市民運動とインターネット −−− ムミア・アブ=ジャマルの死刑執行停止を求めて −−−

JCA-NET代表 浜田 忠久
taratta@jca.ax.apc.org

 10月30日、ペンシルバニア州最高裁判所は、 黒人ジャーナリストであり無実の死刑囚の、ムミア・ アブ=ジャマルの再審請求を棄却した。州知事、ト ム・リッジ氏は、95年6月に死刑執行命令に署名し ている。再審請求が審議されているあいだ、この執 行命令はいったん取り消されたが、同知事は最高裁 の決定が出たら速やかにムミアの執行命令書に再度 署名すると言明している。

 ムミア・アブ=ジャマル(以下、ムミア)の名前 は日本ではあまり知られていないが、ラジオ・ジャー ナリストとして自分の番組をいくつかもち、警察に よる人種差別的な暴力事件などを積極的に取材した り、貧困層への州政府の施策への批判などにより 「声なきものの声」とよばれ、虐げられた人の側に 立って報道してきたすぐれたジャーナリストとして 知られる。

 フィラデルフィア警察当局や州知事の政策をジャー ナリストとして厳しく批判しつづけた彼は、当局か ら要注意人物のレッテルを貼られた。1978年、アフ リカ系アメリカ人のオールタナティブな運動「MOVE」 のコミュニティーを600人以上の武装警官が包囲攻 撃した事件を非難し、あくことなく戦った彼を、ラ ジオ局は解雇してしまった。彼は家族を支えるため に、夜勤のタクシードライバーとなって働くしかな くなった。

 そして1981年12月9日未明、乗務についていた彼 は、白人警察官が撃ち殺される現場に行き会わせて しまった。彼自身も銃弾を受けて瀕死の重傷を負っ たが、現場に駆けつけた警官隊は、血だまりにうず くまる彼を、最初から犯人と決めつけて、殴る蹴る の暴行を加えた。彼の逮捕は、あきらかなでっち上 げであり、裁判も人種差別と政治的偏見に凝り固まっ たものだった。彼は一貫して無実を主張しているに もかかわらず、6カ月たらずの裁判によって、翌82 年7月3日には有罪と認定され、死刑の宣告をうけた。 ペンシルバニア州最高裁への上告は1989年3月に却 下され、連邦最高裁への上訴も拒否された。

電子メディアを活用した支援活動

 常に弱者の側に立って権力と闘い続けた精神が、 冤罪によって今や深刻な生命の危機にさらされてい る。世界各国にあるムミアの裁判を支援するグルー プも各地で行動を起こしている。その活発な活動の 様子は、アムステルダムの Solidarity group Political Prisoners が運営するWebサイト "Free Mumia Abu-Jamal" の関連リンクをたどって 見ることができる。ここには米国の他イタリア、フ ランス、ドイツ、英国、ノルウェー、日本のサイト が紹介されている。

 International Concerned Family & Friends of Mumia Abu-Jamal (ICFF-MAJ) はそのWebサイト の Emergency Response Network (緊急応答ネット ワーク)のコーナーで、トム・リッジ州知事の死刑 執行命令への再署名に備えてとるべき行動を訴えて いる。ここには実際的な抗議行動の緻密な組織化の ためにWebがどのように活用できるかということ の好例を見ることができる。

  1. 自分の緊急応答ネットワークがいざという時に うまく機能することを確認する。電話および電子 メールなどの連絡網を作り、テレフォンカード、 切手、封筒、コピーカードを携帯しておく。
  2. いつでも仕事を休めるように、休暇をためてお く(!)。
  3. 死刑執行命令に署名されたら、ICFF-MAJ と電 話かインターネットで毎日連絡をとり、ムミアの 生命を救うために必要なありったけの行動をとれ るようにする(電話は相手の時間を拘束すること にもなるので、Webで最新情報を見るようにす る方が望ましい・・・筆者)。
また、この活動を広げて大きな動きにしていくため に必要な8つの活動を挙げている(7.、8.は非 課税寄付による支援団体のサポートだが、これは米 国の税制にからむ制度なので省略する)。
  1. 真実を集める。ムミアのことを友人、知人に伝 える際に、事実に基づいて話すことが重要である。 現在、6種類のビデオテープ、3種類のオーディ オテープ、5種類の書籍が入手できる。
  2. 自分の属するさまざまなコミュニティやサーク ル、職場、学校などで、討論会やテレビ/ラジオ インタビューを企画する。
  3. メディア活動家になる。メーリングリストやW ebサイトにムミアのことを書き込んだり、ニュー スレターやチラシを作ったり、新聞に投書したり する。
  4. 毎週、定期的な会合を開く。
  5. 州知事、州検察官、司法長官にムミアの再審を 求める手紙を書く。
  6. 切手、テレフォンカード、コピーカード、現金 等により ICFF-MAJ を支援する。

死刑をめぐる日本の状況

 国連規約人権委員会は、日本での死刑存置とその 執行方法および死刑囚のおかれている処遇状況等に 対して、それが自由権規約に明らかに違反している、 とたびたび指摘している。また、日本がいまだ批准 していない第二選択議定書(いわゆる死刑廃止条約) の批准についてもかさねて勧告している。

 10月末に国連で、国際人権規約のB規約(いわ ゆる自由権規約)の実施状況についての審査が行な われた。今回の審査の結果、11月の始めに再び同 様の主旨の勧告がなされた。その直後の11月19 日、名古屋と広島において3名の死刑が執行された。

 国連勧告をあえて無視して死刑執行を強行する政 府と、それを取り上げないマスメディア(たとえ取 り上げても処刑の事実のみであり、国連勧告への違 反であることは報じない)が存在を許されていると いうこと自体、私たちの人権に対する意識の低さを 示しているのではないだろうか。ムミアの問題がマ スメディアの関心を引かないのは残念ながらある意 味では当然かも知れない。

日本でのムミア支援活動

 日本ではマスメディアがほとんど取り上げないこ ともあり、「ムミアの死刑執行停止を求める市民の 会」の活動がほとんど唯一と言ってよい(上記の "Free Mumia Abu-Jamal" でも日本の支援団体とし てリストアップされている)。95年7月以来、さま ざまな活字メディア、電子メディアで支援活動を展 開している。

 今回の再審請求の棄却に際しても、各方面にトム・ リッジ州知事あてに例文を添えて手紙、FAXを送 るよう呼びかけた。

 なお、12月11日(金)午後6時より、東京:神田 パンセにおいて、ムミアの死刑執行を阻止し、再審 を実現するための緊急集会を予定している。関心の ある方はぜひ参加をお願いしたい。また、現在の緊 迫した状況の中で最新情報を随時発信しているので、 下記Webサイトに注目し、また電子メールで連絡 をお願いしたい。

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