フィールドワーク報告

米軍岩国基地と愛宕山住宅開発

国・政府・米軍のあくどいやり方-闘う以外に道はない


 2007年10月6、7日の2日間にわたり、全国各地で基地強化に反対して闘う人々が岩国に集まり「米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会第二回総会」が開かれました。私たちピース・ニュースの代表も参加して来ました。
 以下はこの連絡会と合わせて行われた米軍岩国基地と愛宕山住宅開発のフィールドワークの報告です。

(文責)ピース・ニュース



 岩国市議の田村順玄さんの案内で米軍岩国基地、愛宕山住宅開発と基地拡張の現場、岩国新市庁舎と補助金カットなどの問題についてフィールドワークを行いました。

広大な米軍岩国基地(写真は中国新聞hpより)

■再編に反対した井原市長への国の嫌がらせ−市庁舎建設補助金カット

 岩国市庁舎屋上から岩国市街と岩国基地を望んだ。現市庁舎のとなりに新たに大きな市庁舎が建設中である。
 防衛省はこの新市庁舎建設の補助金49億円のうち07年度分35億円を突然カットすると通告してきたという。
 理由は井原市長が厚木からの艦載機移転反対を表明したためだという。「再編計画を容認しないかぎり補助金は出せない」というのが防衛省側の言い分だそうだ。

 しかしこの新市庁舎建設の補助金はSACOによる普天間からの空中給油機受け入れにともなうもので、再編計画とは全く無関係のものである。

 こうなると法律やルールではなく恣意的な嫌がらせだ。しかし保守系市議は国に向けるべき矛先を井原市長に向け、2回にわたり07年予算否決、市長問責決議採択などの攻撃をしている。

 井原市長は市民の信を再度問う市長選を選択せざるをえない微妙な情勢になっている。

建築が進む新岩国市庁舎(左側は現市庁舎)

■「思いやり予算」2400億円で基地拡張−そして米軍再編で艦載機がやってくる


  市庁舎からバスで市の西側の愛宕山住宅開発地域へと向かう。広大な山が削り取られ無残な姿をさらしている。ここから削り取った土砂で米軍岩国基地の南側一帯を埋め立てたのだ。1996年から2009年までの計画で、その埋め立ては既に完了している。

現在の基地の東側を埋め立て滑走路を沖合いに1km移設するという計画が進んだ


 岩国の米軍基地の騒音に悩む岩国市民にとって、基地東側を埋め立て2400mの滑走路を沖合いへ1km移転する、そのために「おもいやり予算」2378億円を投入する、というのは住民にとってきわめておいしい話ではあった。そして、その埋め立て工事がほぼ完成する段階になって、米軍再編により厚木基地の艦載機が移転となるという話が出てきたのである。

 計画当初から、基地の埋め立て・拡張は基地の拡大、固定化につながるとして反対してきたのは田村市議ただ一人だったと言う。岩国市民からは最近になってようやく「田村さんが前から訴えていたとおりになってしまいましたね・・」との声が出ているという。
  国や政府、米軍を信用してはならない、基地撤去の闘いを徹底して貫く以外に本当の解決の道が無いことを現地へ来て話を聞き現場をみることでつくづくと実感させられる。

岩国基地の東側-広大な地域の埋め立ては
既に完了している。

田村順玄市議(中央)の説明を聞く


■愛宕山開発計画も赤字見込み−米軍住宅へ売り払って赤字の補填?

  基地拡張のための埋立て土砂を供給する愛宕山開発(県・市共同事業)事業も破綻をしている。目論んだ住宅地開発・分譲は計画通りには販売できず現時点で総額251億円の損失見込みである。


愛宕山住宅開発の現場
資材は土砂を海まで運び出した巨大コンベアの残骸
 人口わずか11万(現在は合併により15万人)の市である。広大な開発地域を見るといかにこの計画がずさんなものであったかを実感させられる。市の負担は84億円という膨大なものとなる。山口県は愛宕山開発用地を米軍住宅用に売ることをもくろんでいる。井原市長は84億円処理のため、米軍住宅として売られることを承知しながら、県の「国への売却」案に同意せざるを得ない状況なのだ。

 結局、米軍基地拡張やそれに伴う愛宕山開発でぼろ儲けしたのはゼネコンであり、その負担は国や地方財政の赤字として国民に回ってくる。工事を請け負ったのはゼネコンは計画を決定した自民党と太いパイプがあるという。米軍再編−自民党政治家−ゼネコンという構図は、米軍再編問題が単に外交安全保障政策の問題だけでなく利権がらみの問題でもあることが浮かび上がってくる。



岩国市西側の愛宕山を切り崩し
巨大なコンベアを敷設して埋め立て土砂を運び出した


■国と自民党、米政府のあくどいやり方−闘う以外に道はない


 2時間にも満たないフィールドワークであったが国・政府と自民党・米のあくどいやりかたを目の当たりにさせられ、彼らの言う言葉がどんなに「甘い」ものであってもそれは信じてはならず徹底して闘う以外に道はないことを再確認させられる行動であった。田村市議の長年にわたる地元での地道な闘いに敬意を表したい。