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「UMRCドラコビッチ博士による調査報告東京集会」報告
 イラクへの自衛隊派兵が政治的焦点になっているこの重要で絶好のタイミングに、米の劣化ウラン兵器使用による汚染・被害を告発し続けてきたUMRC(ウラニウム・メディカル・リサーチ・センター)のドラコビッチ博士が18日に来日しました。24日夜には、UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局と東京集会実行委員会の主催で、文京区民センターにおいて今回の来日最後の報告集会が開かれました。3連休最後の夜にもかかわらず250人を超える人々が集まり、熱心に博士の講演に聞き入りました。

 集会では、まずUMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局吉田氏から、今回のドラコビッチ博士来日の2つの目的の紹介がありました。1つは、アフガニスタンでのウラン兵器による被害調査にカンパしてもらった日本の皆さんへの調査結果の報告であり、東京集会もその1つであること、もう1つは日本の研究者とUMRCとの協力関係を築くことであるとのことで、どちらも成功裏に進んでいるとのことでした。さらに、吉田氏から、イラク戦争での劣化ウラン汚染・被害の調査について、現在サンプル採取を終えて分析に入っているが、その多額の分析費用(1サンプル7万円で約100サンプルを分析)はすべて民間カンパで調達しなければならない状況が訴えられ、カンパ要請が行なわれました。
 
 ドラコビッチ博士の報告は、まず広島(21日)を訪問したときに受けたショックに触れ、さらにUMRCのマークが「一滴の水が岩をも打ち砕く」を意味し、今日の集会が世界の平和の一滴になることを願ってやまないという挨拶で始まりました。この日のテーマは「放射能戦争の健康への影響」と題するもので、プロジェクターから投影されたリアルな写真、厳密なデータとグラフなどを駆使して、質疑を含めて約2時間(通訳込み)たっぷりの報告でした。その豊富な内容をこのわずかなスペースで記すことなどとてもできませんが、後にまとめられるであろう詳細報告に期待しながら、ここでは概略だけを記したいと思います。

1.新しい放射能戦争とUMRC

*1991年第1次湾岸戦争で新しい形の放射能戦争が始まった。これは、広島・長崎とも違って1つの同位体(ウ  ラニウム)の汚染によって、動物・人間、すべての老若男女に影響を与えるものである。肺の組織の中に入って  アルファー線を放射し、これがガンなどの原因となる。
*アメリカ、イギリス、カナダ政府はウランの健康への被害を否定しているが、UMRCの使命は、国家・政府や政 
  治的な見方から独立して、被害の真実を伝えることにある。
*バクダッドで多くの戦車が破壊されたが、その戦車が除去された跡地には膨大な放射能が検出された。その爆  撃地からウランはチリによって運ばれる。目の前の指も見えなくなるような砂塵嵐は防ぐことはできず、多くの兵  士がそれを吸い込む。周辺国のすべてが放射能を含んだチリで汚染される。
*第1次湾岸戦争で350トン、バルカン戦争で11トン、アフガニスタン戦争で1000トン(推定)、第2次湾岸戦争   (イラク戦争)では2000トンを下らないウラニウム兵器が使われた。
*昨年から今年にかけて、UMRCはアフガニスタンで3回、イラクで2回現地調査し、何百人もの症状をもつ人々を 目の前にし、尿サンプルを採取した。その分析結果を科学的な論文で発表したが、それでもアメリカ、イギリス、カ ナダ政府は危険性を否定している。

2.イラク:第1次湾岸戦争

*1991年当時、連邦病院の核医学クリニックに勤務していた私は、第1次湾岸戦争帰還兵の診断を依頼され、放 射能汚染を受けていることを見出した。それが湾岸戦争症候群の始まりだった。そのとたんに、アメリカ政府にそ の研究をやめろと命令され、脅迫、懐柔など圧力をかけられたが、私は拒否して研究を続けた。
*帰還兵の尿分析において自然界のウランとは異なる劣化ウランを検出した事実を国際会議で発表した時には、 政府高官はパニックに陥った。そして被曝10年後にも劣化ウランで汚染されていることを示す事実をさまざまな国 際会議で発表すると、それに携わった研究者は私も含めて職を解かれた。
*カナダ政府は200人の帰還兵を調査し、ウランの反応はなかったとしたが、そこで使われた分析方法は「爪」と「 髪の毛」を対象とするもので、検出されるはずのない間違った方法であった。アメリカも、イギリスも同様だった。カ ナダ政府がこんな方法を採用したのは、大量破壊兵器を使うことに加担したということを認めたくなかったからだ。
*98年に亡くなったテリー・リョーダン大尉の臓器は、政府の圧力にもかかわらずその妻によってわれわれの組織 に提供されたが、肺臓、肝臓、骨などすべて劣化ウランで汚染されていた。
*病気になった帰還兵の14サンプルは全員劣化ウランの陽性反応が出ていた。これに対して政府が異を唱えて  いるがまったくのウソであることははっきりしている。症状が出なかった帰還兵の11サンプルとは明確に違ってい た。
*2つの論文で発表したが、汚染された人の肺には膨大な量の劣化ウランが検出され、それは最大許容量の何倍 もの量であった。

3.アフガニスタン

*アフガニスタンには3回現調査に行った。注目されるのは、そこで病気になっている人が、イラクで病気になった 人と同じ症状を示していることだ。アフガニスタンで目の当たりにした健康への影響は、(1) 被曝直後では、鼻血、 胸の痛み、咳き、口などのひりひり感等など、(2) しばらく後で、疲労感、方向感喪失、発汗、痛み、記憶障害、意 識障害等など、(3) 数ヵ月後の慢性症状として、腎臓病、性的機能障害、流産、先天性障害、免疫システム障害 等など。
*病気になった人から劣化ウランが検出されると予想していたが、ここで見られたのは、人類でこれまでなかった  ほどの高い数値の非劣化ウランであった。8人の患者は正常値の9倍から48倍の数値を示した。日本の支援で 分析した14人のサンプルでは200倍に達する少年がいた。彼は羊の世話をしていたが、村への爆撃で家族8人 全員が死んだ。
*アフガニスタンでは非劣化ウランが使われたが、劣化ウランとの区別は尿サンプル中に検出されたウラン238と ウラン235の比率によって可能であり、さらに非劣化ウランではそれにウラン236という人工的に作られたものが 加わる。
*アフガニスタンの土のサンプル分析では、すべてが国際的な比較サンプルよりも高いウラニウム汚染を示した。  また、ジャララバードやカブールなどの飲料水8サンプルは、どれもWHOの最大許容量より高く、最高値はその2 8倍を示していた。

4.イラク:第2次湾岸戦争

*UMRCはイラクで120の尿サンプルと多くの水と土のサンプルを持ち帰った。なるべく早く分析を行ないたい。イ ラクではバクダッドから南が中心であったが、来年2月にはイラク北部も、アフガニスタンではマザリシャリフなども 調査したい。
*バクダッドでは中央市場や電話交換局など高い濃度で汚染されている場所からサンプルを採取した。また戦場と なった多くの場所からもサンプルを採取した(博士は採取した時の破壊された建物や道路や戦車などの写真を見 せながら説明した)。
* そこでの放射能の値は、イラクにおける参照値の32倍から1231倍もの値を示した。

5.未来

*報告の最後で、博士は人類の将来に対する放射能兵器について述べ、第2次大戦に使われた全兵器の量に比
 較して現在の世界にある兵器がいかに膨大なものになっているかを図形で示し、世界がそれによって破壊される ことにならないよう警告して報告を終わった。

6.質疑のなかでの博士の見解

*どうして政府がウラン被害を否定するかというと、その除去に莫大なお金がかかるためである。アメリカ国内で汚 染された地域から除去するだけでもエネルギー省試算では2500億ドル必要という。さらにノースカロライナやス ペイン、グリーンランドなどでの核兵器事故での汚染除去にそれぞれ何十億ドルを要した。
*沖縄の鳥島での劣化ウラン弾射爆演習に関連して、プエルトリコのビエケスでも同様で、何年も反対運動を続けて射爆訓練をやめさせた。一人一人が文句を言うことは権利であり、文句を言うことは義務である。
*第2次湾岸戦争帰還兵に急性の深刻な呼吸障害が出ていることを知っており、もし政府が治療したくないなら、 われわれが喜んで無料で診断すると申し出ている。
*ウランが体内に残留するメカニズムについては、まさに現在取り組んでおり、ナノ病理学もふくめて研究の対象で あり、来年には発表したい。

 「私は医者です。私の使命は人間の命を救うことです。私のところに送られてきた患者はみんな病気です。そ
れを救うことを止めることはできない」と政府高官の中止命令を拒否して研究し続けた博士の、人間愛と不屈の
魂に満ちた、そして科学に裏付けられた真実のみを主張する姿は、集会に集まった多くの人々に深い感銘を与え
るものでした。これからもよりいっそう博士たちの活動を支援し、その成果をそれぞれの人々の活動に生かして
いくことを確認して集会は終わりました。

本集会は下記記載の主催で行われ、ピースニュースが上記概要をまとめました。

UMRCイラク・ウラン被害調査カンパキャンペーン事務局
◆吉田正弘090-5016-3844 e-mail masayo@silver.ocn.ne.jp
東京集会実行委員会
ASIANSPARK、アフガニスタン国際戦犯民衆法廷実行委員会、アラブイスラームの子供たちを助ける会(ジャミーラ高橋)、イラク国際戦犯民衆法廷、基地はいらない!女たちの全国ネット、テロ特措法海外派兵は違憲CHANCE! pono2、市民訴訟の会、たんぽぽ舎、ピース・ニュース、ふくろうの会、劣化ウラン研究会、芦沢礼子、加藤賀津子、小林一朗、倉林正明、斎藤紀代美、阪上武、清水竹人、高瀬晴久、細井明美、山崎久隆
◆松田卓也090-4289-6360 e-mail tensaitakuyasan@mail.goo.ne.jp
集会写真速報