日本国憲法の精神に立ち返り戦争反対の態度をただちに明らかにすることを要求します。

小泉首相宛の申し入れ書


4月4日、首相官邸へ提出

小泉首相 宛

申し入れ書

 イラク戦争には何の正当性もありません。「イラクの大量破壊兵器の廃棄」、「フセイン政権の打倒によるイラク民衆の解放」がこの戦争の理由とされています。
 しかしこの戦争をはじめた当のアメリカこそが、核兵器をはじめとして世界最大・最強の大量破壊兵器保有国であることは誰も疑いえないところです。そのアメリカが、存在さえ疑わしいイラクの大量破壊兵器について、その疑惑を理由として先制攻撃をしかけることは明らかな国際法違反です。アメリカは自分自身の大量破壊兵器保有に対して廃棄を要求され攻撃を仕掛けられることを認めるのでしょうか。アメリカ自身が既に自分の論理において矛盾をきたしています。

 米英軍がイラク領内へ侵略を開始して以降、イラク民衆は米英軍を「解放軍」として歓迎してはいません。フセイン政権がどんな政治体制であろうとそれを変革することはイラク民衆自身の問題であります。他国から武力でもってその国の政治体制を変更することも明らかな国際法違反です。

 小泉首相はこうした何の大義も正当性もない米英のイラク戦争が開始されるや否や、真っ先に支持を表明しました。
 再びここで繰り返すまでもなく、我々は世界にも誇るべき、戦争放棄、軍備及び交戦権を否認する日本国憲法をもっています。その国の首相が、何の正当性もなく、国際法にも違反する明白な侵略戦争を支持することは許されるものではありません。

 イラク戦争では人口密集地である首都バグダッドへの空襲により、既に多くの子どもをふくむ600人以上のイラクの民衆が犠牲となっております。バスラの包囲と攻撃により、住民は水や食料、医薬品の欠乏により危機的状態にあるとも報じられています。
 今、計画されている米・英軍のバグダッド攻略、地上戦はイラク軍とイラク民衆の決死の抵抗を生み出し、人類の歴史上でも特筆される大量殺戮の修羅場が現出される可能性があります。

 我々は、こうした惨状を見ることは堪えられません。まして、我々自身の国の首相が、憲法に違反し、こうした惨状を現出することに支持を与えることは、我々自身をこうした人類への犯罪とも言うべき戦争の加害者、加担者に引き入れるものです。

 我々は小泉首相に直ちにイラク戦争への支持表明を撤回し、米英に対して戦争停止を要求することを強く求めます。

 米軍はこの戦争において劣化ウラン弾使用を認めました。劣化ウラン弾は大気中に極めて微小な放射能のチリを拡散させ、その放射能汚染はほぼ永久と言ってよい長さで地球上に残ります。これは新たな核兵器そのものです。すでに湾岸戦争症候群として米国兵士にも影響が出ているではありませんか。イラクにおいても特に子どもたちのガン、白血病、先天性障害の明らかな増大と言う形で影響が現れています。
 我々、日本国民はヒロシマ・ナガサキの凄惨な核兵器被害の経験をもっています。だからこそ、我々国民は世界に向けて核兵器に反対し、その被害の実相と核廃絶を訴えてきました。今、劣化ウラン弾という新たな核兵器被害が圧倒的な規模で起ころうとしている時、我々日本国民はその非人道的核兵器使用の中止を訴え、戦争の即時停止を訴えるべきであります。

 小泉首相は、被爆国日本の代表として、直ちに劣化ウラン弾使用の中止と戦争の即時停止をアメリカに要求すべきです。

 9.11テロ事件以降、米国はアフガニスタンを攻撃し、イラク戦争を開始しました。ブッシュ大統領はこれを「テロとの戦い」と位置付けています。しかしアメリカの圧倒的な軍事力を背景とした、一方的な決め付けによる攻撃開始、侵略戦争そのものが、アフガニスタンやイラクでの多くの犠牲者を生み出しています。アフガニスタンでも、イラクでも、そして全世界で子どもたち、若者がこの不条理で何の正当性もない戦争による悲惨な結果を見ています。このことが、新たに多くのテロの芽をばら撒いていることは明らかです。

 何の大義も正当性もなく、国際法にも違反し、世界をテロと戦争の暴力の連鎖に引きずり込むこのブッシュ政権の戦争拡大政策に、小泉首相はきっぱりと訣別し、日本国憲法の精神に立ち返り戦争反対の態度をただちに明らかにすることを要求します。

2003年4月4日

ピース・ニュース