NPOスクールは、大学のまち・京都においてNPOインターンシッププログラムを推進しています。学生のキャリアデザインの手段となるべく、「コーオプ型」のインターンシッププログラムを展開しています。


インターンシップとは?

 インターンシップとは一般的には、学生が企業等において就業体験をする制度のことです。インターンシップが活発に行われているアメリカにおいては、実施期間、実施形態、有償か無償か、大学の単位認定の有無等によって多様なケースがあり、多様な言葉で枠組みがあります。

 一方日本ではアメリカのように区別せず、学生の就業体験を総称してインターンシップと呼び、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を指導を伴って行われる産官学の教育プログラム」と幅広くとらえらています。

 

インターンシップ・ビッグバンであった1997年

 日本でインターンシップが大きく取り上げられるようになったのは1997年からです。アメリカで盛んに行われてきたインターンシッププログラムが「高等教育における創造的人材育成に大きな意義をもたらす」との観点から「経済構造の変革と創造のための行動計画」(1997年5月16日)および「教育改革プログラム」(1997年8月5日)などで、インターンシップを総合的に推進することを確認されました。その後、文部省・通商産業省・労働省の3省連絡会が「インターンシップの推進にあたっての基本的考え方」(1997年9月18日)をまとめています。
 それまでの「インターン」のイメージは、医療関係者や弁護士を目指す研修生などを越えるものではありませんでした。しかしながらこのような制度導入に向けた気運の盛り上がり、インターンシップ活動の活性化および大学等におけるインターンシップの単位化等の本格導入に向けて日本全国で様々な取り組みがなされました。現在は「地域インターンシップ全国連絡会議(1998年5月29日)」をはじめ、様々な地域・枠組みで今後の推進方策等を検討することを目的とした積極的な情報交換が行われています。今、日本はまさにインターンシッププログラムの発達過程にあります。
 

京都での取り組み

 そして私たちは1998年度より大学コンソーシアム京都・インターンシッププログラムを展開してきました。2系統のプログラムで初年度は活動してきました。
 1つは「ビジネスシステム」です。インターンシップは産官学の連携プログラムですから、ビジネスとはいえ自治体も含めてプログラムを運用してきました。
 仕事と学習の結合がインターンシッププログラムの目的です。ですから、その体験分野は企業・自治体だけにとどまりません。産官学に加えて「民」すなわちNPO分野、民間非営利組織へのインターンシップを「NPOネットワークシステム」として運用をしてきました。これがこの「NPOスクール」です。
 インターンシップが盛んに行われているアメリカでは、特に西海岸に置いてこうしたNPO分野へのインターンシップが極めて多様に展開されています。
 教育機関が適切な職業選択への最適な学習機会としてとらえるだけでなく、学生自身が成熟した大学生となる手段として用いることができるのがこのインターンシップです。

 


NPOの世界

 1998年12月1日、特定非営利活動促進法が施行されました。通称で「NPO法」と呼ばれていますが、いわゆる市民活動団体だけがNPOではありません。

 NPOはNon Profit Organizationの略で、多くは民間非営利組織と呼ばれています。NPOというとアメリカばかりに目をとられがちですが、実は日本でも古くからNPOは存在していました。いわゆる公益法人がそれです。財団法人・社団法人などの民法法人の他にも学校法人や医療法人、その他各種法律に基づいた法人格が存在しています。

 

 特定の非営利活動とは何を指すか

 -特定非営利活動法では以下の12分野を取り上げています。
表 特定非営利法人で定める12分野

保険、医療又は福祉の増進を図る活動

社会教育の推進を図る活動

まちづくりの推進を図る活動

文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動

環境の保全を図る活動

災害時の救援の活動

地域安全活動

人権の養護又は平和の推進を図る活動

国際協力の活動

一〇

男女共同参画社会の形成の促進を図る活動

一一

子どもの健全育成を図る活動

一二

前各号に掲げる活動を行う団体の運営または活動に関する連絡、助言又は援助の活動

 

 これらは全て公益活動を前提としています。公益活動の中に、特定の公職の選挙に係る活動と、特定の宗教の普及に係る活動を本法律では含めていません。
 NPOの活動は、多様で複雑な問題点を含んでおり、その解決が困難です。緊急の対処が必要な問題もあれば、また恒常的な活動の展開を図る必要があるものもあります。そうした「多重・多階層」が民間による非営利の活動です。行政や企業ではできない取り組みで社会のスキマを埋めている、そんな活動です。
 ですから、NPO スクールでは特定非営利活動法人に限らず、そういった活動をしている様々な団体とのインターンシップを行っています。


なぜ今、「スクール」か?

 

 NPOは社会の問題に直面しています。したがって、矛盾や葛藤を避けて通ることができません。何故そうなのか、何が必要なのか、など根本的な問題点をさぐり、かつ社会的公正を貫いていく「ミッション(使命)」に支えられた活動です。

 ですから、それらのテーマを学習できるとともに、問題の「いま・ここ」に直面しているために、現場での問題解決型思考やその方法を身につけることができます。そして、組織の一員として働くことで社会的教養や求められるスキルを学び、社会捍必要とされる人材育成が図られます。

 

NPO スクールのめざすもの

 先に述べたように、アメリカではインターンシップもその形態によってそれぞれの言葉で定義づけがなされています。中でもそれらは大きく2つに分けることができ、主に企業が主導となって取り組まれるものをインターンシップと呼び、就業体験の中でも特に大学が主導となったプログラムは「コーオプ教育(Cooperative Education)」と呼ばれます。学生の専門分野、職業選択、能力開発、そして個人的関心に基づいて組織される教室外の教育プログラムです。NPO スクールはこのコーオプ型の教育によって地域と大学を結びながら、仕事と社会の結合、適切な職業選択のための学習機会の提供、大学生として成熟度の向上、そして新しいネットワークの形成を図りたいと考えています。
 そのためにNPO スクールでは、学生・コーディネーター・活動先のスーパーバイザーとの間で日常的な連絡体制をとり、インターンと並行して週1回のゼミナール形式で授業を行い、フォローアップをしていきます。

 

実習生・ボランティアとの違い

 同じような教室外の教育プログラムとして、実習やボランティア体験などがあります。しかし、コーオプ教育はこれらとは大きく異なります。
 実習は資格を取るためやその職業に就くために、一定期間、実地で体験をしておくというものです。そのほとんどは既に枠組みが確定している「パック型」の活動です。また、ボランティアは自発的な参加によるものであっても、そのコーディネートは活動先に依存してしまいます。場合によっては責任がなかったり、安価な労働力で終わってしまいます。
 それに対してインターンシップでは自分の将来のために一定期間その組織の一員となり、その仕事やスキルを学びます。加えてNPOスクールはコーオプ型の教育プログラムでインターンシップを行います。インターン生は単位や資格や個人的自己実現を第一の目的にはせずに、事務局が団体との関係構築をしながら個々のライフデザインを重視します。

 

もう1つの学校での学びなおし

 

壱.アクティブ・ラーニングで学ぶ

 現在の大学の講義で学びの実感を得にくいのは、どんな学部で学ぶにしろ、どうして学ぶのか、何を学ぶのか、何のために学ぶのか、どのように学ぶのかという一連の「問い」を立てることが困難であるからだと考えています。しかし、社会のなかをよく見れば、その問いにこたえてくれる材料には事欠きません。
 ですから、インターンシップによって自分で課題を発見し、先行する議論を整理し、必要なデータを集め、研究レポートとしてまとめるという一連の作業を、関心を共有する仲間とともに議論しながらすすめていくと、学ぶことがとても楽しくなります。
 
弐.新しい学びのコミュニティで学ぶ
 そこで学び方です。勉強というととても孤独な取り組みのように感じてしまいますが、学びというとずいぶん広がりがあります。とりわけインターンシップは出会いの連続です。
 こうした出会いがあると学んでいることが生きてきます。NPO/NGOをフィールドとして、そこで活動し、経験を積み重ね、並行して、対応する分野の知識を学びながらの新しい学びのスタイルが、ここでいうインターンシップです。
 
参.新しいフィールドで学ぶ
 社会のなかでの学ぶにもやはり知識が必要です。ただ社会のなかに出ていけばいいということではありません。現場は忙しく、動きがあり、情報が激しく行き来しています。だから、知識が必要なのです。しかもNGOやNPOやボランティア団体などの新しいフィールドにふさわしい発想と知識が求められています。
 NPOスクールでは新しいテーマについての学習を演習のようにして学びます。総合コーディネータや大学院スタッフによる講義及びワークショップ、インターン先のNPO/NGOのスタッフなどによるゲスト・スピーチ、受講生同士の討論などをとおして、学びを深めていきます。原則として週一回の講義を行い、最後はインターン先で実習したことをレポートにまとめる作業を行ないます。単なる実習記録や感想レポートではなく、それ自身が一つの作品になるような研究レポートとなることをめざします。

 

四.大学のまち・京都で学ぶ
 こうしたことを京都で行うことに1つの意義があります。古都の魅力、文化の蓄積、学問の伝統を活かしながら、様々な大学の学生と学ぶことは貴重な経験です。
 大学のまち・京都発の地域に根ざした大学間連携の学びのプログラムです。まさに京都ならではの、新しい学びのシステムとスタイルです。