映画の紹介

「ガイサンシーとその姉妹たち」をみて
─緊急開催!「従軍慰安婦」映画を通して考える─に参加して


 12月8日、9日にオーディトリウム渋谷で「ガイサンシーとその姉妹たち」(班忠義監督)「戦場の女たち」(関口裕加監督)の上映とトークで「従軍慰安婦」問題を考える場が設けられた。最近特にひどくなる一方の政治家やマスコミの発言に黙ってはいられないと、シグロ(代表山上徹次郎)の主催で開かれた。8日だけの参加だったが、今の状況を深く考えさせられるものだったので報告したい。




 ガイサンシー(蓋山西)とは中国山西省で一番の美人を意味する言葉だ。当時こう呼ばれていた侯冬娥は日本軍に拉致されて「慰安婦」とされる。映画は彼女や彼女と同じ運命を担わされた「姉妹たち」の生涯を現地で取材したものだ。山西省では日本軍と八路軍が戦闘を繰り返し三光作戦で多くの住民が犠牲となった。心も体も深く傷つけられ50年が過ぎても癒されぬ人々の証言は重い。まさに「日本鬼子」という言葉そのもののふるまいだ。戦場で野獣と化した、というと獣が怒るだろう。獣は相手を同等と認めている。

 日本で元軍人の証言も集められている。戦後、中国残留婦人の帰国に奔走した元兵士は「慰安婦」などいなかったと言い切る。元憲兵は目が届かなかったことを認め、言葉を濁す。当時の資料は戦犯の証拠になるからと燃やしたという。少なくとも上層部は日本軍の行為が戦争犯罪に当たる可能性があると認識していた証拠だ。

 映画の最後に侯冬娥の墓が映し出される。こんもりした盛り土に細い柳が一本、心細げに風にそよぐ。彼女の生涯をこのまま埋もれさせまい。

 上映後には班忠義監督と鈴木邦男(「一水会」顧問)さんのトークも行われ、人権や愛国心についても熱心に話し合われた。

 今回の呼びかけ文は訴える。

 「歴史的な事実を前にして嘘をつくというのは、人として品性下劣ということになります。歴史的事実を知らないというのなら、そのような無知は政治家である前に人間失格ということになります。
 僕は、少なくともそのような人たちに与したくないので、自分がやってきた映画の仕事を通して、今考えていることを発信したいと思います。」
http://cine.co.jp/iannhu2012.html

 多くのマスコミからジャーナリスト精神が消えかけている今、この企画の意義は本当に大きいと思う。 事実を認めることからしか次の一歩は始まらない。
 
 「ガイサンシーとその姉妹たち」公式サイト http://cine.co.jp/gaishanxi/ 
Y.A