2002.6.27
三位一体改革について
|
|
補助金、税源移譲、交付税の三つを一体的に見直すという「三位一体改革」が経済財政諮問会議で一応「決着」した。関係者の思惑の違いや各省の省益対立もあって、迷走したし、内容も先送りが多くまだまだのものだが、税財源の分権化が共通認識となり、今後進むべき目標が明らかになったことは間違いない。
問題は具体的な内容と方向である。社民党は、分権・自治の豊富化のための改革として「未完の改革」の完成に向けて全力で取り組む。
|
|
1.税財源の分権はもう待ったなしの改革課題
一九九三年の地方分権推進国会決議、その後の地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の設置、二〇〇〇年四月施行の地方分権一括法と進んできたこの間の地方分権は、機関委任事務制度の廃止、国地方係争処理委員会の設置などの前進面を有しつつ、「未完の改革」と言われている。それは国の関与・縮小にとどまり大規模な権限移譲に至らなかったことと、税財源の移譲が全く手つかずに終わったことなどによる。
この間の分権改革の残された課題である税財源の分権についての可能性を示すものが、補助金の縮減、国から地方への税源の移譲、地方交付税制度の改革を一体的に行う「三位一体改革」であった。たしかに今回の「三位一体改革」をめぐって、総務省、財務省、事業官庁、自治体、民間出身議員などの同床異夢の下、利益対立の百家争鳴ばかり目立った。しかし、方法や内容、思惑などには違いがあるものの、これまで実現し得なかった本格的な税源移譲を含む税財源の分権がもう抜きにはできない改革課題であることが明らかとされた。進むべき射程を明確にし、未踏の地に半歩踏み出したこと自体は率直に評価されよう。
2.具体的内容は先送り
とはいえ、今回の「決着」内容は、「検討」や「先送り」が多く、残念ながら「三位一体改革」という言葉だけの空回りに終わった面があることは否定できない。
まず責任の不明確性、自主的行政運営の阻害、効率性の阻害、国のコントロールにつながるなどの観点から改革が求められていた国庫補助負担金については、どの補助金を、どれだけ減らすのかという補助金の廃止・縮減のしぼりこみはなされず、具体的内容は先送りとなった。また一つ一つの補助金の必要性を吟味して、はじき出したわけではなく、なぜ四兆円なのかという根拠も不明である。なによりも、地方への補助金総額は約二〇兆円あり、地方における歳出規模と税収との乖離の縮小には不十分といわざるをえない。
自治体の求めていた税源移譲については、具体的な内容や時期は明らかにされていない。「基幹税の充実」を基本とするとしても、所得税や消費税などの税目は明記されなかった。補助金削減の代わりに移譲される税源額が削減額の八割とされているが、何の根拠もない。義務的補助事業の税源移譲割合では、「全額」に重点を置く総務省と、「徹底的な効率化を図った上で」を前提条件とみる財務省で早くも解釈の違いが浮上している。しかも補助金の削減が進まなければ、税源移譲も先送りされる可能性も強い。
地方交付税については、地方債の元利償還に対する交付税措置や事業費補正方式が公共事業の誘導の手段となり、交付税の事実上の目的財源化や将来の地方財源の先食い・硬直化につながっているという面は確かに問題である。地方交付税の算定方法の簡素化や地方の意見の反映も必要である。これら交付税の見直しは、まだ十分とはいえない。
3.分権推進改革か、財政再建のための改革か
「三位一体改革」の内容は、個別には様々な問題点を有しており、ややもすれば分権・自治の立場からの抜本的な改革というよりも、国の財政再建のための地方財源削減の性格が色濃いものとなっている。それは、地域福祉の基盤充実のための自治体の役割が高まっているにもかかわらず、行財政改革や市町村合併の強力な推進が強調されるとともに、「望ましい姿」として「社会保障関係費の抑制に努める」ことが特記されているところからも明らかである。
補助金削減先行では単なるつけ回しにすぎないし、削減される補助金の内容によっては、自治体現場での様々な問題や混乱の発生が予想される。補助金の廃止・縮減の具体案を作成するに際しては、事業官庁や族議員の力関係に任せるのではなく、自治体の意見の反映が必要だ。
一方、交付税の財源保障機能の縮小が盛り込まれているが、地域経済の不均等発展、地方税源の偏在、税源配分と実質的支出の乖離、ナショナルミニマムの保障などの観点から、税源移譲が行われても財政調整制度は必要となる。地方交付税は国が代わって徴収する「地方の固有の共有財源」であり、地方にとっては歳入である。一般財源の多くは義務的経費などですぐに削るのは容易ではなく、残る投資的経費も継続事業や補修が中心でここから削るのはとても困難である。国の関与・縛りをそのままにして一方的に財源保障機能を縮小するということになれば、住民に密着した身近な生活サービスの切り捨てや、地域間格差の拡大につながり、財政基盤の弱い自治体に大きな打撃を与えかねない。
このような地方財政の抑制と国の責任・負担の自治体への転嫁、住民サービスの切り捨てにつながりかねない側面について、不断の監視と必要な手当が不可欠だ。
4.「未完の改革」の「完成」に向けて
本来の「三位一体改革」の目標は、税財源の自治体への移譲つまり分権型社会の創造である。税財政を通じた中央政府のコントロールが温存される限り、分権・自治は「未完」のままである。地方分権一括法の国会審議に際し、地方税財源の充実確保策の検討を求める修正及び附帯決議が行われており、立法府の意思は明らかである。実は地方分権推進委員会も二〇〇一年六月に、「税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠の手段」であるとして、地方税財源の充実確保方策について、国から地方への税源移譲によって地方税源の充実を図っていくという基本視点を明確にした「最終報告」を小泉総理に提出しているのである。
ところが、この地方分権推進委員会を引き継いだ地方分権改革推進会議は、地方税財源の充実確保方策や住民自治の拡充などの「未完」の地方分権を完成させることが期待されていながら、昨年一〇月には義務教育国庫負担制度の見直しについて、財源措置不明のままの自治体へのつけ回しさえ容認するような内容の意見をまとめた。今回も、分権の立場の委員の中の反対を押し切り、強引に「三位一体の改革についての意見」を取りまとめたという経緯がある。「三位一体改革」が、国の財政再建優先の方向でいくならば、国の責任を自治体に転嫁し、補助金は削減するが口出しもする、交付税は削減する、税源は移さない、というものになるおそれもあながちないとはいえない。
今後「三位一体改革」が、その方法や内容、方向性において、地方税財政基盤の確立、分権型社会の創造に資するものになるのかどうかが問われる。自治労などからは具体的な提案も出されており、現場からの幅広い運動や、自治体における率直・真摯な議論も必要になってくる。「三位一体改革」が、分権・自治の観点を重視し、税源移譲に踏み込んだ抜本的な地方税財政改革として、「未完の改革」の「完成」に向けた歩みを着実に進めるものとなるよう、社民党は、その充実・豊富化に住民とともに全力をあげていく決意である。