よくわかる!!あっせん利得禁止法案(改訂版)
1.職務権限の有無が問題となる刑法の収賄罪
ロッキード事件で田中首相が逮捕され二〇数年が立った今日も、最近の新井将敬問題、そして中尾元建設大臣の逮捕に至るまで、政治家が関与する腐敗事件は、残念ながらあとをたたない。
従来、刑法の各種の収賄罪の適用に当たっては、常に政治家の職務権限の有無が問題になってきた。政治家がその地位を利用して巨額の政治献金を得ても、職務権限が明確でないと贈収賄の証明が難しい。したがって、事件で対象となった政治家は、みな口を同じく、「もらったカネは政治献金であり、ワイロとは違う」と抗弁してきており、政治家までなかなか罰することができないのが実情である。
2.請託関係の立証が難しいあっせん収賄罪
職務権限の枠を超えるため、1958年に刑法に「あっせん収賄罪」が規定された。これは「お願いする(請託)、お願いされる(受託)」ことによって金品などの利益の約束をし、公務員に対し、不正な行為をさせること(または相当の行為をさせないこと)を罰するものである。しかし、「抜かずの宝刀」といわれるように、これまで国会議員に適用されたケースはほとんどない(最近では中村喜四郎元建設大臣事件)。
あっせん収賄罪は職務権限は問わないが、収賄罪が成立するには、例えば業者から「公務員に不正な行為をするよう働きかけてほしい」と頼まれたこと請託を立証しなければならない。つまり、「不正行為」と「請託」の両方の要件がそろわないといけない。しかも、一般に「請託」は密室で行われるため、「請託」と「不正行為」の働きかけに関する立証は難しくなり、立件が困難なのである<資料1>。
3.自社さでの「あっせん利得」禁止の提案
現行の収賄罪やあっせん収賄罪の問題点にメスを入れ、職務権限が無くても、また公務員の不正行為が伴わなくても、罪に問うことが出来るようにしなければならない。そこで、政治家が役所に口を利き、その見返りに利益を受けること自体を禁止するようにしなければならないというのが、あっせん利得罪の元々の狙いである。
社民党は、1997年9月の佐藤孝行総務庁長官問題(ロッキード事件で受託収賄罪で有罪となった佐藤議員の入閣)を受け、閣外協力の条件として、あっせん利得行為の禁止を提起した。社民党の提起した「あっせん利得罪」とは、政治家が政治的地位を利用して、特定の個人や団体からの陳情などを公務員に働きかけて実現した結果、その見返りに金品等を受け取ることを新たに犯罪として罰しようというものである<資料2>。つまり、あっせん収賄罪とは違い、あっせん利得罪の場合は、公務員に対し不正な行為をするように(あるいは正当な行為をさせないように)働きかけなくても、口利きをした見返りとして報酬を得ること自体を罪に問えるようにしようとするものである。これは、選挙による信任を受けた政治家は、一般の人より高い倫理感と全体の奉仕者としての責任を持っており、特定の個人・団体の利益を図って報酬を得るのはおかしいという考え方に立っている。
4.自民党案の問題点
しかし、与党政治改革協議会において、自民党は、「支持者に頼まれて役所に口を利くことは政治家本来の仕事である」、「日常の政治活動ができなくなる」などとして、協議をすること自体に消極的であった。これに対し、社民党は、今回の提案は、あっせん行為自体の禁止ではなくその見返りに利益を得ることを禁止するものであるということで説得し、ようやく自民党が本格的に検討し、考え方をまとめたのは、与党協議の期限である九八年三月末を目前とする最終盤に入ってからであった<資料3>。
自民党は、社民党の提案では、政治献金があっせんの見返りに当たるかどうかは灰色であることから、正規の政治献金でさえも検察の恣意的判断によってあっせん利得として認定されてしまうのではないかとして、政治資金規正法に従った寄附等の受領をすべて適法にすることにしてしまっている。これが当時の自民党案の最大の問題点である。たしかに正当な政治活動を妨げるものであってはならないことは当然のことであるが、自民党案の問題は、たとえば、口を利いてくれたらいくら払うというあっせんの契約があるなど、あっせんをした報酬として金銭をもらったことが誰の目にも明らかなケースでも、政治資金規正法の手続をとれば罰することはできないところにあった。ここに至って、あっせんした結果利益を得ることにメスを入れるという本来の腐敗防止法の趣旨が、自民党案では大型の裏献金だけを禁止するものに矮小化され、逆に「あっせん利得保護法」、「資金浄化法」ともいうべきものとなってしまった。
5.一切の譲歩に応じない自民党
社民党は、そもそも手続の適法性と得た利益の合法性は別問題であるとして、この適用除外規定自体を削除することを求めていた。しかもその上で、なんとか与党案をまとめるために、解釈規定や運用上の注意規定を入れるという修正案や、政治資金規正法に従った寄附等の受領についてかりに認めざるを得ない場合にしても、一〇〇%適法化するのでなく、明白な証拠がある場合はあっせん利得罪に問うことができるようにするための修正案も、協議の過程で提示した。また新党さきがけも「適正な寄附等」とすべきという調整案を提起していた。しかし、自民党は、党内を説得するためにはこの問題は譲れないとして、一切の譲歩に応じず、与党協議も一方的に打ち切ってしまった。こうしてあっせん利得行為を処罰するための政治腐敗防止法案については、最終的に自民党が本来の趣旨を矮小化したことによって、与党協議は平行線のまま暗礁に乗り上げ、合意を得ることができなかった。これが社民党の閣外協力解消の原因のひとつとなった。
6.社民党独自案の提案
公務員倫理法を制定し、公務員に対し厳しい規制を設けることにした一方で、いま政治家自らが襟をただすことができなければ、政治不信の解消どころか、さらなる国民の政治に対する信頼の喪失となるのは必定である。
そこで、社民党は、従来の案を与党協議における議論も踏まえ修正して法案を作成し、1998年6月9日、単独で「国会議員等によるあっせん利得行為等の処罰に関する法律案」を参議院に提出した<資料4>。この法律案に基づくあっせん利得罪の規定によって、@刑法の隙間を埋めること、A政・官・財の癒着構造にメスを入れること、B政治家とカネの不透明な関係を断つこと等、口利きの見返りに金や票を得るという利益誘導政治の風土そのものを変えていくきっかけとなることが期待されるものであった(98年の参議院選挙に伴い廃案)。
社民党案のポイントは以下の通りである。
@ 主体を国会議員に限定するのではなく、地方議員及び首長も対象 とし、地方政界にもメスを入れている。
A 国会議員が国の公務員だけでなく、地方自治体の職員や特殊法人 の職員に影響力を利用して働きかけ見返りに報酬を受ける行為も含 んでいる。
B 処罰の対象となる事務については、構成要件を明確にしており、 ほぼ与党合意の通りであるが、「処分又は契約に関する事務」と整 理している。
C あっせんの見返りの対象品目は、「金銭又は有価証券等(政令で 定めるもの)」に限るのではなく、「財産上の利益」としている。 そのため、書画骨董や借金の免除、低利・無利子融資、不動産・動 産の無償貸与、接待・供応といったものも含まれることになる。
D 「第三者利得」を規定したことによって、本人でなく、後援会や 家族、秘書、他の政治家等があっせんの報酬を得ることも禁止され ている。
E 政治家があっせんの見返りとして報酬を「収受」したときのみで はなく、あっせんの見返りを「要求」したり、「約束」したりする こと自体も対象としている。
F 犯人や情を知った第三者が収受した財産上の利益について、「没 収」・「追徴」することにしている。
G 罰則についても、政治家は「5年以下の懲役」、利益を供与(申 込み、約束をした場合を含む)する側は「3年以下の懲役又は25 0万円以下の罰金」と厳しくしている。
H 適用除外規定、運用注意規定、解釈規定は設けていない。
7.参議院「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」
その後、新しい参議院で、野党共闘の課題としてあっせん利得行為の禁止問題が取り上げられ、民主党、社民党、公明党、参議院の会の4会派の協議が続けられた。そして、98年5月に衆議院に提出された民主党の「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」をベースとして各会派の意見を入れて4党共同の法案を作成、99年の第145通常国会に共同提案した<資料5>。社民党案との大きな違いは、あっせん利得行為の禁止という考え方は変わらないが、法形式が、あっせん利得罪の創設という類型ではなく、刑法の収賄罪の考え方の延長線上に特別立法で地位利用収賄罪を創設することとしているところにある。
自民党の反対や公明党の与党入りなどもあって、実質審議に入らないまま継続が続いたが、第147国会になって参議院議院運営委員会で趣旨説明及び参考人質疑が行われた。その後、衆議院解散に伴い、廃案となった。
8.自由党「国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律案」
一方、自由党は、国会議員入札干渉処罰法案を野党時代に提案し、98年6月に国会に提出した<資料6>。これは、国会議員、地方議員、首長、秘書など(公職の候補者も含む)が、正当な理由がないのに公の入札等に干渉することを禁止(2年以下の懲役)とするものである。
社公民参の4党案が、あっせんの見返りに利得(有形無形かは関係ない)を得ることに着目して処罰するのに対し、自由党案は、口利き・働きかけに着目して禁止しようとしている。つまり、4党案は政治家の口利きや干渉、働きかけ自体は容認しうるが、見返りとして利益を得ることを禁止するという観点からの立法であるのに対し、自由党案は、利益を得たかどうかには関係なく、政治家等が公共事業などの入札に介入すること自体を非とするものとなっている。したがって、4党案はワイロの有無を構成要件に含むのに対し、自由党案は構成要件には含まない(なお、利益を受けた場合は重罰としている)。
9.中尾元建設大臣の逮捕
公共事業のあり方が大きな争点となった今回の総選挙の直後、6月30日に中尾元建設大臣が、建設省発注工事の指名競争入札業者の選定に絡む受託収賄の容疑で逮捕され、公共事業と政治家との関係、政治腐敗の防止が改めてクローズアップされた。今回の中尾元大臣の逮捕は、自民党族議員とその頂点の大臣が公共事業を媒介にカネと票を集めるという、政官業の癒着構造がいまだ不変のものであることを示している。また、自民党の進めてきた「景気対策としての公共事業」が、決して国民や地域のための事業ではなく、利権に群がる自民党議員と建設業者のための事業であることが浮き彫りにされた。「官僚主導から政治主導へ」の名の下に導入されることになっている「副大臣・大臣政務官」が、族議員の頂点として利権を漁るのではないかというわが党の危惧もますます確固としたものとなっている。
今回の中尾元建設大臣の逮捕を機に、これまでベールに包まれてきた、公共事業をめぐる政治家と官僚、ゼネコン、ヤミ勢力のつながりを解明し、公共事業や許認可をめぐって行政を動かし利権をあさる、利益誘導政治にとどめをささなくてはならない。
10.衆議院「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」
中尾逮捕を受け、政治家のあっせん利得行為の禁止法案の実現が必須の要件だということが改めて明らかとなり、野党共同で森自公保政権を追い込んでいくため、7月5日、参議院の4党案をベースに、民主党、共産党、自由党、社民党の野党4党は衆議院に改めて「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」を提出した(基本的に参議院に提出したものと内容は同じ)<資料7、8、9>。
「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」のあっせん収賄罪との違いのポイントは以下の通りである。
@ 現行のあっせん収賄罪が「抜かずの宝刀」になっているのに対し、 「請託を受け」を削除し国会議員の「地位を利用して」とすること で、立証の困難性を排除した。
A 「請託」と並んで立証を困難にしていた「職務上の不正な行為」 を、「特定の者に不当に利益を得させる目的で」という規定を入れ た上で、「その職務に関する行為」とした。この場合、事務の内容、 国・地方の別は問わない。
B 1958年の衆参の法務委員会の附帯決議で「十分検討すべきで ある」とされていた第三者供賄を追加し、自らが関係する政治団体 などがあっせんによって報酬を得た場合も処罰できることにして抜 け道をふさいでいる。
なお、野党4党案にもいくつかの課題がある。まず、「不当に利益を」という要件が抽象的であり、何を持って不当と認定するのかはっきりしないこともあり、適用対象を拡げるためには、「不当に利益を」という要件を外すことも考えられるべきである。あわせて野党4党案は、まず率先して国会議員が行うべきであるということで対象を国会議員に限っているが、口利き政治は地方議員や首長等も同様であり、将来的に地方議員、首長、秘書へ対象を拡大すべきである。
11.与党案の特徴
しかし、あっせん利得罪法案の早期成立要求に対して、与党は、「与党内の調整が間に合わない」、「倫理の問題を法で規制するのはいかがなものか」、「規制内容があいまいで検察にフリーハンドを与える」などの理由で、先送り、逃げの姿勢に終始した。
その後、国民的批判の中、与党においても実務者の協議が行われ、第150臨時国会において、ようやく与党の「公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律案」が提出されるに至っている<資料10>。
与党案は、あっせん利得罪の適用対象を国会議員だけでなく公設秘書、自治体の首長・議員にまで拡大するとともに、あっせん行為の対象となる公務員に、国・自治体が2分の1以上出資する公団や公社などの特殊法人や第3セクターの職員も含むこととしており、野党4党案より一見「前進」したかのような印象を与えるかのようなものとなっています。。しかし、これらは、決して「前進」といえるものではなく、当然の内容にすぎない。むしろ今日まであっせん利得罪の法制化を先延ばししてきた責任を与党は痛感すべきである。しかも与党案はしかも与党案は、構成要件に請託要件を入れたり、権限に基づくものに限定したりするなど、あっせん利得罪が問えるまでに高いハードルが設けられている。また、与党案は、第三者供賄や政治資金規正法上適法な献金であっても対象とするといいながら、法文には全くでてこないのであり、様々なグレーゾーンや抜け道が考えられるものとなっている<資料11>。
しかも、自民党は9月5日の役員連絡会で、「あっせん利得罪法案」(仮称)に対する党内の不満を和らげようとするため、政治資金の寄付者の公開基準を現行の「年間五万円超」から「二四万円超」に引き上げる方向で検討に入ることを決めたといわれている。しかしこのことは、献金の公開基準を引き下げることによって、政治資金の透明度を高め、国民監視によるコントロールを強化しようという改革の流れに真っ向から反するものであり、断じて認められない。
12.野党案再提出へ
その後、野党四党は実務者協議、幹事長会談を行い、与野党の議論を国民のみなさんの前にわかりやすく展開していくため、あえて与党案との違いを鮮明にしながら、私設秘書を含む、請託要件をはずす、第3者供賄処罰を明記する、対象となる行為を職務全般に拡大する、未遂罪を処罰する、報酬の範囲を拡大するなど、与党案をより強化・充実させた内容の対案を提案することにした<資料12>。
今後、野党共闘を強化することによって、より厳格な内容の法案を対置し、国民の前に与野党の相違点を明確にしていく。社会民主党は、実効性のあるあっせん利得罪法案の早期成立を期するため、全力をあげて取り組んでいく。
また、抜け道を防止するためにも、政治資金を装った賄賂が政治家に行かないよう、政党に対する企業・団体献金を全面的に禁止することや、銀行口座を通すなど政治資金の収支を明確にすることなどもあわせて取り組んでいく必要がある。
さて、野党案では、対価となる賄賂をもらっていない場合は対象外となる。しかし、民意を行政に反映させるのは正当な政治活動であるが、特定の個人や団体の利益のために、政治家が地位を利用して口利きする行為は、本来のあるべき政治活動とはいえまい。「議員は職務に関して廉潔を保持し、いやしくも公正を疑わせるような行為をしてはならない」(国会法)、「全国民の代表として、全体の利益の実現をめざして行動することを本旨とし、特定の利益の実現を求めて公共の利益をそこなうことがないよう努めなければならない」(政治倫理綱領)のであって、利益誘導の古い政治からの脱却のためにも、特定の利益代表から国民代表としての原点に立ち戻るためにも、将来的には国会議員の口利き・あっせん自体の規制も目指していくことが求められている。
<資料2>
なぜあっせん利得行為の禁止なのか
1.刑法の隙間を埋める
現行のあっせん収賄罪が「抜かずの宝刀」になっているのに対し、「請託を受け」を削除し国会議員の「地位を利用して」とすることで、立証の困難性を排除した。あわせて、「請託」と並んで立証を困難にしていた「職務上の不正な行為」を、「特定の者に不当に利益を得させる目的で」という規定を入れた上で、「その職務に関する行為」とした。このことによって、職務権限がなければ賄賂も無罪放免という実態にある法の不備が是正される。
2.政・官・財の癒着構造にメスを入れる
中尾元建設大臣の逮捕で、族議員とその頂点の大臣が公共事業を媒介にカネと票を集めるという、政官業の癒着構造がいまだ不変のものであること、また、自民党の進めてきた「景気対策としての公共事業」が、決して国民や地域のための事業ではなく、利権に群がる自民党議員と建設業者のための事業であることが浮き彫りにされた。あっせん利得行為の禁止は、この政官業(財)の鉄のトライアングル、「公共事業複合体」にメスを入れる切り札となる。
3.古い政治風土を変え本来の議員のあり方を目指す
政治家が口利きし、その見返りにカネと票の取りまとめを得るというところに、行政の公正な執行をゆがめたり、政治家とカネの不透明な関係が存在したりして、政治家や政治への不信を募らせている大きな要因となっている。政界が自ら襟を正すのは当然であり、政治家のあるべき姿を念頭において十分な論議をすべきである。選挙による信任を受けた政治家は、一般の人より高い倫理感と全体の奉仕者としての責任を持っており、特定の個人・団体の利益を図って報酬を得るのはおかしい。高い廉潔性の保持の義務がある。あっせん利得行為の禁止で、口利きの見返りに金や票を得るという利益誘導政治の風土そのものを変え、全体の奉仕者としての本来の議員のあり方を追求していくきっかけとなる。
4.政治不信の解消、政治倫理の確立を目指す
公務員倫理法を制定し、公務員に対し厳しい規制を設けることにした一方で、いま政治家自らが襟をただすことができなければ、政治不信の解消どころか、国民の政治に対する信頼の喪失を深めるものとなる。また、「官僚主導から政治主導へ」の名の下に導入されることになっている「副大臣・大臣政務官」が、族議員の頂点として利権を漁るのではないかという危惧が大きい。あっせん利得行為の禁止は、政治腐敗防止の有力な一打として効果が期待される。
<資料1>
収賄罪、あっせん収賄罪との違い
刑法・収賄罪
○議員や公務員が職務に関して賄賂を受け取ることを禁止。
→職務権限の有無の立証
刑法・あっせん収賄罪
○請託を受けて他の公務員に職務上の不正行為を働きかけて賄賂を受 けることを禁止。
→請託と不正の立証
あっせん利得罪(地位利用収賄罪)
○特定の業者などに利益を与えるために議員の地位を利用して公務員 に斡旋行為を働き、その見返りに報酬を受けること(要求及び約束を 含む)を禁止。
今後の課題
○適用対象を拡げるために、「不当な利益」要件を外すこと。
○地方議員、首長、秘書への適用拡大。
○政治資金を装った賄賂が政治家に行かないよう、政党に対する企業
・団体献金を全面的に禁止すること。
○銀行口座を通すなど政治資金の収支を明確にすること。
<資料8>
「国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案」の説明
@ 「特定の者に不当に利益を得させる目的」
「特定の者」には、自然人のほか、法人、団体が含まれる。「不当に利益を得させる」とは、地位利用あっせん行為により、他の公務員に職務上の不当な行為(職務遂行上の運用ないし裁量の基準に反する行為等道理に反する行為)をさせ、これによって、特定の者に利益を得させることをいう。
A 「地位利用」
国会議員としての地位があるがために、特にあっせん行為を効果的に行いえるような影響力または便宜を利用することをいう。
B 「あっせんをすること」
職務権限を有する公務員に対し、ある行為をするよう働きかけ、便宜を図るよう仲介の労をとることをいう。例えば、公共事業の発注や補助金の交付、交通違反のもみ消し、各種の許認可、人事などへの働きかけがある。
C 「賄賂」
公務員に対しあっせんすること又はしたことに対する不法な報酬としての利益のことである。金銭だけでなく、物品、接待、情交等も含まれる。政治献金の形態をとって行われた財産的利益の提供が「賄賂」に該当するか否かは、「不法な報酬」としての性格が認められるかどうかに関わる事実認定の問題である。
D 「収受」
賄賂を受け取ること。賄賂が有形の場合は、これを事実上支配するに至ったときに、無形の利益の場合はこれを現実に享受したときに、「収受」となる。
E 「要求」・「約束」
「要求」とは、賄賂の交付を求める意思表示をすることをいい、「約束」とは、贈収賄当事者間で賄賂の授受について合意することをいう。
F 「第三者に供与させること」
第三者(地位利用あっせん者=国会議員以外の自然人、法人、団体)に賄賂を受け取らせることをいう。国会議員が所属の政党、政治団体、あるいは秘書に賄賂を供与させた場合も本罪が成立する。第三者が、その受け取りの際、それが賄賂であることを知らなかったとしても、本罪の成否には影響しない。
G 附則2項「公職選挙法の一部改正」
本法第1条(収賄)違反で有罪判決を受けた者に対する公民権停止及び停止期間について、同法11条に規定されている、刑法の収賄罪、あっせん収賄罪で有罪判決を受けた者と同様の措置をとるものである。
H 附則3項「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律 の一部改正」
同法18条は、禁錮以上の刑を受けた者に加え、義務教育諸学校において使用する教科用図書の採択に関し刑法の贈賄罪で罰金刑を受けた者について、3年間、教科用図書の発行者としての指定を受けることができない旨規定している。本法第3条(贈賄)違反で有罪判決を受けた者についても、同様の措置をとるものである。
I 附則4項「民事執行法の一部改正」
同法65条は、民事執行の手続における売却に関し、刑法の贈収賄罪で処罰された者に対し、2年間、民事執行での売却の場に立ち入ることなどを禁じているが、これと同様の措置を、本法違反で処罰されたものにも適用するものである。
<資料5>
国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律案(参議院野党4会派)
(国会議員地位利用収賄)
第一条 国会議員が、特定の者に不当に利益を得させる目的でその地位を利用して他の公務員にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをすること又はしたことにつき、その報酬として、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときは、三年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第二条 前条の場合において、犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
(贈賄)
第三条 第一条の賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、一年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(国外犯)
第四条 第一条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第四条の例に従う。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行す る。
(公職選挙法の一部改正)
2 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)の一部を次のように改正す る。
第十一条第一項第四号中「))又は」を「))若しくは」に改め、「第百九十七条の四((あつせん収賄))の罪」の下に「又は国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律(平成十一年法律第 号)第一条((国会議員地位利用収賄))の罪」を加える。
(義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律の一部改正)
3 義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(昭和三十八年法律第百八十二号)の一部を次のように改正する。
第十八条第一項第一号ハ中「第二百三十三条の罪」の下に「若し くは国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律(平成十一年法 律第 号)第三条の罪」を加える。
(民事執行法の一部改正)
4 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正す る。
第六十五条第三号中「又は」を「若しくは」に改め、「第百九十 八条」の下に「又は国会議員の地位利用収賄等の処罰に関する法律 (平成十一年法律第 号)第一条若しくは第三条」を加える。
<資料6>
国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律案(自由党)
(定義)
第一条 この法律において「国会議員等」とは、次の各号に掲げる者を いう。
一 衆議院議員、参議院議員、都道府県の議会の議員若しくは長又は 市町村(特別区及び全部事務組合を含む。)の議会の議員若しくは 長(役場事務組合の長を含む。)
二 公選による公職(前号に掲げる者に係るものに限る。)の候補者 又は当該候補者になろうとする者
三 前二号に掲げる者に使用され、その政治活動を補佐する者
(入札干渉)
第二条 国会議員等が、正当な理由がないのに、次の各号に掲げる入札 に干渉したときは、二年以下の懲役に処する。
一 公の入札
二 国又は地方公共団体からの出資が資本金の二分の一を超える法人 が実施する入札
(利益収受)
第三条 国会議員等が、前条の罪を犯すこと又は犯したことの報酬とし て、財産上の利益を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、 又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは 約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
(没収及び追徴)
第四条 前条の場合において、犯人又は情を知った第三者が収受した財 産上の利益は、没収する。その全部又は一部を没収することがで きないときは、その価額を追徴する。
(利益供与)
第五条 第三条の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者 は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。
(国外犯)
第六条 第三条の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例 に従う。
(選挙権及び被選挙権の停止)
第七条 第二条及び第三条の罪を犯し刑に処せられた者は、その裁判が 確定した日から刑の執行を終わるまでの間若しくは刑の時効によ る場合を除くほか刑の執行の免除を受けるまでの間及びその後五 年間又はその裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなく なるまでの間、公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)に規定す る選挙権及び被選挙権を有しない。
2 裁判所は、情状により、刑の言渡しと同時に、前項に規定する 者に対し、同項の五年間又は刑の執行猶予の言渡しを受けた場合 にあってはその執行猶予中の期間のうち選挙権及び被選挙権を有 しない旨の規定を適用すべき期間を短縮する旨を宣告することが できる。
3 公職選挙法第十一条第三項の規定は、前二項の規定により選挙権及び被選挙権を有しなくなるべき事由が生じ、又はその事由がなくなったときについて準用する。この場合において、同条第三項中「第一項又は第二百五十二条」とあるのは、「国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条」と読み替えるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行す る。
(地方自治法の一部改正)
2 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改 正する。
第百二十七条第一項中「同法」を削り、「又は政治資金規正法」を「、政治資金規正法」に改め、「第二十八条」の下に「又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律(平成十年法律第 号)第七条」を加える。
第百四十三条第一項中「同法」を削り、「又は政治資金規正法第 二十八条」を「、政治資金規正法第二十八条又は国会議員等の入札 干渉等の処罰等に関する法律第七条」に改める。
第百六十四条第一項中「の規定に該当する者」を「又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条の規定に該当するため選挙権及び被選挙権を有しない者」に改め、同条第二項中「の規定に該当するに至つた」を「又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条の規定に該当するため選挙権及び被選挙権を有しない者となつた」に改める。
第百八十四条第一項中「同法」を削り、「又は政治資金規正法第 二十八条」を「、政治資金規正法第二十八条又は国会議員等の入札 干渉等の処罰等に関する法律第七条」に改める。
(漁業法の一部改正)
3 漁業法(昭和二十四年法律第二百六十七号)の一部を次のように改 正する。
第八十七条第一項中「左の」を「次の」に改め、同項に次の一号 を加える。
三 国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律(平成十 年法律第 号)第七条(選挙権及び被選挙権の停止) の規定により公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権を 有しない者
第九十四条第一項の表第八十六条の八第一項の項及び第百三十七 条の三の項中「又は政治資金規正法第二十八条」を「、政治資金規 正法第二十八条又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律 第七条」に改める。
第九十七条第一項中「第二号」の下に「若しくは第三号」を加え、 「除く外」を「除くほか」に改める。
(公職選挙法の一部改正)
4 公職選挙法の一部を次のように改正する。
第二十一条第一項中「又は政治資金規正法」を「、政治資金規正 法」に改め、「((政治資金規正法違反による処刑者に対する選挙 権及び被選挙権の停止))」の下に「又は国会議員等の入札干渉等 の処罰等に関する法律(平成十年法律第 号)第七条((国会 議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律違反による処刑者に対す る選挙権及び被選挙権の停止))」を加える。
第二十七条第一項中「若しくは政治資金規正法」を「、政治資金 規正法」に改め、「((政治資金規正法違反による処刑者に対する 選挙権及び被選挙権の停止))」の下に「若しくは国会議員等の入 札干渉等の処罰等に関する法律第七条((国会議員等の入札干渉等 の処罰等に関する法律違反による処刑者に対する選挙権及び被選挙 権の停止))」を加える。
第八十六条の八第一項及び第百三十七条の三中「又は政治資金規 正法」を「、政治資金規正法」に改め、「((政治資金規正法違反 による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止))」の下に「又 は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条((国会議 員等の入札干渉等の処罰等に関する法律違反による処刑者に対する 選挙権及び被選挙権の停止))」を加える。
(農業委員会等に関する法律の一部改正)
5 農業委員会等に関する法律(昭和二十六年法律第八十八号)の一部 を次のように改正する。
第十一条の見出しを「(公職選挙法等の準用)」に改め、同条の 表以外の部分中「附則第四項及び第五項」の下に「並びに国会議員 等の入札干渉等の処罰等に関する法律(平成十年法律第 号) 第七条第一項及び第二項(選挙権及び被選挙権の停止)」を加え、 「同法の」を「公職選挙法の」に改め、同条の表第八十六条の八第 一項の項及び第百三十七条の三の項中「又は政治資金規正法」を「、 政治資金規正法」に改め、「((政治資金規正法違反による処刑者 に対する選挙権及び被選挙権の停止))」の下に「又は国会議員等 の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条((国会議員等の入札干 渉等の処罰等に関する法律違反による処刑者に対する選挙権及び被 選挙権の停止))」を加える。
第十三条中「同法第二百五十二条又は政治資金規正法」を「第二 百五十二条、政治資金規正法」に改め、「第二十八条」の下に「又 は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律(平成十年法律第 号)第七条」を加え、「又は第二百五十二条」を「若しく は第二百五十二条又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法 律第七条」に改める。
(民事執行法の一部改正)
6 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の一部を次のように改正す る。
第六十五条第三号中「又は第百九十八条」を「若しくは第百九十 八条又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律(平成十年 法律第 号)第二条、第三条若しくは第五条」に改める。
(公職選挙法の一部を改正する法律の一部改正)
7 公職選挙法の一部を改正する法律(平成十年法律第四十七号)の一 部を次のように改正する。
第四章の次に一章を加える改正規定のうち第三十条の四中「又は 政治資金規正法」を「、政治資金規正法」に改め、「((政治資金 規正法違反による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止))」 の下に「又は国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律第七条 ((国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する法律違反による処刑 者に対する選挙権及び被選挙権の停止))」を加える。
第四章の次に一章を加える改正規定のうち第三十条の十第一項中 「若しくは政治資金規正法」を「、政治資金規正法」に改め、 「((政治資金規正法違反による処刑者に対する選挙権及び被選挙 権の停止))」の下に「若しくは国会議員等の入札干渉等の処罰等 に関する法律第七条((国会議員等の入札干渉等の処罰等に関する 法律違反による処刑者に対する選挙権及び被選挙権の停止))」を 加える。