文書: マシンが起動しない場合の手順の解説-WINDOWS編 番号: 0001 版: 0.02 日付: 1998-12-29 著者: 寺中 誠 |
マシンが起動しない。
コンピュータが起動する際には、一般的に次のプロセスを辿る。
電源投入→ メインボード(マザーボード)起動→ CPU-BIOS認識&メモリチェック→
ハードディスク起動→メモリへのデータのロード→ OS起動
以下、順番に見てみる。
電源は、外部のAC電源よりコンセント等を通じて取り入れられる。
バッテリ駆動が可能なノート型のものは、ACアダプタと一体化した直交変換機に
まず送られ、そこから通常15Vでバッテリ部に供給される。本体マザーボードの
電源回りは、バッテリ部から供給される形をとる。最近の機種では、ACアダプタ
からの電源供給とバッテリ充電は、バッテリ部で同時におこなえる。内部の配線
はフレキシブルケーブルを用いているため柔軟性があるが、取り外しには、細心
の注意が必要となる。(あえて取り外す必要性はあまりない。)
デスクトップの場合は、直交変換機自体が内部に設置されており、そこから
電源ケーブルを通じてマザーボードに供給される。通常AT型ないしATX型対応の
マザーボードであれば、主電源の受入口は太い2本のソケットとなっており、
そのソケットの黒い線の部分を隣り合わせにしてマザーボードにはめ込まれて
いる。(電源を切った上で、接触部の確認をしておく。)
本体内では、電源部から、CPUファン(設置されている場合には本体ファンも)、
音源部に直接供給されているほか、マザーボード上からソケットを通じて、
IDEケーブルでつながったハードディスクやCD-ROMドライブ、フロッピディスク
ドライブ、外部機器と接続するためのSCSIボード、PCI、ISAボード等に電気が
供給されている。
電源投入が正常におこなわれたかどうかは、LEDで示される。そのほかファンが
回っているかどうか、スピーカが反応したかどうかなども、目安になる。
ノートのバッテリについては、過充電による不具合である可能性もある。
バッテリを本体からはずし、数十分置いてから試すことも考慮すべきである。
基本入出力システム(BASIC INPUT-OUTPUT SYSTEM)のことをこう呼ぶ。マザー
ボードに付属の不揮発性のシステムで、コンピュータの一切のハードウェア的な
コントロールはこれがおこなう。
BIOSは各マザーボード業者からアップデート版が出ていることがある。機種が
少しでも違うと動作しないし、マザーボード自体が不可逆な損傷を受けるので
アップデートは十分に注意すること。アップデート中に電源が切れると、その
後、マザーボードはうんともすんともいわなくなり、そうなると全面取換以外
に復旧手段がない。
電源投入が正常におこなわれた後、ディスプレイ上では、BIOSに電源が供給され
た段階で、BIOS表示とメモリチェックが開始される。その後BIOSは「ピコッ」と
いう反応音を鳴らす。
BIOSチェックでは、認識されたボード上の機器、特にIDE等に接続されたハード
ディスク、CD-ROMドライブ、そしてフロッピドライブが表示される。ここで
正常に認識されない機器があるかどうかが確認できる。
メモリチェックは、SRAM、DRAMどちらでも、正常にメモリが読み込まれるかどう
かを確認する。カウントは省略できるが、一部までしか読み込まれない障害もあ
り得るので一応の注意は必要。メモリは、本体に付属するメインメモリ
(通常640KB)と拡張メモリに分かれるが、ノートなどでは工場出荷時にすでに
ある程度の拡張メモリがマザーボード上に設置されている場合がある。
メモリボードの設置はしっかりとおこなっていなければならない。甘い設置で
使っていると、数ヶ月経過後に、メインメモリごと壊れる恐れもある。
物理的にメモリが認識されるからといって、メモリが正常であると断言は
できない。これを補うのがパリティチェックであるが、これはマザーボードの
メモリバンクの仕様に依存する。現在はパリティなしのメモリも多く、逆に
パリティが邪魔になって認識できないメモリもあるなど、一長一短である。
BIOS確認とメモリチェックがおこなわれれば、CPUが一応動作しているという
ことまでは確認できたことになる。なお、BIOSのセットアップに移行するには
この段階までに、指示されたキーを押す必要がある。
マザーボードを直接操作してBIOSを初期状態に戻すには、CMOSクリアの
ジャンパ設定をおこない再起動をかける。以後は初期状態となるため、
ジャンパ設定を元に戻す。
BIOSレベルの確認が終わったら、ようやくハードディスクにアクセスが開始さ
れる。ここでフロッピをドライブに入れていると、通常の設定では、フロッピ
からの起動をおこなう。起動ディスクでなく、単なるデータディスクを入れて
いる場合は、「システムがない」旨が表示され、ハングアップしたり、再起動
がかかったり、ハードディスクからのブートを促す画面になったりする。
フロッピをはずして再起動すれば解決する。
ハードディスクが読み込まれる場合、まずIBM互換機の場合は、Cドライブが
起動する。PC98の旧型機の場合は、Aドライブが起動する。ハードディスク上の
ルートディレクトリ(C:\)からCONFIG.SYSを読み込み、その指示にしたがって
メモリにシステムをロードする。CONFIG.SYS中に記述されているHIMEM.SYSの
ロードにより拡張メモリを含めて全メモリを管理することができるようになる。
ハードディスクに障害がある場合は、この段階でシステムのロードがおこなわれ
なかったり、ファイルの損傷が報告されることがある。ハードディスクの障害に
は、物理的な損傷とデータ上の損傷とがある。データ上の損傷は、一部ファイル
が壊れていたり、クロスリンクなどで、破壊されている場合で、SCANDISKで回復
が可能である。ただしシステム関連の重要なファイルの場合、損傷部分を切り捨
てて回復するだけなので、正常なファイルを上書き再インストールする必要があ
ることもままある。
こうした障害が起きる原因としては、主なものとして、クロスリンクとFATの損傷
がある。クロスリンクとは、ハードディスク上の同一空間を二つの異なるファイル
が交差して使用してしまった場合のことで、しばしば起きる。どちらかのデータが
失われるので、定期的なバックアップが必要である。これに対してFAT(ファイル
アロケーションテーブル)の損傷というのは、ファイルシステム自体が危機にさら
される。多くの場合はバックアップにより助けることができるが、バックアップも
破壊されていたり、ファイル、ディレクトリの名前管理の情報が消えてしまい、全
ファイルが名前を失うこともある。そうなるとデータが残っていても、復元は不可
能に近く、再インストールが必須である。
また、WINDOWS95/98/NTに付属するDEFRAGをSCANDISKのあとに実行すると
マシンのパフォーマンスが上がり、安定することがある。
ハードディスクの物理的障害には、交換以外の対処方法はない。SCANDISKで
ある程度状況を把握したら、ただちにハードディスク交換の手続に入ること。
なお、一時的に復旧できた場合は、その間にデータのバックアップをとって
おくこと。
WINDOWSは、旧来から、GUI(グラフィカルユーザインターフェース)を実現する
ための表示ツールとしての役割が強い。OSとしての基本はMS-DOSが担って
おり、そこにWIN.COMという巨大なプログラムを走らせるという構成をとって
いる。MS-DOS自体は小さく軽いOSであって、拡張メモリを必要とせずフロッピ
ディスクからも起動可能である。
ハードディスクからは立ち上がらなくても、フロッピからなら起動する場合、
ハードディスク上のMS-DOSのシステムが壊れているという可能性がある。
MS-DOSのシステムが壊れている場合、フロッピでMS-DOSを立ち上げた上で、
SYSコマンドを打ち込み(A:\プロンプトから SYS C:\と打ち込む)システムを
転送すると直ることがある。この時に転送されるのはIO.SYS、MSDOS.SYSと
COMMAND.COMであるが、IO.SYSとMSDOS.SYSはディスク上の転送場所があらかじ
め決まっているファイルであるため、直接コピーはできない。必ずSYSコマン
ドを使う必要がある。CONFIG.SYSおよびAUTOEXEC.BATはテキストファイルであ
るため、エディタ等で直接編集することが可能である。(MSDOS.SYSもWINDOWS
95になってからはテキストファイルになっているが、これは絶対に直接編集し
てはならない。)
次に、WINDOWS95/98が立ち上がるためには、WIN.COM本体と、メモリ管理用の
ドライバであるHIMEM.SYSが絶対に必要である。またEMM386.EXEも必要となる
ことがある。これらのドライバのロードはCONFIG.SYSとAUTOEXEC.BATに記載
される。その他、各種設定ファイル、WIN.INI、SYSTEM.INIが、WINDOWSの起動
のための情報を提供している。レジストリ本体であるSYSTEM.DATとUSER.DATは、
WINDOWS内の設定や登録状況をコントロールしているデータである。
WINDOWSは起動に際して、まずMS-DOSをロードし、次にその上でWIN.COMを実行
する。MS-DOSレベルでは、拡張メモリは使用されず、MS-DOSのCONFIG.SYSが、
HIMEM.SYSを読み込んではじめて拡張メモリが認識される。
したがって、起動しないといってもMS-DOSレベルでは起動している場合、
拡張メモリの部分に障害がある可能性がある。その場合、HIMEM.SYSの障害で
ある場合と、拡張メモリ自体が物理的に障害を持っている場合とがあり得る。
HIMEM.SYSについては同一バージョンの同一ファイルをコピーして試すことで、
ファイルの障害があるかどうかを確認できる。ただし、バージョンについては
同じWINDOWS95の中でも細かく分かれているので、同じバージョンでなければ
使用できない可能性があることに注意。
WINDOWSの起動については、SAFEモードでの起動ができれば、あとはWINDOWS内
での各種ドライバの設定の問題になる。起動できないという場合でもまずSAFE
モードによるブートが可能かを確認すること。SAFEモードでの強制立ち上げは
WINDOWS起動中にF8を押してメニューを表示させ、そこから3を選択することで
可能。
なお、マシンの登録情報などを管理するSYSTEM.DAT、USER.DATという二つの
ファイルは、WINDOWS95/98/NTのレジストリの実体である。これを保存して
おくと復旧が比較的容易になる。再インストール後に、DOSレベルで、バック
アップしておいた両ファイルを強制上書きコピーをすればよい
(隠し属性であるため、ATTRIBコマンド等で属性変更の必要がある)。
SAFEモードでの立ち上げができない場合は、1)WINDOWSが壊れている、2)メモリ
部分が壊れている、という両方の可能性がある。1)の場合はWINDOWSの再インス
トールで直るはず。2)の場合は、MS-DOSレベルで、各種プログラムを実行して
みる。MEMコマンドでメモリのロード状況を調べ、拡張メモリ部分(XMS)に
正常にドライバ等がロードされているかを確認する。XMSの部分が見つからない
といった類のメッセージが出ていれば、まずは拡張メモリの問題である。この
場合は、拡張メモリを交換してみる。正常に動けば拡張メモリの故障ないし、
相性の問題である。
拡張メモリを扱う以外の部分でも障害が発生する場合(SCANDISKが実行できな
いなど)、CPUないしマザーボード上のメモリ回りが不具合を起こしている
可能性が高い。マザーボード上のジャンパ等が工場出荷時の設定と違っている
場合は初期設定値に戻す必要がある。また、CMOSクリアのジャンバ設定をおこ
なうことで、BIOSレベルでの余計な設定もクリアできる。それでも直らない場
合はマザーボード自体を交換することになる。
症状から推し量る場合には、立ち上がってからの不安定さや使用中に煩瑣に
ハングアップするか、突然再起動することがあるか、といったチェックポイン
トがある。ただしこれらについては他にも原因があり得るので即断できない。
障害がある場合の診断方法は、まず本体から遠いところから疑うことを原則と
する。一応、以下を目安にして診断してみる。
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