行動報告

「ただちに人体に影響がでるレベルではありません」
とはどのようなレベルなのか?

厚労省への公開質問状に対する説明会


 福島原発震災発生後、放射能汚染の実態が次々と明らかにされるなかで、
枝野官房長官は繰り返し「ただちに人体に影響がでるレベルではありません」という説明を繰り返して来ました。
これに対して美浜の会が呼び掛けて、公開質問状を提出しました。
2日間に168団体が共同提出団体として名乗りを上げました。
これに対する厚労省の説明会が3月28日に開かれました。


説明する厚労省医薬食品局食品安全部
の職員


説明会終了後の記者会見
美浜の会他の代表


[厚労省の説明会で明らかになったこと]


●「直ちに健康に影響が出るレベル」がどういうレベルかは、厚労省としてははっきしていない。
●ICRPの集団被ばく線量リスク(1ミリシーベルトを2万人が被ばくすると一人のガン死)は、知らない。
●食品の暫定基準値は、1年で17ミリシーベルトもの被ばくになる
●食品の暫定基準値は、後になって健康影響がでるかも知れない(あいまいに表現)
 (全体として、後になって健康影響が出ないとは言えなかった)
●年間1ミリシーベルトという一般人の限度は、外部被ばく(空気や土壌から)+内部被ばく(空気や水・食品等から)
この1ミリシーベルト全体の評価は、どこが担当しているのか分からない。

記者会見は、日本は読売新聞と週間金曜日だけ!海外メディアはCNN、ドイツ国営放送、ウォールストリートジャーナル等でした。熱心に質問など多かったです。

[参加者からの報告」

 本日午後、参議院議員会館会議室で、食品の放射能汚染の基準について厚生労働省との交渉と記者会見が行われました。福島みずほ事務所にご尽力いただきました。大島九州男議員にもご参加いただきました。

 交渉には、関西、九州、首都圏から60名ほどの市民が参加しました。マスコミ等合わせて70人ほどになります。厚生労働省側は、医薬食品局食品安全部企画情報課佐久間課長補佐と基準審査課内海係長の二名が対応しました。

 まず、「ただちに影響がでるレベル」とはどのようなレベルなのか、またその影響とはどのような人体的影響なのか、具体的に説明してくださいとの質問に対する回答を聞きました。厚生労働省の回答は、枝野長官が言ったのは、放射能を含む野菜を10日間食べても、自然放射能のレベル以下であることかだと聞いているというものでした。こちらが、「ただちに影響が出るレベルとはどのようなレベルかと聞いているので答えて欲しい」と言っても、まるで他人事のように同じ答えを繰り返すだけでした。

 そこでICRPのリスク評価における集団線量の考え方をとりあげ、低線量でも影響あることを確認しようとしましたが、驚いたことに今日来た担当者は、ICRPのリスク評価も集団線量も知りませんでした。一堂唖然としてしまいました。

 「ただちに影響が出るレベル」について引き続きやりとりしていると、佐久間氏が個人的な見解として100ミリシーベルトという数字をあげました。マスコミに出てくる御用学者がしきりにとりあげる数値です。では100ミリシーベルトで何か起こるのか?ガンのリスクが高まる…それは後からでてくるもので「直ちに影響」するものではないではないか…。ここで厚労省の担当者は言葉を失いました。

 続いて食品の放射能暫定基準値について議論しました。放射能基準値はチェルノブイリのときに問題になり、その後もきちんと定めるよう求めた経緯がありますが、日本ではチェルノブイリのような事故は起こらないんだとしとして、結局定められずにきました。

 現在暫定基準がありますが、その数値は、ヨウ素が全身に換算して年間2ミリシーベルト、セシウムを追加すると年間7ミリシーベルト、さらにウランやプルトニウムを追加すると年間17ミリシーベルトになります。現在の放射能汚染はさまざまな核種で出ており、ヨウ素だけに被曝するということにはなりませんから、影響の合算が必要です。合算は単純に足せばよいことについて、厚労省は今日しぶしぶ認めました。年1ミリシーベルとという外部被曝の基準に加えて、17ミリシーベルトまで食べてよいとしているのが今の暫定基準です。緩すぎます。

 このように暫定基準でも大いに問題があるのですが、これをさらに2倍以上に緩める動きがあります。国民に被曝の受任を迫るとんでもないものです。みなさん一緒に反対していきましょう。

 最後に放射能に対する食品安全は誰が責任者を負うのか、外部もあり、内部もあり、ヨウ素あり、セシウムあり、水もあり、牛乳もあり、野菜もありと多岐にわたり、そのあたりを統括するのはどこなのか聞きましたが、答えられませんでした。既に被曝者が出ているにもかかわらず、被曝の管理体制ができておらず、完全な無責任状態にあることが非常によくわかりました。

 最後に参加者一同からの要請を渡して35分の交渉を終えました。被曝管理の無責任状態に一同不安と怒りを感じていました。以下が緊急に提出したものです。これの内容をみなさんに広めてください。

阪上 武(福島老朽原発を考える会)

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3月28日厚生労働省との交渉を踏まえた
要  望  書

内閣総理大臣 菅 直人 様
厚生労働大臣 細川律夫 様

3月28日の質疑の総括として、次の事項を要望します。

1.20〜30km範囲の「積極的自主避難」は無責任。直ちに避難指示を出す
こと。線量に応じて避難範囲を拡大すること。

2.今回の事故によって住民に晩発的に現れる生命・健康への影響を明らかにす
るため、外部被ばく、大気中のヨウ素などの吸入による内部被ばく及び食品・飲
料水からの被ばくの全体について、集団被ばく線量を随時計算して公表すること。

3.放射線作業者への基準値引き上げ(250mSv)を撤回すること。

4.モニタリング調査を拡大し公表すること。特に、
・各地の土壌汚染について、1平方メートル当たり何ベクレルかを測定し公表す
ること。
・甲状腺の内部被ばく線量を測定し公表すること。測定条件を明らかにすること。

5.直ちに住民の被ばく・健康調査を実施し、長期にわたって健康管理を行うこ
と。

6.食品の暫定規制値を緩和しないこと。現行の暫定規制値でも住民に大量の被
ばくを強要するものだ。

7.農業・酪農従事者への被害補償、移転補償を行うこと。

8.全体的に、公衆の線量限度である年1ミリシーベルトを厳守し、それを満た
すような措置をとること。

2011年3月28日

厚生労働省との交渉参加者一同

連絡先:美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会
大阪市北区西天満4-3-3 星光ビル3階 TEL 06-6367-6580 FAX 06-6367-6581