軍転法


沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律
                            平成七年五月二十六日
                            平成七年法律第百二号

 第一条[目的]   この法律は、駐留軍用地及び駐留軍用地跡地が広範かつ大規
  模に存在する沖縄県の特殊事情にかんがみ、駐留軍用地の返還に伴う特別の措置
  を講じ、もって沖縄県の均衡ある発展並びに住民の生活の安定及び福祉の向上に
  資することを目的とする。

 第二条[定義]   この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞ
  れ当該各号に定めるところによる。
 一 駐留軍用地 沖縄県の区域内において、駐留軍(日本国とアメリカ合衆国との
  間の相互協力及び安全保障条約(以下「日米安保条約」という。)に基づき日本
  国にあるアメリカ合衆国の軍隊をいう。以下同じ。)が日米安保条約第六条の規
  定に基づき使用することを許されている施設及び区域に係る土地をいう。
 二 駐留軍用地跡地 日本国との平和条約の効力発生の日から琉球諸島及び大東諸
  島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力発生の日の前日までの間
  においてアメリカ合衆国が沖縄県の区域内において使用していた土地で当該土地
  の所有者若しくは賃借権その他政令で定める権利を有する者に返還されているも
  の又は同協定の効力発生の日以後沖縄県の区域内において駐留軍が日米安保条約
  第六条の規定に基づき使用することを許されていた施設及び区域に係る土地で当
  該土地の所有者若しくは賃借権その他政令で定める権利を有する者に返還されて
  いるものをいう。
 三 関係市町村 駐留軍用地又は駐留軍用地跡地が所在する市町村をいう。

 第三条[国、沖縄県及び関係市町村の協力]   国、沖縄県及び関係市町村は、
  この法律の目的を達成するため、相協力しなければならない。

  第四条[駐留軍用地の所有者等の協力]   駐留軍用地又は駐留軍用地跡地の所
  有者(これらの土地の上に賃借権その他政令で定める権利を有する者を合む。)
  は、国、沖縄県又は関係市町村が実施する施策に協力するとともに、これらの土
  地が第十条の市町村総合整備計画及び第十一条の県総合整備計画(以下単に「総
  合整備計画」という。)に即して有効かつ合理的に利用されるよう努めるものと
  する。

 第五条〔駐留軍用地の返還についての見通しの通知]   国は、駐留軍用地につ
  いて、返還の見返しがたった場合には、速やかに、その旨を当該土地の所有者又
  は賃借権その他政令で定める権利を有する者(以下「所有者等」という。)に通
  知するよう努めるものとする。

 第六条 [返還実施計画]   国は、合同委員会(日本国とアメリカ合衆国との間
  の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における
  合衆国軍隊の地位に関する協定(以下「日米地位協定」という。)第二十五条に
  規定する合同委員会をいう。以下同じ。)に於いて返還が合意された駐留軍用地
  について、速やかに、当該駐留軍用地の返還に関する実施計画(以下「返還実施
  計画」という。)を定めなければならない。ただし、駐留軍用地の所有者等が、
  自ら当該土地を使用する目的で行った申請に係る返還については、この限りでな
  い。
2 返還実施計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 一 返還に係る区域
 二 返還の予定時期
 三 その他政令で定める事項
3 国は、返還実施計画を定めようとするときは、あらかじめ、沖縄県知事及び関係
 市町村の長の意見を聴かなければならない。
4 関係市町村の長は、返還実施計画について、国に対し意見を申し出るときは、あ
 らかじめ、駐留軍用地の所有者(当該土地の上に賃借権その他政令で定める権利を
 有する者を含む。次項においても同じ。)の意見を聴かなければならない。
5 前二項の規定により意見を聴かれた者が意見を申し出ようとする場合には、沖縄
 県知事及び駐留軍用地の所有者にあっては意見を聴かれた日から三十日以内に、関
 係市町村の長にあっては意見を聴かれた日から六十日以内に、それぞれ意見書を提
 出しなければならない。
6 国は、返還実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを沖縄県知事及び関係市町
 村の長に通知するものとする。
7 前四項の規定は、返還実施計画の変更について準用する。

 第七条[駐留軍用地を返還する場合の措置]   国は、駐留軍用地の所有者等に
  当該土地を返還する場合においては、その請求により、当該土地の所在する周囲
  の土地利用の状況に応じた有効かつ合理的な土地利用が図られるよう、当該土地
  を原状に回復する措置その他政令で定める措置を講ずるものとする。

 第八条[給付金]   国は、アメリカ合衆国から駐留軍用地(琉球諸島及び大東
  諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の効力発生の日の前日におい
  てアメリカ合衆国が使用していたもので、引き続き駐留軍の使用に供されている
  ものに限り、国有地を除く。)の返還を受けた場合において、所有者等が引き続
  き当該土地を使用せず、かつ、収益していないときは、当該所有者等に対し、当
  該返還を受けた日(以下にこの条において「返還日」という。)の翌日から三年
  を越えない期間内で、当該所有者等の申請に基づき、政令で定めるところにより、
  給付金を支給するものとする。
2 前項の給付金の額は、返還日の属する年度に国が当該土地について支払った賃借
 料(当該土地が日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条
 に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施
 に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和二十七年法律第百四十号)に依り
 使用されたものであるときは、同法第十四条の規定により適用する土地収用法(昭
 和二十六年法律第二百十九号)第七十二条に規定する補償金)の一日当たりの額に、
 返還日の翌日から当該土地の所有者等が当該土地を使用し、収益し、又は処分した
 日の前日までの期間(返還日の翌日から三年以上、当該土地を使用し、収益し、又
 は処分しなかった場合にあっては、三年間)の日数を乗じて得た額から返還日の翌
 日以後当該土地を使用できないことを理由として国から支払いを受けた補償金(事
 項において「補償金」という。)の額を減じて得た額とする。
3 前項の規定にかかわらず、一の所有者等について支給する給付金の額は、三千万
 円から当該所有者等が支払いを受けた補償金の総額を減じて得た額を限度とし、か
 つ、一の所有者等について一年間に支給する給付金の額は千万円から当該期間につ
 いて当該所有者等が支払いを受けた補償金の総額を減じて得た額を限度とする。
4 共有の土地について前項の規定を適用する場合には、共有者全員を一の所有者等
 とみなす。

 第九条[調査及び測量]   沖縄県知事又は関係市町村の長は、総合整備計画の
  策定その他この法律に基づく施策を実施するため合同委員会において返還が合意
  された駐留軍用地において調査及び測量を行う必要があると認めるときは、国に
  対し当該駐留軍用地についての調査及び測量の実施に関してあっせんを申請する
  ことができる。

 第十条[市町村総合整備計画]   関係市町村の長は、合同委員会において返還
  が合意された駐留軍用地又は駐留軍用地跡地(これらの土地と一体的に整備すべ
  き土地を含む。次条において同じ。)を総合的に整備する必要があると認めると
  きは、市町村総合整備計画を定めることができる。
2 市町村総合整備計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
 一 地域の総合整備に関する基本的方針に関する事項
 二 交通通信体系の整備に関する事項
 三 生活環境の整備に関する事項
 四 農林水産業、商工業その他の産業の振興並びに観光及び保養地の開発に関する
  事項
 五 自然環境の保全及び回復に関する事項
 六 前各号に掲げるもののほか、地域の総合整備に関し必要と認める事項
3 関係市町村の長は、市町村総合整備計画を定めようとするときは、あらかじめ、
 市町村総合整備計画に係る土地の所有者(当該土地の上に賃借権その他政令で定め
 る権利を有する者を含む。)の意見を聴かなければならない。
4 関係市町村の長は、市町村総合整備計画を定めたときは、遅滞なく、これを沖縄
 県知事に報告するとともに、公表しなければならない。
5 沖縄県知事は、前項の規定により市町村総合整備計画について報告を受けたとき
 は、内閣総理大臣に報告するものとする。
6 前三項の規定は、市町村総合整備計画の変更について準用する。

 第十一条[県総合整備計画]   沖縄県知事は、合同委員会において返還が合意
  された駐留軍用地又は駐留軍用地跡地を広域の見地から特に総合的に整備する必
  要があると認めるときは、前条第二項各号に掲げる事項について県総合整備計画
  を定めることができる。
2 沖縄県知事は、県総合整備計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町
 村の長の意見を聴かなければならない。この場合において、関係市町村の長は、意
 見を述べようとするときは、あらかじめ、県総合整備計画に係わる土地の所有者
 (当該土地の上に賃借権その他政令で定める権利を有する者を含む。)の意見を聴
 かなければならない。
3 沖縄県知事は、県総合整備計画を定めたときは、遅滞なく、これを内閣総理大臣
 に報告するとともに、公表しなければならない。
4 前二項の規定は、県総合整備計画の変更について準用する。

 第十二条[総合整備計画と他の計画との関係]   総合整備計画は、沖縄振興開
  発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)による沖縄振興開発計画その他
  法令の規定による地域振興に関する計画との調和が保たれるとともに、沖縄県に
  おける国土の利用に関する計画及び土地利用に関する計画並びに関係市町村の建
  設に関する基本構想に適合するように定められなければならない。

  第十三条[都市計画法等による処分についての配慮]   国の行政機関の長又は
  沖縄県知事は、総合整備計画に基づく事業の実施のため都市計画法(昭和四十三
  年法律第百号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、
  合同委員会において返還が合意された駐留軍用地において当該事業が円滑に実施
  されるよう適切な配慮をするものとする。

 第十四条[駐留軍用地跡地等の利用促進のための措置]   国は、合同委員会に
  おいて返還が合意された駐留軍用地又は駐留軍用地跡地において総合整備計画に
  基づく土地区画整理事業、土地改良事業その他の政令で定める事業が円滑に実施
  されるよう必要な措置を講ずるものとする。

 第十五条[国有財産の活用]   国は、総合整備計画に基づく事業の実施を促進
  するため、合同委員会において返還が合意された駐留軍用地又は駐留軍用地の跡
  地の区域内に所在する国有林野その他の国有財産の活用について適切な配慮をす
  るものとする。

 第十六条[この法律の円滑な実施等]   国は、駐留軍用地の整理縮小を求める
  沖縄県民の意向に留意しつつ、この法律の円滑な実施に努めるものとする。
2 この法律及びこの法律に基づく措置は、日米安保条約及び日米地位協定の円滑な
 実地を妨げるものではない。

 第十七条[政令への委任]   この法律に定めるもののほか、法律の施行に関し、
  必要な事項は、政令で定める。

   附 則
[施行期日]
1 この法律は、平成七年六月二十日から施行する。
[この法律の失効]
2 この法律は、平成十四年六月十九日限り、その効力を失う。

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