判決書


平成七年(行ケ)第三号
平成八年三月二五日言渡

地方自治法一五一条の二第三項の規定に基づく
職 務 執 行 命 令 裁 判 請 求 事 件 判 決 書

                        福岡高等裁判所那覇支部民事部

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平成七年(行ケ)第三号
地方自治法一五一条の二第三項に基づく職務執行命令裁判請求事件判決

正誤表

  頁   行    誤           正
182   7    集団優良用地地域    集団優良農用地地域
197   1    国道三二二号線     国道三三一号線

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    目   次

当事者の表示・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一頁
主    文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二頁
事実及び理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三頁
 第一 当事者の求めた裁判・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三頁
  一 請求の趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三頁
  二 請求の趣旨に対する答弁・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・三頁
 第二 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四頁
  一 事案の要旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四頁
  二 前提事実・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・六頁
  三 被告が本件署名等代行事務を拒否した背景にある事実・・・・・・三一頁
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 第三 本件訴えの適否について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四七頁
  一 本件署名等代行事務は国の機関としての被告の権限に属する国の
   事務であるか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四八頁
    (原告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四八頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・五四頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・六二頁
  二 本件署名等代行事務についての主務大臣は原告か・・・・・・・・八一頁
    (原告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八一頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八二頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・八四頁
 第四 本件命令の実質的適否(本件署名等代行義務の存否)について・・九一頁
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  一 本件調書の作成に関する瑕疵の有無・・・・・・・・・・・・・・九三頁
    (原告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九三頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九九頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九九頁
  二 特措法が憲法に違反するか否か・・・・・・・・・・・・・・・一四六頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一四六頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一五六頁
  三 本件使用認定が違法、無効か否か・・・・・・・・・・・・・・一七四頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一七四頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一九七頁
  四 本件使用認定が違憲無効か否か・・・・・・・・・・・・・・・二一〇頁
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    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二一一頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二二六頁
  五 特措収用法三六条五項の適用が違憲か否か・・・・・・・・・・二二八頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二二八頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二二九頁
  六 本件署名等代行事務を執行しないことについての被告の裁量権
   (自主的判断権)の有無・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二三二頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二三二頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二三六頁
 第五 本件命令の形式的適否について・・・・・・・・・・・・・・・二四三頁
  一 地方自治法一五一条の二第一項から八項までに規定する措置以外
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   の方法によって被告が本件署名等代行事務をしないことの是正
   を図ることが困難であるか否か・・・・・・・・・・・・・・・・二四四頁
    (原告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二四四頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二四五頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二四六頁
  二 被告が本件署名等代行事務を執行しないことを放置することによ
   り著しく公益を害することが明かであるか否か・・・・・・・・・二五二頁
    (原告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二五二頁
    (被告の主張)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二五五頁
    (当裁判所の判断)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二五九頁
 第六 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二六六頁
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  (別紙目録)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・二六九頁





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平成七年(行ケ)第三号 地方自治法一五一条の二第三項に基づく
                          職務執行命令裁判請求事件
           判  決

        東京都千代田区永田町一丁目六番一号
        原    告         内 閣 総 理 大 臣
                       橋 本   龍 太 郎
        右指定代理人         別紙原告代理人目録記載のとおり

        沖縄県那覇市泉埼一丁目二番二号
        被    告         沖  縄  県  知  事
                       大  田   昌  秀
        右訴訟代理人弁護士      別紙被告代理人目録記載のとおり
        右指定代理人         同右
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      主 文
一 被告は、那覇防衛施設局長が、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安
 全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に
 関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法一四条一項により適用
 される土地収用法三六条の規定に基づき、別紙土地目録記載の各土地に係る土地調
 書及び物件調書を作成するにつき、左記により、同条五項に基づいて立会人を指名
 し、署名押印させよ。
      記
 1 立会及び署名押印の期限
   被告がこの判決の正本の送達を受けた日の翌日から起算して三日以内。
   ただし、行政機関の休日に関する法律一条一項の規定による休日は、右の三日
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  の期間から除く。
 2 立会及び署名押印の時間
   右期間内の毎日午前八時三〇分から午後五時まで
 3 立会及び署名押印の場所
   那覇防衛施設局 沖縄県那覇市久米一丁目五番一六号
二 訴訟費用は被告の負担とする。

     事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
 一 請求の趣旨
   主文と同旨。
 二 請求の趣旨に対する答弁
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 (本案前の答弁)
 1 本件訴えを却下する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
 (本案についての答弁)
 1 原告の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 事案の概要
 一 事案の要旨
   本件は、那覇防衛施設局長が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安
  全保障条約(以下「安保条約」という。)第六条に基づく施設及び区域並びに日
  本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「地位協定」という。)の実
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  施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(以下「特措法」という。)一四条
  一項により適用される土地収用法三六条(以下、特措法一四条一項により適用さ
  れる土地収用法の規定については「特措収用法◯条」として摘記する。)の規定
  に基づき別紙土地目録記載の各土地(以下「本件各土地」といい、同目録記載の
  土地については目録に付されている番号により表示し、例えば同目録記載1の土
  地を「本件1土地〕などという。)に係る土地調書及び物件調書(以下、両調書
  を併せて「本件調書」という。)を作成するにつき、被告が同条五項に基づいて
  立会人を指名し署名押印させる(以下、右行為を「本件署名等代行」といい、同
  条四項又は五項に定める市町村長又は都道府県知事の行為を「署名等代行」とい
  う。)という国の機関としての被告の権限に属する国の事務の執行を拒否したと
  して、原告が、主務大臣として、地方自治法一五一条の二第三項に基づき、被告
  に対し本件署名等代行をすべきことを命ずる旨の裁判を求めた職務執行命令訴訟
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  である。
 二 前提事実(証拠〔甲一、二の(1) ないし(12)、三の(1) ないし(18)、四の(1) 
  ないし(11)、五の(1) ないし(9) 、六の(1) ないし(13)、七の(1) ないし(24)、
  八の(1) ないし(16)、九の(1) ないし(14)、一〇、一一の(1) 、(2) 、一二、一
  三の(1) 、(2) 、一四の(1) ないし(3) 、一五ないし二八、二九の(1) 、(2) 、
  三〇、三一、三二の(1) ないし(3) 、三三ないし三七、三八の(1) ないし(7) 、
  四〇、五六、証人佐伯惠通〕及び弁論の全趣旨により認められる。)
 1 第二次世界大戦後、沖縄をその施政権下においたアメリカ合衆国(以下「米国」
  という。)は、極東における沖縄の軍事的、戦略的価値に着眼して沖縄に軍事基
  地を建設し、これを長期的に使用する意向を有していた。我が国政府は、昭和四
  〇年ころ、沖縄復帰の実現に向けて米国政府と交渉を開始したが、両国政府は、
  これに前向きで取り組む姿勢を示す一方、沖縄における米軍基地の存続が日本を
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  含む極東における平和と安全のために重要であり、沖縄復帰の前提となることに
  ついて共通の認識を持つに至った。両国政府代表者は、昭和四六年六月一七日、
  琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(以下「沖
  縄返還協定」という。)に署名したが、その三条一項では、日本国は安保条約及
  びこれに関連する取極に従い、この協定の効力発生の日に、米国に対し沖縄にお
  ける施設及び区域の使用を許すことが定められた。また、同条の規定に関し両国
  政府間で行われた討議の結果を示すものとして同日交わされた了解覚書では、従
  前から存在した沖縄における米軍の施設及び区域の復帰後の在り方について、米
  軍の用地として提供するもの(同覚書A表)、自衛隊や運輪省に引き継がれるも
  の(同覚書B表)、沖縄復帰の際又はその前に全部又は一部の使用が解除される
  もの(同覚書C表)に区分され、右A表に掲げる施設及び区域は、両国攻府が別
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  段の合意をしない限り、安保条約六条及び地位協定二条の規定により、沖縄の復
  帰の日から米軍の使用に供するものとして日米合同委員会において沖縄返還協定
  の効力発生の日に合意する用意があるとされた(本件各土地は右A表に掲げられ
  た施設及ぴ区域に含まれている。後記の使用認定に係る土地も同様である。)。
  沖縄返還協定は、昭和四七年三月二一日、公布され、同年五月一五日、その効力
  を生じ、同日、日米合同委員会は、安保条約六条及び地位協定二条に基づき米軍
  が沖縄県においてその使用を許されている施設及び区域の提供等について合意し
  た(以下「施設及び区域の提供等に関する協定」といい、右施設及び区域に係る
  土地を「米軍用地」という。)。右提供に係る米軍専用施設の名称及び面積は別
  表1記載のとおりであり、本件各土地はいずれも右提供に係る施設及び区域に含
  まれている(後記の使用認定に係る土地も同様である。)。
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 2 沖縄の復帰に際しての日米首脳会談において、佐藤内閣総理大臣は、沖縄の米
  軍施設及び区域が復帰後できる限り整理縮小されることが必要と考える理由を説
  明し、ニクソン米大統領は、双方が施設及び区域の調整を行うに当たってこれら
  の要素は十分に考慮に入れられる旨答えた。
   我が国は、米軍の使用に供された施設及び区域の整理縮小のために、日米合同
  委員会及び日米安全保障協議委員会の場を通じて交渉を重ね、民公有地について
  は、別表2に記載のとおり施設及び区域の返還がされてきた。平成八年一月一日
  現在の米軍専用施設の名称及び面積は別表3記載のとおりであり、右施設数及び
  面積は、復帰当時に比べ、四五施設、約四三二八万平方メートル滅少した。
   その間の米軍施設及び区域の整理、統合、縮小の状況及び今後の動向は次のと
  おりである。第一四回(昭和四八年一月)、第一五回(昭和四九年一月)及び第
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  一六回(昭和五一年七月)の日米安全保障協議委員会で了承された整理統合計画
  は全体で六三件(約四六二七万平方メートル)であるが、そのうち五二件(約二
  九〇六万平方メートル)は返還済みであり、一件(約一万平方メートル)は返還
  合意済みであり、四件(約三五二万平方メートル)はその取扱いについて合意済
  みであり、残り六件(約一三六八万平方メートル)については、平成七年一一月
  に設置された新たな日米間の協議機関である「沖縄における施設及び区域に関す
  る特別行動委員会」(以下「特別行動委員会」という。)や同じころ閣議決定に
  より設置された政府と沖縄県との間の協議機関である「沖縄米軍基地問題協議会」
  (以下「基地問題協議会」という。)等を通じて推進される予定である。
   米軍施設及び区域の整理、統合、縮小のより一層の促進を図るため、昭和六三
  年夏から、日米合同委員会において、それまでの未解決事案や追加要請事案を併
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  せて検討した結果、平成二年六月、一七施設二三事案(約一〇〇〇万平方メート
  ル。前記整理統合計画に係るものと一部重複。)について、返還に向けて所要の
  調整や手続を進めることが確認された。そのうち一一事案(約五六八万平方メー
  トル)は返還済みであり、五事案(約五四万平方メートル)は返還合意がされ又
  は所要の移設工事等の完了後に返還することとされ、残りの七事案については返
  還に係る処理方針が合意された。
   被告が、地域の産業振興及び県民生活の安定を図る上で重要な課題となってお
  り、県民の要望も極めて強いとして、その問題解決を強く要望していたものとし
  て、 (1)那覇港湾施設の返還、 (2)読谷補助飛行場における落下傘降下訓練の廃
  止及び同施設の返還並びに (3)県道一〇四号線越え実弾射撃訓練の廃止のいわゆ
  る三事案がある。 (1) (2)については、平成七年五月の日米合同委員会において
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  移設条件付きで返還することの基本方針が承認され、移設先との調整がされてい
  る。 (3)については、同年一〇月の日米合同委員会において、技術的専門的に検
  討を行う「実弾射撃訓練の移転に関する特別作業班」を同委員会に設置すること
  が承認され、右作業班において実弾射撃訓練の分散、実施について検討が進めら
  れている。
   沖縄県、那覇防衛施設局及び在沖米軍との間の三者連絡協議会は、沖縄県に所
  在する施設及び区域を管理及び運用することから生ずる問題であって、三者のそ
  れぞれ共通の関心を有することについて、それぞれが拘束されない自由な立場か
  ら協議することを目的として、昭和五四年七月に設置され、これまで、基地から
  派生する問題を少しでも軽滅するために、航空機騒音対策、航空機関連事故、網
  紀粛正、演習場の安全対策及び松食虫対策等について協議し、例えば、航空機騒
  音対策として、米軍は、日曜祝日等の飛行の規制、夜間飛行の規制、エンジンテ
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  ストの時間規制等の措置を講じ、那覇防衛施設局長は、嘉手納飛行場及び普天間
  飛行場に航空機用消音装置を設置するとともに、施設周辺の住宅、学校、病院等
  への防音工事の助成を推進してきた。
 3 日米両国政府は、前記のとおり、沖縄の復帰の際、沖縄に一定の米軍施設及び
  区域を確保することが日本を含む極東の平和と安全のために重要であることにつ
  いて、共通の認識を有していたが、現時点においてもその認識に変更はない。
   基地問題協議会は、平成七年一一月二五日、外務大臣、内閣官房長官、防衛庁
  長官、被告が出席し、第一回の会合が関催されたが、同協議会等において、沖縄
  県の要望を踏まえつつ安保条約の目的達成との調和を図りながら、一年以内を目
  途に米軍施設及び区域の整理、統合、縮小に関する検討結果を取りまとめること
  とされている。
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   原告は、平成八年一月、第一三六回国会における施政方針演説の中で、沖縄の
  米軍施設及び区域の問題については、長年にわたる沖縄の方々の苦しみ、悲しみ
  に最大限心を配った解決を得るためにも特別行動委員会等を通じ、安保条約の目
  的達成との調和を図りつつ、沖縄の米軍施設及び区域の整理、統合、縮小を推進
  するとともに、騒音、安全、訓練などの問題の実質的な改善が図られるよう、誠
  心誠意努力を行う決意である旨宣明している。
 4 前記のとおり、日本国政府は、昭和四七年五月一五日、沖縄の復帰に伴い、安
  保条約六条、地位協定二条、施設及び区域の提供等に関する協定に基づき、米軍
  用地を米軍の使用に供することになり、その大部分については、所有者との間の
  賃貸借契約等の合意によりその使用権原を取得したが、合意の得られない一部の
  土地については、米軍用地の大部分の土地の位置境界が不明で特定できず、特措
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  法の手続によることができなかったため、特別な経過措置として国等が権原を取
  得するまでの間暫定的に一定期間当該土地を使用することができるようにするた
  めに制定された「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」(以下「公用
  地暫定使用法」という。〉に基づいてその使用権原を取得した。そして、公用地
  暫定使用法一条二項の趣旨に従いその所有者との合意によりその使用権原を取得
  するよう努めてきたが、使用期間の満了する昭和五七年五月一四日(後記位置境
  界明確化法附則六項により期間延長されたもの)までに合意を得ることができな
  かった土地については、「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の
  土地の位置境界の明確化等に関する特措法」(以下「位置境界明確化法」とい
  う。)に基づく明確化措置により各筆の土地の位置境界が逐次明確化され特措法
  の手続によることが可能となったので、引き続き駐留軍用地として提供する必要
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  のあるものについては、特措法に基づきその使用権原を取得した。このように賃
  貸借契約又は特措法の手続により取得した土地でその使用期間満了後も引き続き
  駐留軍用地として提供する必要があるものについては、所有者との間で賃貸借契
  約等の合意を得るよう努力し、合意が得られないものについては、その都度特措
  法の手続によりその使用権原を取得した。後者の使用期間は平成九年五月一四日
  をもって満了する。
 5 本件2土地(松田正太郎の所有地を除く。)、本件4ないし6土地、本件7土
  地(金城昇、比嘉信子及び喜友名朝則の各所有地を除く。)及ぴ本件8土地(徳
  里進ほか二名及び我那覇生吉ほか四名の各共有地を除く。)の各土地は、沖縄復
  帰時公用地暫定使用法の手続により、昭和五七年五月一五日からは二度(ただし、
  本件8土地については三度)にわたる特措法の手続により、また、本件1土地、
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  本件2土地(ただし、松田正太郎の所有地)、本件7土地(ただし、金城昇、比
  嘉信子及び喜友名朝則の各所有地)及び本件8土地(ただし、徳里進ほか二名及
  び我那覇生吉ほか四名の各共有地)は、沖縄復帰時賃貸借契約により、右存続期
  間満了後の平成四年五月一五日からは特措法の手続により、それぞれ国がその使
  用権原を取得してきたものであり、前記のとおりその使用期間はいずれも平成九
  年五月一四日をもって満了する。
   本件3土地は、沖縄復帰時公用地暫定使用法の手続により、昭和五一年四月一
  日からは賃貸借契約により、国がその使用権原を取得してきたものであり、その
  使用期間は平成八年三月三一日に満了する。
 6 なお、本件各土地の使用状況等は次のとおりである。
   本件1土地(約一四二六平方メートル〉は、瀬名波通信施設(沖縄復帰時の名
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  称は「ボロー・ポイント射撃場」)(総面積約六一万二〇〇〇平方メートル)内
  に散在している。同施設は、現在、第一八航空団第一八施設技術群司令部の管理
  の下、空軍FBIS(海外放送情報サービス部隊)が事務所、通信用アンテナ等
  の敷地等として使用しており、本件1土地二筆のうち、一筆は事務所用地、他の
  一筆は電子・電気機器の効果的な運用を阻害する電磁干渉を遮断、低滅させるた
  め一定の制限がされている電磁障害除去地として使用され、同施設内の他の土地
  と一体となって有機的に機能している。後者の土地については、米軍がその目的
  に反しない範囲で土地所有者等による耕作等を黙認している(以下、このような
  土地を「黙認耕作地」という。)。
   本件2及ぴ5土地(約五四六九平方メートル)は、嘉手納弾薬庫地区(総面積
  約二八八三万五〇〇〇平方メートル)内に散在している。同施設は、現在、第一
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  八航空団第一八施設技術群司令部及び海兵隊キャンプ・バトラー基地司令部の管
  理の下、第一八航空団第一八兵站群第四〇〇弾薬整備中隊、海軍兵器部、米国陸
  軍第五〇五燃料補給大隊等が司令部施設、管理事務所、弾薬貯蔵庫、弾薬補修工
  場等の敷地等として使用しており、本件2及び5土地は、いずれも弾薬庫等の安
  全確保の観点から確保されている地域である弾薬庫保安用地として使用され、同
  施設内の他の土地と一体となって有機的に機能している。これらの土地の一部は、
  黙認耕作地として使用されている。
   本件3土地(約二三六平方メートル)は、楚辺通信所(総面積五三万五〇〇〇
  平方メートル)内にある。同施設は、現在、在沖米艦隊活動司令部の管理の下、
  ハンザ海軍保全群が中継所、支援施設、倉庫、警衛所、補給事務所等の敷地等と
  して使用しており、本件3土地は、アンテナ敷地として使用され、同施設内の他
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  の土地と一体となって有機的に機能している。
   本件4土地(約九八三平方メートル)は、トリイ通信施設(総面積約一九七万
  九〇〇〇平方メートル)内に散在している。同施設は、現在、米国陸軍第一〇地
  域支援群司令部の管理の下、在沖米陸軍特殊部隊第一大隊、在沖米陸軍通信部隊
  等が通信室、司令部施設、隊舎、倉庫、予備発電所、通信用アンテナ等の敷地等
  として使用しており、本件4土地は、電磁障害除去地として使用され、同施設内
  の他の土地と一体となって有機的に機能している。これらの土地は、黙認耕作地
  として使用されている。
   本件6土地(約一四七三平方メートル)は、キャンプ・シールズ(総面積七〇
  万一〇〇○平方メートル)内にある。同施設は、現在、在沖米海軍艦隊活動司令
  部及ぴ第一八航空団第一八支援群の管理の下、海軍機動建設大隊等が管理事務所、
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  機械工場、隊舎、家族住宅等の敷地等として使用しており、本件6土地は、倉庫
  及び駐車場敷地として使用され、同施設内の他の土地と一体となって有機的に機
  能している。
   本件7土地(約九八二七平方メートル)は、嘉手納飛行場(総面積約一九九七
  万五〇〇〇平方メートル)内に散在する。同施設は、現在、第一八航空団の菅理
  の下、第一八運用群、第六〇三軍事空輸支援中隊、在沖米艦隊活動司令部、第一
  八施設技術群等が飛行場、隊舎、家族住宅、学校等の敷地等として使用しており、
  本件7土地一三筆は、飛行場地区では、航空機の離着陸の安全を確保するために
  設けられた滑走路周辺にある保安緩衝地帯用地(三筆)、着陸帯敷地(一筆)、
  資材置場敷地(二筆)、航空機が離着陸する際に駐機場と滑走路との間を移動、
  停留するために使用するエプロン敷地(一筆)として、住宅地区では、学校用地
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  (二筆)、家族住宅敷地及び場内管理道路敷(一筆)、隊舎敷地(一筆)、駐車
  場敷地(一筆)、家族住宅用地(一筆)として使用され、同施設内の他の土地と
  一体となって有機的に機能している。
   本件8土地(約一万五八〇〇平方メートル)は、那覇港湾施設(総面積約五六
  万八〇〇〇平方メートル)内に散在する。同施設は、現在、米国陸軍第一〇地域
  支援群司令部の管理の下、米軍運輪管理部隊那覇港湾隊、米海兵隊第三役務支援
  群等が、船舶を横づけするコンクリートの岸壁であるバース、倉庫、管理事務所
  等の敷地等として使用しており、本件8土地二三筆は、野積場敷地(九筆)、機
  械修理工場敷地(四筆)、一時的な荷物置場、埠頭内の道路及び荷捌き場等とし
  て使用される岸壁から上屋までの土地であるエプロン敷地(二筆)、道路及び機
  械修理工場敷地(二筆)、港湾管理事務所及び野積場敷地(一筆)、港湾管理事
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  務所及び道路敷地(一筆)、駐車場敷地(一筆)、倉庫敷地(一筆)、道路敷
  (一筆)、野積場・倉庫敷地及び道路敷(一筆)として使用され、同施設内の他
  の土地と一体となって有機的に機能している。
 7 国は、平成九年五月一四日に使用期間が満了する土地(本件3土地以外の本件
  各土地を含む。)及び本件3土地の計二五四筆(一三施設、所有者二九〇〇名余
  (共有地主二八〇〇名余を含む。)、面積約三七万一〇〇〇平方メートル)につ
  いては安保条約及び地位協定に基づき引き続き駐留軍の用に供することが必要で
  あるにもかかわらず、所有者との合意により使用権原の取得が見込めない状況に
  あるとして、特措法による使用権原取得の手続を進めることにした。なお、沖縄
  県における平成七年五月九日現在の米軍施設及び区域中民公有地の総面積は約一
  億五八二三万平方メートルであり、そのうちの約九九・七七パーセントの土地に
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  ついては、その所有者との間で賃貸借契約が締結されているか、賃貸借の予約が
  されており、右二五四筆は残りの約〇・二三パーセントの土地であり、国有地を
  含めた沖縄県における米軍専用施設全体の約〇・一六パーセントに当たっている。
 8 那覇防衛施設局長は、平成七年三月三日ころ、土地所有者及び関係人に対し、
  特措法四条に規定する意見書を同月二四日までに提出するよう依頼し、同年四月
  六日及び同月一七日、同条一項に基づき、意見書等を添付し、前記二五四筆につ
  いて、使用認定申請書を防衛施設庁長官及び防衛庁長官を通じ、原告に提出した。
   原告は、同年五月九日、右申請に係る土地の使用が特措法三条の要件に該当す
  ると認め、同法五条に基づき土地の使用の認定(以下、そのうち本件各土地に係
  る使用認定を「本件使用認定」という。)をし、同法七条一項に基づき那覇防衛
  施設局長にその旨を通知するとともに、当該防衛施設局長の名称(那覇防衛施設
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  局長)、使用すべき土地の所在並びに同条二項による土地の調書及び図面の縦覧
  場所を同日付けの官報で告示した。
   那覇防衛施設局長は、同日、同項により、関係市町村内において当該市町村に
  関係がある土地の調書及び図面を公衆の縦覧に供し、同月一〇日ころ、土地所有
  者及び関係人に対し、使用認定があった旨並びに使用しようとする土地の所在、
  種類及び数量を通知するとともに、特措収用法二八条の二による補償等について
  の「お知らせ」と題する書面を送付した。また、同局長は、同月一一日、特措法
  七条二項により、右通知に係る内容を官報により公告した。
   那覇防衛施設局長は、使用認定の告示があった後、本件各土地を含む二五二筆
  の土地(所有者二九三七名、面積約三六万九〇〇〇平方メートル。本件使用認定
  後に賃貸借契約の予約締結を承諾した土地所有者があること、共有者の持分の一
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  部が移転されたこと等により筆数等が変わった。)について、沖縄県収用委員会
  に使用の裁決を申請するため、特措収用法三六条一項による土地調書及び物件調
  書の作成に着手した。
 9 那覇防衛施設局長は、右二五二筆の土地について特措収用法三六条一項の土地
  調書及び物件調書となるべき図書を作成した(そのうち、本件調書の作成につい
  ては後記のとおり)上、同月一六日ころから同年六月中旬にかけて、右各土地の
  所有者のうちの住居所不明者三名を除く二九三四名(本件各土地の所有者合計三
  五名を含む。)及び関係人一六名(本件各土地の関係人合計一〇名を含む。)に
  対し、「立会要請について」と題する書面を郵送することにより、同条二項に基
  づく立会及び署名押印を求めた。
   しかし、右土地所有者のうち一九五九名(本件各土地の所有者三五名のうち立
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  会及び署名押印をした共有者一名を除く三四名が含まれる。)は、右文書により
  指定された立会の日時及び場所に出頭せず、七名は出頭したものの署名押印をし
  なかった。また、関係人のうち一二名(本件各土地の関係人一〇名のうち、立会
  及び署名押印をした三名を除く七名が含まれる。)は右立会の日時及び場所に出
  頭しなかった。
10 そこで、那覇防衛施設局長は、同月六日ころ、伊江村長、思納村長、読谷村長、
  沖縄市長、北谷町長、宜野湾市長、浦添市長及び那覇市長に対し、同月二三日こ
  ろ、嘉手納町長に対し、それぞれ、特措収用法三六条四項に基づいて「立会要請
  について」と題する文書により、当該市町村長又はその吏員の立会及び署名押印
  を求めたところ、思納村長並びに伊江村、嘉手納町、北谷町、宜野湾市及び浦添
  市の各吏員による立会及び署名押印がされた。しかし、読谷村長は本件1ないし
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  4土地について、沖縄市長は本件5ないし7土地について、那覇市長は本件8土
  地について、いずれも右の立会及び署名押印を拒否した。
11 那覇防衛施設局長は、同年八月二一日、被告に対し、特措収用法三六条五項に
  基づき、「立会要請について」と題する文書により、立会日時を「平成七年八月
  二八日午前一〇時から午後四時まで」、立会場所を「那覇防衛施設局」と定めて、
  本件調書を作成するにつき、沖縄県の吏員のうちから立会人を指名し、署名押印
  させること(本件署名等代行)を申請した。なお、右の日時場所の指定方法は、
  これまでの特措法に基づく使用権原の取得の手続において実施されてきた例に準
  拠したものである。
   被告は、同年一〇月二日、「立会要請について(回答)」と題する文書により、
  本件署名等代行には応じられない旨の回答をした。
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12 そこで、原告は、主務大臣として、同年一一月二三日、文書により、本件署名
  等代行事務の拒否が国の機関としての被告の権原に属する国の事務の管理若しく
  は執行が法令の規定に違反するものであり、また、国の事務の管理若しくは執行
  を怠るものであること、被告が本件署名等代行事務を拒否した場合、他の機関が
  これを代行する法令の規定はなく、地方自治法一五一条の二第一項から第八項ま
  でに規定する措置以外の方法によってその是正を図ることが困難であること及び
  本件署名等代行がされないと適式な土地調書及び物件調書が作成できず、特措収
  用法三九条一項に基づく裁決の申請ができなくなり、その結果、駐留軍に対し施
  設及び区域を提供するという我が国の条約上の義務を履行するために必要な使用
  権原を現使用期間満了日までに取得することが不可能となり、これを放置するこ
  とにより著しく公益を害することが明らかであることを指摘し、立会及び署名押
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  印の期限を「本書面到着の日の翌日から起算して三日以内(ただし、行政機関の
  休日に関する法律一条一項の規定による休日を除く。)」、立会及び署名押印の
  時間を「毎日午前八時三〇分から午後五時まで」、立会及び署名押印の場所を
  「那覇防衛施設局 沖縄県那覇市久米一丁目五番一六号」と定めて、特措収用法
  三六条五項に基づき立会人を指名し署各押印させるべきこと(本件署名等代行)
  を勧告した。
   被告は、右勧告の期限までに勧告に係る事項を行わなかった。
13 原告は、同月三〇日、文書により、立会及び署名押印の期限を「本書面到着の
  日の翌日から起算して三日以内(ただし、行政機関の休日に関する法律一条一項
  の規定による休日を除く。)」、立会及び署名押印の時間を「毎日午前八時三〇
  分から午後五時まで」、立会及び署名押印の楊所を「那覇防衛施設局 沖縄県那
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  覇市久米一丁目五番一六号」と定めて、特措収用法三六条五項に基づき立会人を
  指名し署名押印させるべきこと(本件署名等代行)を命令した(以下、この命令
  を「本件命令」という。)。
   被告は、本件命令に係る期限を経過したが未だ本件署名等代行をしていない。
 三 被告が本件署名等代行事務を拒否した背景にある事実(以下「背景事実」とい
  う。)
  (証拠[前掲各証拠、乙一ないし七、九ないし一三、一四の (1)ないし (4)、一
  五の (4)、一六の (7)ないし(10)、二三、二四、二五の (1)ないし (4)、二六な
  いし二八、五七、五八 、被告本人]及び弁論の全趣旨により認められる。)
 1 沖縄においては、第二次世界大戦の末期、沖縄本島の全域にわたって、五〇日
  間に及ぶ日米両軍による激しい地上戦が展開された。その結果、軍関係者ばかり
  でなく、一般住民もこれに巻き込まれ、一六万人を超える人々がその犠牲となっ
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  た。戦後、沖縄は、米軍の支配下に置かれ、昭和二六年九月八日のサンフランシ
  スコ平和条約の締結により我が国が独立した際には本土から分離され、米国の施
  政権下に置かれた。沖縄が本土復帰を果たしたのはそれから二一年後の昭和四七
  年のことである。戦後、沖縄を占領した米軍は、旧日本軍の施設及び区域ばかり
  でなく、公有地や民有地をも強制的に接収して本島中部地区を中心に軍事基地を
  構築していった。これらの軍事基地は、前提事実のとおり、沖縄の本土復帰後日
  米安保体制下に組み込まれ、我が国が安保条約上の義務に基づき米軍の使用に供
  するという形で存続した。
 2 米軍基地の概況
   沖縄には、平成六年三月末現在、県下五三市町村のうち二五市町村にわたって
  四二施設、二億四五二六万平方メートルの米軍基地が存在し、その面積は全県土
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  面積の約一〇・八パーセントを占めている。そこで、沖縄県は、かねてから日本
  国政府に対して米軍基地の整理縮小を要請してきたが、十分な成果を挙げるには
  至っていない。米軍専用施設の返還状況について本土と沖縄とを比較すると、本
  土においては、昭和四七年三月末に約一億九六九九万平方メートルであったのが
  平成六年一月一日には約八〇六〇万平方メートルになり約五九パーセント減少し
  たのに対し、沖縄においては、昭和四七年五月一五日に約二億七八五〇万平方メ
  ートルであったのが平成六年三月末には約二億三七三九万平方メートルになり約
  一五パーセント減少しただけである。
   平成六年三月末現在の沖縄の米軍基地面積は全国の米軍基地面積(本土につい
  ては平成六年一月一日現在)の約二四・九パーセントを占める。中でも米軍が常
  時使用できる専用施設に限ってみると全国のそれの約七四・七パーセントが国土
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  面積の約〇・六パーセントを占める沖縄県に存在する。都道府県別に米軍基地の
  占める面積の割合をみると、沖縄県が約一〇・八パーセントであるのに対し、静
  岡県は約一・二パーセント、山梨県は約一・一パーセント、他の都道府県は一パ
  ーセント未満であり、国土面積に占める米軍基地の割合は約〇・二六パーセント
  である。また、米軍基地のうち米軍専用施設の占める割合をみると、沖縄県が約
  九六・八パーセントであるのに対し、他の都道府県においては、約一〇・九パー
  セントである。
   平成六年三月末現在における沖縄県の米軍基地の所有形態は、私有地が約三二
  ・七パーセント、市町村有地が約三〇・五パーセント、県有地が約三・六パーセ
  ントであり、国有地は約三三・二パーセントである。本土の米軍基地の場合、民
  公有地が約一三パーセント、国有地が約八七パーセントである。これは、本土の
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  米軍基地の大半が第二次大戦前の旧日本軍の基地をそのまま使用してきたのに対
  し沖縄県の米軍基地は旧日本軍の基地の使用に止まらず、米軍による民公有地の
  新規接収が各地で行なわれたことによる。
   平成六年三月末現在の沖縄県の米軍基地の用途状況は次のとおりである。施設
  数が多く面積も大きいのは演習場であり、一七施設、約一億六八五四万平方メー
  トル(全基地面積の約六八・七パーセント)に及ぶ。演習場施設には、県内の米
  軍基地で最大の面積を有する北部訓練場、実弾射撃訓練に使用されるキャンプ・
  シュワブやキャンプ・ハンセン、パラシュート降下訓練が行われる読谷補助飛行
  場、部隊の上陸訓練が行われる金武ブルービーチ訓練場や金武レッドビーチ訓練
  場、南部地区や八重山地区の離島に存在する射爆撃場などがある。次に面積が大
  きいのは倉庫であり、三施設、約三二八〇万平方メートル(全基地面積の約一三
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  ・四パーセント)に及ぶ。この施設には、各軍が必要とする弾薬の総合貯蔵・補
  給施設として重要な役割を果たしている嘉手納弾薬庫地区や辺野古弾薬庫、在日
  米軍の中でも主要な兵站基地となっている牧港補給地区があり、嘉手納弾薬庫地
  区だけで倉庫施設の面積の約八七・九パーセントを占めている。第三に面積が大
  きいのは飛行場施設であり、嘉手納飛行場と普天間飛行場の二施設、約二四七九
  万平方メートルに及ぶ。両施設は中部地区に存在し、それぞれ空軍及び海兵隊の
  中枢基地となっている。このほか、沖縄県の米軍基地には、キャンプ端慶覧やキ
  ャンプ・コートニー等の兵舎が五施設(約九五四万平方メートル)、軍事通信を
  傍受していると言われている楚辺通信所、陸軍特殊部隊(グリーンベレー)が配
  備されているトリイ通信施設等の通信施設が七施設(約四四七万平方メートル)
  存在する。また、第七艦隊の兵站支援港で原子力潜水艦の寄港地としても重要な
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  役割を果たしているホワイト・ビーチ地区や湾岸戦争の際の軍事物資の積出港と
  して使用された那覇港湾施設等の港湾施設が三施設(約二一八万平方メートル)、
  軍病院が置かれている医療施設が一施設(約一〇八万平方メートル)、事務所
  (工兵隊事務所)が一施設(約四万平方メートル)、奥間レストセンターや陸軍
  貯油施設等のその他施設が三施設(約一八二万平方メートル)ある。
   平成七年一一月末現在、沖縄周辺には、米軍の訓練又は保安のための水域が二
  九箇所、空域が一五箇所設定されている。訓練水域では、常時立入禁止、使用期
  間中立入禁止、船舶の停泊、係留投錨、潜水及び網漁業並びにその他すべての継
  続的行為の禁止等の制限、禁止がされている。訓練空域については、那覇空港の
  場合、発着する航空機を管制するための空域が半径五陸マイル(約八キロメート
  ル)、高度二〇〇〇フィート(六〇〇メートル)未満に制限されているため、通
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  常の空域より、半径で一キロメートル、高度で三〇〇メートルも狭められている。
   海兵隊は、キャンプ・コートニーにある第三海兵機動展開部隊の下に、第三海
  兵師団がキャンプ・コートニーに、第一海兵航空団がキャンプ瑞慶覧に、第三海
  兵役務支援群が牧港補給地区にそれぞれ配置されている。空軍は、横田基地に司
  令部を置く第五空軍司令部の指揮監督下に、第一八航空団が嘉手納飛行場に配置
  され、同航空団の指揮下に第一八支援群等が配置されている。海軍は、嘉手納飛
  行場内に在沖縄艦隊活動司令部及び嘉手納海軍航空施設隊があり、その他沖縄航
  空哨戒群等が配置されている。陸軍は、トリイ通信施設に第一〇地域支援群を置
  くほか、第一特殊部隊(空挺)第一大隊等が配置されている。
 3 米軍の演習、訓練、事件・事故について
   米軍の演習、訓練は、水域、空域及び陸域において、恒常的に行われている。
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  各水域においては、水対空、水対水、空対空各射撃訓練及び空対水射爆撃訓練、
  空対地模擬計器飛行訓練、船舶の係留その他一般演習等が行われている。陸域に
  おいては、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセンで一般演習、小銃射撃、実
  弾射撃、廃弾処理、爆破訓練が、北部訓練場、金武レッドビーチ訓練場、金武ブ
  ルービーチ訓練場、ギンバル訓練場、読谷補助飛行場等で一般演習が恒常的に行
  われている。
   キャンプ・ハンセン演習場において第三海兵師団第一二海兵連隊により県道一
  〇四号線実弾砲撃演習が多数回実施されている。最近の演習においては、三日間
  で約六〇〇発の一五五ミリりゅう弾砲が発射された。
   読谷補助飛行場においてパラシュート降下訓練が多数回実施され、これに関連
  して平成七年一一月までに、二九件の事故が発生しており、ほとんどが施設外降
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  下によるものである。沖縄の復帰前には、昭和二五年の燃料タンク落下による少
  女圧死事故、昭和四〇年のトレーラー落下による少女圧死事故等が発生し、その
  後も施設外の農耕地や民家等に落下する事故が起きている。
   勝連半島の最先端に位置するホワイト・ビーチ地区には原子力軍艦が寄港した
  ことがある。沖縄県における復帰後の原子力軍艦の寄港状況は、昭和五一年六月、
  原潜フラッシャーの寄港以来平成七年一一月末までの寄港回数は一〇八回であり、
  とりわけ、平成五年及び六年の二年間で三五回の寄港を数え、平成六年は過去最
  高の一八回を記録した。
   沖縄の復帰以後、米軍航空機事故が発生し、最近のものをみても平成六年四月
  四日のF一一五機墜落炎上事故ほか五件の事故が発生している。
   昭和四七年五月から平成七年八月末までの米軍人軍属等による刑事事件の検挙
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  件数は四七一六件で全刑法犯(件数)の約二パーセントを占め、また、犯罪検挙
  人数は四五九三人で全刑法犯(人数)の約六パーセントを占める。復帰後の米兵
  による民間人殺害事件は、平成七年一一月末まで一二件発生している。近年では、
  平成五年二月の海軍兵による強姦致傷事件、同年四月の金武町における海兵隊員
  による殺人事件、平成六年七月の海軍兵による強盗事件、平成七年五月の海兵隊
  員による日本人女性殺人事件、同年九月の米兵三人による少女拉致暴行事件など
  がある。
 4 米軍基地が環境に与える影響について
   嘉手納飛行場において昭和六一年にPCB漏出事故が発生していたという報道
  が平成四年二月にされた。キャンプ・ハンセン内では、実弾演習の着弾地周辺に
  山肌をむき出した部分があり、射撃演習により原野火災が発生したことがある。
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  また、同キャンプ内を流れる河川から赤土の流出が認められる。嘉手納飛行場及
  び普天間飛行場の周辺で航空機による騒音が発生し、付近住民の生活環境に影響
  を及ぼしている。このような現状にかんがみて、沖縄県は、関係市町村と協力し
  て、両飛行場の周辺で騒音測定を行っており、沖縄県が発表した騒音測定結果の
  数値の中に環境基準を上回るものがあった。
 5 米軍基地が沖縄県の振興開発に与える影響について
   平成四年九月、国において策定された第三次沖縄振興開発計画では、沖縄の米
  軍施設及び区域について「そのほとんどが人口、産業が集積している沖縄本島に
  集中し、高密度な状況にあり、この広大な米軍施設及び区域は土地利用上大きな
  制約となっているほか、県民生活に様々な影響を及ぼしている。」という認識の
  下、「米軍施設及び区域の整理縮小と跡地の有効利用について、米軍施設及び区
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  域をできるだけ早期に整理縮小する。」として県土利用の基本方向を明らかにし、
  さらに、「返還される米軍施設及び区域に関しては、地元の跡地利用に関する計
  画をも考慮しつつ、可能な限り速やかな返還に努める。」として、「返還跡地の
  利用に当たっては、生活環境や都市基盤の整備、産業の振興、自然環境の保全等
  に資するよう地元の跡地利用に関する計画を尊重しつつ、その有効利用を図るた
  めの諸施策を推進する。」としており、米軍基地は、地域の振興開発の制約要因
  となっている。那覇市、沖縄市、読谷村における米軍基地の概略は次のとおりで
  ある。
   平成七年一一月末現在、那覇市には、米陸軍の那覇港湾施設、米空軍の嘉手納
  飛行場施設の一部があり、同市の面積の約一・五パーセント(約五八万平方メー
  トル)を占めている。那覇港湾施設は、同市にある米軍基地の約九九パーセント
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  を占め、那覇空港、国道五八号線、国道三三二号線と隣接し、県道七号線の起点
  ともなり、那覇市の都心部にも近い。
   平成七年三月末現在、沖縄市には、米軍基地として、嘉手納飛行場、嘉手納弾
  薬庫地区、キャンプ・シールズ、泡瀬通信施設及び同提供水域、キャンプ瑞慶覧、
  陸軍貯油施設(パイプライン)、知花サイトの七施設があり、同市の面積の約三
  七パーセント(約一八〇一万平方メートル)を占めている。沖縄市は、沖縄本島
  中部に位置し、周辺を七市町村と隣接しているが、市域北部及び西部に、広大な
  嘉手納弾薬庫地区と嘉手納飛行場、南部にキャンプ瑞慶覧、中城湾に面する東部
  地域には泡瀬通信施設がある。同市の米軍基地の土地所有内訳は、私有地が約六
  七・八パーセント、公有地が約二七・八パーセント、国有地が約四・四パーセン
  トである。
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   平成七年三月末現在、読谷村には、米軍基地として、嘉手納弾薬庫地区、読谷
  補助飛行場、トリイ通信施設、瀬名波通信施設及び楚辺通信所の五施設があり、
  同村の面積の約四七パーセント(約一六四八万平方メートル)を占めている。国
  道五八号線と並行して嘉手納町からの幹線道路として国道バイパスが計画されて
  おり、右国道バイパスと国道五八号線を連結し、読谷村を東西に走る幹線道路の
  中央残波線の計画がされているが、米軍施設は右計画の推進の制約要因となって
  いる。
 6 行政事務の過重負担について
   基地対策を担当する部署として、沖縄県には総務部知事公室基地対策室が置か
  れ、関係市町村にはそれぞれ主管の部署が置かれている。これらの部署には専任
  又は兼任の職員(沖縄県の場合、五人が専任)が配置され、事実調査、基地関
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  係事務の処理、関係機関及び米軍当局への要請、抗議等の諸活動に当たっている。
  これらの行政事務は他の都道府県及び市町村には見られないものであり、沖縄県
  及び関係市町村の過重な負担となっている。
 7 現沖縄県知事の大田昌秀は、平成六年一二月に米軍基地の整理縮小を公約の一
  つに掲げて県知事選挙で二期目の当選を果たした。同知事は、米軍基地から、航
  空機の墜落等の事故、米軍人による刑事犯罪、飛行場周辺での昼夜の別のない騒
  音の発生、水質汚濁、土壌汚染、原野火災などの環境破壊等のいわゆる基地公害
  が発生し、関係住民に多大の精神的、肉体的損害を与え、沖縄県及び地元市町村
  にはその対策のための行政負担をかけ、また、米軍基地がこのように存在するこ
  とが交通通信体系の整備や地域開発の妨げとなり、沖縄県全体の振興開発計画の
  推進を遅らせているとの認識を持っていた。また、米軍基地の大半が沖縄県に集
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  中し、しかも、五〇年もの間存続しているため沖縄県民の米軍基地の整理縮小を
  求める願望が根強く、本土と比べての不平等感にも根深いものがある一方で、沖
  縄県が国に対しかねてから求めてきた米軍基地の整理縮小について顕著な成果を
  挙げるに至っていないとの思いを強くしていた。そこで、同知事は、平成七年八
  月、那覇防衛施設局長から本件署名等代行事務の執行を求められた際、これが米
  軍基地の存続、固定化に繋がることを懸念し、熟慮していたところ、同年九月、
  米軍人による少女拉致暴行事件が発生し、県民の反基地感情が爆発的に高まった
  ことを契機に自ら本件署名等代行事務を執行することはできないと判断し、国に
  対し、米軍基地問題の目に見える形での解決を求める趣旨で本件署名等代行事務
  の拒否を宜言するに至ったものである。

第三 本件訴えの適否について
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  被告は、本件署名等代行事務が国の機関としての被告の権限に属する国の事務で
 あること及び本件署名等代行事務の主務大臣が原告であることを争い、本件訴えは
 不適法であると主張するので、以下、右の点について検討を加える。

 一 本件署名等代行事務は国の機関としての被告の権限に属する国の事務であるか
 (原告の主張)
 1 本件署名等代行事務は、特措収用法三六条五項により都道府県知事である被告
  に義務づけられた国の機関委任事務である(地方自治法一四八条二項、別表第三
  第一号(三の四)、(百八)参照)。
 2 国の機関委任事務は、国の事務の中で法律又はこれに基づく政令の定めるとこ
  ろにより、普通地方公共団体の長等が管理執行する事務であり、具体的な事務が
  機関委任事務に該当するか否かは、法律又はこれに基づく政令の定めによって決
---------- 改ページ--------49
  定されるものであるから、当該法令の趣旨、文言、当該事務の性質等を総合勘案
  して判断されるべきである。また、地方自治法一四八条二項に基づく別表第三は、
  事務処理の便宜に役立てるとともに行政の簡素化に備えてその現状を明らかにす
  るために、都道府県知事が管理執行しなければならない機関委任事務を具体的に
  掲げたものであり、同表に当該事務に関連ないし類似する多くの事務が掲げられ
  ていることは、当該事務が国の機関委任事務と解する根拠の一つとなる。
 3 ところで、公共の利益を増進するために憲法上保障された財産権を収用する源
  は国の統治権にあるから、本来収用権は国家に専属する(憲法二九条三項)。土
  地収用法はそのための要件、手続等について定めたものである。
   同法により、土地を使用収用するには、起業者が建設大臣等による事業の認定
  を受けた上で、収用委員会に使用収用の裁決を申請し、権利取得及び明渡裁決を
---------- 改ページ--------50
  得ることが必要とされている。事業認定は、国又は都道府県が起業者である事業
  等の場合には建設大臣が行い、それ以外の事業については起業地を管轄する都道
  府県知事が行う(一七条一項、二項)。事業認定手続は、憲法二九条三項の趣旨
  に基づき設けられた制度であって、すべての国民に対し公平に、統一的、一元的
  に行われることが必要であり、都道府県に委任されることにより都道府県限りの
  責任においてその地方の実情に応じて決定されるべき事柄ではなく、地方自治法
  別表第三第一号(百八)にも明示されており、国の機関委任事務であることは明
  らかである。都道府県知事が事業認定を拒否するか、一定期間内にこれに関する
  処分を行わない場合には、建設大臣が直接事業の認定をすることができ(二七
  条)、都道府県知事の処分については建設大臣に審査請求をすることができる
  (一三〇条一項、一三一条二項)が、これらは、都道府県知事の事業認定は国が
---------- 改ページ--------51
  収用権の主体であることを前提としているものである。
   次に、裁決の最も重要な機能は正当な補償の決定であり、裁決手続は、憲法二
  九条三項の趣旨に基づき設けられた制度であって、すべての国民に対し公平に、
  統一的、一元的に処理されなければならないこと、裁決に対し建設大臣に審査請
  求をすることができること(一二九条)等を総合すると、裁決事務もまた国の機
  関委任事務である。
   事業認定以外の都道府県知事の収用事務は、いずれも事業認定及び裁決に付随
  する手続であり、最終的に土地収用を適正に実現するための一連の手続であるが、
  土地収用法及びこれに関連する法令の規定を通覧しても、国の事務からこれらの
  事務を切り離して都道府県の事務とする趣旨の規定を見出すことはできない。そ
  して、地方自治法別表第三第一号(百八)には「土地収用法…の定めるところに
---------- 改ページ--------52
  より、…代執行をする等の事務を行うこと」と定められており、そこに例示され
  た事業の準備のための他人の土地への立入の許可等の事務と本件署名等代行事務
  とが実質的に異なるわけでもないから、本件署名等代行事務は右別表記載の「等」
  に含まれることは明らかである。したがって、土地収用法に掲げられた都道府県
  知事の事務はいずれも国の機関委任事務である。
   特措法は土地収用法の特別法であり、右のことは特措法にも基本的に妥当する。
  すなわち、特措法は、安保条約六条に基づく地位協定を実施するため駐留軍の用
  に供する土地等の使用収用に関し規定することを目的とするものであり(一条)、
  この目的を達成するために土地の使用権原を取得する事務は、国の安全保障、外
  交に係わる問題であるから、その一連の手続に係る事務はすべて本来的に国の事
  務ということができるのであり、その一連の手続に係る事務のうちに都道府県知
---------- 改ページ--------53
  事の処理する事務があったとしても、その事務は国の機関委任事務と解すべきで
  あり、これを都道府県の事務とする趣旨の規定を見出すことはできない。そして、
  地方自治法別表第三第一号(三の四)には、特措法の「定めるところにより、…
  代執行をする等の事務を行うこと」と定められており、そこに例示された形質の
  変更の許可等の事務と本件署名等代行事務とが実質的に異なるわけでもないから、
  本件署名等代行事務は右の「等」に含まれることは明らかである。したがって、
  本件署名等代行事務は国の機関委任事務である。
 4 なお、地方自治法二条六項は、同条三項に例示されている同条二項の事務のう
  ち、都道府県の広域的、統一的な事務処理機能等の特性に即して、都道府県の事
  務を更に例示的に規定しているところ、同条三項及び六項に掲げられた事務の中
  に機関委任事務が含まれることは同条三項但書から明らかである。したがって、
---------- 改ページ--------54
  同条六項に掲げられている事務が直ちに普通地方公共団体の事務であるというこ
  とにはならない。
 (被告の主張)
 1 本件署名等代行事務は、国の事務ではなく都道府県の公共事務であり、仮に本
  来国の事務であるとしても法令により都道府県に委任された事務(団体委任事務)
  であって、いずれにしても、都道府県の事務である。その理由は必ずしも一義的
  に明確ではないがこれを善解すると概ね次のとおりである。
 2 土地収用法は、収用高権の発動たる一連の収用手続を定めるものであり、起業
  者による裁決申請までの手続と申請後の裁決手続に区分し、前者については個別
  の条項によってそれぞれの手続の性質に即した権限者を規定し、後者については
  都道府県知事の所轄の下に設置される収用委員会に包括的に権限を付与している。
---------- 改ページ--------55
   裁決事務は収用高権の発動としての性格を有するとしても、これを国が行う事
  務とするか収用委員会の事務とするかはそれが国民の財産権を侵害、規制するも
  のであることから法律に基づき決定されることである。土地収用法は、裁決事務
  が土地等の収用事務であり、地域の事務という性格を有することから、これを都
  道府県知事の所轄の下に設置される収用委員会の事務としたものであり、これを
  都道府県の執行する事務としたものと解するのが自然である。裁決事務が国の事
  務だとすると中立的に行われなければならない裁決事務について国が指揮監督権
  を有することになり土地収用法が右事務を中立機関である収用委員会に配分した
  意義が失われる。また、裁決に対し建設大臣に審査請求できるが、行政不服審査
  法五条一項二号の規定に照らすと、そのことゆえに裁決事務が国の機関委任事務
  であると解することはできない。
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   裁決申請前の事務については個別の規定毎にその性格を具体的に検討し、国の
  機関委任亭務であるか否かを決しなければならない。そして、財産権を侵害、規
  制する権能は法律に基づいて国又は普通地方公共団体に具体的に配分されるもの
  であるから、土地収用法は、財産権侵害、規制の程度により、起業者による事業
  の準備のための他人の土地への立入等を許可する事務を都道府県の事務とし、起
  業者による障害物の伐除を許可する事務を市町村の事務としたものである。
   また、土地収用権は憲法により国に付与されたものであり、その収用権を誰が
  行使するのかは法律によって定まるところ、土地収用法一七条一項、二項は、事
  業認定権限を建設大臣と都道府県知事に配分したものと解されるのであって、同
  法は、事業認定に関する事務については認定を受ける事業の性質に従いこれを国
  の事務と都道府県の事務とに分けたものと解するのが自然であり、都道府県知事
---------- 改ページ--------57
  に委ねられた事業認定に関する事務は、都道府県の事務と解すべきである。土地
  収用法二〇条は事業認定の要件を定めるが、同条二号ないし四号の要件について
  の判断は、事業認定権者に一定の裁量権が与えられ、都道府県知事は地方の立場
  に立って事業認定をすることが許されるのであり、事業認定が統一的、一元的に
  行われなければならない必要性はない。事業認定に関する事務は地方自治法別表
  第三第一号(百八)に掲げられているが、都道府県知事は個別の法令に基づいて
  当該機関委任事務を処理する義務を負うのであり、当該事務が機関委任事務であ
  るか否かは右別表の記載の有無だけによって判断されるべきものではないし、却
  って、同法二条六項二号は土地の収用に関する事務を地方公共団体の事務と定め
  ているのである。土地収用法二七条は一定の場合に事業認定権を建設大臣に付与
  することを定めたにすぎないものであり、都道府県知事の事業認定処分について
---------- 改ページ--------58
  建設大臣に審査請求できることも行政不服審査法五条一項二号の規定があること
  に照らすと、いずれもそのことゆえに事業認定に関する事務が国の事務であると
  解することはできない。
   以上のとおりであるから、事業認定に関する事務及び裁決に関する事務が国の
  機関委任事務であるとする原告の主張は理由がない。
 3 そこで、次に署名等代行事務の性質等についてみるのに、土地収用法三六条二
  項は、起業者が恣意的に士地・物件調書を作成することを防止し、土地所有者及
  び関係人(以下「土地所有者等」という。)の財産権や適正手続を保障するため、
  土地所有者等の意見聴取を起業者に義務づけ、同条三項は、起業者が土地所有者
  等の意見を十分に聴取して真実に合致した正確な調書を作成することを当然の前
  提にしている。そして普通地方公共団体が、地域住民の平和のうちに生きる権利
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  を保障し、生活、人権、財産権を守り、福祉を増進させることを本来の責務とし、
  公共事務の中核に位置づけていることから、同条四項及び五項は、土地所有者等
  が署名押印することを拒み又は署名押印することができない場合に、まず、土地
  所有者等に一番身近で土地・物件についての情報を数多く保有し、かつ、第一次
  的に地域住民に対する生活、人権、財産権を守り、福祉を増進させる義務を負っ
  ている市町村長に対し、当該市町村の事務として、署名等代行事務を義務づけ、
  その市町村長がこれを拒否した場合に、第二次的に地域住民に対して責任を負う
  都道府県知事に対し、当該都道府県の事務として署名等代行事務を義務づけたも
  のであり、右署名等代行により右調書に同法三八条の効力が付与されることから、
  市町村長又は都道府県知事は、土地所有者等の財産権及び適正手続を保障するた
  め、調書が正確に作成されるよう慎重に事実関係を調査する義務を負い、調書の
---------- 改ページ--------60
  内容に異議があるときには署名等代行を行わないことが許されるものである。ま
  た、地方自治法別表第三第一号(百八)及び同第四第二号(四三)には、土地収
  用法について都道府県知事及び市町村長の権限に属する機関委任事務が挙げられ
  ているが、同法三六条四項及び五項の市町村長及び都道府県知事の署名等代行に
  ついては記載されていない。さらに、同条四項が、市町村長は、当該市町村の吏
  員を立ち会わせ、署名押印させることができると定め、同条五項が、都道府県知
  事は、当該都道府県の吏員のうちから立会人を指名し、署名押印させなければな
  らないと規定するのは、署名等代行が本来地方公共団体の事務であるためである。
  これに、地方自治法二条六項二号は土地の収用に関する事務を地方公共団体の事
  務と定めていることを総合考慮すると、署名等代行事務は都道府県の公共事務で
  あり、仮にそうでないとしても都道府県に委任された事務(団体委任事務)と解
---------- 改ページ--------61
  すべきである。
   なお、事業認定以外の都道府県知事の収用事務は事業認定及び裁決に付随する
  手続とはいえないし、それと同じ法的性格を持つ手続ともいえない。また、署名
  等代行事務は事業の準備のための他人の土地への立入等の許可等の事務とは同種
  の事務とはいえないから、地方自治法別表第三第一号(百八)の「代執行をする
  等の事務」に含めることはできない。
 4 仮に、収用高権の発動たる事業認定や裁決に関する事務が国の事務であるとし
  ても、土地収用の手続は、収用高権の行使の手続と被収用者の財産権を保障する
  手統からなり、収用高権の適正な発動と財産権保障のための適正手統の観点から、
  両者の手続についての事務を同一主体に帰属させることなく、前者の手続を国の
  事務とし、後者の手続を普通地方公共団体の事務としたものであって、前記のと
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  おり士地収用法三六条四項及び五項に定める市町村長及ひ都道府県知事の署名等
  代行事務は後者の事務として当該地方公共団体の事務とされたものと解される。
 5 以上のとおり、土地収用法三六条五項の署名等代行事務は、都道府県の公共事
  務であり、仮に国の事務の性質を有するとしても団体委任事務であって、都道府
  県の自治事務である。そして、そのことは特措収用法三六条五項についても同様
  に当てはまるものである。地方自治法別表第三第一号(三の四)にも署名等代行
  事務は掲げられていない。

 (当裁判所の判断)
 1 都道府県知事は、法律及びこれに基づく政令によりその権限に属する国の事務
  を管理し執行することとされている(地方自治法一四八条一項)。したがって、
  当該事務が都道府県知事の権限に属する国の事務であるかどうかは、当該事務を
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  都道府県知事の権限に属せしめている法律等により定まるところであり、右の点
  について判断するには、右法律等の趣旨、文言、当該事務の性質等を検討する必
  要がある。また、同条二項は、都道府県知事の権限に属する国等の事務の中で法
  律等により都道府県知事が管理執行しなければならないものは別表第三のとおり
  である旨定めており、同条項及び別表第三は昭和二七年法律第三〇六号により追
  加されたものであるが、これは、都道府県知事にその管理執行が義務づけられた
  国等の事務の現状を明らかにして将来における行政の簡素化と事務配分の合理化
  に役立てるなどのために、当時において都道府県知事にその管理執行が義務づけ
  られた国等の事務とされていたものを別表第三として掲げたものであり、その後
  においても右の事務で同表に掲げられていないものについては随時追加等がされ
  てきたものであって、そのことは都道府県知事にその管理執行が義務づけられた
---------- 改ページ--------64
  国等の事務で同表に掲げられていないものが存在することを物語っている。した
  がって、当該事務が別表第三に掲げられていること、又は、同表に具体的に掲げ
  られていなくても同表に掲げられている事務に関連又は類似したものであること
  は、法が当該事務を都道府県知事にその管理執行が義務づけられた国等の事務と
  して規定したと解する有力な根拠になるといえる。さらに、地方自治法二二七条
  一項、二項、二二八条一項によれば、都道府県は、当該都道府県の事務で特定の
  者のためにするものについては条例により、当該都道府県の長又は委員会の権限
  に属する国等の事務で特定の者のためにするものについては法律若しくはこれに
  基づく政令又は規則によりそれぞれ手数料を徴収することができるとされている
  から、右の手数科に関する事項について条例で定められているか、法律、政令等
  で定められているかは、当該事務が都道府県知事の権限に属する国等の事務であ
---------- 改ページ--------65
  るかどうかを判断する際に考慮すべき事項と解される。
 2 そこで、以上の判断基準に基づき本件署名等代行事務が国の機関としての都道
  府県知事の権限に属する国の事務であるか否かについて判断するのに、本件署名
  等代行事務は特措法一四条一項により適用される土地収用法三六条五項の事務で
  あり、特措法は土地収用法の規定の多くを適用しているので、まず、土地収用法
  の土地収用手統についてみることとする。
   右土地収用手続は、建設大臣又は都道府県知事が起業者のために公用使用・収
  用権を設定する事業認定手統と、都道府県収用委員会が公用使用・収用権及び損
  失補償請求権の具体的内容を決定する裁決手続からなっている。憲法二九条三項
  は、私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができると
  定め、国が私有財産を公共のために収用又は制限することができることを明らか
---------- 改ページ--------66
  にするとともに、その際には正当な補償を行うことが必要であるとしているが、
  土地収用法は、そのための手続を事業認定手続及び裁決手統として定めたものと
  解される。したがって、事業認定手続及び裁決手続に関する事務はその性質上本
  来的に国の事務というべきであり、普通地方公共団体の公共事務と解することは
  できない。
   また、事業の認定に際しては、 (1)事業が土地収用法三条各号の一に掲げるも
  のに関するものであること、 (2)起業者が当該事業を遂行するに充分な意思と能
  力を有する者であること、 (3)事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に奇与す
  るものであること、 (4)土地を使用収用する公益上の必要があるものであること
  の四つの要件について審査が必要とされ(土地収用法二〇条)、あるいは、権利
  取得裁決においては使用収用する土地の区域や使用の方法、期間、土地所有権等
---------- 改ページ--------67
  の権利に対する損失の補償などについて審査が必要とされている(同法四八条)
  ところ、これらについての判断は、すべての国民に対し公平に、そして、全国的
  に統一して行われる必要があり、都道府県に委任されて当該都道府県限りの責任
  において当該都道府県独自の基準に基づいて決定される性質のものではない。
   さらに、事業認定申請及び収用等裁決申請の手数料に関する事項については土
  地収用法一二五条及び土地収用法施行令二条にその定めがある。
   これに加えて、事業認定手続については、地方自治法別表第三第一号(百八)
  に事業認定に関する事務が掲げられているところ、右(百八)は、前記昭和二七
  年法律第三〇六号により別表第三が追加された当時において、都道府県知事にそ
  の管理執行が義務づけられた国等の事務であるとして別表第三に掲げられたもの
  であり、また、都道府県知事が事業認定を拒否したときや一定の期間内に事業認
---------- 改ページ--------68
  定に関する処分を行わないときは、起業者は、建設大臣に対し、事業認定の申請
  ができるとされている(土地収用法二七条)。
   以上の点にかんがみると、事業認定や裁決に関する事務は都道府県に属する団
  体委任事務と解することはできず、事業認定に関する事務は都道府県知事の権限
  に属する国の事務であり、裁決に関する事務は都道府県収用委員会の権限に属す
  る国の事務と解するのが相当である。
   また、被告は、地方自治法二条六項三号が、都道府県が処理すべき事務として
  土地の収用に関する事務を掲げているから、事業認定や裁決に関する事務は都道
  府県の自治事務であると主張するが、同条項は同条四項と相俟って、同条三項に
  例示されているような同条二項の事務、すなわち、普通地方公共団体の事務につ
  いて都道府県と市町村の事務の配分の原別を示したものにすぎず、仮に同条六項
---------- 改ページ--------69
  に掲げられている事務でもそれが都道府県知事の権限に属する国の事務であれば
  当然都道府県の事務からは除かれるのであって、同条六項三号に土地の収用に関
  する事務が掲げられていることをもって、事業認定や裁決に関する事務を都道府
  県の事務と解することはできない。
 3 次に土地収用法三六条の土地・物件調書の作成又は同条五項の都道府県知事に
  よる署名等代行の各手続の趣旨、性質等について検討する。
   土地収用法は、起業者に対し、事業認定の告示後、土地・物件調書を作成し、
  その場合に土地所有者等を立ち会わせた上右調書に署名押印させること(三六条
  一項、二項)、収用委員会に対し裁決を申請しようとするときは土地調書若しく
  は物件調書又はその写しを提出すること(四〇条一項三号、四七条の三第一項二
  号)を義務づけている。これは、裁決申請後の収用委員会の審理において収用・
---------- 改ページ--------70
  使用に係る土地に関する事柄の真偽をめぐって起業者と土地所有者等との間で争
  いがあるときに、収用委員会が自ら現地調査や測量等を行って確認しなければな
  らないとすると、裁決手続が長期化し望ましくないことから、起業者に対し、裁
  決申請の準備手続として、当該土地及びその土地の上にある物件に関する事実及
  び権利の状態についての土地調書又は物件調書を作成してこれを裁決申請の際に
  添付することを義務づけ、右調書作成の際には、土地所有者等にその記載内容を
  確認させて異議がなければそのまま署名押印させ、記載事項が真実でない旨の異
  議を有する者についてはその内容を当該調書に附記して署名押印することができ
  ることを認め、このようにして作成された土地・物件調書の記載事項については
  異議が附記された事項を除き一応真実であるとする推定力を与え、土地所有者等
  は、それが真実に反していることを立証しない限り、異議を述べることができな
---------- 改ページ--------71
  いこととして収用委員会における審理を円滑かつ迅速に進行させようとしたもの
  である。ところが、土地所有者等が土地・物件調書に署名押印しない場合、調書
  が作成されないことになり、裁決の申請に必要な書類の一つが整わず、起業者が
  裁決の申請をすることができなくなる。そこで、同法三六条四項及び五項は、市
  町村長及び都道府県知事による署名等代行を認めたものであるが、右規定は、土
  地所有者等が立会及び署名押印並びに土地・物件調書に異議内容を附記してその
  点について推定力が付与されるのを排除する機会を与えられたにもかかわらず署
  名押印を拒み又は署名押印できない場合に、調書の作成が完了しないことによる
  弊害を避け、収用委員会における審理の円滑かつ迅速な進行を図るために、市町
  村長又は都道府県知事か自ら立ち会って署名押印し又は吏員に立ち会わせて署名
  押印させることにより調書の作成を完了させて、裁決の申請に必要な書類の一つ
---------- 改ページ--------72
  を整えさせるとともに、公的立会人をして土地・物件調書を確認させ、もって、
  調書の作成手続の適正を保障しようとしたものであり、同条六項が、署名等代行
  に際し、起業者と一定の関係にある者は立会人になることができないと規定して
  いることもその趣旨の表れといえる。そうすると、右立会人は、土地所有者等の
  代理人として当該調書の記載事項の真実であることまで調査した上これを確認し
  なければ署名押印することができないというものではなく、土地・物件調書が測
  量、調査その他の資料に基づき一応の合理性が認められる方法により作成された
  ものであることを確認すれば署名押印することができ、また、署名押印しなけれ
  ばならないものと解するのが相当である。このように署名等代行事務は、事業認
  定により公用使用・収用権を付与された起業者が裁決手続の円滑かつ迅速な進行
  を図るために義務づけられた土地・物件調書の作成について、その手続の適正を
---------- 改ページ--------73
  保障しつつ、これを完成させて、裁決申請に必要な書類の一つを整えさせる補充
  的事務であり、事業認定手続又は裁決手続に付随し、公共の利益となる事業に必
  要な土地等の使用収用について、公共の利益の増進と私有財産との調整を図るた
  めに起業者を監督する観点から行われる事務と解される。
   ところで、土地収用法三六条五項の署名等代行事務は地方自治法別表第三には
  特に具体的に明示されていない。しかしながら、そのことにより、右事務が都道
  府県知事にその管理執行が義務づけられた国の事務であることが否定されるわけ
  でないことは前記のとおりである上、同表第三第一号(百八)には「土地収用法
  の定めるところにより、…する等の事務を行うこと。」とあるのであって、具体
  的に列挙されていないことから直ちに右署名等代行事務が都道府県知事にその管
  理執行が義務づけられた国の事務でないと断定することはできない。そこで、右
---------- 改ページ--------74
  署名等代行事務と同表に列挙されている事務との類似性等について検討を加える
  のに、同表第三第一号(百八)には、前記事業認定に関する事務のほか、土地収
  用法による、事業の準備のため他人の土地への立入等を許可する事務、土地等の
  取得に関する関係当事者間の合意が成立するに至らなかった場合のあっせんに関
  する事務、起業者が収用・使用手続を保留した起業地についてその手続を開始す
  る旨を告示する事務、義務者が土地等の引渡等の義務を履行しない場合に代執行
  をする事務が掲げられているところであるが、これらの事務はいずれも事業認定
  手続及び裁決手続に付随し、公共の利益となる事業に必要な土地等の使用収用に
  ついて、公共の利益の増進と私有財産との調整を図るものであり、それらの中に
  は起業者を監督する観点から行われるものも含まれている。
   そうすると、都道府県知事による署名等代行事務は、地方自治法別表第三第一
---------- 改ページ--------75
  号(百八)に掲げられている事務とその性質を異にするものとはいえないのであ
  って、土地収用法が事業認定手続及び裁決手統並びにその他の右別表に掲げられ
  ている付随手続に関する事務を国の事務としながら、これと同じ性質を有し、し
  かも、事業認定と裁決申請を架橋する重要な機能を営む署名等代行事務のみを切
  り離してこれを都道府県限りの責任で処理することを許容したものとは到底考え
  られない。むしろ、土地収用法は、公的立会人として調書の作成手続の適正を担
  保できる上、地理的関係等からみてそれが容易かつ有効であるという行政事務上
  の便宜から、署名等代行事務を国の機関としての都道府県知事に委任してその管
  理執行を義務づけたものと解されるのであって、結局、署名等代行事務は、右
  (百八)の「土地収用法の定めるところにより、…する等の事務を行うこと。」
  に含まれ、土地収用法三六条五項により国の機関としての都道府県知事の権限に
---------- 改ページ--------76
  属する国の事務に該当するものと解するのが相当である。
   なお、被告は、署名等代行事務が土地所有者等の財産権や適正手続を保障する
  ものであることを挙げて右事務が普通地方公共団体の自治事務であると主張する
  が、国の事務においても土地所有者等の財産権や適正手続の保障に努める必要性
  があることはいうまでもないのであって、署名等代行事務が土地所有者等の財産
  権や適正手続を保障するものであることをもって直ちに本件署名等代行事務が自
  治事務であるということはできない。
 4 そして、特措法は、安保条約六条に基づく地位協定を実施するため駐留軍の用
  に供する土地等の使用又は収用に関し規定することを目的とし(一条)、起業者
  を防衛施設局長とし、事業認定に相当する土地等の使用又は認定を内閣総理大臣
  が行うなどの特例措置が定められるほかは土地収用法の規定の多くを適用するも
---------- 改ページ--------77
  のであり、土地収用法の特別法といえる上、特措法により土地等の使用権原を取
  得する事務が国の安全保障に係わるものであることを考慮すると、土地収用法に
  ついて述べた趣旨は、より一層特措法にも妥当するものと解される。そうすると、
  特措収用法三六条五項の都道府県知事の署名等代行事務は、土地収用法三六条五
  項のそれと同様の趣旨及び目的から定められ、また、これと同じ性質を有し、地
  方自治法別表第三第一号(三の四)の「特措法の定めるところにより、…する等
  の事務を行うこと。」(実質的には昭和二八年法律第二一二号により別表第三に
  追加されたもの)に含まれるものであり、特措収用法三六条五項により国の機関
  としての都道府県知事の権限に属する国の事務であると解するのが相当である。
 5 これに対し、被告は、収用高権の発動主体と財産権の保障主体が同一であるこ
  とを回避するため、土地収用法は、収用高権の行使の手続を国の事務とし、被収
---------- 改ページ--------78
  用者の財産権保障の手続を地方公共団体の事務としており、裁決事務、起業者に
  よる事業準備のための他人の土地への立入等を許可する事務、都道府県知事によ
  る事業認定事務は後者の事務であり、署名等代行事務も被収用者の財産権を保障
  するための事務であって、地方公共団体の事務であると主張するが、前記のとお
  り、裁決事務、右立入等の許可事務、事業認定事務が国の事務であることは明ら
  かである上、被告の主張によると、起業者が都道府県である場合に都道府県知事
  が署名等代行事務を行うことができることや都道府県知事が事業認定をした場合
  に都道府県知事が署名等代行事務を行うことができることの説明が困難であり、
  その他これまでの説示に照らしても、被告の主張は採用の限りではない。
   また、被告は、総務庁行政監察局作成に係る「国の関与現況表」(甲五七の
   (1))によると、土地収用法一六条の事業認定は「団体事務」(団体委任事務、
---------- 改ページ--------79
  公共事務、その他国の事務に属さない行政事務)に分類されており、国において
  も事業認定事務を地方公共団体の事務として取り扱っていると主張する。しかし
  ながら、被告が指摘する「団体事務」は、国の行政機関が関与する地方公共団体
  の当該事務そのものの性格を示したものにすぎない(甲五七の (2))、すなわち、
  国の機関としての建設大臣・都道府県知事が関与する、都道府県・市町村が起業
  者として土地を収用し又は使用する事務が当該地方公共団体の自治事務であるこ
  とを示したにすぎないものであって、被告の主張は採用できない。
   さらに、被告は、後記のとおり、地方自治法一四八条二項は、同条一項の都道
  府県知事の権限に属せしめられた機関委任事務のうちの一部を同法別表第三に掲
  げてその管理執行を都道府県知事に義務づけ、同法一五〇条により主務大臣の指
  揮監督に服することとしたものであるところ、特措収用法三六条五項の署名等代
---------- 改ページ--------80
  行事務は右別表に掲げられていないから、都道府県知事は右署名等代行事務の管
  理執行を義務づけられることも、地方自治法一五〇条により主務大臣の指揮監督
  に服することもなく、したがって、同法一五一条の二の手続がとられることもな
  い旨主張するが、特措収用法三六条五項の署名等代行事務は地方自治法別表第三
  第一号(三の四)の「特措法の定めるところにより、…する等の事務を行うこ
  と。」に含まれることは前記のとおりであるから、被告の主張は前提を欠くもの
  であって採用できない。
 6 以上のとおりであるから、本件署名等代行事務は、特措収用法三六条五項によ
  り都道府県知事である被告の権限に属する国の事務であり、地方自治法一五一条
  の二第一項の「国の機関としての都道府県知事の権限に属する国の事務」に該当
  するものと解される。
---------- 改ページ--------81
二 本件署名等代行事務についての主務大臣は原告か
 (原告の主張)
  防衛庁設置法によれば、防衛庁及び防衛施設庁の所掌事務として、駐留軍の使用
 に供する施設及び区域の決定、取得及び提供に関することが掲げられており(五条
 二五号、六条一四号、四二条、四三条)、防衛施設庁は防衛庁に置かれ(国家行政
 組織法三条三項但書、四項、別表第一備考、防衛庁設置法三九条)、防衛庁は総理
 府の外局である(国家行政組織法三条二項、四項、別表第一、防衛庁設置法二条)
 から、防衛庁及び防衛施設庁の所掌事務は総理府に分配された所掌事務である。そ
 して、原告は総理府の長であり、主任の大臣として総理府の行政事務を分担管理す
 るものである(国家行政組織法五条一項)。そうすると、原告は、特措法に基づく
 土地の使用権原取得手続に係る一連の事務全般を所掌するものと解されるところ、
---------- 改ページ--------82
 その一環をなす署名等代行事務のみが切り離されて建設大臣の所掌する事務となる
 と解する余地はない。したがって、本件署名等代行事務についての主務大臣は原告
 である。
 (被告の主張)
 1 本件署名等代行事務は建設省の所掌する事務であり、総理府の所掌する事務で
  はないから、右事務についての主務大臣は建設大臣であり、原告ではない。その
  理由は次のとおりである。
   特措法に基づく使用認定申請者の地位と同法に基づく使用認定権者としての地
  位を混同すべきではない。防衛施設局長が起業者として特措法に基づき使用権原
  取得のために行う事業の準備、使用認定申請、補償金支払等の事務は、防衛庁設
  置法五条二五号、四二条にいう駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得
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  及び提供に該当し、防衛庁及び防衛施設庁の所掌事務となるが、これは前者の地
  位に係るものであり、右規定の存在を理由に、後者の地位に係る使用認定に関す
  る事務を総理府の所掌事務と解することはできないし、まして、特措収用法三六
  条五項に基づく署名等代行事務を総理府の所掌事務と解することはできない。
   特措法一四条一項により適用される土地収用法の規定に定められている事務は、
  特措法に特別の定めがある場合を除いて、土地収用法の解釈に基づきその所掌が
  決められるべきである。そして、特措収用法三六条は土地所有者等の財産権の確
  保及び適正手続の保障を目的とするものであり、収用高権の発動としての使用認
  定事務とはその性質を異にするものであるから、使用認定事務が原告の所掌事務
  とされていることを理由に署名等代行事務を原告又は総理府の所掌事務とするの
  は相当でなく、また、特措法には、都道府県知事による署名等代行についてこれ
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  を原告の所掌する事務と定める特別の規定はないから、土地収用法の規定に従い、
  署名等代行事務は、建設大臣又は建設省の所掌事務と解するのが、収用高権の発
  動主体と財産権の保障主体の同一帰属の回避という、署名等代行の制度を置いた
  法の趣旨に最も合致する。
 2 防衛施設局長は、起業者として裁決申請のための調書作成作業をしているので
  あり、特措収用法三六条五項は都道府県知事に対し起業者との関係で署名等代行
  を義務づけているのであるから、国において、被告の取扱いに不服があるのであ
  れば、起業者たる那覇防衛施設局長に代表される事業主体として、被告に対し、
  抗告訴訟、当事者訴訟、給付訴訟を提起すべきである。
 (当裁判所の判断)
 1 土地の使用収用に関する事務は建設省の所掌事務とされ(建設省設置法三条三
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  七号)、土地収用法が事業認定の権限を建設大臣に与えていること(二〇条)か
  らすると、土地の使用収用に関する事務についての主務大臣は建設大臣であると
  解される。
   しかしながら、特措法は、安保条約六条に基づく地位協定を実施するため、駐
  留軍の用に供する土地等の国による使用収用に関し規定するものであり(1条)、
  その手続をみると、まず、駐留軍用地の用に供するため土地等を使用収用しよう
  とするときは、防衛施設局長において使用収用認定申請書を防衛施設庁長官及び
  防衛庁長官を通じ原告に提出することとし(四条一項)、原告は、右申請に係る
  土地等の使用収用が所定の要件に該当すると認めるときは、土地等の使用収用の
  認定をしなければならないとして(五条)、原告に対し、防衛施設局長の申請に
  係る土地等の使用収用の認定に関する権限を付与している。また、使用収用認定
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  の告示後、土地等を使用収用する必要がなくなったときは、防衛施設局長は、遅
  滞なく、その旨を原告に報告しなければならず、原告はその報告を受けたときは、
  土地等の使用収用の認定が将来に向かってその効力を失う旨の告示をしなければ
  ならないとし(八条)、防衛施設局長が同法一一条一項の規定により現状に回復
  しないで返還することなど同法一二条所定の事項について不服のある者は、原告
  に対し異議を申し出ることができる旨定めている。(一二条)。
   一方、駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供に関すること
  は防衛庁及び防衛施設庁の所掌事務とされ(防衛庁設置法五条二五号、四二条)、
  駐留軍に対して施設及び区域を提供することは防衛庁及び防衛施設長の権限とさ
  れている(同法六条一四号、四三条)。防衛施設局は防衛施設長の地方支分部局
  として置かれ同庁の所掌事務を分掌し(同法五二条、五三条)、防衛施設庁は防
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  衛庁に置かれ(国家行政組織法三条三項但書、四項、別表第一備考、防衛庁設置
  法三九条)、防衛庁は総理府の外局である(国家行政組織法三条二項、四項、別
  表第一、防衛庁設置法二条)から、防衛庁ないし防衛施設庁の所掌事務は総理府
  に分配された所掌事務である。そして、総理府の長は原告であり、内閣法にいう
  主任の大臣として、総理府の行政事務を分担管理するものである(国家行政組織
  法五条一項)。
   そうすると、地位協定に基づき駐留軍の用に供する土地等の国による使用収用
  に関する事務は、駐留軍の使用に供する施設及び区域の決定、取得及び提供に関
  するものとして、防衛庁及び防衛施設庁の所掌事務であり、総理府に分配された
  所掌事務であって、現に、使用収用認定申請書等の様式は、総理府令である特措
  法施行規則により定められている。
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   そして、特措法が原告に対し使用収用の認定に関する権限を付与したのは、後
  記のとおり、使用収用認定の要件の有無の審査には国の安全保障に係わる政策的
  かつ技術的な判断を要することから、その最終的な判断を内閣の首長である原告
  に委ねるのが相当とされたことによるものと解されるが、特措法が使用収用認定
  に関する事務のほか前記の事務についても原告に権限を付与していることを併せ
  考えると、原告が、総理府の長でもあり上級行政機関として防衛施設局長を監督
  する立場にあることから、これらの使用収用に関する事務について権限を付与さ
  れたものであることもまた否定することはできないのであって、少なくとも駐留
  軍の用に供する土地等の国による使用収用に関し防衛施設局長を監督する事務は
  原告の権限に属するものと解される。そうすると、前記のとおり、特措収用法三
  六条五項の署名等代行事務は、防衛施設局長による土地・物件調書作成手続の適
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  正を担保しつつその裁決申請に必要な書類の一つを整えさせるという趣旨で規定
  されたものであるから、駐留軍の用に供する土地等の国による使用収用に関し防
  衛施設局長を監督する事務として、原告の権限に属するものであり、したがって、
  本件署名等代行事務についての主務大臣は原告と解するのが相当である。
 2 被告は、収用高権の発動主体と財産権の保障主体の同一帰属の回避という、署
  名等代行の制度を置いた法の趣旨から、土地収用法の規定に従い、本件署名等代
  行事務についての主務大臣は建設大臣であると主張する。しかしながら、被告の
  主張は、前記のとおり右署名等代行の制度の趣旨の主張自体到底採り得ない独自
  の解釈にすぎない上、土地収用法による使用収用において建設大臣が事業認定権
  者である場合の説明が困難であり、採用の限りではない。
   また、被告は、昭和三〇年に山形県知事が、改正前の特措法に基づき仙台調達
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  局長が進めていた使用手続において、県知事指定の吏員による立会署名押印につ
  いて照会したのに対し、建設省は、同年一〇月二八日建設計形第九五号「山形県
  知事あて計画局長回答」をもって回答をした行政実例(甲三九)が存するとして、
  本件署名等代行事務の主務大臣は建設大臣であると主張する。しかしながら、右
  実例は、山形県知事が建設省に対し土地収用法三六条五項の解釈に関する照会を
  したところ、建設省が、土地収用法に係る事務の所管庁として同法三六条五項に
  ついての一般的解釈を示したにすぎないものであり、右実例をもって、本件署名
  等代行事務の所管庁が建設省であるということはできない。
 3 本件署名等代行事務が被告の権限に属する国の事務であることは前記のとおり
  であるところ、被告は、国が起業者としての立場から被告に対し本件署名等代行
  を求める抗告訴訟、当事者訴訟、給付訴訟を提起する方法をとることができる旨
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  主張する。しかしながら、被告は、国の機関としての立場から国の事務を管理執
  行するのであるから、被告の主張する方法によると、国が国の機関に対し、抗告
  訴訟、当事者訴訟、給付訴訟を提起することになるが、その訴訟は、国という法
  主体の内部の争いに係るものであって、裁判所法三条の法律上の争訟に当たらず、
  不適法を免れないのであって、被告の主張は採用できない。
第四 本件命令の実質的適否(本件署名等代行義務の存否)について
  都道府県知事は、法律に基づき委任された国の事務を処理する関係においては国
 の機関としての地位を有し、その事務処理については、主務大臣の指揮監督を受け
 るべきものである(国家行政組織法一五条一項、地方自治法一五〇条)が、右事務
 の管理執行に関する主務大臣の指揮監督につき、いわゆる上命下服の関係にある国
 の本来の行政機構内部における指揮監督の方法と同様の方法を採用することは、都
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 道府県知事本来の地位の自主独立性を害し、ひいては地方自治の本旨にもとる結果
 となるおそれがある。そこで、地方自治法一五一条の二は、都道府県知事本来の地
 位の自主独立性の尊重と国の指揮監督権の実効性との間の調和を図る趣旨から、職
 務執行命令訴訟の制度を採用したものである。そして、右訴訟においては、裁判所
 は、主務大臣の都道府県知事に対する命令の内容の適否を実質的に審査し当該命令
 の適法性を是認できる場合には、当該都道府県知事に対し、当該事項を行うべきこ
 とを命ずる判決をすることになり(同条六項)、右判決には、都道府県知事が判決
 に定められた期限までに当該事項を行わないときは、主務大臣が代執行権を行使す
 ることができる旨の効果が付与されており(同条八項)、これによって、主務大臣
 の指揮監督権の実効性が確保されているのである(最高裁判所昭和三五年六月一七
 日第二小法廷判決・民集一四卷一四二〇頁参照)。
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  したがって、当該国の事務の管理執行について主務大臣の判断と都道府県知事の
 それが異なり両者が抵触する場合には、裁判所がそのいずれが正当であるかを審査
 判断すべきことになるのであって、裁判所は、主務大臣の判断のいかんにかかわら
 ず、都道府県知事が法律上当該命令に係る事項をなすべき義務を負うか否かを審査
 判断して右命令の実質的適否を決すべきものと解される。
  本件訴訟において、被告は、種々の理由を挙げて、本件命令が実質的に違法であ
 り、被告は本件署名等代行事務を執行する義務を負わない旨主張するので、以下、
 順次検討を加える。

 一 本件調書の作成に関する瑕疵の有無
 (原告の主張)
 1 那覇防衛施設局長は、現地における測量、調査、その結果の整理、土地・物件
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  調書への記載、実測平面図の添付という過程を経て、本件各土地について土地・
  物件調書となるべき図書を作成した。これに添付の実測平面図の作成手続は次の
  とおりである。
   本件各土地のいずれについても、本件使用認定前からあった既存の資科である
  登記所備付けの地籍図(本件6士地については地籍図原図)と位置境界明確化作
  業において調査、測量された成果を利用して、実測平面図を作成した上、現地に
  おいて測量し、対象土地の各筆界点を特定して、各筆界点に杭打ちないし鋲打ち
  等を行って現地で土地の位置境界を確認し、現地復元性があることを確認したも
  のである。
   本件1土地、本件2土地のうち松田正太郎所有地、本件7土地のうち金城昇、
  比嘉信子及び喜友名朝則各所有地並びに本件8土地(以下、これらの土地を「平
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  成四年裁決土地」という。)以外の本件各土地についてはいずれも、本件使用認
  定の申請の前に測量作業を実施し、本件使用認定の後、那覇防衛施設局職員が、
  現地において、本件使用認定前に現地で測量した際に打った杭等の状況に変化が
  ないことを計測等により確認し、右各土地に係る実測平面図が本件使用認定後の
  土地の現況を表すことを確認した上で、これを右各土地に係る土地調書に添付し
  て、土地調書となるべき図書を作成した。
   平成四年裁決土地については、いずれも平成四年二月に収用委員会の使用裁決
  を得ており、その裁決申請に当たり、現地で前記のような方法で杭打ち等の作業
  を行って、その実測平面図に現地復元性があることを確認している。そして、前
  記のとおり、本件使用認定申請前に各実測平面図を作成したが、平成四年裁決の
  申請時に現地で測量した際に打った杭等の状況に変化がなかったため測量作業を
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  最初からやり直す必要を認めず、今回の特措法に基づく使用手統のために改めて
  現地で測量作業をしなかった。そこで、本件使用認定の後に、那覇防衛施設局職
  員が、現地において平成四年裁決土地に係る実測平面図の原案が本件使用認定後
  の土地の現況を表すことを確認した上で、これを平成四年裁決土地に係る土地調
  書に添付して、土地調書となるべき図書を作成した。
 2 本件6士地はいわゆる地籍不明地であるが、次のとおり、現地において特定さ
  れているぱかりでなく、その所有者が島袋善祐であることは明らかである。すな
  わち、位置境界明確化手続の中で、本件6土地を含む字等の区域(ブロック)と
  隣接ブロックとの境界は確定し、本件6土地を含むブロック(一三〇筆、土地所
  有者六五名)については、島袋善祐以外の土地所有者(一二九筆、土地所有者六
  四名)は自己の所有する土地を現地において確認し、現地確認書に署名押印した。
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  島袋善祐が現地確認書に署名押印しない理由はその所有する土地の位置境界に不
  服があるからではなく、もっぱら米軍基地の存在、駐留軍用地としての使用を前
  提とした那覇防衛施設局が行う駐留軍用地に係る位置境界明確化作業に反対して
  いることにある。島袋善祐は、現地確認立会の後、度々、那覇防衛施設局に対し、
  本件6土地が所在するキャンプ・シールズの返還時期を明示すれぱ現地確認書に
  押印する旨述べている。
   そして、那覇防衛施設局では、島袋善祐が署名押印すれぱいつでも国土調査の
  成果としての認証の申請をすることができるように、地図及び簿冊の原案を作成
  し、保管している。そして、同局長は、前記のとおり、これらの原案に基づき、
  土地・物件調書となるべき図書及び添付すべき実測平面図を作成し、この結果を
  現地において復元して確認したものである。
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 3 特措収用法三六条二項による土地所有者等の立会は、土地・物件調書の作成の
  過程が適式であるか否かを確認させる手続にすぎず、右調書の記載事項が現地と
  符合することを直接確認させる手続ではない。したがって、同条項にいう「立会」
  は、右調書のすべての作成過程における立会や現地における立会をいうのではな
  く、防衛施設局長は、最終的に土地・物件調書が作成された段階において、右調
  書の作成の場において、土地所有者等を立ち会わせ、その基礎となった資料を示
  す等して右調書の記載事項を説明することで足りる。
 4 市町村長又は都道府県知事は、特措収用法三六条四項、五項による署名等代行
  をするに際し、土地・物件調書の記載事項が真実か否かを確認してこれを執行す
  るのではなく、右調書が測量、調査等に基づいて適式に作成されたことを確認す
  れぱこれを執行すべきであり、また、現地での立会も求められていない。
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 (被告の主張)
  本件調書の作成手続及び内容については次のような瑕疵があるから、被告は本件
 署名等代行事務の執行を拒否することができるのであり、被告には、本件署名等代
 行事務を執行する義務は存しない。
 1 沖縄県は、第二次世界大戦により公図、登記簿、権利証等が滅失し、戦後地籍
  の確定が行えなかったという特殊事情を有する地域であり、未だ地籍の確定して
  いない地域が存する。このような地域において裁決申請のための土地・物件調書
  を作成する場合には、防衛施設局長は、地籍が確定しているか否かを土地調書に
  記載するか、それを明らかにする書類を添付して立会署名押印を申請すべきであ
  る。しかし、本件においてはこれが行われていないから、本件調書の作成手続に
  は瑕疵がある。
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 2 地籍不明地は土地の位置境界や土地所有者が不明なものであり、本来土地調書
  が作成され得ない土地である。地籍不明地についての実測図面は土地の位置境界
  を特定するだけであり、地籍が明確化されない以上、依然として地番、所有者は
  不明のままであるから、地籍不明地の土地調書は地番及び所有者は不明とならな
  けれぱならない。ところが、那覇防衛施設局長は地籍不明地である本件6土地に
  ついても土地調書を作成し、地番及び所有者が島袋善祐であることを特定してい
  るのであって、右調書は作成手続のみならず内容にも瑕庇がある。
 3 那覇防衛施設局長は、本件調書を作成するに当たり、平成四年裁決土地につい
  ては実測平面図を新たに作成しておらず、平成四年の裁決申請の際に作成した実
  測平面図を再使用したものであり、右実測平面図は、平成四年の現地を反映する
  ものであり、本件使用認定申請時の現地を反映するものではない。したがって、
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  同局長が、平成四年裁決土地について、実測平面図を添付することなく平成四年
  の裁決申請の際作成した図面を添付して土地所有者等に対し立会及び土地・物件
  調書への署名押印を求めた手続には瑕疵がある。
 4 本件調書は、裁決申請のためのものであり、本件調書に添付される図面は土地
  所有者と土地との関係を示す図面でなけれぱならないから、土地家屋調査士によ
  り作成されたものでなければならない。特に、対象土地が本件各土地のように米
  軍基地内の土地、地籍不明地、位置境界明確化法により地籍が明確化された土地
  である場合にはその必要性は高い。ところが、本件調書に添付されている図面は
  測量士により作成されたものであるから、本件調書の作成手続には瑕疵がある。
 5 那覇防衛施設局長は、土地・物件調書の作成に当たって土地所有者等を現地で
  立ち会わせその意見を聴かなけれぱならない。これは、起業者の恣意的な土地・
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  物件調書の作成を抑制し、土地所有者等の財産権や適正手続を保障するための不
  可欠な手続であり、特に本件各土地が戦後五〇年間も米軍基地として使用されて
  おり、土地所有者等は右基地内の本件各土地の現況を知り得ない状況にあること
  を考えると、極めて重要な手続である。本件各土地の所有者は、平成七年三月二
  二日、五月一九日、同月二三日に本件各土地の概況を確認するため、那覇防衛施
  設局長に対し現地への立入調査を要求したが、同局長はこれを拒否した上、土地
  所有者等に対し現地以外の場所での立会及び土地・物件調書への署名押印を求め
  る通知をし、右通知の日時場所に土地所有者等が現れなかったことから、これを
  拒否とみなして市町村長に署名等代行を求めたものである。しかし、本件各土地
  所有者等は立会署名押印を拒否したのではなく、現地での立会が保障されるまで
  その署名押印を留保しているにすぎないのであるから、同局長の右の措置は違法
---------- 改ページ--------103
  である。
 6 特措収用法三六条二項、四項、五項の「立会」とは、立会人には土地・物件調
  書の内容が真実であるか否かを確認し、調書作成手続の適正さを確認する機会が
  保障されていることから、いずれも当該土地等の所在する現地における立会を意
  味する。ところが、那覇防衛施設局長は、本件各土地の土地・物件調書について、
  同条二項に基づき土地所有者等に対し立会及び署名押印を、同条四項及び五項に
  基づき関係市村長及び被告に対し署名等代行をそれぞれ求めるに当たり、本件各
  土地の現場におけるそれを求めていないから、いずれの手続も違法であり、結局、
  同局長の被告に対する署名等代行の申請は違法を免れない。
 7 土地所有者等が立会署名押印をしていない土地については、都道府県知事が土
  地所有者等から土地・物件調書についての意見を聴取しなけれぱならず、その意
---------- 改ページ--------104
  見聴取を終えるまでには土地・物件調書の内容の真偽の確認ができないため都道
  府県知事は署名等代行を行うことができない。土地所有者等が意見聴取に協力し
  ない場合は、都道府県知事はできるだけ他の方法で土地・物件調書の内容の真偽
  を確認すべく最善の努力を尽くさなけれぱならない。したがって、被告は、本件
  調書の内容について右の確認ができていない状況であるから、本件調書について
  署名等代行事務を執行することはできない。
 (当裁判所の判断)
 1 まず、国の委任事務である署名等代行事務を都道府県知事に課している特措収
  用法三六条五項が、どのような要件の下に、都道府県知事に対し、署名等代行事
  務の執行を義務づけているかについて検討する。
   前記のとおり、特措収用法三六条は、使用認定の告示後に裁決申請の準備手続
---------- 改ページ--------105
  として行われる、防衛施設局長による土地・物件調書の作成手続を定めた規定で
  あるが、防衛施設局長による右調書の作成は、収用委員会における審理の際に、
  事実の調査、確認をすることによる煩雑さを避け、審理の円滑かつ迅速な進行を
  図るために、あらかじめ、使用する土地及びその土地の上にある物件に関する事
  実及び権利の状態についての争いの有無を整理するために行われるものであり、
  土地所有者等は、土地・物件調書の記載事項が真実でない旨の異議があるときは
  その内容を調書に附記して署名押印することができ(同条三項)、防衛施設局長
  は、収用委員会に裁決申請をする際、右土地所有者等の異議を附記したまま同調
  書を提出することが認められ、その場合には、収用委員会の審理の段階において、
  右の異議が附記された調書の記載事項が真実であることを立証する必要がある。
  他方、右の異議を附記しなかった土地所有者等も、収用委員会の審理において、
---------- 改ページ--------106
  土地・物件調書の記載事項が真実に反していることを立証することは妨げられな
  い(同法三八条)。また、収用委員会は、十分に審理を尽くしても、土地所有者
  等の氏名等を確知することができないときはその旨の裁決をすることも許される
  (同法四八条四項)。このような土地・物件調書の作成の趣旨及ぴ収用委員会に
  おける同調書の記載事項についての審理の構造のほか、都道府県知事による署名
  等代行が、土地所有者等が立会及び土地・物件調書への署名押印並びに同調書の
  記哉事項についての異議附記の機会を与えられたにもかかわらずこれを拒否した
  場合等に限って認められ、また、その方法も、当該都道府県知事が当該都道府県
  の吏員のうちから立会人を指名し、右立会人をして土地・物件調書に署名押印さ
  せることとされていることを併せ考えると、都道府県知事による署名等代行は、
  立会人において、右調書の記載事項が真実であることまで調査した上これを確認
---------- 改ページ--------107
  しなければ署名押印できないというものではなく、右調書が測量、調査その他の
  資料に基づき一応の合理性が認められる方法により作成されたものであることを
  確認すれぱ署名押印することができ、また、しなけれぱならないものと解するの
  が相当である。
   以上の説示及ぴ特措収用法三六条の規定に徴すると、都道府県知事は、 (1)使
  用認定の告示があったこと、 (2)防衛施設局長が測量、調査その他の資料に基づ
  き一応の合理性が認められる方法により土地・物件調書を作成したこと、 (3)防
  衛施設局長が土地所有者等を立ち会わせ右調書に署名押印する機会を与えたのに、
  土地所有者等が右署名押印を拒み又はこれをすることができなかったこと、 (4)
  防衛施設局長が市町村長に対し立会及ぴ署名押印を求めたのに、市町村長がこれ
  を拒んだこと、 (5)防衛施設局長が都道府県知事に対し当該都道府県の吏員のう
  ちから立会人を指名し署名押印させることを求めたこと、以上の要件を充足した
---------- 改ページ--------108
  場合、署名等代行事務を執行する義務を負うものと解される。そこで、右の要件
  について、以下、順次検討を加える。
 2 本件各土地について使用認定の告示があったことは前提事実のとおりである。
 3 那覇防衛施設局長が測量、調査その他の資料に基づき一応の合理性が認められ
  る方法により本件調書を作成したか否かについて
(一) 証拠(甲二ないし六の各 (6)、七の(11)、八の (6)、四一、四二の (1)ない
   し(24)、四三の (1)ないし(24)、四五の (1)、 (2)、四六、五〇ないし五五、
   五八、六六の (1)ないし(11)、乙五六、証人佐伯惠通)及び弁論の全趣旨を総
   合すれば、次の事実が認められる。
 (1)那覇防衛施設局長は、本件使用認定の告示後、土地・物件調書の作成に着手
---------- 改ページ--------109
   した。土地・物件調書に添付すべき実測平面図の作成は測量土に委託され、後
   記 (4)及び (5)のとおり同調書及びこれに添付すべき実測平面図の原案が作成
   された。なお、本件各土地のうち本件6土地以外の土地(以下「本件6以外の
   土地」という。)については、位置境界明確化法が規定する位置境界の明確化
   作業により、当該土地に係る地図及ぴ簿冊が作成され、これが認証された国土
   調査の成果と同一の効果があるものとして指定され、この地図が登記所備付け
   の地籍図となっている。
 (2)ところで、位置境界明確化法は、太平洋戦争による破壊又は米軍の行為によ
   って、土地の形質が変更され、又は土地登記簿及び地図が滅失したことにより、
   沖縄県の区域内において位置境界不明地域が広範かつ大規模に存在することと
   なり、関係所有者等の社会的経済的生活に著しい支障を及ぼしていることにか
---------- 改ページ--------110
   んがみ、その位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明確化のための措
   置等の緊急かつ計画的な実施を図り、もって沖縄県の住民の生活の安定と向上
   に資することを目的として制定され(同法一条、二条)、昭和五二年五月一八
   日公布された。同法による土地の位置境界の明確化手続の概要は次のとおりで
   あり、基礎作業、地図編纂作業、復元作業、成果認証作業の四段階に分かれる。
   本件6以外の土地については概ねこのような位置境界明確化作業がされた。
    基礎作業は、位置境界不明地域を指定し、右地域について市町村界、字界、
   物証等を記載した地図を作成する手続である。防衛施設庁長官は、昭和五二年
   二月一八日、位置境界不明地域を指定し、右指定に係る地域を告示(防衛施設
   庁告示第一七号)するとともに、沖縄県知事及び関係市町村長に通知した(法
---------- 改ページ--------111
   二条、位置境界明確化法施行令(以下「令」という。)一条一項)。那覇防衛施
   設局長(法二五条、令一六条二項)は、位置境界不明地域について、市町村界
   にあっては沖縄県知事及ぴ関係市町村長と、市町村の区域内の字界にあっては
   関係市町村長とそれぞれ協議するなどして、市町村界、字界及び道路等各筆の
   土地の位置境界を明らかにするため参考となる物の位置を記載した地図(現況
   照合図)を作成し(法五条)、現況照合図及びこれに関する写真、書面を那覇
   防衛施設局において一般の閲覧に供するとともにその旨を公告した(法七条)。
   当該位置境界不明地域内の土地所有者は、字等の区域(プロック)ごとに代表
   者を定め、右代表者はその住所氏名等を那覇防衛施設局長に届け出(法八条)、
   同局長は、右代表者に対し現況照合図及びこれに関する写真、書面を交付し、
   その旨等を公告した(法九条)。なお、現況照合図作成の具体的手続は次のと
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   おりである。まず、測量の基準点となる地籍図根三角点及び地籍図根多角点を
   設け、航空測量による現況地形図を作成する。右地籍図根点を基礎として、関
   係市町村、協力委員、古老、関係土地所有者等の協力を得て、位置境界不明地
   域内の道路、河川その他土地の位置境界を明らかにするため参考となる物証、
   実測可能地、市町村界、字界の測量をする。右測量の結果を平板原図及び総合
   原図に作成し、市町村界について沖縄県知事及び関係市町村長と、字界につい
   て関係市町村長とそれぞれ協議し、右市町村界、字界の確認を受け、現況地形
   図に市町村界及び字界を表示した現況照合図を作成するというものである。
    地図編纂作業は、基礎作業における調査、測量の結果得られた成果、資料等
   を基に、字等ごとに関係所有者間の協議により、各筆の位置、境界、形状、面
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   積等を地図上において確認する手続である。那覇防衛施設局長は、関係所有者
   に対し、全員の協議により、ブロック内の各筆の土地の位置境界を確認するよ
   う求め、関係所有者は、全員の協議によりブロック内の各筆の土地の位置境界
   を確認し(法一〇条)、全員で同局長に対しその旨及び協議の内容を書面で通
   知した(法一二条一項)。右編纂作業は土地所有者が自主的に行うものである
   が、法一一条に基づき、那覇防衛施設局長は次のとおり必要な援助を行った。
   すなわち、同局長は、ブロックごとに基礎作業で作成した平板原図を写したブ
   ロック編纂図を作成し、これを利用して、関係所有者が各筆の土地の位置境界
   を協議し、確認して、ブロック編纂図に各筆を表示した一筆地編纂図を作成し
   た。次に、同局長は、一筆地編纂図に基づき各筆の土地の位置境界を現況地形
   図に表示して現況地籍照合図を作成し、右一筆地編纂図、現況地籍照合図、面
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   積測定計算簿その他参考資料を関係所有者の閲覧に供し、関係所有者に各筆の
   土地の位置境界の確認を求め、関係所有者が右の確認をすると編纂地図確認書
   を作成して所有者の署名押印を求めたものである。
    復元作業は、地図編纂作業により確認された各筆の土地の位置境界につき、
   現地においてその筆界点に表示杭を設置し、関係所有者がこれを確認する手続
   である。那覇防衛施設局長は、法一二条一項の通知に係る土地所有者に対し、
   土地の位置境界を現地に即して確認するため立ち会うべき場所、期日等を通知
   し(法一二条二項)、右通知を受けた者は、立ち会って土地の位置境界を現地
   に即して確認し(同条三項)、同局長は、その土地の位置境界を表示した図面
   及びその土地の地番、所有者等を記載した書面(現地確認書)を作成し、立会
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   者に署名押印をさせた(同条四項)。
    成果認証作業は、以上の手続により既に位置境界が確認された各筆の土地に
   つき、その土地の正しい姿を登記簿に反映させるため、土地の所有者、地番及
   び地目の調査並びに境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図及び簿
   冊に作成し、国土調査の成果としての認証の申請に至る手続である。那覇防衛
   施設局長は、現地確認書によりブロック内の各筆の土地の全部又は一部の位置
   境界が明らかになったときは、所要の公示をした上、当該土地について、所有
   者、地番、地目の調査及び境界及び地積に関する測量を行い、その結果を地図
   及び簿冊に作成し(法一四条、国土調査法七条)、その旨を公告し、関係市町
   村事務所等において右公告の日から二〇日間右地図及び簿冊を一般の間覧に供
   した(法一四条三項、国土調査法一七条一項)。右地図及び簿冊に測量又は調
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   査上の誤り等があると認める者は、右閲覧期間内に同局長に対しその旨申し出
   ることができ(法一四条三項、国土調査法一七条二項)、同局長は、右申出に
   係る事実があると認めるときは地図及び簿冊を修正した(法一四条三項、国土
   調査法一七条二項)。同局長は、右地図及び簿冊について国土調査法一九条五
   項の国土調査の成果としての認証を申請し(法一七条)、内閣総理大臣は、右
   地図及び簿冊を国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定した(国土
   調査法一九条五項)。
    なお、内閣総理大臣は、当該調査に係る土地の登記の事務を掌る登記所に右
   地図及び簿冊を送付し(国土調査法二○条一項)、これを受けた登記所は、右
   地図及び簿冊に基づいて、土地の表示に関する登記及び所有権の登記名義人の
   表示の変更の登記を行った(国土調査法二○条二項)。
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 (3)ところで、本件6土地を含むキャンプ・シールズ内の各土地については、昭
   和五〇年一二月に行政措置により地籍調査が開始され、各筆の土地の位置境界
   を確認するために参考となる資科の収集、作成等が行われ、位置境界明確化法
   の施行に伴い、同法に基づく位置境界明確化作業に引き継がれた。本件6土地
   を含むブロックである字知花曲茶原に隣接するブロックはすべて国土調査法上
   認証済みの地域であり、これらのブロックと字知花曲茶原との境界もこれら関
   係プロックの各代表者、関係地主、古老等の協力による現地調査と測量の結果
   明らかにされ、昭和五三年六月二一日、沖縄市長とこれらプロック間の境界の
   確認協議を行い、同意を得て確定した。一方、本件6土地を含むブロック内一
   三〇筆(土地所有者六五名)の位置境界明確化作業については、那覇防衛施設
   局長が、同ブロック内の関係権利者に対し、昭和五三年二月に現況地籍照合図
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   等を閲覧に供したところ、島袋善祐を含むすべての関係権利者が閲覧の上、編
   纂地図確認書への署名押印手続を済ませ、地図編纂作業の段階までは終了した。
   その後、復元作業の段階において、那覇防衛施設局長は、現地確認立会日を昭
   和五三年五月一七日と指定し、同ブロック内の関係権利者に通知した。島袋善
   祐以外の関係権利者六四名はすぺて現地確認書への署名押印手続をしたが、島
   袋善祐は同日立ち会ったものの現地確認書に署名押印をしなかった。したがっ
   て、右ブロックについては成果認証作業を進めることができない状況にある。
 (4)本件6以外の土地について、測量士は、本件使用認定申請前である平成六年
   六月ころから同年九月ころまでの間、登記所備付けの地籍図を転写し、この地
   籍図を基に、位置境界明確化作業において調査測量された成果を利用して、地
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   籍図上に表示された図根点(細部図根点又は地籍図根三角点若しくは地籍図根
   多角点)を基点として、対象土地の筆界点(一筆の土地の境界が屈折する地点)
   のうちの任意の一点を方位角及び距離によって特定し、さらに右特定された点
   から各筆界点を順次同様の方法によって特定した上、一筆の土地ごとの実測平
   面図を作成した。そして、そのうち平成四年裁決土地以外の土地(以下「本件
   他の土地」という。)については、位置境界明確化作業において調査測量され
   た成果を基に現地において測量して対象土地の各筆界点を特定し、各筆界点に
   杭打ちないし鋲打ち等を行って現地で土地の位置境界を確認し、右実測平面図
   に現地復元性があることを確認した。平成四年裁決土地については、平成四年
   二月に沖縄県収用委員会の使用裁決を取得しているが、右裁決申請に当たり、
   現地で右のような方法で杭打ち等の作業を行って土地の位置境界を確認し、当
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   時作成した実測平面図に現地復元性があることを確認しており、本件使用認定
   の申請に当たり、那覇防衛施設局職員が現地を調査した結果、土地の客観的状
   況に何ら変化がなく、前回打った杭等の状況に変動がないことを計測等により
   確認したため、今回改めて測量することはしなかった。このようにして、那覇
   防衛施設局長は、本件6以外の土地について、本件使用認定の申請のために実
   測平面図を作成したが、本件使用認定後においても、格別土地の客観的状況に
   変化がなかったため、右実測平面図と同じ内容のものを作成し、これを土地・
   物件調書に添付すべき実測平面図とするとともに、土地建物登記簿謄本等の資
   科や現況の調査等に基づき、土地・物件調書となるべき図書を作成した。
 (5)本件6土地を含むブロックについては位置境界明確化作業が完了していない
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   が、那覇防衛施設局では、島袋善祐が現地確認書への署名押印手続をすれば、
   いつでも国土調査の成果としての認証の申請ができるように、地図及ぴ簿冊の
   作成作業を進め、地図及び簿冊の原案を作成しており、同局に保管している。
   測量士は、本件使用認定の申請前に、本件6土地について、右地図の原案(地
   籍図原図)を基にして、本件他の土地についてしたのと同様の方法で実測平面
   図を作成するとともに、現地において右実測平面図に現地復元性があることを
   確認した。このようにして、那覇防衛施設局長は、本件6土地について、本件
   使用認定の申請のために実測平面図を作成したが、本件使用認定後においても、
   格別土地の客観的状況に変化がなかったため、右実測平面図と同じ内容のもの
   を作成し、これを土地・物件調書に添付すべき実測平面図とするとともに、右
   簿冊の原案等の資料や現況の調査等に基づき、土地・物件調書となるべき図書
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   を作成した。
 (6)本件6土地については、昭和二九年四月八日、島袋善祐名義で所有権保存登
   記がされ、昭和四八年一月一三日には、同人を債務者とする抵当権設定登記が
   された。なお、使用しようとする本件6土地の実測面積は土地登記簿上の地積
   を多少上回っている。
 (7)本件6土地については、今回使用手続がされているのと同一の範囲で、これ
   まで二回にわたり特措法による使用手続がされ、その中で島袋善祐は、本人又
   は代理人を介して、本件6土地の土地調書の記載事項について、地番、地目、
   位置、境界、地積等が真実と合致しない旨の異議を附記した上同土地調書に署
   名押印したが、いずれも使用裁決がされており、その裁決書では、本件6土地
   は、位置境界明確化手続により現地に即して精密に測量の上特定され、その地
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   目・地積がその範囲において明確化されており、島袋善祐所有の土地であると
   認めるのが相当である旨の判断が示されている。
 (8)那覇防衛施設局長は、右使用裁決に基づく補償金(使用に係る実測面積を基
   準として算定されたもの)を島袋善祐の代理人である沖縄県軍用地等補償請求
   事務所安里秀雄に対し、昭和五七年五月及び昭和六二年三月にそれぞれ支払っ
   たが、島袋善祐が右補償金について特段の不服を申し立てたことはない。
(二) 右認定事実に照らすと、本件他の土地についての土地・物件調書となるべき
   図書は、認証された国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定された
   簿冊と同内容の登記簿謄本等の資科や現況等の調査に基づき作成され、実測平
   面図も、同様に指定された地図や位置境界明確化法による作業において調査測
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   量された成果に基づいて作成され、現地測量による土地の位置境界の確認によ
   り右実測平面図が現地復元性を有することも確認されたものであり、本件調書
   は測量、調査その他の資料に基づき一応の合理性が認められる方法により作成
   されたものと認めることができる。
    次に、平成四年裁決土地についてみると、土地・物件調書となるべき図書の
   作成については、本件他の土地と同様格別の問題はない。これに対し、添付す
   べき実測平面図については、本件他の土地と同様の方法により作成されたもの
   であるが、今回の使用手続に当たり現地測量による土地の位置境界の確認がさ
   れていない点が異なる。しかしながら、平成四年にされた使用裁決の申請に当
   たり、同様の方法により実測平面図が作成され、現地測量による土地の位置境
   界の確認により右実測平面図が現地復元性を有することが確認されており、今
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   回の使用手続のために実測平面図を作成した時点において、平成四年裁決土地
   の客観的状況に変化がなく、前回打った杭等の位置についても変動がないこと
   が確認されているのであるから、今回の使用手続のために作成された実測平面
   図は現地復元性を有すると認められるのであって、結局、本件調書は、測量、
   調査その他の資料に基づき一応の合理性が認められる方法により作成されたも
   のと認めることができる。(被告の主張)3は理由がない。
    本件6土地は、位置境界明確化法による手続が完了しておらず、認証された
   国土調査の成果と同一の効果があるものとして指定された地図及び簿冊の存在
   しない土地である。しかしながら、前記認定のとおり、本件6土地を含むブロ
   ックとこれに隣接しているブロックとの境界は確定しており、本件6土地を含
   むブロック内において本件6土地とその隣接土地との境界を除きすべての土地
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   の境界は関係土地所有者において確認済みであり、本件6土地とその隣接土地
   との境界についても隣接土地所有者は全員確認済みである。そして、本件6土
   地については、島袋善祐名義で所有権保存登記がされており、今回使用手続が
   されているのと同一の範囲で、これまで二回にわたり使用裁決がされ、右裁決
   では同土地の所有者は島袋善祐であると認定され、島袋善祐は、右裁決に係る
   補償金を受領し、格別補償金に関しては不服を申し立てたことはない。これら
   の事実にかんがみると、那覇防衛施設局長が、本件6土地と隣接土地との境界
   を同隣接土地所有者の同意に係る境界と認定して本件6土地の位置を特定し、
   その所有者を島袋善祐であると認定した上、前記のとおり地籍図原図を基にし
   て実測平面図を作成し、その結果を現地において復元して確認するなどして土
   地、物件調書となるべき図書及びこれに添付すべき実測平面図を作成したこと
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   には、一応の合理性が認められるというべきである。
    以上のとおりであるから、那覇防衛施設局長は、測量、調査その他の資料に
   基づき、一応の合理性が認められる方法により、本件各土地に関する土地・物
   件調書となるべき図書及びこれに添付すべき実測平面図を作成したものと認め
   られる。
(三) 地籍が確定しているか否かは土地調書の格別必要的記載事項とはされていな
   いし(特措収用法三七条)、収用委員会における審理の円滑かつ迅速な進行を
   図るために、あらかじめ、当該土地について地籍が確定しているか否かについ
   て争点を整理しておく必要性はない。当該土地所有者等にとしても防衛施設局
   長が作成した土地・物件調書の記載事項が真実であるかどうか判断できれぱ足
   り、また、自己の所有地の地籍の確定の有無は当然知っているはずのものであ
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   るから、当該土地について地籍が確定しているかどうかを知らせる必要性に欠
   ける。したがって、そのことについて土地調書に記載されておらず、また、そ
   れを明らかにする書類を添付して土地所有者等に立会署名押印を求めなかった
   としても、その措置を違法ということはできず、(被告の主張)1は理由がな
   い。
    地籍が明確化されなくても、本件6土地のように、一応の合理性をもって、
   現地復元性を有する図面によって当該土地の位置境界を特定でき、さらに、土
   地所有者も特定できる場合には、防衛施設局長は、その旨の土地調書を作成で
   きるのであって、地番及び所有者を不明としなければ違法となるものではない。
   土地所有者等としても、同調書の記載事項が真実に反すると考える場合にはそ
   の旨の異議を附記すれぱ、右記載事項についての推定力を排除できるのである
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   から、その保護に欠けるわけではない。現に、本件6土地の所有者とされてい
   る島袋善祐は、これまで二回にわたり行われた特措法の使用手続において、本
   人自ら又は代理人を介して、本件6土地の土地調書の記載事項について、地番、
   地目、位置、境界、地積等が真実と合致しない旨の異議を附記して同土地調書
   に署名押印しているのである。また、一応の合理性が認められる方法で土地・
   物件調書が作成された以上、仮にその記載事項が真実でなかったとしてもその
   ことにより右調書の作成が違法となるものではないことは前記のとおりであり、
   (被告の主張)2は理由がない。
    土地・物件調書に添付される実測平面図の作成については、防衛施設局長が
   指定した土地について測量し、右土地の実測平面図を作成すればそれで足りる
   のであるから、土地家屋調査士によるものである必要はなく、(被告の主張)
---------- 改ページ--------130
   4は理由がない。
 4 那覇防衛施設局長が本件各土地について土地所有者等を立ち会わせ右調書に署
  名押印する機会を与えたのに、土地所有者等が右署名押印を拒み又はこれをする
  ことができなかつた事実の有無について
(一) 証拠(甲一、一三の (1)、 (2)、四一、五八ないし六四、証人佐伯惠通〉及
   び弁論の全趣旨並びに前提事実を総合すれぱ、次の事実が認められる。
 (1)那覇防衛施設局長は、特措収用法三六条二項に基づき、本件各土地の土地所
   有者等に立会及び土地・物件調書への署名押印を求めるため、立会日までに三
   週間程度の期間をおいて、土地所有者等に対し、「立会要請について」と題す
   る文書を郵便で送付した。立会場所は、特措法七条の土地等の調書を縦覧に供
   している場所、すなわち、本件1ないし4土地については読谷村内にある喜名
---------- 改ページ--------131
   公民館、本件5ないし7土地については沖縄市内にある沖縄市軍用土地等地主
   会館、本件8土地については那覇市内にある那覇防衛施設局を指定したが、そ
   れは右立会場所が一般に周知の場所であり、通常その近隣に居住している土地
   所有者等が多く前記縦覧場所でもあることから選定されたものである。立会日
   は、右立会要請文書の送付日から三週間程度の期間を置いた平成七年六月三日
   土曜日及び同月四日日曜日のそれぞれ午前一〇時から午後四時までと指定され
   た。同文書には、留意事項として、当日土地・物件調書を作成するために署名
   押印をお頼いするので印章を持参すること、本人に代わり代理人に立会させる
   場合は代理人に委任状を持参させること、指定日時に立会ができない場合には
   立会しなかったものとして事後の手続を進めること、立会の詳細についての問
   合せ先の電話番号などが記載されていた。
---------- 改ページ--------132
 (2)平成七年五月一九日付け及び同月二三日付けで権利と財産を守る軍用地主会
   に加入する地主七七名(立会署名押印をしなかつた本件各土地の所有者三四名
   のうちの二一名を含む。)及び一坪反戦地主会に加入する地主三八名から「現
   地において土地の現状を確認した上で、土地・物件調書の作成に立会をしたい
   ので、至急、現地立入調査ができるよう措置するよう申し出る。土地・物件調
   書への署名押印については、その現地立会調査後に応答を決める。よって、指
   定された日時には立会できない。」旨の文書が提出された。これに対し、那覇
   防衛施設局は、同月二九日付けで、施設部長名で、「右申出にはその必要性が
   認められないので要望には応じられない。立会及び調書への署名押印の日時に
   ついては立会要請書で要請したとおりであり、変更しない。」旨回答した。さ
   らに、同年六月二日付けで、権利と財産を守る軍用地主会に加入する地主一六
---------- 改ページ--------133
   名(前記同年五月一九日付け文書を提出した本件各土地の所有者二一名のうち
   の五名を含む。)から委任を受けた代理人から、「指定された立会日時には立
   会できないので同年六月五日か同月六日の午後一時以降にしてほしい。」旨の
   文書が提出され、那覇防衛施設局は、同月五日、これを受領し、立会日を既に
   経過していたが、同日付けで、施設部長名をもって、立会期日の変更には応じ
   られない旨回答した。
 (3)那覇防衛施設局は、同月三日及び同月四日、各立会場所において、土地・物
   件調書作成の説明資科として、土地登記簿謄本、登記所備付けの地籍図(公図)
   の写し、位置境界明確化法一二条に基づく位置境界明確化作業において作成さ
   れた現地確認書、同法一○条に基づき作成された編纂地図確認書の写し、土地
   の現在の用途及び土地に所在する物件の状況を説明する資科として那覇防衛施
---------- 改ページ--------134
   設局職員が建物又は工作物等を調査した結果を記載した現地調査表と当該土地
   を撮影した現況写真(対象土地の位置境界を記入した図面に、撮影地点及び撮
   影方向を記載した上右撮影による写真を貼付したもの)、施設及び区域内にお
   ける土地の位置、地勢、形状や当該土地とその周辺の使用状況を説明するため
   の資料である現況地籍照合図を準備した上、当該業務に精通している那覇防衛
   施設局職員二名ずつを配置し、土地所有者等が出頭するのを待った。ただし、
   本件6土地については、認証された登記所備付けの地籍図がないので、これに
   代え、地籍図原図からの転写図を説明資料として準備した。しかしながら、本
   件各土地の所有者三五名のうち立会及び署名押印をした一名を除く三四名並び
   に本件各土地の関係人一○名のうち立会及び署名押印をした三名を除く七名は
   指定された立会日時及び立会場所に出頭しなかつた。
---------- 改ページ--------135
(二) ところで、特措収用法三六条二項に定める立会の意昧について、原告は、署
   名押印をするその場での立会を意昧すると主張するのに対し、被告は、土地等
   が所在する現場での立会を意味すると主張するので、この点について判断を加
   える。
    特措収用法三六条二項は、防衛施設局長が土地・物件調書を作成する場合に
   おいて、土地所有者等を立ち会わせた上、土地・物件調書に署名押印させなけ
   れぱならないと定めている。土地・物件調書を作成するには、土地等の測量調
   査、右結果の整理、調書への記載、実測平面図の作成等の行為が必要であるが、
   右規定は、その全過程での立会まで要求しているものとは到底解されず、調書
   が法的に成立する土地所有者等の署名押印の段階で、調書となるべきものとし
---------- 改ページ--------136
   て作成された図書を用意し、これを対面で土地所有者等に示し、場合によって
   は右図書の作成の基礎となった資料や現場写真等をも利用して、右図書の記載
   内容を説明するために、土地所有者等を立ち会わせることを要求したものであ
   り、したがって、立会の場所も暑名押印を求める正にその場所であると解する
   のがその文理にも適い、相当である。
    被告は、特措収用法三六条二項は、防衛施設局長の恣意的な土地・物件調書
   の作成を抑制し、土地所有者等の財産権や適正手続を保障するための手続であ
   り、土地所有者等が土地・物件調書の内容が真実であるか否かを確認するため
   に現地での立会を要すると主張する。しかしながら、立会の場所を特に土地等
   の所在する現地とする旨の規定を欠く特措収用法三六条二項の解釈としては文
   理上無理がある上、前説示のとおり、土地・物件調書の作成は、収用委員会に
---------- 改ページ--------137
   おける審理の際に、事実の調査、確認をすることによる煩雑さを避け、審理の
   円滑かつ迅速な進行を図るために、あらかじめ、使用する土地及びその土地の
   上にある物件に関する事実及び権利の状態についての争点を整理するために防
   衛施設局長により行われる裁決申請の準備手続であり、前記のとおり、法は、
   土地・物件調書の記載内容が客観的事実に合致していることまで要求している
   ものではなく、その作成手続が一応の合理性が認められる方法により適正に行
   われることを要求しているにすぎず、そのためには防衛施設局長(又は同施設
   局職員)が署名押印を求める際土地所有者等を立ち会わせて同人に調書の記載
   内容を説明して、同人に異議を附記するか否かを判断させて署名押印させるこ
   とにより、十分その目的を達することができるのであって、土地所有者等とし
   ても署名押印の際に調書の記載内容について説明を受ければ右記載内容が真実
---------- 改ページ--------138
   であるか否かについて判断できるであろうし、真実であるとの確信を持てなけ
   ればその旨の異議を附記しておけば特措収用法三八条の推定的効力を排除でき
   るのであるから、現地での立会を認める必要性に乏しく、(被告の主張)6の
   うちこの点の主張を採用することはできない。また、被告は、防衛施設局長が
   土地所有者等に対し土地・物件調書への立会署名押印を求めるに当たっては、
   現地確認の機会を与えなければならない旨をも主張しているが、右と同様の理
   由から、(被告の主張)5は採用することはできない。
(三) 前記認定事実をみると、那覇防衛施設局長が土地所有者等に対し立会を求め
   た日時及び場所の定め方については、土地所有者等に対し立会及び署名押印す
   る機会を付与するに適切を欠くものとはいえず、右日時及び場所に出頭しなか
   った本件各土地の所有者三四名及び関係人七名は、右立会及び署名押印を拒ん
---------- 改ページ--------139
   だ者又は署名押印することができない者に該当するものと解される。前記認定
   事実及び弁論の全趣旨によれば、右の所有者三四名は、那覇防衛施設局長に対
   し、現地での立会調査を求め、右立会調査後に土地・物件調書に署名押印する
   かどうかを決めようとしていたところ、右の要望が容れられなかったために、
   署名押印をしなかった(被告は、これを署名押印を留保したものと主張する。)
   ものと認められるが、特措収用法三六条二項が、防衛施設局長に対し、土地所
   有者等の署名押印に際し、土地所有者等を現地で立ち会わせたり、事前に現地
   確認の機会を与えることまで義務づけたものでないことは前記のとおりである
   から、那覇防衛施設局長が右の所有者三四名の要望を容れず、指定された立会
   日時及び立会場所において立会及び署名押印を求めたことに違法はないのであ
   って、その日時及び場所に出頭しなかった前記の者らが前記のとおり立会及び
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   署名押印を拒否し、又はこれをすることができなかった者とされることに違法
   はないというべきである。また、右の所有者三四名のうち五名が代理人を介し
   て指定された立会日の前日になって立会日の変更を申請したのに対し、那覇防
   衛施設局長はこれに応じなかったが、同局が右申請書を受領したのが立会日後
   であったこと、立会日の前日における変更申請であることなどを考慮すると、
   同局長の右の措置に違法があったということはできない。
 5 那覇防衛施設局長が関係市長村長に対し立会及び署名押印を求めたのに、市町
  村長がこれを拒んだ事実の有無について
(一) 証拠(甲一、一四の (1)ないし (3)、一五、四一、証人佐伯惠通)及び弁論
   の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
    那覇防衛施設局長は、平成七年六月六日付け「立会要請について」と題する
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   文書により、特措収用法三六条四項に基づき、本件1ないし4土地の所在する
   読谷村長、本件5ないし7土地の所在する沖縄市長、本件8土地の所在する那
   覇市長に対し、当該市村長又は吏員による立会及び土地・物件調書ヘの署名押
   印を求めた。立会場所は、読谷村長については前記喜名公民館、沖縄市長につ
   いては前記沖縄市軍用土地等地主会館、那覇市長については那覇防衛施設局と
   指定され、立会日時は、読谷村長及び那覇市長については同月一四日、沖縄市
   長については同月一九日のそれぞれ午前一〇時から午後四時までと指定された。
   沖縄におけるこれまで三回の特措法による使用手続において、これらの市村長
   に対し、立会日を一日とし、特措法七条による土地等の調書等の縦覧場所又は
   その近傍を立会場所として立会及び署名押印を求めているが、立会の日時及び
   場所について不服が述べられたことはないことから、右のような立会の日時及
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   び場所が指定されたものである。那覇防衛施設局では、右三市村長又はその吏
   員の立会及び署名押印に備え、土地所有者等に立会及び署名押印を求めた際と
   同様の資料を準備し、調書の記載内容について立会人に説明できるようにして
   いた。
    右の要請に対し、右三市村長は、前提事実のとおり、立会及び土地・物件調
   書ヘの署名押印を拒否した。
(二) 特措収用法三六条四項は、同条二項の場合において、土地所有者等のうちに
   同項の規定による署名押印を拒んだ者又は署名押印することができない者があ
   るときは、防衛施設局長は、市長村長の立会及び署名押印を求めなければなら
   ないと定める。その趣旨は、公的立会人により、土地・物件調書が測量、調査
   その他の資料に基づいて一応の合理性が認められる方法により適正に作成され
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   たものであることを確認させ、もって、右調書の作成手続の適正を図ることに
   あり、そのためには調書に署名押印するその場での立会を認めれば十分である
   ことは前記のとおりである上、立会人は、土地所有者等の代理人ではなく、土
   地等に関する事実及び権利について知る由もないのであるから、同条四項にい
   う立会とは、調書に署名押印をするその場での立会をいうものと解するのが、
   文理の上からも相当であり、(被告の主張)6のうちこの点に関する主張は理
   由がない。
    したがって、前記認定事実に照らすと、那覇防衛施設局長が前記三市村長に
   対し立会及び土地・物件調書への署名押印を求めた手続に何ら違法はないとい
   うべきである。
 6 那覇防衛施設局長が被告に対し沖縄県の吏員のうちから立会人を指名し署名押
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  印させることを求めた事実の有無について
   特措収用法三六条五項は、同条四項の場合において、市町村長が署名押印を拒
  んだときは、都道府県知事は、防衛施設局長の申請により、当該都道府県の吏員
  のうちから立会人を指名し、署名押印させなければならないと定める。右にいう
  立会人による立会が現地での立会を意味するものではなく、土地・物件調書に署
  名押印する正にその場での立会を意味するものであることは市町村長又はその吏
  員による立会の場合と同様であり、(被告の主張)6のうちこの点に関する主張
  は理由がない。また、都道府県知事は、前記1記載の (1)ないし (5)の要件が充
  足すれば、署名等代行事務を執行する義務を負うことは前記のとおりであり、
  (被告の主張)7は理由がない。
   そして、那覇防衛施設局長は、前提事実のとおり、同条五項に基づき、被告に
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  対し、沖縄県の吏員のうちから立会人を指名し署名押印をすることを求めたもの
  であり、証拠(甲四一、証人佐伯惠通)及び弁論の全趣旨によれば、右のように
  立会の日時及び場所を定めたのは、那覇防衛施設局が沖縄県庁の側にあり沖縄県
  吏員も容易に出頭することができ、沖縄における過去三回の特措法による使用手
  続においても立会日を一日とし、立会場所を那覇防衛施設局と定めており、実際
  に行われた沖縄県吏員による立会及び署名押印に何ら支障がなかったことによる
  こと、那覇防衛施設局は、沖縄県吏員による立会及び署名押印に備え、土地所有
  者等及び関係市町村長に立会及び署名押印を求めたときと同様の資料を準備し、
  立会人に対し調書の記載内容を説明できるようにしていたことが認められるので
  あって、那覇防衛施設局長の右手続に何ら違法はないというべきである。
 7 以上によれば、那覇防衛施設局長による本件各土地についての特措収用法三六
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  条の土地・物件調書の作成手続に何ら違法はなく、前記1記載の (1)ないし (5)
  の要件をいずれも充足しているから、ほかに本件命令を実質的に違法とする自由
  がない限り、被告は、これに従い、本件署名等代行事務を執行する義務を負うも
  のというべきである。

 二 特措法が憲法に違反するか否か
 (被告の主張)
  被告に対し本件署名等代行事務を課している特措法は、次のとおり違憲無効の法
 律であるから、被告は本件署名等代行事務の執行を拒否することができるのであり、
 被告には本件署名等代行事務を執行する義務は存せず、特措法に基づき本件署名等
 代行を求める本件命令は違憲違法である。
 1 憲法前文、九条、一三条違反(平和的生存権の侵害)
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(一) 平和的生存権は、憲法前文に理念的、文言的な基礎を置き、憲法九条によっ
   て制度的に保障され、直接的には憲法一三条前段の個人の尊厳に不可欠の具体
   的な人権として保障されており、個々の国民が人間としての生存と尊厳を維持
   し、自由と幸福を求めて生命の危険に脅かされることなく平穏な社会生活を営
   むことを戦争行為(広く戦争類似行為、戦争準備行為、戦争訓練、基地の設置
   管理などを含む。)によって実質的に阻害されない権利であり、その権利主体
   は国民である。
    そして、平和的生存権は、次のような内容を有する。すなわち、第一に、公
   権力の軍事目的追求によって平和的経済関係が圧迫されたり、侵害されたりし
   ないことであり、その例として、自己の土地、財産を軍事目的のために使用さ
   れない権利を挙げることができる。第二に、公権力による軍事的性質を持つ政
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   治的、社会的関係の形成が許されないことであり、軍事施設を設けることによ
   り、軍事的危害を誘発することや国民の健康又は生活環境に被害を及ぼすこと
   は具体的な平和的生存権の侵害となる。第三に、公権力によって軍事的イデオ
   ロギーを鼓舞したり、軍事研究を行うことが許されないことである。
    また、平和的生存権は、単に消極的ないし受動的に戦争行為による人権侵害
   を排除し得る国からの自由という自由権的側面を有するに止まるものではなく、
   戦争行為に反対し、これを阻止、廃止し軍事力の削減撤廃をもたらすことや平
   和な世界を創造するために能動的に国政などに参加する参政権的側面や、積極
   的に国や地方公共団体等の公権力によってよりよい平和を確保拡充せしめるこ
   とができる社会権(国務請求権)的側面をも有する権利である。
    以上のように、平和的生存権は具体的な内容を有する権利である。
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(二) 憲法九条は、自衛戦争をも放棄し、自衛戦力の保持を禁止することを国の義
   務として規定しているものであり、同条のこのような徹底した平和主義や国民
   の平和的生存権確保の趣旨からすると、憲法前文、九条及び一三条は、安保条
   約及び地位協定によって、国が、国土の一部を米軍が軍用地として使用するこ
   とを許すことができるとしても、国民の権利利益を犠牲にしてまで米軍に軍用
   地を提供することを容認するものではない。したがって、特措法は、国が駐留
   軍の用に供するという軍事目的を実現するために国民の私有財産を強制的に使
   用することを内容とするものであるから、平和主義、平和的生存権を侵害する
   ものであり、憲法前文、九条及び一三条に違反するものである。
 2 憲法二九条違反
(一) 安保条約が合憲であり、米軍の駐留が憲法上許容されるとしても、憲法で保
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   障された人権の制約は、憲法上明文の根拠がある場合や憲法上保障されている
   他の人権との調整を要する場合にしか認められないのであり、憲法に、米軍の
   駐留目的実現のための国民の人権制約を認める条項が存在しない以上、右目的
   実現のために人権を制約することはできない。したがって、憲法上の根拠なく
   して国民の財産権を制約する特措法は、憲法二九条に違反する。
(二) 安保条約六条一項は、米国は、米軍が日本国において施設及び区域を使用す
   ることを許されると規定し、地位協定二条一項は、米国は、安保条約六条の規
   定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許されると規定するのみであり、
   国が、国民の所有地の使用権原を強制的に取得して米軍に使用させる義務につ
   いては何ら定めがないのであるから、国はそのような義務を負担するものでは
   なく、国の条約上の義務の内容は、せいぜい国民と賃貸借契約を締結し、任意
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   に使用権を取得して米軍の用に供するという程度のものにすぎない。したがっ
   て、米軍に国内の施設及び区域を使用させるという目的はおよそ財産権を制約
   する正当な目的たりえないのであり、国民の所有地を右目的で使用する手続を
   定める特措法は、憲法二九条に違反する。
(三) 平和的生存権は、戦争目的や軍事目的のために自由や人権を制限されない権
   利であり、自己の所有する土地その他の財産を軍事目的のために使用されない
   権利も当然にその内容に含まれる。そして、平和主義、平和的生存権は、憲法
   上の他の価値体系の基礎にあり、これに優越し、これを制約するような公共性
   は存在する余地がない。したがって、憲法の下において、駐留軍の用に供する
   という軍事目的の実現のために国民の所有する土地を強制的に使用することは、
   公共性を持ち得ず、憲法二九条三項の公共のために用いることに該当しないの
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   であり、特措法は同条項に違反するものである。
(四) 特措法は、安保条約六条及び地位協定二条に基づいて米軍に施設及び区域を
   提供することを目的とするものであるが、米軍に施設及び区域を提供する目的
   は日本や極東の安全に寄与することにある。しかし、今日の在日米軍は、日本
   の安全や防衛のためにあるのではなく、アジアにおける米国の韓国、台湾、フ
   ィリピンとの各軍事条約や東南アジア条約機梼の義務を果たすため、すなわち、
   朝鮮半島から東南アジアにいたる西太平洋地域での米国の世界戦略を遂行し、
   米本土をはじめ米国の国益を守るために、日本にその軍事力を展開し、米国本
   土防衛の最前線基地の機能を果たしている。このような米軍基地の実態をみる
   と、日本や極東の安全のために、国民の所有する土地を強制的に使用して、米
   軍に提供するという特措法を適用する前提事実を欠くというべきであり、特措
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   法は、その適用を裏付ける事実が存しない以上、国民の財産権を不必要に規制
   するものであり、憲法二九条三項に違反する。
 3 憲法三一条違反
   特措法は、次のとおり、土地収用法に比してその手続が著しく簡略化、形骸化
  されており、使用収用される土地所有者等の権利保護に欠けるから、適正手続を
  保障した憲法三一条に違反する。
(一) 土地収用法においては、起業者が建設大臣又は都道府県知事に事業認定申請
   書を提出する際の添付書類として事業計画書の添付を義務づけている(一八条
   二項)。この事業計画書には、事業計画の概要、事業の開始及び完成の時期、
   事業に