在日米軍基地問題シンポジウム
全国から闘う仲間が結集

「基地シンポ2008 in 神奈川」
  6月28日、「いま基地の街では」とのタイトルで、横浜弁護士会主催のシンポジウムが横浜で開催され、全国から600人が参加しました。パネラーや問題提起者から、神奈川を始め、沖縄や岩国も含め、米軍再編や基地犯罪と闘う各地の報告や問題が提起されました。米軍再編に直接関係する課題、米軍人による強盗殺人事件の訴訟、さらに自衛隊内部のいじめ自殺の訴訟など、さまざまな運動や裁判闘争が紹介され、日米地位協定や安保条約の問題点、さらには憲法との関連についての指摘が行われました。

[第1部] 神奈川からの報告と問題提起

 厚木爆同の金子豊貴男氏からは厚木基地航空機爆音訴訟について、現在、第四次訴訟を提訴し、闘争中との報告があり、空母艦載機による離着陸訓練(NLPなど)の爆音被害が紹介されました。

厚木爆同の金子氏

会場の様子

  米兵による強盗殺人事件を訴えた「山崎訴訟」の高橋弁護士と山崎氏(原告)からは、2006年に横須賀で起きた米兵による強盗殺人事件の紹介があり、人を殺戮することを任務とする軍隊の本質を隠し、安全だと思わせてきた米軍や国の責任も問題と訴えました。


山崎氏と高橋弁護士

  パネラーの一人、呉東弁護士からは、「危険な原子力空母の横須賀配備計画に対する住民運動と訴訟」と題する問題提起があり、その中で、8月に配備が予定されている原子力空母ジョージ・ワシントンの火災について触れ、「1か月たっても火災原因が分からず、非常に深刻である」との指摘がありました。「これからも、ジョージワシントン配備ストップの運動を続けるので支援をお願いします」との呼びかけがありました。

 自衛艦「たちかぜ」訴訟の弁護団と原告からは、海上自衛隊内部で行われた"いじめ"による自殺事件の紹介がありました。


「たちかぜ」訴訟原告と弁護士(プライバシー保護のため画像は加工しています)

[第2部] 岩国・沖縄の状況

 パネラーの井原勝介(前岩国市長)からは、「米軍再編をめぐる岩国の戦い」と題する講演がありました。その中で井原氏は、特に住民投票について触れ、「住民投票を行ったことで市民の間から声が出始めた。民主主義を進展させるために住民投票は有効である」との認識を示しました。

広島弁護士会の足立修一弁護士からは、岩国の米軍基地の沖合移設事業に関する裁判闘争について報告がなされ、「埋立承認処分の事業申請承認取消の行政訴訟」の経過と、「爆音訴訟」提訴に向けた動きが紹介されました。

沖縄の新垣勉弁護士からは、6月26日の普天間爆音訴訟の地裁判決に触れ、「国に騒音測定の義務がある」との請求を退けた判決を批判しました。また、横田爆音訴訟での「駐留米軍には日本の裁判権がない」との判決は、日米地位協定によるものであるから、これの抜本改定を求める運動が重要と訴えました。


前岩国市長 井原氏

[第3部] 米軍再編 憲法及び地方自治からの検証

 パネラーの前田哲男氏からは「米軍再編で日本の軍事状況はどうなるか」と題する講演がありました。その中で「日米地位協定」の問題に触れ、国会承認なしで導入されたものであるが、特に「全土基地方式」と呼ぶ、日米政府が合意すれば日本中どこにでも米軍基地を置くことができる、世界に類をみない不平等な内容であるとの指摘がありました。

 また、9.11直後に横須賀の空母キティホークが大慌てでインド洋へ向け出航した状況に触れ、日米地位協定による日米政府間の協議も行われないで、空母が戦場に向かった状況が暴露されました。
 さらに自衛隊と米軍の統合化について触れ、横須賀(海軍)、横田(空軍)、キャンプ座間(陸軍)が3軍それぞれの米日統合司令部となりつつある現状が報告されました。

 もう一人のパネラーである伊藤真氏からは「国の基地政策と憲法及び地方自治の本旨」と題する講演が行われました。アフガニスタン戦争、イラク戦争に在日米軍が出撃するという事態は、安保条約からも逸脱した不法な米軍の行為を日本が税金で負担しているということであり、国民がこの戦争に加害者として加担していることになると指摘しました。また、米軍再編と地方自治の観点では、自民党新憲法草案で現憲法第95条を削除していることに触れ、地方に対する基地被害の押し付けが強まることの懸念が指摘されました。


パネルディスカッションの様子