水産庁・水族館などの対応

● [捕獲直後の水産庁の公式見解(97/02/10)]
● [日本動物園水族館協会から政府に出された要望書(97/03/10)]
● [農林水産省のホームページに出された見解(97/03/28)]


和歌山県太地町におけるシャチの捕獲について


                            平成9年2月10日
                            水      産      庁

1  事実関係
    このことについて、和歌山県から以下の報告があった。
  太地漁協から、平成9年2月7日9時30分和歌山県燈明崎(太地町)4海里沖に
  おいて、追い込み網漁船(和歌山県知事許可漁業)が鯨群を発見し、シャチ10頭を
  太地町地先の湾内に追い込み、そのうち5頭を捕獲する予定であるとの連絡があった。
  追い込み網漁船の所属漁協である太地漁協は、学術研究用としてシャチ5頭を捕獲
  する許可を得ている。
  和歌山県としては、5頭の捕獲をした後は、残りのシャチを速やかに海に戻すよう
  指導を行った。

2  水産庁のコメント
  水産庁としては、シャチについては国際規制はないが、原則として捕獲しないよう、
  また、学術研究等に用いるための捕獲については、事前に協議の上行うよう指導し
  ているところである。
  今回の太地町における捕獲については、5カ所の水族館において、生理、生態、習
  性等の学術研究の用に供するためのものとして事前に協議があり、水産庁の研究機関
  の意見も聴いた上で、研究成果の提出等を指導しつつ、その捕獲を認める旨回答して
  いたものである。
| このページのトップへ戻る | 太地オルカ捕獲の概要のページに戻る |


和歌山県太地町で採捕されたシャチに対する国内外からの批判に対して政府の厳 選たる対応を求める要願書


 
                        1997年 3月10日
                    社団法人 日本動物園水族館協会
                           会長 池田 隆政
   
   
   
当協会は全国の97の動物園、65の水族館を会員とする、文部省所管の社団法人
であり、WZO(世界動物園機構)およびIUCN(世界自然保護連合)の一員であ
ります。
   
さて、2月7日に和歌山県太地町で10頭のシャチが採捕され、このうちの5頭
が繁殖および生理等の研究のため、当協会会員の3園館へ搬入されました。この
5頭のシャチの採捕について、国内外からその解放を求める抗議の声が上がって
いますが、このような感情的な科学的根拠に乏しく、世界の動物園水族館の学術
的役割について理解のない動物愛護団体等の主張に対し当協会は政府が良識に基
づき厳選とした対応を捕られるよう要願します。
   
まず、今回の5頭のシャチの採捕により、シャチ資源の存続が危機に瀕すること
はないと存じます。日本海のシャチは水産庁の管轄の下にあり、適正に保護され
おりいます。今回の採捕協議に対する同庁の許可も、国の研究機関の調査結果等
からシャチ資源に影響を及ぼさないとの評価に基づいてなされたものと理解して
おります。
   
次に、水族館は動物園と同様にレクリエ−ション、教育、自然保護、調査研究、
機能を担っておりますが、ここでは社会教育上の役割について述べることとしま
す。水族館における鯨類の飼育につきましては、シャチ等の鯨類を見せ物にする
ななどの批判がありますが、大多数の人々にとって野生のシャチ等を見る機会は
ごくまれであります。シャチを含め、生きた海洋生物と接することのできる水族
館は、国民が海洋生態系への理解と認識を深めるために大いに貢献していると考
えています。
   
さらに、こうした理解や認識が究極、海洋環境保護の重要性への国民の認識につ
ながるものと考えています。人類にとって、その生存と発展のために野生生物資
源を持続的に利用することは、決して許されない行為ではないと確信いたしま
す。可愛いから、利口だからなどと特定の動物を偏愛し、盲目的に生物資源の利
用に反対する動物愛護団体等の主張は、生物資源に依存してきた人類の本性を無
視し、ひいては人類の発展を妨げるものであります。このような抗議に対して
は、当協会は今回のシャチの問題を含め、厳選たる態度で対応していただきたく
お願い申しあげます。
   
| このページのトップへ戻る | 太地オルカ捕獲の概要のページに戻る |


農林水産省のホームページに掲載されたもの

和歌山県におけるシャチの採捕(学術研究用)について


                           平成9年3月28日
                           水   産   庁

 今回、和歌山県で、シャチ(5頭)の採捕が行われましたが、これは、学術研
究、社会教育等の目的に用いられるものとして、水産庁と協議の上行われたもの
です。
 水産庁としては、今回の5頭のシャチの採捕は、協議に従い適正に処理された
ものであると考えており、今後は、水族館から県等を通じて研究結果等の報告を
待つこととしています。

1 シャチの採捕についての規制

 シャチの採捕についての国際規制はありませんが、水産庁は、平成3年から指
導通達により、資源量の少ないシャチについて、原則として採捕を禁止しており、
学術研究等に限って事前に水産庁と協議の上行うことができることとなっていま
す。なお、平成3年以降昨年まで採捕は皆無でした。

2 今回のシャチの採捕(生け捕り)の経緯

(1) 今回、和歌山県太地町で、シャチ(5頭)の採捕(生け捕り)が行われまし
  たが、これは

1. 水族館から、太地漁協に対して学術研究、社会教育等の目的に用いるものと
  して採捕の依頼があり、
2. 太地漁協は、和歌山県に対しこの旨協議を行い、
3. 和歌山県から水産庁に対して、事前に採捕の協議がなされました。
4. 水産庁は、当協議に際して、国の研究機関の意見も聞いた上で、野生のシャ
  チの生理、生態、習性等の知見が少ないことから、これらデータを収集、分
  析、研究等することは有意義であり、社会教育にも貢献できるものと判断し、
  資源の持続的生産に大きな影響を与えない範囲のものとして上限枠を5頭と
  し、責任を持って飼育すること、研究成果を提出すること等の条件を付して
  協議に同意したものです。
 
(2) 今般、和歌山県から、「同協議後初めて、太地沖においてシャチの鯨群の来
  遊があり、湾内へのシャチの追い込み数が10頭であったが、協議に同意し
  た際の条件に従い、研究目的に合致した個体5頭を選別後、残りの5頭は速
  やかに放流した」との報告を受けました。

3 水族館等の対応

(1) 今回シャチを取得した伊豆三津シーパラダイス、白浜アドベンチャーワール
  ド及び太地町立くじらの博物館の3水族館からの報告によれば、採捕された
  5頭のシャチの取扱いについては、協議に同意した際の条件(当初の研究等
  の目的を含む。)は満たされています。
  また、次のような取扱いをすることも確認されました。

1. 今回採捕されたシャチの展示については、1水族館(白浜)は、基本的には
  展示に供することはしない(ただし研究過程において展示用のプールを使用
  することもある)が、2水族館(三津、太地)は、入江を網で仕切った開放
  型水族館であることから、入場者が見ることが可能な状態になる。

2. 今回採捕されたシャチについては、3水族館とも、研究のための馴致(血液
  採取、体温測定等を行うために必要なしつけ)はするが、ショーのための訓
  練はしない。

3. 今回採捕されたシャチの研究については、3水族館とも繁殖に必要な生理、
  生態、習性等を研究することを目的に国内の他の水族館及び大学との共同研
  究又は研究協力を行うことにしており、さらに、国内外の研究者から要請が
  あれば、シャチの研究に関する情報交換等を行う(3水族館は、当然ながら、
  シャチ等の海産動物に関する過去の研究(病理学的、免疫学的、生態学的な
  研究)実績を相当有している。)

(2) 3水族館は、今後、協議に同意した際の条件に従い、和歌山県等を通じて水
  産庁に研究結果等を報告することになっています。

(3) なお、3水族館が加盟している(社)日本動物園・水族館協会は、今回の研
  究の必要性、研究内容、水族館の学術研究等に果たす役割等について、2月
  28日にプレスリリースを行っています。

(4) 現在、我が国の水族館において、野生のシャチの入手を計画ないし希望して
  いるところはありません。

4 水産庁の対応

  今回の5頭のシャチの採捕は、協議に従い適正に処理されたものですが、水
産庁としては、今後、協議に同意した際の条件(転売禁止、研究成果の提出等)
が確実に履行されているか、研究計画に即した研究等の実施が行われているか定
期的に把握するほか、必要に応じて助言を与えることとしています。

| このページのトップへ戻る | 太地オルカ捕獲の概要のページに戻る |


(C)freeOrca Project 1997