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Institute of Biodiversity in Japan

いきもの多様性研究所

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森林保全

◇森林大国・日本の森林の実態

 日本の森林面積は2,500万ヘクタールで、森林率(国土面積に占める森林面積の割合)は67%。日本はフィンランドやスウェーデンに次ぐ、世界第3位の森林大国です。 しかし日本の森林の41.2%は自然の森ではなく、人の手によって苗木を植えたり、種を蒔いて育てた森林で、「人工林」と言います。人工林は、殆どがスギ、ヒノキ、カラマツなどの針葉樹です。特に、1950年代、60年代以降、木材需要の高まりと共に、全国各地で自然林が伐採され、人工林に変えられていきました。木材を取るための人工林は、人間の生活にとって重要なものですが、このとき、地形や標高、もともと森林に棲んでいた野生動物のことを無視して、あまりにも多くの人工林が造られ過ぎてしまいました。



自然林(上:外観、下:生態系の保たれた、豊かな林内)



スギの人工林(上:外観、下:放置され下草も無い状態の林内)

◇生物が棲めない、日本の森林

 人工林の中では、あまり多くの生物が生きていくことはできません。自然林には、クマやイノシシなど野生動物に、エサとなる木の実を提供する、ブナやミズナラなどの木がたくさんありました。しかしスギやヒノキ一辺倒の人工林の中には、実のなる木がありません。更に、近年、外国から入ってくる安い輸入木材に押されて、日本の木材が売れなくなり、せっかく造った人工林が、手入れされずに放置されるようになりました。自然林は、人間が手を入れないことによって保全されてきましたが、人工林は、間伐したり、下刈りをするなど、人間が手入れをすることによって保全されます。手入れされなくなった人工林の中には、太陽の光が入らないため、中は暗く、地面には下草も生えません。下草は動物のエサになるのですが、下草は生えず、また木の実もならないため、野生動物たちは人工林を造り過ぎた山間部ではエサを得ることができず、生きることができません。そこで動物たちはエサを求めて里に降りて行っては、地元の方々が造った畑を荒らすようになり、地元の方も大変困られ、動物達を害獣として捕殺するようになりました。


◇森林の形成には、様々な生物が必要

 しかし、動物たちは森林生態系の中で、重要な役目を果たしています。動物が生きられない森になっていることは、ひいては、私たち人間も生きられなくなるということです。 森林は、様々な生物の絶妙な相互依存関係で成り立っています。植物が森林の形成に役に立っているのは皆さんご存知だと思うので、ここでは、動物が果たしている役割について、少しご紹介します。

例えば・・・

■花粉の媒介

チョウやハチなどの昆虫は、花粉を媒介します。昆虫のほか、鳥やカタツムリ、コウモリなども花粉を運びます。


■種子の散布・トリ

  トリは木の実を食べ、遠くに運び、フンとして排泄します。赤い木の実が多いのは、トリに目立って、食べられやすいようにするためだと考えられています。自分の子どもが親木の近くで発芽し、将来水分や日光、栄養素の摂り合い似にならないように、赤い果肉には発芽抑制物質が含まれているため、地面に落ちただけでは発芽しにくくなっています。しかしトリなどの動物の体内で消化され、フンとともに排泄されると、発芽抑制物質が解除され、発芽率が高くなります。

↑ムクドリ

↑ムクドリなどのトリがよく食べるナナカマド


■種子の散布、剪定・ツキノワグマ


↑ツキノワグマ


↑カキを食べたあとのフン

   ツキノワグマはあまり食糧を消化しないため、フンには、食べたものの色やにおいがそのまま残ります。フンからは芽が出やすくなります。ツキノワグマは本州の森林の最大獣であり、森の中を動き回り、あちこちにフンをすることで、種子の散布を行います。また、カキなどの植物は適度に剪定しなければ実が付きにくくなりますが、ツキノワグマがクマ棚※を作る際に木の枝を折ることで、実ができやすくなります。
※クマ棚:ツキノワグマがクリやドングリの木に登ってエサを食べるために枝を折った跡。木の上で小枝を折りとっては枝についている実を食べ、残った枝を自分の座っている下に敷いていくため、クマが去ったあとが棚のようになっている。


■耕し・イノシシ


↑イノシシ


↑イノシシが地面を掘った「土耕跡」
イノシシは、土のなかのミミズなどを探して、土を掘り返します。地面が耕されて、土に落ちた木の実が、芽を出しやすくなります。イノシシが掘り返しをする場所では、しない場所よりも、木の実の発芽率が高くなります。


■死体、フン、倒木などの分解

 センチコガネなどの昆虫は動物のフンを、またシロアリやカブトムシの幼虫などは倒木を分解し、森の肥料を作ります。


  上記は、動物が森の中で果たしている役割の、ごく一部です。 植物は、自分で動き回って、自分の種を蒔いたり花粉を運んだりして、自分の子孫を残すことができません。そこで動物の力が必要なのです。動物は、植物から花の蜜や木の実などの食糧をもらう一方、自分では動けない植物にかわって、種や花粉を遠くに運ぶほか、フンを肥料にし、土を耕して植物が育ちやすくします。動物の死体や倒れた木などを分解する「森の掃除屋さん」の昆虫、節足動物、バクテリアもいます。森の中では、動物も植物も、目に見えない小さな生物から大きな生物まで、多種多様な生物が協力しあって、豊かな森を形成しています。 

   このような生態系の保たれた森からは、人間を含む全生物の命を支える水が湧き出しています。また、豊かな森は私達に酸素を供給し、土壌を支え自然災害を防止するほか、気候を緩和し、地球温暖化を防止します。


◆いきもの多様性研究所の活動(森林保全)


  いきもの多様性研究所では、生態系の保たれた森林を保全するために、以下の活動を行っています。

・地形や標高が合わない、スギやヒノキの人工林を造り過ぎた部分に関しては、スギやヒノキを間伐し、その土地に合った実のなる木等を植え、自然に近い森に戻していきます。このことにより、野生動植物保全と地元の動物による被害の軽減の両立を目指します。
・里に近い人工林は、手入れを行い、地元産材の購入を社会に呼びかけます。
・森林生態系の中で野生生物が果たしている役割についての啓発活動を行います。