[解説]

垂直離着陸機 MV22オスプレイの危険性

政府が安全PRをしているさなかに墜落事故


 沖縄普天間基地への配備計画が明らかにされるなか、その危険性のために配備に強い反発の声が上がっていた米軍の新型輸送機オスプレイ。危険性が訴えられている最中で、またしても墜落事故が発生した。6月13日、米フロリダ州での訓練中でのことである。日本政府はオスプレイの配備のために安全PRを展開していた。4月にもモロッコでの演習中にオスプレイは墜落事故(4名死傷)を起していたが、それを受けてもなお政府は、「機体に問題はない」との米軍見解をオウム返しにして安全PRをしていたのである。フロリダ州での墜落事故は、政府の安全PRがいかにいい加減なものか、日本政府がいかに米軍の露払い役に成り下がっているのかを証明した。

 しかし、それでもなお米軍は、オスプレイの普天間配備を強行しようとしている。日本の本土でも、東北・信越地方の3ルート、四国と紀伊半島を結ぶルート、九州北部のルート、奄美諸島のルートの低空飛行訓練が計画されていることが明らかとなっている。岩国基地(山口県)・キャンプ富士(静岡県)での月2〜3回の2〜6機の運用計画も明らかとなった。そして米軍は、7月にも普天間配備に先立って、岩国基地に搬入する予定である。日本政府も相変わらず国民の声を無視して「先送りを求めることはあり得ない」(防衛省関係者)との姿勢を示している。


MV-22 オスプレイ
MV22 オスプレイとは

 辺野古新基地も高江ヘリパッドもオスプレイ配備を前提にしているにもかかわらず、日本政府は隠し続けてきた。昨年6月に米政府が、2012年度中にオスプレイを沖縄に配備することを発表すると、政府はそのまま容認した。日本政府は、辺野古新基地建設のアセス手続きの方法書と準備書には、オスプレイの影響評価を記載せず、昨年末に姑息な手段で沖縄県庁に運び込んだ評価書に後出しで記載した。オスプレイがそれほど危険なものであることを、政府自ら認めていることになる。

 オスプレイは、ロータ(回転翼)と固定翼を備え、ロータの角度を変えること(ティルト・ロータ)で、垂直離着陸や水平飛行を行う。ロータを地面に対し水平にするヘリコプターモードと、垂直にする固定翼航空機モードを切り替えながら飛行する。固定翼機モードでは、プロペラ機と同じ飛行となり、ヘリコプターよりも速度を出すことができ、航続距離も長い。固定翼機モードでの離着陸はできない。

 1981年に計画され、1988年に試作1号機が完成した。1996年から量産(初期低率生産)が開始され、2005年からフル量産となった。海兵隊仕様のオスプレイをMV22、空軍仕様をCV22と呼び、両方合わせて現在110機が運用中で、うち97機がMV22である。実戦では、海兵隊が2007年10月から2009年4月までイラクで、2009年12月からはアフガニスタンで運用している。

 MV22は、主にCH46Eヘリコプターの置き換えとして配備が続けられており、沖縄でも当面12機(最終的には24機)をCH46Eから置き換える計画となっている。実戦でのMV22とCH46Eとの比較では、CH46Eが12名を乗せての行動半径が75海里(139km)に対し、MV22は24名を乗せて325海里(602km)で4倍以上だったとの報告がある。最高速度は約550km/h、航続距離は、4.5トンの積載量のとき1,700km以上とされている。

 MV22は地上で駐機するスペースが、CH46Eと同程度であり、艦船に積む場合は主翼やロータを折りたたむことで、さらにコンパクトに収めることができる。垂直離着陸が可能であるが、負荷が重い場合は、ロータを傾けて、主翼の揚力を利用した離着陸となるため、ある程度の長さの滑走路が必要である。

オスプレイの危険性 その1: 重大事故の発生

 オスプレイは開発時期に2件、初期生産時期に2件、計4件の重大事故を起こし、合わせて30人が死亡している。実戦での事故は、2010年にアフガニスタンで空軍のCV22が夜間の着陸に失敗し、4名が死亡している。今年4月11日には、モロッコ軍との共同演習中にMV22が墜落し、2人が死亡した。

 機体の事故以外にも、エンジンの熱で地表の草が燃えて火災が発生したり、ロータが発する強力な風(ダウンウォッシュ)で、地上で見学していた人が負傷するといった事故も起きている。

オスプレイの危険性 その2: 飛行時の危険性と構造上の問題

 オスプレイは、その特徴に起因するいくつかの問題点が指摘されている。その最大の問題は、オートローテーション機能が欠如していることである。通常のヘリコプターでは飛行中にエンジンが停止した場合、落下時の気流でロータ(回転翼)が回転し、揚力が生じてソフトランディングできるのだが、オスプレイはこの機能が十分働かない。

 固定翼機モードで飛行しているときにエンジンが停止した場合は、そのままグライダーのように固定翼を使って着陸を図る。この場合、ロータは地面に接触するので、すぐに外れるようになっているのだが、外れたロータが飛んで、被害を与えることが予想される。普天間基地のように、周辺に住居が密集している場所では重大事故が発生する恐れがある。ヘリコプターモードから固定翼機モードへの切り替えは12秒かかり、その間に高度が低下してしまうので、ヘリコプターモードで飛行中のエンジントラブルは大惨事につながる恐れがある。

 「世界一危険な」普天間基地にオスプレイが配備されれば、その危険はより高まる。強力なダウンウォッシュによる被害だけでも深刻である。一方、高江の森をオスプレイが低空飛行すれば、ノグチゲラやヤンバルクイナ、その他の動物は暮らしていけない。

沖縄は、全県民レベルで反対
全国から配備反対の声を上げよう!


 沖縄は、県知事も、県選出・出身の全ての国会議員も、オスプレイ配備反対を表明している。また、全市町村の議会も反対決議を採択している。全県民レベルの反対意思が表明されている状態である。

 6月17日には、宜野湾市で、オスプレイの普天間基地配備に反対する市民大会が行われた。宜野湾市が呼びかけ、5200人が結集。オスプレイ配備反対のほか、普天間基地の早期返還、返還時期の明確化を求める決議が採択された。宜野湾市民大会に続いて、沖縄県民大会を開催することも検討されている。

 岩国市議会も22日、岩国基地へのオスプレイ先行搬入に反対する意見書案を可決した。岩国市長も、搬入を当面は容認しない考えを表明している。御殿場市の市長もキャンプ富士でのオスプレイ運用について「現段階では断固拒否」の姿勢を明らかにした。

 米国では、ニューメキシコ州の空軍基地で計画されていたオスプレイの低空飛行訓練計画が、住民の強い反対・中止要請によって棚上げ見直しされるという。日本においても、全国国民が声を上げてオスプレイの配備計画見直しを迫らなければならない。オスプレイの配備の危険性を訴え、全国の運動が連帯して配備阻止の声をあげていこう。