98年度の実績

 NPOスクールでのインターンシッププログラムは「ファイナルレポートの作成」によって終了します。実習先でレポート内容をプレゼンテーションして、はじめてインターンシップが終了すると位置づけています。

 98年度は「もうひとつのキャリアデザイン〜NPO・NGOでインターンする」と題したレポート集をまとめあげました。ここにはNPOスクール一期生31名分のレポートを収録しています。また、毎週NPOスクールで配布していた「学級通信」と、関連新聞記事も同時に所収しています。

 このレポート集はNPOスクール事務局にて一冊2,000円にて頒布させていただいております。ご希望の方は事務局まで連絡ください。

レポート集のまえがきから

営利組織の発展のためには人材育成が不可欠です。そう思ってはじめた新しいプログラムでした。日々、試行錯誤の連続でした。非営利組織それ自体への関心が高まりつつあることを背景にして、なんとか一年間過ごすことができました。せっかく大学の街で勉強しているのだから、学び方それ自体を刷新したいと願って始めた「もうひとつの学校」としてのNPOスクールでした。

ログラムのねらいは、もちろん非営利組織で働くことをとおして、NPOやNGOのことを勉強することですが、大学コンソーシアム京都で展開するこのプログラム自体を「学びのNPO」として成熟させていきたいというねらいもあります。

NPOスクールで強調した第1の点は、アクティブ・ラーニングのすすめということでした。問いかけはこうでした。どんな学部で学ぶにしろ大切なことはどうして学ぶのか、何を学ぶのか、何のために学ぶのか、どのように学ぶのかという一連の「問い」です。社会のなかをよく見れば、その問いにこたえてくれる材料には事欠きません。現代社会は実に多様に複雑化し、すべてのものごとが相互に関連しあっています。もつれた糸をほぐすようにしてみないとなかなか社会の全体像が見えてきません。学ぶということは、言葉や思考という知の道具をつかって、社会という世界に補助線を引き、見えない事柄を見えるようにする作業です。そのままでは何もみえない環境にすべては埋め込まれています。学ぶことをとおしてその環境のなかに何かが蠢いているのが見えてきます。そのためには、主体的に学習することが必要だと思います。自分で課題を発見し、先行する議論を整理し、必要なデータを集め、研究レポートとしてまとめるという一連の作業を、関心を共有する仲間とともに議論しながらすすめていく場をつくりだしたいと思い、NPOのみなさんの力を借りたのです。なぜなら、市民活動を活性化するためには批判的創造的にものを考える力をもった市民の存在が不可欠だからです。学ぶ活動に力点を置いたのは市民の形成ということを念頭に置いたからでした。

調した第2の点は、新しい学びのコミュニティを形成したいと考えたことです。学び方を問い直すということでもあります。勉強というととても孤独な取り組みのように感じてしまいますが、大学の学びはずいぶんと異なります。学ぶということは先人たちが蓄積した文化、知識、技術の積み重ねを若い世代が継承し、発展させていくことです。そしてみずみずしい問題意識を養っていくのは「いま・ここ」の同時代です。教室の外の社会は、大学での学習を彩り豊かにさせてくれる契機に満ちています。とりあえず、書を持って、いったん社会のなかにでて、人とテーマに出会うことが重要です。出会いがあると学んでいることが生きてきます。NPO・NGO・ボランティア団体などをフィールドとして、そこで活動し、経験を積み重ね、並行して、対応する分野の知識を学び身につけながらの新しい学びのスタイルが、ここでいうインターンシップです。肝心なことは、一人ひとりの個人が点として賢くなるためには、学ぶ環境が面として豊かでなければならないということです。私たちの関係性を豊かにしたいということでした。

3は、新しいフィールドで学ぶ際に必要な知識とは何かを明らかにしたいということでした。社会のなかでの実習にもやはり知識が必要です。ただ社会のなかに出ていけばいいということではありません。社会という現場は、たしかに最先端の知識が生成する場です。だから刺激です。しかし、やはり現場は忙しく、動きがあり、情報が激しく行き来しているところです。だから、知識が必要なのです。しかもNGOやNPOやボランティア団体などの新しいフィールドにふさわしい発想と知識が求められています。さらに実務的知識や法制度的知識も必要です。NPOスクールは、毎週のスクーリングを重視してきました。総合コーディネータや大学院スタッフによる講義、インターン先のNPO・NGOのスタッフなどによるゲスト・スピーチ、受講生同士の討論などをとおして、学習を深める努力を行いました。最終的にはインターン先で実習したことをレポートにまとめる作業を行ないました。たんなる実習記録や感想レポートではなく、それ自身が一つの作品になるような研究レポートとなることをめざしてきました。

して第4に、京都をはじめとした地域を学ぶことです。京都・大阪・神戸などの地元地域はとても魅力的です。古都の魅力、文化の蓄積、学問の伝統を活かすことができるのです。京都という地域の広がりにふさわしく、こうした市民活動もひろがっています。NGO・NPO・ボランティア活動も実に幅広く展開されています。観光を活かした街づくり、伝統産業の再生、少子高齢社会における福祉のあり方、環境問題の解決、多文化共生のための国際交流、芸術や文化による潤いある人づくり、悩める人へのサポート活動、情報ボランティア活動、NPOをサポートする組織活動など実に様々な団体が活動しています。

うしたことを強調しながら、ダイナミックな学びの仕組みを構築することを追求してきたつもりです。NPOスクールで学んだことが市民社会の一員として身につけて欲しい事柄そのものでもありました。NPO分野における人材育成はまだまだこれからです。雇用市場として成熟させるには、NPO活動の活性化が不可欠です。そして、事業としての収益も含めた本格的展開が求められています。引き続き、NPOスクールの取り組みを進めながら息の長いプログラムに育てていきたいと思います。

け入れに協力していただいた団体のみなさんになによりも感謝いたします。そして、NPOスクール第1期生の努力がとりわけ貴重でした。コーディネータースタッフの院生たち、大学コンソーシアム京都のスタッフのみなさんにも多くの力をかりました。その成果としての本報告集をぜひお読みいただき、今後の活動に役立てることができれば幸いです

 

大学コンソーシアム京都 NPOインターンシッププログラム総合コーディネーター

立命館大学助教授                             

中村 正 

 

受講生の感想

大和 寛子/同志社女子大学生活科学部4回生
 私は1997年12月に京都で行われた「地球温暖化防止会議」で、初めてNGO活動に関わり、それからNGO・NPOに興味を持ちはじめました。この活動がきっかけで、NPOインターンシッププログラム受講しようと思い、参加してきました。

 私の場合は週に1回、大阪の女性センターへインターンに行きました。主な仕事内容はセンター内で催されている講座の当日受付などのアシスタントで、直接、参加者と言葉を交わすことができます。また、センターのデータベースをインターネット化する際には、実際にパソコンを使って変更箇所の入力・更新を行いました。今回のインターンでは、利用者と顔を合わせながらできる仕事とセンターの「中」に関わる仕事の2側面を学ぶことができました。当然の事ながら、一般利用者では経験のできないことです。

 私は、4回生という大学生活最後の1年間をインターン活動することで、自分の興味あるNPOという分野が自分の職業になる可能性を秘めていることに気づきました。また、これからの自分を、社会を考える第1歩になっていることは確かです。

三上 正寛/花園大学仏教学科4回生

 私がこのコースを希望したときは、果たして私自身が1年間のプログラムをやっていけるのかどうか、続けていけるのかどうか、自信のないまま面接を受けました。後で聞いたのですが、NPOコースに面接を受けにきた人は、募集定員の倍以上と聞いてビックリ!そして、その中で選ばれた人にとって、少し自信につながっていったのも事実です。

 私が、はじめにインターンに行ったのは、まちづくり。しかしプログラムが始まってからインターン先が一度変わりました。まちづくりにインターンに行ったのですが、これまでボランティアで関わってきた福祉関係にインターンに行きたかった私にとって、アドバイザーに無理を言って福祉関係に変えてもらったのです。その時学んだことは、「自分の意思ははっきりと相手に伝えなくてはならない」といまさらながらそう感じたのです。自分は、どのようなことに関心を持っていて、だからどうしていきたいか。それをしっかりと言えなかったために、周囲に迷惑をかけてしまいました。その後、私の希望通り、福祉関係にインターンに行けることになりました。NPOコースでは、関心のある分野が、学びと体験、そして学びにつながることが、実感できる場所でした。

 

受講生のケーススタディ

 ここではある受講生の1年を追ってみることにします。

 

登丸 あすか(立命館大学産業社会学部3回生)

 大学の外に出てみたいと思って応募したのが始まりで、私にとってドーンセンターは正に新しいフィールドでした。インターンの仕事はもちろん団体から与えられたものですが、その中で、自分で見て、聞いて、考えて、そして質問していくという新しい学びのスタイルを得られたと思います。特に講座の企画では、何を伝えるのか、どう広報していけばよいか、当日の進行など一つ一つ自分たちで考えていかなければなりませんでした。

 インターンで得られた自分のテーマをさらに深めていきたいと考え、これからもNPOやジェンダーの分野に関わっていきたいと思います。

(写真:講座で司会する登丸さん/撮影:山口 洋典)

NPOスクールの一年 登丸 あすかの場合

【4月】

  • 学外での学びの場に魅力を感じてNPOコースのインターンに応募。
    ・面接では自分の学びのテーマや自分自身について話す。

【5月】

  • NPOスクール生と初顔合わせ。(個性の強そうな人ばかりでした)
  • NPOスクールでの合宿でインターン先のマッチング開始。
    ・場所や仕事の内容を見ると現実味を帯びてくる

【6月】

  • ドーンセンターへ面接に→結果、企画・推進グループに配属決定。
     ・ジェンダーに対する思いと、自分の希望配属先を伝える。
     ・相談の結果、毎週火曜日9:30〜17:15までインターン

【7月】

  • 女性映像フェスティバル(女性監督の映画を上映)でインターン生として仕事をこなす
     ・啓発講座の広報(チラシの印刷・発送)、受講者の名簿作り、当日の受付
     ・ジェンダーに関する新聞記事のスクラップ     など

【8月】

  • インターンとは別に、自主的に埼玉県にある国立婦人教育会館での女性学・ジェンダー研究フォーラムに参加。
    (シンポジウムと120あまりのワークショップの中から自分で希望のものに参加)

【9月】

  • 調査研究事業のメディア・リテラシー教材作成のための委員会にメンバーとして参加
    (大学での勉強とも関連していて私にとっては関心の高い事業でした)

【10月】

  • 女性芸術劇場「ムーンライトチルドレン」での当日受付、後日アンケート集計
  • ドーンセンターのインターン生5名で中間発表。
     ・中村先生、NPOスクールのスタッフ、スーパーバイザーの前で中間発表
  • 2月にインターン生で講座を企画するという話をドーンセンター側から頂く。
  • NPOスクールのゼミの中でもドーンセンター組で中間発表。

【11月】

  • ドーンフェスティバル開催
  • 講座の企画案、チラシ作成に奮闘する。
  • ゼミ生にドーンセンターを紹介するドーンセンターツアー案浮上

【12月】

  • ドーンセンターツアー実施。
     ・インターン生でドーンセンターの事業、ジェンダーについて紹介。
  • 講座のチラシ完成。

【1月】

  • 講座担当の講師と打ち合わせ。 30日に第1回の講座始まる。
  • ファイナルレポートの準備に入る。

【2月】

  • 6日第3回の講座で司会担当 (緊張したけど楽しかったです)
  • 13日、20日と4回連続講座開催
  • 19日最終報告会において1年の成果として自分のレポートを発表。