奥山たえこ:東京都杉並区議会議員(無所属)

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2009年03月27日

イバラの道へ:阿佐ヶ谷住宅建替地区計画決定

 第一種住専地区(高さ制限10m)の中にある阿佐ヶ谷住宅を、高さを倍の20mに緩和する再開発等促進区の地区計画について、本日の都計審で審議されました。結果は、20名中6名が反対、賛成が11名、白票3名。審議会としては、計画に賛成したことになります。
 質疑の最終面になって、大泉時男委員(議員枠での参加。自民党区議団)から、ここで質疑を打ち切って採決するようにという動議が出され、「民主的でない」との批難があったものの、動議の採決をとったところ、動議に賛成10名、反対8名、白票2名で、動議は採決されました。質疑打ち切りの動議は、議会では方法としては、ありますが(奥山は6年で一回経験)、審議会では異例と思えます。

 質疑時間往復で一人10分という制限の中で、今回は、たとえ地区計画を決定しても、事業計画は進まないことを明らかにしました。先日書いたとおり、テラスハウスの地権者が権利移転(今回はデベロッパーに所有権を渡すハンコを押すこと)に反対している以上、その権利を侵害することは出来ないからです。なお、全員合意が取れていると区は主張するけれども、その際に建替え組合は「区分所有法に基づく建替え決議」だと説明し、また顧問弁護士事務所もそのように説明しています。正しくは「区分所有法に基づく建て替え決議に任意に同意してもらった」のです。それをきちんと伝えていません。そのため「(反対しても、区分所有法に基づき)売り渡し請求をかけられる」からとしぶしぶ賛成した人もいます。これは虚偽の説明をした、もしくは錯誤を誘ったということになります。このことの責任を、建て替え組合、顧問弁護士はどのようにとるつもりなのか。
 他には、道路付け替えの手続きも進んでおらず、このままでは(道路は)強制的に作ることはできるけれども、所有権移転の登記が出来ないため、完成する新しい道路と土地の登記簿(杉並の区道であるという登記)がずれるということになります。そのような不適正な道路を、杉並が作ろうとしているわけで、議員として看過できません。

 6階建案に賛成する地権者は、これでやれやれ、建替えが進むとお考えでしょうが、実は、このことによって、建て替えはさらに遅れるというイバラの道を歩むことになるのです。それを本日の質疑で明らかにしましたが、賛成した審議会委員の耳には届かなかったようです。

 気がつけば、2006年の秋に阿佐ヶ谷住宅建替えについて区議会で一般質問してから、都市環境委員としても質疑、2007年と08年は都計審の審議会委員として質疑と、ずっと関わってきました。この問題を調査するために費やした時間と手間は相当なものになります。それもすべては、周囲と調和した、価値ある建替えをと願っていたからです。しかしまことに残念な結果になりました(この問題はまだ続きますが、審議会委員としては終わり)。
正直、かなり疲れました。

2009年03月25日

【傍聴願】3月27日10時杉並区都計審

阿佐ヶ谷住宅問題について、もしかすると、今回が最後となるかもしれません。
 一番の争点である「高さ制限を変更して、10mのところを20mにする」かどうかの決定をします。
#会場:杉並区役所 中棟5F 第3,4委員会室。入り口で傍聴受付。 

奥山は杉並区都計審の委員です。今回ももちろん質問します。
前回書いた通り、事態が変わっています。

2009年03月14日

阿佐ヶ谷住宅建替えに新局面!2

(2)道路の境界確定のための手続きが滞っている。

 阿佐ヶ谷住宅の中を通る区道。その独特の曲線の味わいが、この団地の特長。曲線だから、スピードを出すことが出来ず、団地内での交通事故はゼロ。実用性も兼ね備えている。
 今回の計画案では、その曲線をほぼ直線に変え、交差する配置に変える。これだと団地外部からの通り抜けが容易になるわけで、なぜ、これにOKを出すのか、理解できないけれど、他人が口出しすることでもないだろう。

 さて今回、道路の付け替えをするには、区役所的手続きでは、区道と団地の所有地との登記上の境界を確認することが前提。しかしいま、その手続きが滞っています。
「続きを読む」に続く。

 で、その前にここは350名の共有地なので、ここを境界と認めますという確認作業に、合意(和解に当たる)しない方が数名いるからです。全員が合意しなければ和解が成立しないので、このままでは、道路工事を進めることはできないと答弁で認めました。では、ずっと着手できないのか? そうでもありません。では、どんな方法があるのか。
 実は、いや境界なんて、そんなの登記簿見れば書いてるじゃないかとお考えかもしれません、でもそうじゃないのです。登記所にある公図は税金徴収のために明治時代に作られた図面であり、実際の土地区画の境(筆界ひっかい)を示していないことがしばしばあるのだそうです(筆界と境界は若干概念が異なるが説明省略)。
 そこで、争いがあった時には、どうするか。まず「境界確定訴訟」を起こす方法がある。その判決内容で確定する。けれど、これは手間も金もかかるだけでなく、場合によっては訴えた側の不利益(自分が想定したより、所有土地の面積が狭くなる)になることだってる。そこで2006年より、簡便な方法が始まったのが、「筆界特定制度」。登記官に申請することで、職権で定めてもらうことになる。裁判とことなるのは、これは登記官の判断を示したものにとどまり、確定ではないこと。だから、あとで裁判でひっくり返すことも理論上は可能。
 では、阿佐ヶ谷住宅の場合はどうなるか。上の2つの方法は使わない。杉並区との間で争いがある訳でなく、争いの有無を言う段階に至っていない。区は、あくまでも、350名のみなさんで合意してきて下さいというだけ。しかし、建替えを進めたい地権者の立場からすると、工事が進まない(もちろん、その前に道路の付け替えを定めた地区計画の決定が必要だけど)のも困る。そこで、ありうる方法としては、この土地については、古い実測図が存在しています。登記官はそれを元に職権で、境界を確定することができる(その前段手続きとして申請か嘱託が必要)のだけれど、それをするかどうかは、登記官の判断によるのだとのことです。
 なるべくわかりやすくと心がけた結果、逆にわかりにくい説明になりました。この説明レベルが、素人奥山の限界です。不明な方は、メールまたは、コメントを下さい。

2009年03月11日

阿佐ヶ谷住宅建替えに新局面!

 先日一つのテラスハウス(戸建)の所有者が変わりました。新しい登記名義人は建替え計画に反対を表明しているとのこと。また、これまでと位置を変える区道建設の手続きについても、異を唱えているそうです。このままでは、建替えが進行できないので、3月10日の予算特別委員会で、質疑しました。それを元に、簡単に解説をします。

まず、
 「この一体は一種住専地区で高さは10m制限なのに、団地の中だけ緩和して、倍の20mOK! にするのは、おかしい! 住環境の悪化だ」と、地元の人たちが訴えている、それが阿佐ヶ谷住宅建替問題。奥山は、もう2年半以上も議会で、何度も取り組んでいます。この2年は、都市計画審議会委員としても質疑しています。

そもそも、
 阿佐ヶ谷住宅は、4階建ての団地と、テラスハウス(戸建)とで成っています。ちなみに、この赤い屋根のテラスハウス(戸建)が、とっても有名。
 マンションの建替えだと、一部に反対があっても立て替えを進めることができます(区分所有法に基づき、<強制的に>買い取り請求ができる)。しかし阿佐ヶ谷住宅の戸建部分は、それができません。こちらは、団地部分と異なり、建物ごとに敷地の個別所有権があるからです(こういった所有形態は珍しい)。
 今回の状況変化によって、これまで合意されている六階建(高さ20m)計画での建替えは、進行が困難になりました。区も、反対している人を強制的に移転させることは「できない」と認めました。その上で、区は、前の所有者は建替え決議に賛成したのだからそれを承継するはずだと主張しました。そこで、ではその法的根拠は? 民法の「信義則に反する」以外は何がありますか? に対しては、「ない」と答弁せざるを得ませんでした。
 つまり、現在の計画である、等価交換方式(一旦すべての土地の所有権をディベロッパーに移転することが必要)は進行ができないということがはっきりしました。奥山はかねてより、民間の開発なのだから、区が深入りするのは止めるべきだと主張してきました。この期に及んでは、地区計画の決定は、留保すべきだと思います。

(2)道路の境界確定のための手続きが滞っている。
 これについては、追って書きます。細かい話で、わかりにくいですが、へーっ、役所の仕事って、そんな風に進むんだと判る好例でもあります。