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緑のサヘルとは
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 サハラ砂漠を越えた南の地域。ここは、かつて久しぶりに緑を目にした
 アラビアの旅人たちによって、「岸辺(サヘル)」と呼ばれました。
 今、その「岸辺」では砂漠化が進み、人々の生活の糧が奪われています。

 「緑のサヘル」は、このサヘルの土地に緑の「岸辺」を戻すため、
 1991年の設立より一貫して環境保全活動を行っています。
 ブルキナファソで最も長い活動歴を持つ日本のNGOのひとつであり、
 治安の不安定なチャドでは唯一活動する日本のNGOとなりました。
 現地の人々と共に取り組む現場密着型の活動が高く評価され、
 2001年には外務大臣表彰を受けています。

 2004年からはUNHCRとのパートナー事業として、チャドにおける
 スーダン難民支援活動にも着手し、活動の場はますます広がっています。


 ●緑のサヘル設立趣旨 ―サヘルの砂漠化において―

 「飢餓ベルト」―それが今のサヘル地帯の呼称のひとつです。
 砂漠化に瀕し、緑の恵みを失い、住民を慢性的な食料不足に追いやる
 荒涼とした「サヘル」地帯が、かつては確かに<緑の「岸辺」>と呼ばれていた。
 これは、にわかには信じがたいのではないでしょうか。

 なぜ、緑の「岸辺」は砂漠となってしまったのか。

 砂漠化は人口増加とそれに伴う家畜の過剰放牧、過剰耕作、薪炭用の木の伐採
 などにより、緑の生育を上回るスピードで人間や動物が緑を消費してしまうことが
 大きな原因といわれています。ただ、それだけではありません。
 地球的規模での気候変動や海水温度の変化など、その土地に住む人々の力が
 及び得ないところでの「自然的」な要因が大きく関係しているのです。

 ではいったい、この地球規模の「自然」の変化は、人類が抗えないものなのでしょうか?
 近年見られる熱帯雨林の喪失や大気汚染、異常気象による災害などは、
 「自然」ではあり得ないほどの速度で進行・増加しています。
 つまり、人間による<負>の加担が明らかです。

 これは私たち人間が、利便性を追求し、大量に消費する時代に入ったことで、
 何万年、何億年という年月をかけて蓄積された過去の遺産―自然との調和―を
 喰いつぶしている、と言えるのではないでしょうか。

 いま私たちは再生不能な破壊を起こし、その代償を未来に課しつつあります。
 私たちがあたりまえに思っていた緑の恵み―きれいな空気や、のどをうるおす飲み水―
 に守られた豊かな暮らしが、あたりまえでなくなっている場所が既にあるのです。
 かけがえのない地球の限りある資源を守り、豊かな恵みを次の世代に引き継ぐために、
 いまこそ私たちは行動しなければなりません。

 「緑のサヘル」はこのような考えに基づき、サヘル地域に住む人々と共に
 食糧自給の達成を目指し、人々の生活環境を改善するための活動を続けています。
 そしてより積極的に緑を殖やし、地球規模の環境の保全と
 自然生態系の復元に寄与したいと考えています。


 ●各活動の概略及び流れ


1.育苗:
2.植林:
3.植生保護区:
4.伝統農法・野菜栽培:
5.大豆栽培:
6.稲作:
7.アグロフォレストリー普及:
8.穀物備蓄クレジット:
9.作物種子貸出クレジット:
10.改良カマド普及:
11.穀物備蓄倉庫(グルニエ)普及:
12.井戸掘削:
13.養殖:
14.講習会:



各活動の概略及び流れ
1.育苗:
減少しつつある森林を積極的に回復する。   最初に事業を開始したバイリ地域では、住民に対して植林による環境回復意識を喚起するために育苗センターを建設し、集約的な苗木生産と配布を行なった。また、育苗センター内に植物園を設置し、樹木のデモンストレーションをすると同時に、ローカル樹種の生態調査と種子確保の便宜とした。   このような周囲に対する啓発活動の結果、住民組合も育苗に関心を持ち始めるようになり、住民自身による取り組みを活性化するために、育苗を希望する住民組合に対して小規模育苗所の設置を行なうことになった。自分達が育苗し、植栽した苗木が成長し、身近な緑の回復を目の当たりにするのに伴い、住民の環境に対する意識は向上し、「樹は天からの授かり物」という従来の考えから、「樹は自分達で育て植えるもの」という認識に変わってき、育苗に対して意欲的になった。現在では、育苗技術の定着が確認でき、普及員による定期巡回指導のみを実施し、植栽苗木後管理指導へと重点が移っている。
  トゥルバ地域では、砂漠化による森林衰退に直面している地域であることから、育苗に対する意欲は高く、小規模育苗所での苗木生産に積極的であった。96年には、トゥルバ村の33の住民組合が団結し、協同組合を組織し、村内に設置した中央育苗所で集約的な苗木生産を行なうようになった。また、トゥルバ東部地域ビルケレラ地区においても、98年に建設された共同井戸の敷地内に育苗所が設置され、苗木生産が行なわれている。現在では残存率の上昇を目指して、植栽後管理作業を中心とした取り組みが行なわれている。

2.植林:
   開墾や日用必需品(薪炭材、建築材)獲得を目的とした伐採により、局地的に発生する裸地が、環境不順等の自然要因により植生回復が抑制されるため、やがて不毛の土地となってしまう。このように破壊された植生を復元するには、単一樹種の植林ではなく複数の樹種、出来るだけ現地に存在する樹種、による複合林「雑木林」を形成して行く必要がある。このような視点から、当団体中央育苗センターでは在来樹種を中心に最大73樹種の苗木を生産、配布を行なった。また、栄養改善と新たな現金収入に結びつくような植林として果樹種の植栽や、アグロフォレストリー効果と共に商品価値のあるアラビアゴムの収穫を期待出来るアカシア・セネガルの耕地内植栽を奨励してきた。    当初住民は、家屋敷地内をはじめ市場などの村内公共地や道筋への木陰を得るための植栽を行なっていたが、環境への関心の高まりと認識の深化に伴い、自身を取り巻いている住環境の問題点に気が付くようになり、その改善と保全を図るという意図から植栽目的が実際的かつ明確になり、育苗活動を通じて得た個々の樹木の特性に関する知識を活用して、用途に応じた樹種の選択や植栽計画が積極的に立てられるようになった。このような意識の拡大は、植生保護区の積極的な維持管理活動にも反映されている。    当団体では単に木を増やすのではなく、現地に住んでいる住民の生活を第一とした植生・生態系の保全と回復を目指している。

3.植生保護区:
現存する森林を積極的に保護し、環境保全を生活により近いところで実践する。   植栽による植生回復は、必要かつ効果的な手段ではあるが、常に後手に始まる行為である。現在残されている森林を保護区として囲うことは、植栽以前の予防手段と見なすことが出来る。また生態系をそのまま保護することが出来るため、住民が習慣的に用いている民間医薬品や食材となる森林副産物の提供源として維持することが可能となるため包括的な環境保全方法であると言える。しかし、保護区設置と維持管理には様々な使用規制が伴うことから、住民組合の中で環境保全に対する意識が深化し、定着しなければ着手できない活動であった。バイリ地域においては99年から本格的に取り組みを開始した活動であり、現在では住民組合により積極的な設置と維持管理が行なわれている。保護区の設置と監視団による巡回を通して、自分達の生活環境は自分達で管理するという認識が強化され、住民にとって環境保全意識がより身近になったと言える。   トゥルバ地域においては、元来、商品価値を有するアラビアゴムを産するアカシア・セネガルの自然林があった。しかし、近年の乾燥化とアラビアゴムの過剰な収穫のため、樹勢が弱体化し、自然林が衰退して来た。このため、残った自然林は植生保護区とされ、維持されてきたが、樹木の老齢化により天然更新が困難な状態となっていた。この自然林の保全を目的に、トゥルバ地域ではアカシア・セネガルの苗木生産と植栽が継続的に行なわれている。

4.伝統農法・野菜栽培:食糧増産(慢性的食糧不足の改善、栄養改善)
    「伝統農法」:農法の改良(優良品種導入、混作、土壌改良)    ミレット、ソルガム等の主穀の収穫量を上げることによる食生活の安定を目的として、現行の伝統的農法の改良を検討した。バイリにある中央育苗センター内に実験農場を設置し、優良品種の試験栽培や混作・堆肥施肥による収量変化等の試験栽培を行なった。これらの試験栽培から、(1)栽培体系が既に確立されている、(2)地力自体の低下が根本的な原因、という結果が得られ、当面村落における普及レベルでの早急な改善は困難な状況にあると結論し、98年に活動を完了した。しかし、食糧増産の取り組みは継続して検討され、この活動の経験から、共同農場支援、アグロフォレストリー普及、作物種子貸出しへと方向が展開することになり、活動の成果と言える。     「野菜栽培」:栽培作物の広がり           副食の充実     主穀物増産の可能性の検討と平行して、副食の充実による栄養事情の改善にも取り組んだ。副食として用意される各種ソースの内容の充実が図れると同時に、生食によるビタミン類の補充が可能となるため疾病率の低下につながるとの考えから、野菜栽培の普及を行なった。また、消費される以外の余剰生産物を市場出しすることによって、現金を得る新たな収入手段としても期待出来た。普及に先立ち、中央育苗センター内の実験農場において、試験栽培を行ない、93〜96年までの3年間で、20種類以上の野菜の栽培技術を確立することが出来た。また、農作物の残しや乾燥した家畜の乾燥糞を混入したコンポスト(堆肥)の作成や、畑の中に果樹類やマメ科の樹木を植え、防風・防砂の役割を果たすと同時にアグロフォレストリー的手法やアレイクロッピング・システムの試験も行なった。     実験農場で確立できた栽培技術は、農民組合支援活動の一環として複数の村に設置された小規模菜園での指導に生かされた。野菜栽培になじみのなかった住民も、次第に栽培技術が向上し、生産物を市場出し出来るまでになった。しかし、(1)伝統的な食生活に変更を加えることは困難、(2)このため馴染みの薄い野菜に対して抵抗を感じる、ことが明らかとなった。これらの問題点に対処する為、調理方法に関する講習会を行ない、普及に努めた。この結果、バイリ地域において少しづつ野菜が消費されはじめ、市場においては種類が限定されるものの流通し始めるようになった。このような状況を踏まえ、住民は野菜栽培を行なう上で技術的に問題なく、自家消費と現金収入の手段として一定の成果が得られたと言え、97年にこの活動は完了した。     なお「副食の充実による栄養改善」という姿勢は継続され、(1)栄養価が高い、(2)新規ではない作物、を検討した結果、大豆栽培普及として集約された。

5.大豆栽培:食糧増産
         食生活の広がり   小規模菜園(野菜栽培)からの展開として、伝統を尊重した上で食生活の充実による栄養改善を図るのであれば、ソースの材料を充実させ、栄養価を高める取り組みが実際的であると言える。そのために適した普及作物として、大豆が候補となった。大豆は栄養価が高く、チャド南部でも大豆栽培がされており、新しい作物を導入する事ではないので、住民はさほど抵抗を感じないと判断できた。   住民は、大豆の有する栄養価の高さへの関心を寄せると共に、保存性と加工性の高さに着目した。様々な加工が可能であることから食習慣への応用も利き、ソース材料としての利用のほか、豆乳やコーヒーの代用としても消費することが出来る。栽培指導を継続するのと平行して、消費を促進するために加工講習会を行ない普及に努めた結果、現在では消費作物として位置づけられており、住民の食生活に取り込まれていると言える。   現在、栽培技術を充分習得できていないという問題点があるが、主穀作物との混作を試みるなど、住民自身による栽培上の工夫が見られ、技術の獲得に対して積極的であると言える。このような住民による取り組みを支援し、住民自身による継続栽培を実現するため、栽培技術や来期用種子の備蓄指導を行なっており、住民自身による栽培が実現するのも間近いと思われる。

6.稲作:食料増産
       危機分散   食生活の安定を図るには、地域の主穀物の安定した収穫に取り組み事がもっとも効果的であるが、天水に依存した栽培方法である事と、地力の低下が不安定な穀物生産の原因であるため、実施地においては早急な改善は困難であった。   バイリ地域には、雨期に溜水するくぼ地やバイリ川の増水によって生じる氾濫原があり、主穀物であるソルガムやミレットの栽培には適さないが、稲作にとっては適地となる天然の用地があった。栽培穀物の種類を増やすことによって栽培上の危機分散を図ることが出来、地域における食糧生産の安定に寄与することになる、という考えから稲作普及を開始することになった。   普及に先立ち、バイリ地域に適した栽培品種を特定するため、当団体の育苗センター内に設置した実験農場において、試験栽培を行なった。その結果選び出された5品種を、チャド農業省の試験場へ栽培依頼し、種籾として必要な量を確保した。   稲作を可能とする場所が天然の適地であり、年毎の気象条件に大きく左右されるため安定した栽培・収穫を実現するまでには至っていないが、来期用種籾を創出するまでになっており、将来的に住民自身による継続的栽培の実現可能性も出てきたと言える。

7.アグロフォレストリー普及:長期的視点に立った穀物増産計画
  穀物生産の低迷は、土地の地力不足によるところが大きいため、早急な改善は困難である。当団体では、アカシア類に属する樹木が土壌肥沃効果を有している点に着目し、耕地内への植栽を奨励して来た。しかし、アカシア類の樹木が充分に成育するまではその効果が期待出来ないため、奨励樹種を選択するに際してアラビア・ゴムの収穫という副次的なメリットをもたらすアカシア・セネガルが選ばれた。アラビア・ゴムは商品価値を有する樹木副産物であることから、住民の新たな現金獲得方法ともなり得るからである。   耕地内に植栽されたアカシア・セネガルがアグロフォレストリー効果を期待出来るまでに成長した99年から、本格的にアグロフォレストリー技術の村落レヴェルへの普及を開始し、アカシア・セネガル植栽地を主穀作物栽培地として活用できるようになった。主穀物増産への期待から、実施者は100名を越えている。当団体は、技術講習会の開催や栽培技術指導による支援を行ない、技術の定着に向けて取り組んでいる。

8.穀物備蓄クレジット:余剰食糧の創出
              来期用種子の確保
   当団体が提案する全ての活動は、組合員をはじめとした住民の生活がなりっているという基盤の上にはじめて実施が可能となる。住民生活の基礎は、「食べる」ことである。しかし、当該地域は慢性的な食糧不足の状況にあると言える。低迷している穀物生産に加え、日常生活を営む上での生活用品等の購入資金を得るために穀物を売却しなければならず、備蓄量の減少をもたらすことになっている。このため、作付けの時期が来ても播種用の種子に不足するという事態になり、高い価格で改めて種子を購入することになる。このように、食糧に関して負の循環に陥っているのが現状である。    このような状況を改善するため、当団体は住民組合を対象に、穀物の貸出しを行なっている。端境期の食糧を保障すると共に、作付用種子の確保につながるため、現地の実情(慢性的食糧不足)と住民ニーズに応えることが可能である。また、運用の仕方によって組合の経済収入にもなるため、運転資金の創出につながり、組合の経済的基盤を形成・強化することになる。将来的に住民自身による住民の希望する事を実施(実現)するための基礎作りであると言える。

9.作物種子貸出クレジット:副食ともなり得るような作物
                経済収入にもなり得るような作物
  住民組合によって行なわれている活動の中に、共同農場がある。組合員が協力して栽培を行ない、収穫物やその販売によって得られる利益は組合の物とされている。これは、野菜栽培を村落に普及する際、各村落において設置された小規模菜園が進展・拡大したものである。この共同農場活動を支援するため、ゴマ、マニョック、ササゲ、ソルガム等の種子貸出を行なった結果、備蓄種子の創出が実現できた。現在、共同農場で使用される作物種子のほとんどは組合自身によって用意することが出来、結果として落花生種子のみの貸出しに限定されている。これは活動の成果であると同時に、組合による選択の結果であると言える。これまでに貸し出された種子は全て返却されており、組合の積極的な取り組みにより健全な運営がなされていると言える。

10.改良カマド普及:現存する森林資源の保全と女性労働の軽減
             経済的負担の軽減
   当該地域では、調理に際して3つの石を置いただけの、3つ石カマドと呼ばれる、伝統的なカマドが使用されている。このタイプのカマドは、(1)周囲が囲まれていないため燃焼率が悪い、(2)火が露出しているため火傷を負う危険が高い、(3)煙が多い等、使用に際して不便な点があるものの、他のタイプのカマドを知らないために習慣的に使用されてきた。    上記の不便を改良し、住民の身近にある材料で、容易に作成出来るカマドとして、粘土製カマドの普及を行なった。各村落で作成技術者を養成し、普及に努めたが、「壊れやすい」、「移動が出来ない」等の新たな問題点が生じた為、金属製改良カマドを開発し、現在普及の中心となっている。    改良カマドを導入することで得られる効果は多々あるが、燃焼率の向上による薪消費の減少が最も顕著な点である。村周辺の森林が減少したのは、薪炭材獲得の為の過剰な伐採が、要因の一つである。このため、現在では、日用の薪炭材を集めるために以前の2〜3倍の時間を要するようになっており、その結果、収集作業に携わる女性の労働負担も相当なものになっていると言える。改良カマドの導入により効率の良い薪消費が実現されることで、現存する森林の保全と女性の労働負担の軽減を図ることが出来る。これは、生活感覚に鋭い女性の、組合活動への積極的な参加を促すことになり、住民生活に接合した環境保全活動を進める上で効果があると言える。

11.穀物備蓄倉庫(グルニエ)普及:穀物貯蔵(飢饉、旱魃への備え)
   94年、降雨不足からチャド全土において飢饉が発生した。この時、緊急食糧支援や当団体によるブイ(現地式お粥)炊き出しが行なわれたにもかかわらず、バイリ地域で多くの餓死者を出してしまった。この苦い経験から、飢饉を未然に防ぐための取り組みについて議論が行なわれ、農業生産の向上に加えて穀物貯蔵の重要性に留意し、現地に伝統的にあるグルニエ(穀物庫)を復元させる活動を行なうことになった。飢饉により被害を受けた村々を中心にデモンストレーションを行ない、湿気・乾燥等からグルニエを保護するゴザの編み方講習会も行なった。この結果、8村において各1名ずつの技術習得者を養成することが出来た。その後も中央育苗センター内にデモンストレーション用のグルニエを作成するなど、食糧備蓄の概念と製作技術の普及を継続するとともに、従来のものよりも長持ちするタイプの研究も行なった。    技術者の養成が実現でき、食糧備蓄の観念が浸透したとの判断から、97年にこの活動は完了した。この活動によって得られた意識は、穀物備蓄クレジットに引き継がれ、住民の積極的な取り組みとなっている。

12.井戸掘削:生活改善を目指した基盤の強化。
   事業実施地においては、村内に井戸がないため生活用水を確保するにも、近隣村まで数キロも歩いてもらい水に行かねばならない村や、井戸があっても乾期には水涸れを起こしてしまい、年間を通じて利用できない村がある。水不足から黒く濁って腐臭を放つ水でも飲料として使用せざるを得ないため、疾病が蔓延する原因となっている。飲料用水の確保は、食糧とともに生活を営む上での基礎的条件である。    トゥルバ東部地域ビルケレラ地区は、近年の乾燥化が深刻な水不足の状況を招き、日用用水の不足はもちろん、従来手をつけなかった汚水の使用を余儀なくされたため罹患率が上昇し、住民生活がきわどい瀬戸際に追い詰められていた。このような状況を打開し、住民生活の回復と生活の基盤である通年利用できる水源を確保することを目的に、98年5月、コンクリート製オープン式井戸を建設した。建設後は、ビルケレラ地区10村の住民組合からの代表者によって共同井戸管理組合が組織され、現在維持・管理を担当している。また、水源の有効利用の一環として、井戸周辺地に共同育苗所が設置され、周辺地域における緑化活動の拠点となっている。    バイリ地域では、植栽による生活環境改善の意欲がありながら、通年利用できる水源が無いため植栽苗木への潅水が不足し、満足の行く結果が残せないでいたモゴ村の小学校に、96年に潅水支援の一環として井戸を掘削した。

13.養殖:食料資源の保護と拡大
   バイリ地域には、シャリ河に流れ込んでいるバイリ川がある。この川岸近くに位置する幾つかの村落では、漁労に従事している住民がいる。川面に小船を出し、投網を使って複数の種類の川魚を捕獲している。捕獲した魚類は、種類に応じて鮮魚あるいは干物にして定期市で販売され、バイリ地域における貴重なタンパク源となっている。近年、過剰な捕獲のため大型の川魚が減少したため、漁民は投網の目の細かいものを使用するようになった。このため、川魚は成魚とならないうちに捕獲されることになり、自然繁殖が困難となったため、バイリ川に生息する川魚は激減することになった。そして漁民はさらに目の細かい魚網を使用するという悪循環が繰り返されている。このような状況を改善し、漁獲高の確保と稚魚生産による資源保全を図ることを目的に、養殖技術の導入を行なった。また、目の細かい魚網の使用を控えるよう、助言・指導を行なった。    95年、96年と、中央育苗センター内に設置した養殖用の池において、ティラピアの繁殖や成長に関する基礎的実験を行ない、96年に近隣の希望する農民(漁民組合)に試験的に稚魚を配布した。    養殖には用具や設備、餌代等の経費がかかるため、村落レベルで実施した場合、収支のバランスをとるのが困難であるが、漁民は、細かい網の使用を控えたり、成魚になっていない魚の放流などに取り組むようになり、資源の保全に対する意識の向上が見られた。これは継続して行なってきた助言・指導の結果であると言え、一定の成果が得られたとの判断から、97年にこの活動は完了した。

14.講習会:住民組合の自主運営の推進
   住民組合の自立を促進するため、プロジェクトの開始以来、各種講習会を開催してきた。近年では、スライドプロジェクターの使用など、視覚機材を有効に利用することで、参加者に分かりやすい講習方法をとっている。1999年以降は、組合運営の向上に重点を置き、この分野を専門にしている外部の講師に依頼している。講習方法に関しては、内容によって複数の段階を設けており、参加者の理解と経験に配慮した構成になるようにしている。しかし、このような座学のみでは知識の獲得にとどまってしまう傾向を有しているため、講習会のフォローアップと知識の実践的な活用に触れることを目的に、他地域への住民派遣を実施している。