写真右:1993年2月撮影
富永証言:けものの目つき、いわゆる殺気を帯びてるわけですね。虎や豹の三角の眼といいますかね。そりゃもう当然のことですけれども、彼らはもう何回となく、砲煙弾雨の中をくぐっている、歴戦の勇士であったわけです。で、わたくしだけまだ戦闘の体験がない。
要するに、こういう場合にはこうせにゃいかんと、その地形に応じてですね、天候もありますけれども、具体的な指導をやったわけです。で、それを毎日やっているうちにですね、だんだん、これだったならいけると、自信といいますか、兵隊さんの眼の前で喪失した自信がだんだん回復してきた、ま、小隊長をやれそうだというわけですね。それで毎日帰って、中隊で、就寝前に点呼があるわけです。就寝点呼といいますね。人員がみんなそろっているかどうかですね。確認するわけです。で、点呼の時はまた、その兵隊さんと向かい合うわけですよね。で、若干の自信は回復したと思ってるのに、夜行って面と向かうとですね、やっぱり引け目を感ずるわけですよ。
富永証言:その日、中隊に帰りまして、また点呼をやったわけです。で、点呼のとき兵隊さんとまた向かい合ったとこがですね、全然今度は引け目を感じない。つまり人間が変わったわけですね。結局人間が変わったというんじゃなく、変わったわけですけど、人間でなくなったというですかね、一線を踏み越しちゃった、平気で人を殺すわけですね。そういった情況に立ちいった。そして今まで目つきが悪いと主っとったその兵隊さんの目つきが悪く感じなくなったわけです。あたりまえに。ということはおそらくわたしは、捕虜の首を斬った瞬間に、目つきが変わったと思うんですよね。で、わたくし自身がそういった、こんどは殺気を帯びた、殺人鬼の眼になっとったと思うんですけど。
(つづく)