第6章 

壊された家族

 ジムとキャシーは14年間幸福な結婚を過ごしていた。3人の子供がいた。ベス(12歳)、アンドリュー(11歳)、トニー(9歳)だった。ジムはキャシーがエホバの証人と家の中で「聖書研究」を始めたときには、反対をしなかった。エホバの証人はクリスチャンの一派だろうとしか考えていなかった。3年後、彼女は離婚し、子供の養育権を求めていた。キャシーはエホバの証人になり、子供たちに「エホバの弟子と精神的なしつけ」をして育てようと決めた。しかし夫はそれをマインド・コントロールと呼んだ。
 どの国でも、国境を越えて急速に浸透と成長を遂げている。エホバの証人になった伴侶のために家庭が壊されている。未信者の中には離婚を考える者もいる。伴侶が証人の信仰を攻撃し、証人が「神の組織」と呼んでいる組織を非難し始めると、ほとんどのエホバの証人は離婚するよう、励ましを受ける。
 なぜ夫や妻は突然、エホバの証人になろうと決心するのか。彼らの人格はどれほど急速に、不吉にもなぜ、変わるのか。一緒の結婚生活を続けるために、他人には何ができるのだろう。宗教から奪回させるためにはどんな援助がつくせるのか。助けになるヒントを試みてみよう。


初期の接触
 
 人々がエホバの証人になるのには、いくつもの理由がある。もっともな神を渇望させようと、証人はキリスト教会があるべき姿を考え直すように主張する。……成員はたばこを吸わない。ほどよい服装をする。週に何回かの宗教上の奉仕に出席する。他の人に信仰を分け与える。加えて(おそらく)「世」的な活動やパーティを避ける。ほとんど毎日、聖書を読み、宗教上のテーマを研究する。戦争に行かない。もう悩みも、痛みもない世界を語る。……こうした理由から、証人は一人で大勢の者に訴えかけている。
 それほど立派でもない理由のために、関係を持つ者もいるかもしれない。孤独のため、あるいは教会や家庭に対する憤慨(育てられ方に反抗して関係を持つ者もいる)。他者へ権力と権威を及ぼしたといった欲望も、また、関係を持つ強力な要素かもしれない。劣った社会的地位、経済的な地位。何の取り柄もない個性。成功の機会が欠如している……こうした理由で「取るに足らない者」にされている世界の中にあって、カルトはその者を「重要人物」にすることができる。
 家庭の主婦は孤独かもしれない。たいてい、証人を家に招き入れる。主婦は霊的な事柄を切に望んでおり、霊的にはもの足りなさを覚えている。おそらく、主婦たちは、もう夫から愛されているとは感じなくなり、生涯を共にする助け手を必要としている。家族の者や配偶者が突然に変異する事実を前にしてそれを「楽園への行軍」(数年間にわたり、主婦の生活を家族や親族の生活を徹底して破壊する道)の開始と思うかも知れない。

 

 

家族の反応  
 夫が機嫌を損ね始めると、「聖書研究に不都合なことはありますか」と妻は尋ねる。キャシーは以前、5年間出席していた教会で偽善的行為を目にしてから怒りを覚えて、何年間も教会から離れていた。キャシーはキリスト教会から遠ざかっていたために、3人の子供を育てたり、家族のために週に60時間も働いていた夫と一緒に暮らすのが辛くなるのが分かった。尋ねてきた証人の女性は、とても感じがよく、キャシーの幸福に興味を持っていた。好きでなかったら、いつも取り消せる、義務は一つもないと言った。そうとは知らなかったジムは、まもなく、キャシーが証人たちと話し合うことを止めさせようと決めた(強い信念から)。「あいつらは洗脳しに来るんだろう」と彼は怒鳴った。口数少なく、妻はいらいらしながらもほほ笑んだ。毎週、集会に出かけていたことさえ、夫に言おうとはしなかった。そして間もなく、戸別訪問に行くことさえも……。ジムがそれを知ったら大騒ぎになっていただろう。彼女はいくらか冷静になっていた。
 ジムの反応はごくありふれている。多くの人々はエホバの証人がカルトであると聞いてはいたが、それを他の人にも言っているとは思えない。すべての人は、エホバの証人の輸血に対する立場や、投票しないことや国の守りをしないこと、世の終わり、まもなくハルマゲドンが来るといった予告さえ聞いている。エホバの証人と聖書研究を始める人は、いつも、それを評価できない。けれども、それがカルトに関わった人に対する家族のもっとも自然な反応である。これは「エホバのご計画への迫害」の最初の兆しだと教えられるが、エホバの証人はすぐに分かることを理解しているとは思えない。伴侶に対して撤回するか、非難するかし始める。
 証人と関係を持ち始めている研究生の配偶者の中には、機転と用心を持って状況に対処する者もいる。マインド・コントロールを用いるカルトのやり方やそれを回避する方法を知らずに、もっとも危機的な時期に伴侶たちを遠ざけて力で押さえ、ひどく感情的に反応する人が多い。その後にならないと(やけくそにならずに)マインド・コントロールに通暁した人と相談しない。それがこの分野の教育の必要が差し迫っている理由だ。

なぜ離婚さえも…… 
 
 「こうなったら離婚しよう」。学校から子供たちを連れ出す途中、キャシーは家の中に怒鳴るように口にした。ジムは「エホバの証人になるよりも無神論者になるほうがましだ」と言って、エホバの証人の王国会館に子供たちを連れて行くことを拒否した。ジムは過剰に反応していた。ジムはメソジスト派教会で育てられ、本当に聖書の神を信じていた。ますます挫折感を覚えていた。地元の教会は何も助けてくれなかった。数年後には幸福な結婚と思えた家族がバラバラになるのだから、それを許している「カルト」の神に怒りを覚えていた。ジムは王国会館を爆破しようと考えた(ところで、それは以前に起きていた)。
 王国会館の地元の長老はキャシーに同情していた。長老たちは山ほどの似たような前例に直面していた。証人と研究している妻を見つけると、たいていの夫は激怒する。どのようにして他人の揺さぶりから耐えられるかだけでない(すべての集会と戸別訪問に出るべきであり、心の中に偽りを潜ませようとする敵に耳を貸してはならない)。長老はキャシーに何を言うかを知っていた……夫はエホバのご計画にあるあなたを迫害している。数年前に夫と別れた主婦たちは、キャシーを慰め、「すべてのものをエホバに向ける」よう、彼女を励ますために利用できた。
 そうとも、キャシーには偽りがあった。証人との研究は偽りから始まる。カルトだったら、どうしよう……。家庭を壊す価値があるだろうか……。子どもが片親になってもいいのか……。神は本当に私をその組織に入れたがっているのか。彼らは知ってはいるけど、騙していないだろうか‥‥‥‥。キャシーにとっては両方の側からの圧力はどんどん強くなった。一方では、彼女に何かを伝えようとする常識のセンスは邪悪であった。一方ではハルマゲドンで彼女を滅ぼす神への畏怖は、つきまとう偽りを考えないようにさせた。遅かれ早かれ、彼女は魂の中の不調和を解決しなければならなかった。彼女は選択しなければならなかったのに、見せかけのことをしただけだ。もしも殺されようとも、ジムと別れ、子供たちを道連れにしていっただろう。裂け目を入れるような彼の分別のない性格と嫌気を催す怒気にうんざりしていた。未信者と結婚させたエホバにどうして奉仕できるのだろうか。王国会館の長老たちはキャシーを理解し、必要なら子供たちを喜んで養うと言った。ジムはやりたいことはできたが、彼らの血筋はハルマゲドンの時には彼女の手の中には残らないだろう。

子供の養育 
 エホバの証人の子供たちは、たいてい十代後半になるまでには証人たちの元には残らない。ものみの塔の中に育つというのは、「小さな西部の町で育つようなものであった。どこからもかなり距離が離れていて、やることは何もない。目にするものはヤマヨモギやサボテン。楽しみ事をしようにもすべてが邪悪だ」といった感じだ。たいていの子どもたちがそこから逃げようにも、それはいつも、もっと健全な環境に向けて、を意味してはいない。「罪」とハルマゲドンの死の恐怖に悩まされ続ける。子どもたちは、一生涯、迷子のようにふらふらしながら歩む。マインド・コントロール・カルトの犠牲者って誰を意味しているか理解するように言ってくれる人に出会うまでそうなのど。もし子供たちがそうした人に出会うするなら、実に幸運だ! 平均的な教会では、そうした人を見つけられない。そういう子どもたちは稀であり、現実とはほど遠い。
 それを知っていればいいのに、離婚しようとしている大勢の伴侶たちが子供たちを証人にしたがっているのは、喜劇であり、悲劇でもある。彼らはそうした現実を耳をしてはいない。王国会館ではおいしい話ばかりだ。どんな理由があるにしろ、ものみの塔を離れる「背教者」はすべて立ち入り禁止なのだ。
 最近の児童養育事件の増加に備えて、ものみの塔は「児童養育事件への備え」というパンフレットを用意した。子どもたちがそういった裁判過程で何を言うべきか、訓練している。このブックレットは王国会館では購入できない。そうした裁判を経験する者であると、協会に頼んだときに限り、入手できる。
 「神権的戦略」(証人が外部の者にどうやってごまかしを言い表わすか、そのやり方)は、判決を動かすために用いられる。証人の子どもは良い教育を望んでいて、なおかつ、芸術や学校活動にいろんな興味を持っている、良い子のお手本であるかのように演技をする。ところが、証人の子供たちにとっては戸別販売活動が生涯のもっとも大事な事業である、格闘技は邪悪であり、学校の課外活動や地域での活動へ参加するのは邪悪である、大学には立ち入りを禁止されている、趣味は最低限にとどめられるべきであると命令されている。もちろん全てのでたらめである。規則正しく、ものみの塔の文書の配布に時間を費やさない限り、ハルマゲドンを生き延びられないし、エホバの証人として認められない。子どもたちはすべての集会に出て、大人たちと一緒に座るべきである。彼らはチューインガムをかめないし、お絵描きはできない、おしゃべりもできない。トイレに行くのさえ、ひどく妨げられる。しかし、この情報は判事の耳には届かないかも知れない。「世の人たちは私たちを理解しないのです」。この「神権的戦略」を使って、正当化する。


カウンセリングが大事 

 証人になっている者の配偶者の中には、喜んで結婚を終わらせる者もいる。何をすればいいかを離婚に終わる者はたいてい、知らないのだ。助ける人もいない、希望もないと思っている。人は自由な意志を持っているのである、自分の考えを無理強いすべきではないと言う者もいる。エホバの証人に捕われた者は特別なマインド・コントロール戦略の被害者であり、さらに実際は「自由な意志」が働いていないと認められる。もし彼らがもうちょっと客観的に立場を考えて、なにが問題かすべて面を考えられるなら、ほとんど、いつもものみの塔を拒否する。(1)客観的に考える能力の無さ。 (2)エホバの証人についてのすぐれた情報の不足が原因である。めったに起こることではないからそうなるのだ。(2)はどちらかといえば軽視されている(私たちの出版物のリストを見なさい)、(1)は、カルトの中に居る人の心を開く方法を知っている者と話し合って動く必要がある。
 それを始めるにふさわしい場所は近所の教会、あなたの地域社会に存在する。カルトを専門にしているそうした専門家を尋ねてみなさい。カルト問題の情報を印刷し、配布している者だけを意味しているのではない(実際にそうした仕事をしている人は多い)。直にカルト信者を相手にして脱会に成功した事例を持つ者を言っているのだ。もしその気になれば、カルトを脱会させる特技を持つ脱会カウンセラーを雇えるのだ。
 特に、もし二人が宗教的な違いを経験したとしても、結婚カウンセラーと会うことを無視してはならない(たいていの「宗教を理由にした」離婚は、現実にはちっとも宗教的ではない。彼らの関係が、単に危機に瀕しているだけである。宗教を問題にすればどちらにとっても都合がいいだけだ)。結婚カウンセリングを求めなさい。できるならクリスチャンで、バランスの取れた見方をする人が望ましい。たいていのすぐれたカウンセラーは、ほかの人をもっと客観的に見なさいとか、もっと愛と理解を持って見なさいと言ってあなたの助けとなる。

 

何をしたらいいのか、
      してはいけないことは何か

 思いつくまま、ここにいくつかのガイドラインを述べよう。

・あなたの伴侶の名前を呼び捨てにしてはならない。カルトの中に居るな、と言ってはならない。非難的なことばを避けなさい。気取った態度を避けなさい。自制心を持ちなさい。
・本当のところ、エホバの証人でも読むだろうと信じられない限り、ものみの塔に反対する趣旨でかかれた文書をエホバの証人に見せてはならない。エホバの証人は普通なら、それを攻撃とみなし、すかさずスクリーンがそびえ立つ。
・離婚するとか、子供を連れ去るなどと言って、脅かしてはならない。反対しているのではない、伴侶を愛し、味方であると教えなさい。
・あなたがものみの塔に反対するはなしを立証できないなら、それを口にしてはならない。彼らはあなたを信頼しなくなるだろう。
・カルトについて、あるいはマインドコントロールの技法について、ものみの塔の歴史について、手に入るものはすべて読みなさい。物知りであり、あなたが豊富に知っていれば、あなたの伴侶に感銘を与えるだけでなく、あなたの信じるものは確実なのもになる。
・「質問をしている」態度を採りなさい。過度に批判的になってはならない。彼らが学んでいることに関心を持ちなさい。それに興味を持ちなさい。わたしも真理に深い興味を持っていんですと言いなさい。
・エホバの証人ではないカルトグループの経験者をエホバの証人に知らせて、わざとではないふつうの食事、あるいは夕方の団らんの席に、ほかのカルトの元信者がそこに同席できるように計画してみなさい(そこにいる他のカルト関係者が持っていたカルトグループについての疑問は、あなたの伴侶自身にとっても疑いの種となる)。
・我慢強くなりなさい。伴侶のために祈りなさい。たいていのエホバの証人なら、数年のうちに組織を離れる。もしエホバの証人が喜んでものを考え、「論議」をするようなら望みはある。もし、今が強情に見えても、後になればものの見事に変わるかもしれない。



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