ピース・ニュース学習会アピール

有事法案の衆院通過を糾弾する


 5月16日、衆院において有事3法案が出席議員の約9割の賛成で可決した。私たちはこの有事法案の衆院通過に強く抗議する。

 有事法案では、武力攻撃事態の定義が極めてあいまいである。武力攻撃事態にはその「恐れのある事態」や「予測されるにいたった事態」が含まれる。先制攻撃戦略により北朝鮮などに対して挑発や攻撃をしかける米軍に対して、先に成立した周辺事態法では自衛隊が「後方支援」に参加することが可能である。その後は、首相の恣意的な判断でいとも簡単に「武力攻撃事態」にまで突き進むことが可能である。
 武力攻撃事態になれば、防衛出動命令が発せられ、自衛隊は実際に戦闘行動を開始する。このようにして自衛隊が北朝鮮など外国に出撃し戦闘行動を行うことが可能になるのである。そればかりか、武力攻撃事態においては、政府、自治体、医療・報道・エネルギー・通信・運輸などの公共機関、民間企業、国民一人一人にまで戦争協力が強制される。

 ブッシュ政権はイラクへの先制攻撃によりフセイン政権を武力で打倒した。戦争の大義名分とされた大量破壊兵器は未だに発見されず戦争開始のためのウソであることは明らかとなった。小泉政権はこのような戦争に真っ先に世界でも突出した支持を行った。ブッシュ政権はイラク後も北朝鮮、シリア、キューバ、イランなどに対して先制攻撃をも含む戦争挑発的な姿勢を明らかにしている。
 このようなもとで提出された有事法案は「日本が攻撃された時に備える」、「自衛隊の超法規的行動を縛る」ためではなく、アメリカの先制攻撃戦略に荷担し、それと一体となって参戦するための法律であることは明らかである。

 日本政府は北朝鮮敵視政策をとりマスコミは反北朝鮮キャンペーンを執拗に行っている。こうした戦争プロパガンダが、「北朝鮮は怖い」、「何をするか分からない国」、「攻撃された時のために有事法制は必要」との風潮を生み出している。問題にすべきは、核をも含む圧倒的な軍事力で包囲し軍事的・政治的圧力をかけつづける日米政府の北朝鮮敵視政策であり、マスコミの反北朝鮮キャンペーンである。私たちは戦争準備のための北朝鮮敵視政策、反北朝鮮キャンペーンに対して闘う。

 有事法案は戦力不保持と平和主義を定めた憲法に違反する。有事法案は憲法で定められている基本的人権に真っ向から対立する。民主党の修正案により、法案に基本的人権の保障、国会承認と民主的統制を持ち込んだかのように報道・宣伝されているが、事実はまったくのゴマカシである。基本的人権については、法案に「最大限に保障する」との文言を付け加えただけであり、具体的にどのように守られるのか全く不明瞭である。国会承認は対処処置の終了について、「国会の議決でも可能とする」との文言を加えただけである。首相の恣意的判断により戦争に突入する、戦争協力を国民に強制する憲法違反・憲法否定の本質は民主党との修正合意によっても何ら変わっていない。
民主党の欺瞞的な対案提出と修正協議による合意が、この悪法を成立させた。民主党の責任は極めて大きい。民主党に対しても強く抗議する。

 私たちは学習活動やフィールドワークを通じて、日本が過去において台湾や朝鮮を植民地支配し中国や東南アジアに侵略し数千万人にもおよぶ犠牲者を生み出したことを学んだ。そしてその被害は戦後60年近くたった今も、中国や日本で遺棄した毒ガスによる被害や戦後保障の問題など現実の問題を引き起こしていることを知っている。さらには現在の憲法がそうした尊い犠牲に対して深刻な反省の元に生まれたことを学んだ。
 
 有事法案は引き続き参院で審議される。私たちは有事法制反対を最後まで訴えてゆく。政府・与党は有事法制だけでなく、占領状態のイラクへの自衛隊派遣、在日米軍の活動円滑化を目指した米軍支援法案、国民に「愛国心」を強制する教育基本法改悪などを準備している。
 戦争の準備を行い、戦争に備えることは戦争を引き寄せるだけである。戦争をおこさないためのあらゆる外交努力をすることこそが平和をもたらす。私たちは憲法を擁護し、憲法を武器に、戦争を推進するあらゆる動きに対して徹底して闘う。

2003年5月18日
ピース・ニュース学習会参加者一同