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名古屋港水族館および名古屋港管理組合との話し合い

私達の申し入れに対して、1999年11月以降、2回の話し合いが持たれました。
会合の内容は「名古屋港水族館・海生哺乳類飼育に関する意見交換報告書」としてまとめ、
このうち両者で公開を合意できた部分について掲載します。

公開にあたってこれまでのいきさつ水族館側の発言要旨私達の発言要旨
私達の提案内容提案に対する水族館側の見解


●公開にあたって、管理組合から提示された前提条件

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平成12年4月17日

 

(財)名古屋港水族館

名古屋港管理組合

 
陽春の候、皆様方にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、昨年11月30日、及び本年2月15目の会談の内容に関して先般お話のありました
「名古屋港水族館,海生哺乳類飼育にかんする意見交換報告書」の取扱いにつきまして
検討致しました結果、下記のとおりとさせて頂きたいと存じますので、何卒ご理解項きま
すようお願い申し上げます。
 
 
1 会談の中での発言のうち、本組合及ぴ名古屋港水族館のものについては、すでに
お送り預いている意見交換報告書をふまえた形で、別紙のとおり「名古屋港水族館
及び名古屋港管理組合の発言要旨」と「提案に対する名古屋港水族館及び名古屋港
管理組合の見解要旨」としてとりまとめさせて項きましたので、公表される場合は
これをもって私どもの発言として頂きたいと存じます。
 
2 それ以外の『意見交換までのいきさつ』『イルカ&クジラ・アクション・ネット
ワーク、フリーオルカ、アースフレンドの発言要旨』『提案要旨』につきましては、
会談の中での発言自体がこのとおりのものであったのかどうかについてはさておき
まして、その内容は全て貴方々の主張されている範囲のものですので、特に私ども
として確認・修正をするといったことは、差し控えさせて頂きたいと存じます。
 
3 今回の会談の内容は、全体が一体のものであると考えられますので、公表される
場合はその一部を省略又は取り出したりすることなく、上記の2点を明示すること
も含めて、遺漏のないようお取り扱い頂きますようお願い申し上げます。

●意見交換までのいきさつ

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 イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク、フリーオルカ、アースフレンドは昨年11月30日と本年2月15日、名古屋港水族館および名古屋港管理組合の担当者との意見交換の会合をもった。
 その発端は、名古屋港水族館が2001年を目途に新館を建設し、そのプールにシャチ、バンドウイルカ、ベルーガを飼育するという計画について以前から私たちが野生生物保護等の観点から計画の中止を求めていたことにある。
 近年、自然環境の保全に対する社会の認識が高まる中で、「金のしゃちほこ」にあやかったシャチ等飼育計画については、計画が明らかになった段階から国内外の多くの市民や研究者などからの批判があった。そうした背景からも、互いの立場の違いや論点を明確にし、解決にむけて何らかの行動を起こすことが必要とされていた。
 2回の会合では、21世紀に向けてのよりよい水族館のあり方を探るという積極的な視点をもった話し合いが行われ、このことは大いに評価できる。しかし、その内容については、市民の意見が具体的に反映できるのかということも含めて、なお大きな隔たりがある。また、時間的な制約もあり、十分な討議が尽くされたわけではない。そして、この問題は一部の関係者だけのものではなく、一般市民、とくに愛知県民に深くかかわる問題であることはもちろんである。したがって、ここに会談の内容を公開し、さらなる論議を喚起したいと考える。

●名古屋港水族館及び名古屋港管理組合の発言要旨

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・ 名古屋港水族館及び名古屋港管理組合は、2001年オープン予定の2期施設において、シャチ、バンドウイルカ、シロイルカといった海洋哺乳動物の飼育・展示を予定しています。
 
・ シャチ等の導入計画は、県民・市民の要望や、実物を目の当たりにすることによって「自然の素晴らしさ」を実感できる教育的効果を考えて立てられました。
 
・ 名古屋港水族館は、これまで、ウミガメ、ペンギンの飼育・繁殖に成功しており、新たに導入を予定している海洋哺乳動物についても、複数飼育による繁殖を自指し、飼育下でしかできない繁殖、生理、生態など、将来にわたって当該種の‘種の保存’に役立つような調査研究を行うことを目的としています。
 
・ 水族館2期の事業費は約205億円で、このうちの三分の一は愛知県、三分の一は名古屋市、残る三分の一を名古屋港管理組合が負担するものです。
 
・ 動物の入手については、バンドウイルカは日本沿岸での捕獲を予定し、シロイルカについても合法的な方法により入手の準備をすすめています。
 
・ シャチの入手については、@飼育繁殖個体の入手、Aブリーディングローン、B野生からの捕獲、について検討中です。
 施設設計の規模は4〜6頭の群れの飼育が可能な条件で行っていますが、だからといって、今すぐ収容量いっぱいの個体数を集めて展示しようとするものではありません。

●イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク、フリーオルカ、アースフレンドの発言要旨

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・近年、野生生物にかんする研究が飼育下から野外に移動し、野生動物の生態が明らかになってきた。その中で、生物多様性の価値と野生生物の保全の必要性の認識が世界的に広まり、希少種を捕獲・展示する動物園・水族館にたいする批判も強まっている。
 また、人工的な施設で行う研究の限界とともに、野生生物種に与える苦痛についても明らかにされるようになった。特に、イルカやクジラ類は、動物園では廃止されたショーの実施など、本来の生態とは全く異なる展示が一般的である。このような展示は、群れで生活し、音響を使って互いのコミュニケーションを図り、広い大洋を移動するといった彼らの本来の姿を伝えるには全く相応しくない方法である。さらに人工の飼育環境では、彼らの寿命は野生下と比べて平均で3分の一以下になってしまうことが実証されてきた。
 
・こうした動物を飼育することにたいする批判が年々強くなり、イルカ・クジラ類を飼育しない水族館も増えてきている。
 
・日本には現在12頭のシャチとおよそ400頭のバンドウイルカ、ベルーガがすでに飼育されている。飼育下での研究がされに必要とされるにしても、これらの飼育動物で十分可能であり、新たな捕獲による自然界への負荷を極力さけることも水族館の役割だと思われる。
 
・生物についての研究が進むなかで、種だけでなく、地域個体群の保護の重要性も認識されるようになっている。このため、種間を超えた新種をつくるようなことや、全く生息域の異なる個体同士をかけあわせることにたいして、科学的に疑問が出てきている。
シャチなどの飼育下での研究では、最終的には繁殖が目的とされているが、全く異なった海域、たとえば日本とアイスランドのシャチをかけあわせることは、これまで分かってきている彼らの生態から考えて、時代に逆行した行為であると考えられる。
 
・シャチは、世界の各地ですでに捕獲禁止になっている希少動物である。購入費は非常に高額である。飼育下の個体の売買の事例としては、96年にフランスから伊豆三津シーパラダイスが購入したオスのシャチ1頭が輸送費をふくめて2億円であったとされている。
また、その年間の維持費も億単位であり、時には太地で97年に捕獲された2頭のシャチのように、数カ月で死んでしまう事もある。これらが市民の税金によってまかなわれることになる。
 
・広い大洋を移動するイルカやクジラは日本だけでなく、世界の人たちの財産でもある。
イルカ・クジラ類の展示計画をやめてほしいという要望は、世界中の一般市民は勿論、研究者などからも名古屋港水族館に寄せられている。
 
・水族館の社会的な役割として「教育的な施設」であることがあげられるが、希少動物などをその環境から切り離して展示する見せ物的な方法よりも、地元の自然環境の理解を育むような方法が望まれる。こうした選択をして成功したモンタレーベイ水族館などを参考にしてもらいたい。
 
・すでにシャチを飼っている水族館が4館もある以上、経済効果としても限界がある。
 
これらの問題点をふまえ、私たち導入に反対する市民から提案を行った。

●提案要旨

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1.生きた個体の飼育のかわりに、ロボットを使ったシャチなど海生哺乳類の生態の
 紹介を行うこと。
 世界的にヒットした映画「フリーウィリー」の主演シャチ、ケイコのリリースのた
 めに、2、3作目にはロボットのシャチが使われている。2作目の上映のさい、ロ
 ボットが使われたことは公表されていなかった。そのために、観客はまだケイコが
 演じていると信じていたほど、その動きは自然なものであった。
 このようにリアルな動きを表現するために、ロボットシャチの製作者、ウォルト・
 コンティ氏は7カ月にわたりシャチの動きを観察した。彼はまた、映画「フリッパ
 ー」のバンドウイルカなど、数多くの海生生物のロボットを制作してきている。彼
 は野生シャチの保全に関心をもち、名古屋港水族館へのロボットの導入に意欲を見
 せている。
 ロボットを使えば、通常の飼育下では見られない野生のシャチの生態の再現が可能
 である。また、病気や死亡といったリスクも避けられ、購入費、維持費も安くつく。
 さらには、これが実現すれば世界初の試みであり、、21世紀の水族館としてのイ
 メージ作りとして非常に話題性があり、遠隔地からの客も期待出来るので、実際の
 シャチよりも集客力もある。
 シャチ導入に反対してきた国内外のおよそ150団体がこの計画推進の支援団体に
 なることも可能である。
 
2.バーチャルシステムによるシャチ・イルカと出会えるプロジェクト
 名古屋港水族館は1998年に最新型のバーチャルシステムを購入している。こう
 した機械を駆使して、シャチやイルカの泳ぐ海を体験することができる。
 
3.世界のシャチなどクジラ類の情報をインターネット、ビデオで
 インターネットや衛星を使った通信などで、世界の海に暮らすイルカ・クジラ類の
 最新の生態に関する情報・映像を来館者に提供できる。また、ビデオなどで世界の
 人々がどのように保護活動や研究を行っているかも知ることができる。
 
4.1日リサーチャー体験
 野外調査ステーションのモデルルームを作り、系統図や音響を使って、シャチの個
 体識別を行う。野生動物としてのシャチについて、より深く実感できる。
 
5.自然保護の寄与する「金のしゃちほこ大賞」授与
 その年度にイルカ・クジラ類の保護に功績のあった研究者や団体、個人にたいして
 助成金を授与する。
 
 これらは、全体として、イルカ・クジラ類の生態にはじまり、現状と保護について
 広く一般に伝えるための長期的な視野にたった教育的なプログラムとして成功する
 だろう。この実現は、日本のみならず、世界的な名声を獲得できるものである。

●提案に対する名古屋港水族館及び名古屋港管理組合の見解要旨

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1 バーチャルシステムの提案について、パーチャルな手法はこれまでも取り入れて
 きましたが、あくまでも動物の生態をより分かりやすく説明し、理解を深めて頂く
 ための、生きた動物の代替物という認識です。
 
2 ロボットの提案について、ロボットの展示では、暖かみのある実際の動物の体験
 はできませんし、また、繁殖、生理、生態の研究をすることもできません。
 作られたロボットの観察や研究の中からは、本来のシャチに対する正しい情報が
 何ら得られることはありません。(例えぱ血液性状、環境、繁殖など)
 ロボットはまだ関発段階にあるもので、動きもぎこちなく、維持メインテナンス
 に膨大な経費を要するものです。
 人間が人間以外の生物と身近に接することによって、存在していることの不思議
 さを知り、命の大切さを知ることができます。ロボットからでは、これは期待でき
 ません。
 
3 シャチのような動物を野生の状態で見ることは、極めて限られた人しかできませ
 んが、水族館や動物園で飼育・展示をすることで、より多くの方々に理解して頂く
 ことができますので、社会的な貢献ができるものです。
 また、野外ではむずかしい研究が可能となります。例えぱ、長距離を回遊してい
 ることを調べるための基礎データとして、餌の量からエネルギー代謝の状況を知る
 ことや、飼育下でなくてはできない動物の生理・生態についての研究が可能となり
 ます。

この会談の内容に関する皆様のご意見をお待ちしています。メールはこちらにお願いします。

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