展覧会の感想と紹介


「シャヒード、100の命」展
─パレスチナで生きて死ぬこと─

東京 キッド・アイラック・アート・ホール
京王線・京王井の頭線明大前駅下車徒歩2分
2003年8月1日(金)〜10日(日)


暗
い部屋の壁に透明なプラスチックケースに入れられた家の絵が浮かぶ。上には肖像写真と名前が書かれたカード。これは誰?この絵はこの人が描いたもの?カタログに目を落とす。この人、ハラルド・フィッシャーは2000年11月15日、イスラエルのミサイルに爆撃され即死、20年前からパレスチナに移住したドイツ人だ。絵は故郷ドイツの家を描いたもの。
隣には初老の女性の写真とスカーフ、きっとお気に入りのものだったんだろう。これをつけて買い物に行き、友達と陽気におしゃべりしていたんだろう。

「シャヒード、100の命─パレスチナで生きて死ぬこと─」は、2000年9月に始まった第二次インティファーダでの最初の100人のシャヒード(殉教者、誠実な証人、イスラエルの攻撃による犠牲者の意)を悼む展覧会である。シャヒードすべてを悼むものとして企画されたが、あまりに増え続ける犠牲者の数に100人に限ったという。

 「この人たちの人生を、愛情と尊厳を込めて世に知らしめること」それぞれの写真や遺品から「その現実や夢を理解しようとすること」「現実そのままの人生を回想すること」(カタログあとがきより)。これらを目的に企画されたこの展覧会は、たった一つの遺品が雄弁に人生を示すことを教えてくれる。


結婚式や家族の写真、キャップ(帽子)、数珠、コーラン・・・遺品はひとりひとりの生活を垣間見せる。シャツやズボンはきちんとたたまれ、ひもでゆわえてある。ボクシングのグローブやサッカーのメダル、若者たちはスポーツに興じることもあったんだ。メジャーやこてもある。これで毎日仕事をしていたのだろうか。それとも失業しても道具を大切にしていたのか。
 犠牲者にはティーンエージャーも多い。通学かばん、サッカーボール・・・数式の並ぶノートにはいたずら書きもある。ゲーム機や自転車の遺品の持ち主は、パレスチナの中では恵まれた層だが中学生で抗議行動に参加していた。
 写真のないシャヒードがふたり、遺品はシャツとスリング(パチンコ)。18歳と15歳の少年たちは中学さえ卒業できず働き続けたのに、写真も残せなかった。


遺品だけでは判らないものもある。糸くずが展示されていた。配管工だった彼は仕事のためにいつも糸くずを持っていたのだ。こんなときカタログは役に立つ(定価2000円)。遺品の前で想像力を働かせて生活を想い描くこともすばらしいが、カタログに書かれた簡潔な文章は想像を2倍3倍に膨らませてくれる。
彼らがどんなふうに生きていたか、なぜ殺されねばならなかったか、展示物には説明書きはない。ただパレスチナの地図と簡単な紹介があるだけだ。
 「その証言をどこまで深く聴き届けることができるかは、私たち一人ひとりの人間的な想像力に懸かっているだろう。」日本語訳者岡真理さんがあとがきで投げかけた言葉は、重い。
 私はどれだけ彼らの言葉を聴き、それに応えることができるのだろうか。
(Y.A)
「シャヒード、100の命」展−パレスチナで生きて死ぬこと−
京都
会期:2003年8月15日(金)〜8月31日(日)(月曜日休館)
開場時間:午前9時30分〜午後4時30分
会場:立命館大学国際平和ミュージアム 中野記念ホール(京都市北区等持院北町56-1 Tel:075-465-8151)
入場無料
主催:「シャヒード、100の命」展実行委員会
共催:立命館大学国際平和ミュージアム、立命館大学国際言語文化研究所
協力:「シャヒード」展京都準備会
問い合わせ:立命館大学国際平和ミュージアム Tel. 075-465-8151

沖縄
会期:2003年9月5日(金)〜9月15日(月)(火曜日休館)
開場時間:午前9時30分〜午後5時
会場:佐喜眞美術館(沖縄県宜野湾市字上原358 Tel:098-893-5737)
入館料(常設展と共通):大人700円、中高生600円、小人300円
主催:「シャヒード、100の命」展実行委員会、「シャヒード、100の命」展沖縄実行委員会
共催:佐喜眞美術館
問い合わせ:佐喜眞美術館 Tel. 098-893-5737

松本
会期:9月20日(土)〜30日(火)(24日水曜日休館)
開場時間:午前9時〜午後5時
会場:松本市中央公民館Mウイング 2階展示ギャラリー(長野県松本市中央1-18-1 JR松本駅下車徒歩5分 Tel:0263-32-1132)
入場無料
主催:「シャヒード、100の命」展実行委員会、「パレスチナ・夢と恐怖のはざまで」実行委員会
共催:松本市中央公民館
協力:講座「世界を学ぶ」実行委員会
問い合わせ:「パレスチナ・夢と恐怖のはざまで」実行委員会 Tel. 090-8493-7293(山口)またはTel/Fax 0263-27-4020 E-mail yakkom@janis.or.jp(村井)

大阪
会期:10月7日(火)〜19日(日)(14日休館)
開場時間:午前10時〜午後5時(入館は4時30分まで)
会場:大阪人権博物館リバティおおさか(大阪市浪速区浪速西3-6-36 Tel:06-6561-5891)
入館料(常設展と共通):大人500円(団体400円)、高大生300円(団体200円)、小中学生以下、65歳以上、障害をもつ人(介護者を含む)は無料
主催:「シャヒード、100の命」展実行委員会、「シャヒード、100の命」展大阪実行委員会
呼びかけ団体:パレスチナの平和を考える会、大阪YWCA国際部
賛同団体(6月末現在):アムネスティ・インターナショナル日本、憲法9条の会・関西、ジュビリー関西ネットワーク、日本ビルマ救援センター、ATTAC関西、在日韓国民主女性会・大阪、平和都市ひらかたを考える市民の会、Global★Peace Action ぐろっぴぃ、ピースボート、カトリック大阪大司教区社会活動センター・シナピス、反天皇制市民1700ネットワーク、小泉首相靖国参拝違憲アジア訴訟団事務局、「女性・戦争・人権」学会、アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局、「アジア・太平洋地域の戦争犠牲者に思いを馳せ、心に刻む集会」大阪事務局、平和を考えるオリーブの会、(特活)関西NGO協議会、関西共同行動、国際子ども権利センター関西事務所
後援:大阪人権博物館リバティおおさか
問い合わせ:Tel/Fax 06-6694-9134 E-mail ysige@hotmail.com(やくしげ)

詳細は以下のサイトで。
http://www.shaheed.jp/