[映画紹介]
南京・引き裂かれた記憶
監督 武田倫和 2009年/DV−CAM

七人の被害者の証言と、
六人の元日本兵証言から
浮かび上がる
「南京大虐殺」の記憶
 南京が日本軍により占領されたのは1937年12月13日、この攻略戦の前後に「皇軍」によって行われた殺戮・略奪・強姦等の行為が「南京大虐殺」と呼ばれている。

 30万人という犠牲者の数や様々な所業を疑問視する意見すらある。しかし当時の写真や新聞記事、手記などからもこの大虐殺は現実としか考えられない。

 この映画は、事件の加害者である元日本軍兵士と中国人被害者に取材してその言葉をつづったドキュメンタリーである。1988年から始められた聞き取り調査は、元日本兵300人中国人250人以上におよんでいる。この調査を行った松岡環さんが加害者、被害者のもとを訪れ状況を聞きだしていく。地道な作業である。真実を語るのは、どんなに重いことだったろうか。加害者にとっても被害者にとっても、もう二度と思い出したくない、消し去ってしまいたい過去だろう。それを引き出し映像にするまでの努力に本当に頭が下がる。

 語ってくださる方々も必死だ。軍恩新聞を手に「ここには(南京大虐殺が)デマだと書いてあるけれども、間違いなくあったことなんです。」と語る元兵士。8歳で母ともども強姦された時の恐怖を語る被害者。揚子江に、魚のように死体が折り重なっていたと語る被害者。被害者と加害者の記憶が重なり、「地獄」のありさまが浮かんでくる。

 事件から72年、生存者はどんどん少なくなっていく。残された貴重なメッセージをぜひ多くの人々に受け取ってもらいたい。
Y.A
渋谷UPLINKにて上映中(12月中は上映の予定)

「南京・引き裂かれた記憶」オフィシャルサイト