本の紹介

新崎盛暉が説く構造的沖縄差別
新崎盛暉 著

高文研
2012年6月
 
  「沖縄現代史研究のパイオニア、沖縄闘争の伴走者が、今、沖縄から安保の本質を問う!」と表紙にあるこの本は、本土復帰40年目の今年5月15日にあとがきが書かれ6月23日に出版された。戦後の日本・米国・沖縄の関係、特に95年以降の沖縄の闘いと日米両政府の対応が簡潔にまとめられていて、基地問題への入門書としてはもちろんこれまでの闘争に関わってきた人が問題を整理するためにも導きの一冊となるのではないだろうか。



 
 日米安保体制を金科玉条としそのもとで沖縄に基地を集中させることを当然視する「構造的沖縄差別」がどれほど根強いかは、鳩山政権の挫折が示しているとおりだ。しかし一方このことで沖縄の人々が差別を自覚しこれを克服しようと動き始めている。沖縄とヤマトの世論調査の結果や沖縄地元紙の引用など裏付ける資料も示されている。押さえつけようとするヤマトからの介入は根強いが、ヤマトから連帯する動きも強くなっている。名護の住民投票や市長選の凄まじさ、辺野古・高江の闘いなど改めて怒りをかきたてられる。さらに韓国をはじめ東アジア各地の民衆とのつながり、米国議会・国連への働きかけなどこの間の運動の広がりが整理されていて読みながらわくわくしてきてしまう。

 「沖縄の闘いが、構造的沖縄差別を突き崩す時期は、周辺諸地域の民衆の、沖縄に対する共鳴・共感・連帯の度合いによって遅くもなれば早くもなるだろう」と著者は最後に記している。もっとも大きな影響を持つヤマトンチューに、実態を訴えていくことの重要さを再確認させられる。普天間基地へのオスプレイ配備が問題となっている今ぜひ一読願いたい。
                 
Y.A