[本の紹介]

「戦争は教室から始まる」─元軍国少女・北村小夜が語る

「日の丸・君が代」強制に反対する神奈川の会編 現代書館



  この本は連続学習会「戦争は教室から始まる─学校の戦前戦後、断絶と連続」の記録である。

 この学習会は、2006年12月から翌年6月にかけて開かれた。天皇制と能力主義教育に反対し続けてきた北村さんの話をじっくり聞こうと企画されたものだが、ちょうど『改正』教育基本法・国民投票法の成立とも重なり、より切迫した思いのこもったものとなっている。

 第一回「修身と道徳」以下「音楽 歌い継がれる戦争の歌」「障害児教育」「勤評・学力テスト」「学校行事 日の丸、君が代、天皇制」「軍国少女を生きて」のテーマごとに語られている内容は、戦前・戦中の皇民化教育の徹底振りもさることながら、それがいかに戦後へと引き継がれ復活していくかがよくわかるものとなっている。

 これは北村さんの語りももちろんだが、随所に載せられた豊富な資料が大きく貢献している。戦前の国定教科書やさまざまな通達ばかりでなく、戦前から今に続く童謡の歌詞、勤評闘争や60年代の学力テスト反対闘争時の資料なども興味深い。

 爆弾三勇士の旗行列に連れて行かれてから日の丸ファンとなったという北村さんは、教室で戦争していたというほどの熱心な軍国少女だった。女でも靖国に行くにはどうしたらいいかを考えて、看護婦を志願し朝鮮へと渡っていった。

 子どもの頃から青春にかけてをお国のため、天皇のために戦ってしまった。戦後、教員になり退職後も一貫して戦前の教育の復活と闘い続けてきた彼女は80歳を越えて訴える。「戦争は教室から始まる、今がその瀬戸際である」と。

 お国のための人づくりがより巧妙に復活している現在、過去を学ぶことはこれを打ち破る闘いに大きな助言となるはずである。
A.Y