本の紹介
教育を破壊するのは誰だ!
       ─ 【ドキュメント】東京・足立十六中事件─

増田都子 著 

 管理教育を推し進める東京都教委の暴走ぶりは凄まじい。教員の内面の自由ばかりか生徒の自主的な判断力さえも認めないとは、あいた口がふさがらない。
こんな都教委とそれに鞭をくれる都議たちに一矢報いたのがこの本の著者増田さんだ。

 中学の社会科教師として物事を考える力を育てようと努めて来た増田さんは、紙上討論という授業形態にたどりつく。
その成果は1冊の本「中学生マジに近現代史」(ふきのとう出版)にまとめられ、卒業式の答辞で「(紙上討論によって)まっとうな判断力を身につけ、社会に適応できるようになっています。勉強とはそうなるためにするものだと思います。」と、教師冥利につきる言葉を贈られた。

しかしそのことが教委の問題になり、転勤したばかりの学校で嵌められる。
普天間基地を扱ったビデオを使った紙上討論が反米的だとして米国籍の生徒の親から「名誉毀損」で告訴される。教委・校長・教頭ばかりか組合からも「偏向教育」と激しい攻撃を受ける。あいまいな理由での処分の果てには都立教育研究所に送られここで2年半の「研修」を科せられる。産経新聞や「右翼」都議らからのバッシングはおぞましい限りだ。

本書はこんな状況に敢然と立ち向かい、ついには現場復帰と裁判勝訴を勝ち取った記録である。

校長.・教委・指導主事・裁判官等々、彼女の前に権威を持って現れる人々とのやりとりはうそとごり押しとに満ちていて途中で苦しくなる。よくここまで記録し続けたものだ。言葉では「いじめ」を否定するご立派な方々が犯す「人権侵害」の数々・・・この人たちは「上」の命令どおり動くことが大切で、それに逆らう者は許せないのだろうか。自分で考える力を身につける教育などとんでもないのだろう。

これだけの攻撃を受けながら、彼女は決して屈しない。支援の輪が広がり組合も自ら立ち上げていくが、やはり一番の支えとなったのは各部の扉に示されるような教え子からのエールだった。
「紙上討論のおかげでちゃんと他人の意見を聞いてから考えて自分の意見が言えるようになりました。」「私は先生の下で受けた授業を生涯誇りに思います」こんな言葉を贈られる教員がどれだけいるだろうか?

名誉毀損の裁判には勝ったが、彼女の闘いはまだ続いている。
「こんな偏向教師を許せるか」という本を出し人身攻撃してきた土屋氏(板橋高校や七生養護学校での蛮行で有名)ら3都議と出版社を名誉毀損で訴えているのだ。
この裁判では都議と都教委の癒着ぶりが示され「おもしろい展開になっている」という。こちらの行方にも注目していただきたい。

(社会評論社 2004年3月刊)


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