掌から提出された予算要求について、ヒアリングを     実施した上で当該年度の予算案を策定し、校長がこれを決定する。    エ 事務室が予算編成に主導的な役割を果たすことができるよう、都教委は、     予算の配当方式を工夫する。    オ 各学校の事務室が、主体的に校内予算の編成や執行管理ができるようにす     るため、予算編成やヒアリングの技法などについて、学区担当事務室長が必     要な研修を実施するなどの支援を行う。    カ 事務長の職責の重要牲に鑑み、将来的には全事務長のポストを課長補佐扱     とし、同時に「管理職員等」に位置づけることを検討する。 4 校長不在時間の解消  (1) 現状   @ 平成8年度に実施した校長・教頭業務実態調査によれば、校長は出張や校外    会議等へ参加する時間が多く、平均して業務時間のうち2割を超える時間が校    内に不在である。   A 都教委が全校長を対象として開催した説明会等は、平成9年1年間に、都立    高校では16回、盲・ろう・養護学校では24回あったが、開催に当っての日    程調整が不十分であり、それぞれの部課が単独で開催したケースが多い。   B 出張や校外会議への参加の中で最も多いのは、校長会の会議への出席であり、    不在時間の約3分の2を占めている。その中では特に専門部会等の会議が多い。     また、東京都の特徴として、全国組織の校長会の会長及び役員の多く(平成    9年度89名、理事、常務、幹事等を含む。)を引き受けていることがあり、    例えば、多い校長は年間出席すべき会議等の回数が70回を超える(平成8年    度)状況となっている。  (2) 問題点   @ 校長がリーダ一シップを発揮するためには、学校にいて、児童・生徒や教職    員の日頃の様子を把握することが前提となるが、現状では、不在時間が長いた    め、校内の状況把握に欠ける面がみられる。   A 校長・教頭業務実費調査によれば、多くの校長は、管理職としての本来業務    である校内業務の管理に力を注ぐべきとの意見をもっているが、現状では校内    業務の管理に当てる時間が不足している。  (3) 改善策   @ 都教委が開催する校長対象の会議、説明会は、真に必要なものに限ることと    し、会議開催数を削減するよう検討を行う。また、校長を招集する会議を調整    する所管組織を定め、会議を開催する場合には当亥組織との協議を義務づける    こととする。例えば、指導部が実施する校長悉皆研修(平成10年度から実施    予定)の場を利用するなどの対策を講じ、校長の出張回数を滅らしていく。   A 都教委は校長会に対してその組織及び会議を簡素・効率化するよう要請する    とともに、勤務時間外での開催を検討するなどの工夫を求める。また、全国組    織を含めて校長会の会議への出張に対しては、原則として週1回午後に限り認    めることとし、校長会の研究会、その他研究会等への出席は勤務時間外に行う    ものとする。さらに、全国組織の校長会及び文部省の審議会委員等に就任する    場合、都教委協議とすることを検討する。 第5 教員研修の活性化 1 校内研修の活性化   校内研修の充実は、各学校が当面する教育課題の解決を図り、学校全体の教育力  を組織的に高めていく上で、極めて意義のあるものである。  (1) 現状   @ 校内研修の実施状況は、平成8年度都立高等学校校内研修実施状況調査によ    れば、次のとおりである。    ア 大半の学校の実施は学期1回あるいはそれ以下に止まっている。また、研     究収録や紀要を発行している高校は少ない。(全日制28%、定時制10%、心     障校90%)    イ 研究部、研究推進委員会等の校内組織を独立して設けている高校は半数程     度である。(全日制62%、定時制34%、心障校98%)    ウ 全員参加を建前としているが、高校においては個人の意思に任されており、      全般的に低調な実態がある。(全員参加は、全日制55%、定時制67%、心     障校100%)    エ 指導主事による、一般訪問(平成8年度=330件中、都立学校5件)、指導     訪問(平成8年度=496件中、都立学校65件)、要請訪問(都研)の制     度が活用されていない。  (2) 問題点   @ 教員には、研修に努める義務があるが(教育公務員特例法第19条第1項)、    都立高校においては、研修を実施する環境と体制が未整備である。    ア 専門教科等の研究や研修にかかわる相互評価や、切磋琢磨の機会が乏しい     ため、研修意欲に欠ける実態がある。    イ 研修課題が教科に偏っており、生徒指導等の教育課題についての研修には     関心が乏しい。    ウ 生徒理解や進路指導についての研修を重視すべきであるにもかかわらず、     これらの課題については、成績会議や職員会議の場で当面する対策について     協議することが中心となり、本来の校内研修の中に位置づけられていない実     態がある。    エ 指導主事を始め、外部から講師を招聘して研修しようとする意欲に乏しい。  (3) 改善策   @ 研修組織及び実施体制の整備    ア 研究部を学校運営の標準的な校務分掌として位置づけ、その設置を積極的     に推進していく。    イ 現在の「校内研修改善推進校」の制度を再検討するとともに、校長の学校     改革の取り組みに対しては、人事・予算両面の支援と併せて、校内研修の改     善についても、支援することを検討する。    ウ 一般訪問、指導訪問(指導部)、要請訪問(都研)等の学校訪問を、各校     年1回は実施することを義務づける。    エ 都立教育研究所、多摩教育研究所を校内研修支援のための機関として、再     編する。   A 開かれた学校の視点に立った研修の整備    ア 校内研修の一環として、教員相互の授業参観等を定期的に行う。    イ 保護者、地域社会と連携した研修会を企画する。    ウ 生徒理解や望ましい授業のあり方などの視点に立った研修の整備を図る。 2 教員研修制度の見直し  (1) 現状   @ 研修の実施体制     校長、教頭及び教員に対する研修は、任命権者である都教委が研修の施設を    整備し、研修の計画などを立て、実施するものとされており、人事部、指導部、    都立教育研究所等で実施している。(教育公務員特例法第19条第2項)   A 研修の内容(平成9年度)    ア 指定研彦      初任者研修(年20回)、新規採用教員研修(養護教論、年20回)、現     職研修T(520名を対象に一人当たり年6回受講)、現職研修U(370     名を対象に一人当たり年6回の試行予定)、新任主任研修・主任研修、管理     職研修(校長及び校長任用前=年8回、教頭及び教頭任用前=年8回)    イ 一般研修      研究所等で実施する研修、研究推進教員要請研修(教育研究員=高等学校     13部会139名、心身障害教育4分科会21名、情報教育指導教員=5コー     ス160名、15回)等、長期派遣研修(教員研修生、中央研修=4名、大     学院=約10名、社会体験等)    ウ 自主研彦      研究奨励事業となる自主研修(高校25件、心障13件)、研究団体奨励     事業等  (2) 問題点   @ 研修の内容、実施方法等の工夫が不十分である。    ア 教育公務員としての自覚や学校運営、校内組織のあり方等に関しては研修     内容が深められず、成果が十分には上がっていない。    イ 主任を対象とした研修は、国の制度に基づき、区市町村では概ね実施され     ているが、都立学校では、実施が困難な現状がある。    ウ 管理職に対する研修は、学校運営に生かすことのできる実践的な内容に乏     しい実態がある。    エ 一般研修の受講者が、一部の教員に偏っている実態がある。また、校内の     研修組織が未整備であるため、教育研究員等の研修成果が研究員等となった     個々の教員に止まっており、校内に還元されていない。   A 教員研修体制が一本化されず、また施設の不備・不足の実態がある。    ア 教員研修が人事部、指導部等で行われており、研修の実施体制が一本化さ     れていない。    イ 区市町村や他県に比べ、東京都の研修施設の条件・環境が脆弱であり、現     在の都立教育研究所等も、十分に研修機能を果していないため、教員の研修     ニーズでに応えきれていない実態がある。  (3) 改善策   @ 教員の意識改革を図る研修内容・方法とするよう改善を行い、学校運営に係    る内容を取り入れる。   A 主任研修を体系化し、計画的に実施する。   B 管理職研修を、学校の経営者としての資質の向上に寄与するよう、実践的な    内容に重点をおいた研修に再編・整備する。   C 一般研修は、専門研修中心のあり方から、現職研修中心の内容に改善する。   D 前項で述べた校内の研究部の設定などにより校内研修組織を整備し、それを    活用して研究員、長期派遣研修等の成果を学区内や学校内に還元する。   E 都立教育研究所、多摩教育研究所の研修機能を高め、都立学校のための研修    体系の再編を図る。   F 研修の実施体制の一本化を図るとともに、新たな専用研修施設の設置につい    て検討する。 第6 人事任用制度の見直し 1 定数等管理体制の改善  (1) 現状   @ 都立高校教員の定数    ア 都教委は、「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関     する法律」に基づいて、都としての配当基準を定めているが、教育課程の弾     力的編成を可能にするため、教員定数の一部を講師時数に振り替えて各学校     に配当している。    イ 生徒の滅少に伴う教員定数の縮減と教員の退職者数とが教料別にみると不     均衡なため、特定の教料の教員が過員となっている。    ウ 全校一律の定数基準に基づく定数配当では対応できない課題に対応するた     め、習熟度別授業、普通科における少人数指導、中途退学防止、海外帰国生     徒数育、コース制教育などについて、500人以上(平成9年度)の定数を     加配している。   A 教員の持時数等    ア 都立高校の教員の持時数については、学習指導要領に基づく標準的な教育     課程を実施する場合の総授業時敷を想定し17時間を教員1人当たりの持時     数の基準としている。(具体的にはこれに必修クラブ1時間を加えた18時     間を教員の標準持時数としている。)    イ 選択授業や多展開授業などのため、学校の総授業時数が増加する場合、教     員が標準的に17時間を持つこととした上で、それを上回るものについては     必要に応じ講師時数を配当している。  (2) 問題点   @ 個々の学校の教員定数は、学級規模を基準に総数で定められており、教科課    程に基づく教科別教員定数として算定されていないため、教科毎の欠過員が特    定できない。     また、教科によっては過員が存在するため、学校全体でみると教員の持時数    が不均衡となっている。   A 理科における物理、化学、生物、地学等、教科が複数の専門料目に分かれて    いる場合、専門科目以外の科目の授業が不得手な教員は、他の科目の端数時数    を担当していないのが実態である。   B @及びAにより、全ての教員に必修クラブを含めて厳格に18時間の持時数    を持たせることは困難となっている。   C 人事部においては、定数査定・管理を各校種とも1人の担当者で行っており、    業務量が膨大なことから、厳密な定数査定・管理が困難になっている。  (3) 改善策   @ 学校における教科課程の編成を早めることにより、学校ごとの教科別教員定    数の把握を早期に明確化できるようにする。     具体的には、      前年度10月頃 次年度教科課程原案作成、提出(基本的人事計画作成)       〃 2月頃 第2次教科課程調書作成、提出(講師時数、嘱託員確定)     また、提出された教科課程調書について、指導部と連携して内容を審査し、    それに基づき人事部において教員定数、嘱託員、講師時数を配当する方向で定    数査定体制の整備を図る。   A 加配教員を配当する場合には、加配の基準を明確にして配当するとともに、    学校に対しては加配の目的、あるいは加配教員の教科を明確に伝え、当該目的    に従って必ず実施するように指導する。     個性化、特色化を推進している学校や困難な事情がある学校に対しては、教    員の加配や嘱託員、講師時数を配当できるようにする。   B 人事部において、各学校の定数を算定する際、教員の持時数の下限時数を設    定し、それを下回る場合には原則的に講師対応とする。   C 学校においては、できる限り早期に次年度の教員人事計画を策定し、それに    基づき教料別必要定数を決定することにより、教員異動に的確に反映できるよ    うにする。     この際、学校においては以下のことに留意することとする。    ア 教科総授業数÷17により、教科定員を算出する。    イ 同一教科の教員は、持ち時数が17時間を下回る場合には、原則として教     科内の他科目の端数も受け持ち、教科内の偏りをなくすことを前提に教科定     員を算出する。    ウ 持時数の少ない教科・科目を担当する教員については、全・定両課程の授     業を担当する方向で今後検討する。   D 学校における教科課程管理の徹底を国る。    ア 教員等が加配目的に従って授業を行っているかどうか、学校からのヒアリ     ングを実施する。    イ 学校における時間割表の様式の統一を図るとともに、教科課程調書等の実     施状況については、校長・教頭・教務主任の責任のもとに報告資料を都教委     に提出すべきことを明確にする。      具体的には、       4月当初  時間制表・教室割当表・講座受講者数一覧提出       5月1日付 教科課程調書等の実施報告       5月上旬  校長ヒアリング       6月〜   学校実態調査       11月    校長ヒアリング    ウ 習熟度別授業、少人数指導、選択授業等の実施状況については、学校要覧     や学校案内等へ掲載し、関係する都民や保護者等に周知する。   E 定数管理体制を充実する。    ア 人事部人事計画課で教科課程を厳正に査定し、チェック機能の充実が図れ     るよう定数管理体制を強化する。    イ 管理主事、指導主事、法務監察課、人事部人事計画課等が学校訪問する場     合には、時間割表の確認や習熟度別授業、少人数指導、選択教料等の実施状     況についても調査する。 2 教員の人事配置の適正化  (1) 現状 (定期異動要綱)    教員の人事異動については、下記の実施要納に基づき、実施しているところで   ある。   @ 都立高等学校異動要綱(平成8年10月1日改定)    ア 改定のねらい    (ア)学校問の年齢構成歪みを是正するため、長期勤務者の解消を図る。    (イ)新規採用者の計画的配置及び育成を図る。    (ウ)島しょ・へき地等の教員組織の充実を図るため、経験豊かな教員を配置      するよう努める。    (エ)定時制から全日制、専門学料から普通学科への異動の促進を図る。    イ 異動対象者    (ア)勤務年数(一般)同一校勤務12年を8年に                         (3校以上経験者8〜12年)    (イ)新規採用以来    〃   8年を4年に    (ウ)56歳以上も異動対象とする。    ウ 異動方法    (ア)高等学校を島しょを含め21地域に改定し、原則として3校経験までに      三つの地域を経験する。    (イ)原則として3校経験までにA・Bグループの高等学校をそれぞれ1校経      験する。      〔A:島しょ、定時制、専門学科及び特色ある学科を置く高校等      〔B:A以外の全日制の普通高校    (ウ)新規採用以来(4年以上)最初の異動は、異なるグループに異動する。   A 都立盲・ろう・養護学校異動要綱    ア 障害の種別や状態に即した専門的指導の充実。    イ 長期勤務者の解消。    ウ 都立盲・ろう・養護間の異動促進。    エ 公立学校(小中高)との交流促進。    オ 異動対象 同一校勤務12年 新規採用以来 同一校勤務 8年  (2) 問題点    教員の人事配置については、行政系に比べ閉鎖的で硬直化した面が強い。また、   人事異動については、「希望と承諾」という長年続いてきた意識や慣行がいまだ   に強く残っているなど、以下のような問題があり、今回の新宿高校における事件   も、学級滅等により生じた過員教科の教員を、人事異動によって解消できなかっ   たことが原因の一つとなっている。   @ 全般的問題点    ア 全日制から定時制への異動等異なる課程や島しょへの異動は、本人の承諾     なしに配置することは、教員から強い反発があるため実施できず、この結果     欠員が生じた場合には、新規採用教員の配置により対応せざるを得ないため、     学校の運営に支障が起きている面がある。    イ 平成8年度に異動要綱を改定したが、経過措置を設けていること、新規採     用教員が毎年数名と少ないことにより、島しょや定時制等の必要数を満たせ     ない状況がある。    ウ 養護学校採用者が不足する場合、小中高の合格者から希望を募り、養護学     校に配置しているが、その後、本人が希望しても小中高に異動するのが難し     い状況となっている。    エ 専門分野内(盲→盲、ろう→ろう、養護→養護)での異動希望が多く、専     門化が進むという利点がある反面、人事の固定化を招いている。   A 過員・欠員の問題点    ア 近年、生徒滅少による学級滅や課程の廃止等が進み、また、退職者より定     数減の方が大きい教科が多いため、過員が発生している。さらに、過員解消     ができない教科がある一方で欠員教科が発生するなど、全体としてアンバラ     ンスな状態となっている。    イ 全日制から定時制等への異動希望者が極端に少なく、定時制から全日制へ     の転出が困難となっているため、全日制の過員解消ができない反面、定時制     に欠員が生じている。(例えば平成10年度異動において、定時制の国語科     では、退職での欠員に対して、転入希望者が約25%程度である。)   B 島しょ・定時制の問題点    ア 島しょや定時制への異動は、実態として本人の承諾を前提に配置している。    イ 島しょの転出希望者に対する転入希望者の率は約25%程度であり、また     全日制の異動率が約60%を超えるのに対して、定時制の異動率が約40%     台に止まっているように、島しょや定時制等への転入希望者が少ない。  (3) 改善策    「希望と承諾」という長年の意識や慣行を排し、人事異動要綱の徹底を図ると   ともに、定数減や統廃合等特別な事由が生じた場合、当然異動するとのルールづ   くりを行う。また、今回の新宿高校のような事件を再発させないためにも、過員   教科の教員の異動の徹底を図るとともに、習熟度等の加配に当っては教科を明確   にすることが必要である。   @ 現異動要綱の運用について、次の視点から徹底を図る。    ア 異動対象者は、希望外でも異動することとし、欠員の解消を図る。      特に全日制と定時制間の異動の促進を図る。    イ 各校毎に過員の教料を明確にし、過員解消を図るため、他校で欠員が生じ     た場合には優先的に異動させる。    ウ 習熟度等の加配に当っては教料を特定し、その教科の教員を配置する。    エ 島しょや定時制等への異動を促進するため、現行要綱で定める「原則とし     て3校経験までに島しょや定時制等のグループの学校を経験する」の徹底を     図る。    オ 異動対象者は現在所属しているグループと異なるグループへ異動すること     を徹底する。    カ 定数滅や統廃合があった場合は、学校別の教科定数に照らして、過員は必     ず異動させる。    キ 人事部における異動作業の見直しを図るとともに、作業体制の充実を図る。   A 現異動要綱を次の視点で見直し改定する。    ア 島しょや定時制教育の一層の充実を図る視点から、教員は、必ず一度は島     しょあるいは定時制課程の学校を経験することを制度化する。    イ 専門教科の工業・商業・農業についても全日制と定時制の区分をすること     とし、全日制はBグループ、定時制はAグループ扱いとする。    ウ 将来的には、教員を課程別に配置することを見直し、学校別配置に改める     など、定時制への配置の困難を解消する方策を検討する。    エ 盲・ろう・養護学校については、新規採用の方法を含めて全体的見直しを     検討する。   B 過員解消に向けて、例えば中学校・高校の同一教科については、一本化採用    を行うことも含め、検討する必要がある。 3 管理職任用制度の改革  (1) 現 状    教員系の管理職選考は、現在、指導主事選考と教頭・校長選考の2つの系列に   区分して実施している。教頭・校長選考については、平成3年に学校管理職の長   期在職化を図る観点から受験年齢の引下げを主とした改正を行った。    また、選考及び合格後の任用・人材育成の所管は、指導主事については総務部・   指導部、学校管理職については人事部でそれぞれに実施している。   @ 教頭選考    ア 受験年齢 37歳〜49歳(改正前38歳〜54歳)    イ 受験資格 教職歴12年以上、都教職歴7年以上    ウ 任用審査 合格年の翌年1年間の任用前研修を行った上で、任用審査に合     格した者を任用   A 校長選考    ア 受験年齢 41歳〜54歳(改正前41歳〜57歳)、57歳(平成10     年度より特例)    イ 受験資格 教職歴15年以上、都教職歴10年以上、教頭歴3年以上    ウ 任用審査 教頭選考に同じ   B 指導主事選考    (教頭職にある者)    ア 受験年鈴 50歳以下    イ 受験資格 教頭歴2年以上    ウ 任用審査 教頭選考に同じ    (一般教諭)    ア 受験年齢 34歳〜44歳    イ 受験資格 教職歴11年以上、都職歴7年以上    ウ 任用審査 教頭選考に同じ  (2) 問題点   @ 選考が2つの系列となっていることの問題点    ア 校長・教頭選考による管理職は、学校内の前例や慣習にとらわれず、より     幅広い視野に立って問題解決を図る経験が十分とは言えない。    イ 指導主事選考による管理職は、学校実務経験が少ないために、現場の実状     を踏まえた経営指導が十分とは言えない。    ウ 年齢や経験等のライフステージに即した選考になっていないため、主任経     験が少ない若年層の管理職は、教員の平均年齢が高まる中で、リーダーシッ     プを発揮し得ないケースも多い。    エ 選考合格後の任用前研修期間が1年であり、行政管理職のそれと比べて短     く、養成期間としては不十分である。   A 選考実施上の問題点    ア 選考受験者の滅少      受験対象となる教員数の滅少もあるが、選考受験者が年々滅少傾向にあり、     このまま推移すれば、有用な人材の登用に支障を来たしかねない。      さらに受験対象者の受験率が10%を割っている現状がある。       教頭選考   平5:2,467人 ⇒ 平9:2,230人(10%滅)      (うち都立)    (447人)     (349人)(22%滅)       指導主事選考 平5: 532人 ⇒ 平9: 368人(31%滅)    イ 合格枠の設定      校長・教頭選考については、毎年、校種別に、翌年の退職、派遣等の状況     を勘案して合格数を決定しているが、校種毎の合格数が年度によって大幅に     変動するため、受験年次によって不公平となる傾向がある。  (3) 改善策   @ 校長・教頭選考と指導主事選考を一本化するとともに、年齢や経験等ライフ    ステージに即した複数の選考区分を設ける。また、選考方法についても管理職    としての適性をより的確に判断できるよう見直す。   A 選考合格者を統一的な観点で育成するため、合格者の任用管理の所管を一本    化する。   B 現在の選考合格後の任用基準等を見直し、ジョブローテーションの導入や研    修の充実など、計画的な人材育成プログラムが実施できるものとする。   C 校長の推薦者のみが受験する実態を見直し、誰もが受験しやすい環境を整え    る。   D 毎年度一定の安定した合格枠を確保する。   E 任用基準を見直すことにより管理職侯補者の総数を増やし、基幹要員として    学校等に配置する。   F 管理職候補者には、原則として、学校の基幹要員や指導主事等の職を経験さ    せることとし、配置する職の設定や拡大について検討する。   G 職務と職責に見合った給与体系になるよう処遇を検討する。また、校長・教    頭について、期末・勤勉手当の管理職加算制度を実施できるよう、関係機関に    要請するなど実現に努めていく。さらに、教頭の管理職手当を13%から15    %に引き上げるよう関係機関と調整する。     なお、充当指導主事の超過勤務手当の支給も併せて検討する。 4 教職員顕彰制度の改善  (1) 現状   @ 教職員対象の表彰制度の現状は、次の表のとおりである。 ┌───────┬───────┬────────────┬────────┐ │ 表彰名   │被表彰者   │   主な表彰内容   │年齢等の条件  │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │教育委員会表彰│教職員    │有益な研究等、職務改善、│なし      │ │       │       │職務精励        │        │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │教頭功労表彰 │教頭     │教頭としての多年の功労 │勤続30年以上の │ │       │       │            │退職者     │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │保健功労表彰 │学校医、教員等│学校保健、安全に関し  │勤続20年以上、 │ │       │       │       優れた功績│50歳以上    │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │給食功労表彰 │教職員、栄養職│学校給食に関する    │勤続15年以上、 │ │       │員、調理員等 │       優れた功績│50歳以上    │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │都職員表彰  │教員除く全職員│有益な発明等、職務改善、│なし      │ │       │       │職務精励        │        │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │永年勤続者表彰│教職員    │勤続25年以上      │勤続25年以上  │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │退職者表彰  │教職員    │勧奨退職者、定年退職者 │勧奨退職者、  │ │       │       │            │定年退職者   │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │健康優良校  │学校等組織  │優れた学校保健活動   │  ――――  │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │給食優良校  │ 〃     │優れた学校給食活動   │  ――――  │ ├───────┼───────┼────────────┼────────┤ │安全優良校  │ 〃     │安全教育等優れた成果  │  ――――  │ └───────┴───────┴────────────┴────────┘   A 披表彰者の多くは、高齢者や退職間際の者により占められている。   B 学校等組織を対象とする表彰は限られている。  (2) 問題点    これまでの表彰実績をみると、学校、団体が表彰されることが少ないことや受   賞者の年齢や役職に偏りがみられるなど、広く教職員のモラールアップを図る制   度となっていない面がある。   @ 表彰の内容     表彰の対象である活動や功績が事実上限定されており、「開かれた学校」づ    くりに優れた成果をあげている学校や部活動に熱心に取り組んでいる学校等を、    表彰の対象とすることが困難である。   A 研究成果発表の場     表彰された「取り組み」や「研究成果」を対外的に発表できる場が少ない。   B 表彰の対象者     高齢者や退職者が多くを占めているが、表彰に値する功績を持つ者は、必ず    しも高齢者に限らない。教職員のモラールアップのためにも、各年齢層に対し    て表彰が行えるよう配慮する必要がある。  (3) 改善策    表彰にいたった「取り組み」や「成果」が、受賞者を含め今後の教育実践に広   く活用されるとともに、このような実践や工夫を広く奨励できる制度とする。   @ 表彰内容の見直し     授業公開等「開かれた学校」づくりに積極的に取り組んでいる学校や「この    道一筋」に職務に精励してきた教職員を積極的に表彰の対象とするなど表彰内    容の見直しを行う。     さらに、個性化・特色化に向け優れた実践活動を行っている学校を組織とし    て表彰していく。    (例)     分野別表彰の導入     (開かれた学校づくり、クラブ・部活動、ボランティア活動、リサイクル活      動など)   A 研究成果発表の場     研究成果の発表会や表彰事例集の配布等を実施する。     さらに、教育関係団体やマスコミとも連携・協力して、「成果」の発表の場    の拡大を検討する。   B 表彰の対象者     広い範囲から推薦や選考が行われるよう、校長等に対して制度の趣旨の徹底    を図る。 第7 都教委による学校支援体制の確立 1 学校に対する窓口組織の設置  (1) 現 状   @ 都立学校と直接関係のある教育庁の部課係は、8部、24課、46係あり、事務    が非常に細分化されている。   A 校長が学校の個性化・特色化を図ろうと計画した場合、教育課程等について    は指導部、施設の改善・充実については施設部、人的措置等は人事部、学科等    の設置や教員その他設備の整備は学務部に、それぞれ相談することになる。   B 都教委と学校事務室の情報交換の場として、「事務事業連格会」が設定され    ており、月1回程度、都教委が事務室長、事務長の代表を集めて連絡調整を行っ    ている。しかし現状では、都教委から学校への情報提供が主であり、学校現場    での課題を受け止め、解決していく機能を十分に果たしているとは言えない。  (2) 問題点   @ 学校の課題や問題に対して、総合的に相談できる窓口がないため、校長等が、    関係する課や係に個別に相談することになるが、時として各部課の連携が悪く、    基本的考え方にずれが生じる場合がある。また責任の所在が不明確であるため、    解決を遅らせる原因となっている。   A 校長が学校改革を進めようとする場合に、指針となる考え方を示したり、相    談に応じる専管組織がなく、校内で反対された場合、校長は自信を持って改革    の方針を教職員に示すことができない状況にある。   B 都教委による学校事務室の支援体制が十分ではなく、各学校の事務室が事実    決定関与機能や予算調製機能を十分に果たすことができない状況にある。   C 事務長校では、校長が事務室所管事項についての権限と責任を有しているが    校長は事務経験がないこともあり、事務室に対して十分な指導ができていると    は言えない。   D 事務室長は、事務室所管事項についての権限と責任を有しているが、現状で    は事務室長が、他校の事務長に対して支援できる事項(室長企画研修など)は    限られている。  (3) 改善策   @ 都立学校窓口組織の設置    ア 教育庁学務部に、個性化・特色化など学校改革の課題について学校に指針     を示すこと、各学校からの改革案にアドバイスを与えること、学校からの相     談を受けることなどを所管する窓口組織を新設する。      なお、この組織には、管理職及び係長級の職員を配置し、高校改革推進担     当(室)とは別に設置する。    イ この窓口組織が中心となり、関係各部(特に、学務・人事・施設・指導の     各部)間の連携を図るとともに、それぞれの課題について一定の方向性を示     すことを目的とする定例の調整会議を設定する。   A 学区担当事務室長の設置     事務室長のうち、学校に関する一定の経験を有する者を学区担当事務室長と    位置づけ、各学区における都教委の窓口としての役割をもたせる。     学区担当事務室長は、各学区に1名程度配置し、学区内各校事務室への支援    を行うとともに、学区担当事務室長配置校に事務機能の一部を集中化する。    ア 学区担当事務室長は各学区において、定例的に学区事務(室)長会議を主     催する。また学務部は、定例的に学区担当事務室長を招集し、学校事務室と     都教委との連携に努める(事務事業連絡会のあり方は別途検討する。)。    イ 学区担当事務室長は、事務長等が、事実決定関与機能や予算調製機能を果     たすことができるよう、支援を行う。    (ア)「起案マニュアル」等を整備し、各学校への浸透を図る。    (イ)各学校の事務室に対し、予算案の策定やヒアリングの実施など校内予算      編成に関する技法や実施上の問題点について、指導・助言を行う。    (ウ)必要な研修を実施するとともに、各学校の事務室からの相談に応ずる。    ウ 学区担当を置く事務室長校が、一定の契約事務(例えば、一定金額以上の     工事契約)を集中処理する方式を導入することを検討する。    エ 事務室長は、この学区担当校のほか、可能な限り個性化・特色化等改革推     進校を中心に配置し、校長とともに学校改革の中心的な役割を持たせるなど、     その位置づけを明確にすることとし、あわせて管理職手当の改善を図る。   B その他    ア 教育庁幹部経験者等の相談員が、学校経営上の問題について校長等の相談     に応じる組織を設置したり、部長室の開放デーを設けるなど、校長等が気軽     に相談できる窓口の設置を検討する。    イ 都教委の動きや考え方を、学校の教職員に十分に伝えるため、「教育庁報」     等の広報媒体の充実について検討する。 2 学校改革への人事・予算面での支援  (1) 現 状   @ 都立高校の場合、標準的には50人程度の教職員がいるが、管理職は一般的に    校長、教頭の二人であり、校長の方針が浸透せず職員から反対されるとその実    現が難しくなる場合が多い。   A 定数配当は、学級数に基づく定数基準によって定められており、習熟度加配    や少人数教育の算定で各学校の実態を加味できるとはいえ、その数は少なく、    全体として、画一的なものになっている。   B 都立学校の運営に必要な予算は、「運営費標準」を基本としつつ、「一件算    定」を併用して編成され、また予算配付も同様に行われている。   C 高校の個性化・特色化を進めている中で、学校が必要とする予算費目及び額    と運営費標準に基づき配付する額の間の隔たりが拡大しつつある。   D 学料等の改編計画は学務部が、改築・改修計画は施設部がそれぞれ独自に行っ    ており、連携が必ずしも十分でない。  (2) 問題点   @ 学校改革を進める場合、校長の方針を理解して協力する教員が不可欠である    が現行の異動ルールのもとでは、校長はこうした人材を確実に確保することは    難しい。   A 学校の個性化・特色化に対応した定数配当が十分行われていない。   B 特色ある学校づくりや開かれた学校づくりを進めている各校の要望に応じ、    重点的に、予算配付を行うことができていない。   C 学校間、年度間による予算科目の過不足の把握と、それを是正する配付計画    の策定がなされていない。.   D 1つの学校について学科等の改編計画と校舎等の改築・改修計画とが連動し    ていない場合がある。     また、学校改革の方針が校舎の改築・改修計画に十分反映されないことがある  (3) 改善策    校長が特色ある学校づくり等を計画し、都教委がこれを認めた場合には、当該   校に対して人事・予算面を中心に、以下のような支援を行う。   @ 教頭任用前教員等の基幹要員の配置、校長が希望する人材の配置、定数配当    や非常勤講師時数の措置、新規事業やモデル事業等への予算配付などの総合的    な支援を行う。また、事務室について、必要に応じて事務室長を置くなど弾力    的な配置を検討する。     なお、この総合的支援の調整は、先に述べた学務部に置く、窓口組織が行う。   A 各高校で教科別教員の持時数が一定の時数を下回る場合は、定数配当を保留    し特色ある学校づくりを行う学校に配当する方策を検討する。   B 「運営費標準」で積算された予算額に一定の保留額を設け、特色化等の事業    の原資として活用する。   C 年度途中の一定の時期に、各校の不用額を調査し、それを原資として各校の    要望に基づく必要な予算に充当するなど、弾力的な予算連用のシステムを導入    する。   D 単年度の予算配付では更新の難しい高額備品等に対応するため、一部「要求    方式」も取り入れた予算配付の方法を行う。   E 学校が自ら学校改革に取り組もうとする場合には、校舎等の改築・改修計画    をできる限り優先的に行う。   F これらの施策を実施するため、必要な体制整備を検討する。 3 教育庁組織の見直し  (1) 現 状   @ 教育庁の組織は、学務部、人事部、指導部、施設部など事業の性質に着目し    た組織になっており、学校の種別に対応した組織とはなっていないため、都立    学校と直接関係ある部課係は多岐にわたっている。 ,   A 性質別組織であるため、計画部門が細分化され、都立学校全体を視野に入れ    た計画をたてる場合、教育庁内においても多大な調整努力が必要になる。  (2) 問題点   @ 学校の課題を所管する部所が複数にまたがっており、校長が各部門に対して    調整努力をしなければならない場合が多く、学校の改革や新規事業の実施に多    大な労力を要することになる。   A 都立学校全体に係わる計画の策定や、課題への対応などについて、都教委と    しての方向性を出すのに時間がかかり、臨機応変の対応ができにくい体制になっ    ている。  (3) 改善策    性質別組繊による問題点を解決するため、1で述べた学校窓口組織を設けるな   ど当面の対応を行うとともに、より根本的には、教育庁組織の大幅な再編整備を   検討する必要がある。今後、中央教育審議会における分離化の審議「地方教育行   政の組織及び運営に関する法律」59条の改正及び全庁的な組織の再編整備の動向   等も視野に入れ、教育庁組織のあり方について具体的に検討を行うこととする。    基本的考え方は、以下のとおりである。   @ 事業や課題に対して、総合的、一体的に事務処理が行えるよう、学校種別に    対応した部の組織の設定を検討する。     なお学校種別組織を設定する場合は、そのメリットばかりではなく、デメリッ    トについても、十分な検討を行うことが必要である。   ------------------------------------------------------------------------  (学校種別組織のメリット・デメリット)   1 メリット   (1) 学校種別ごとに都教委の統一方針を迅速にまとめることが可能となり、新規    事業等にも即応できる。   (2) 学校からみて、わかりやすく、機能的な組繊になる。   (3) 関係する情報が総合的に入手しやすくなり、事業の執行にあたって、幅広い    視点からの判断が可能となる。   2 デメリット   (1) 特定の部長の職務範囲が膨大となり、適正な管理スパンを捉えるおそれがあ    る。   (2) 部の組織が大規模になるため、部内の連携が悪くなるおそれがある。   (3) 学校種別を横断する業務については、業務の重複が生じ、また調整が必要な    事項が増えるため、非効率的になるおそれがある。   ------------------------------------------------------------------------   A 教育庁職員及び学校の教職員の服務、懲戒、分限及び事務事業の執行につい    ての指導監察等の充実を国るため、各部から独立した法務監察組織の設置を検    討する。