以上(千石 マルチメディア爬虫類両生類図鑑)より
さらに,2種の形態的特徴を備え持ったカメが4個体(もしくはそれ以上) 確認された.大きくわけて3つの組み合わせと思われる個体 (クサガメとイシガメ,クサガメとミナミイシガメ,クサガメとアカミミガメ) がみられた.
6種のカメ類のなかではクサガメの捕獲が一番多く, 以下,アカミミガメ,イシガメ,スッポン,ワニガメ, ミナミイシガメの順であった(表1).
もっとも多く捕獲されたクサガメ128個体で個体数推定(ピーターセン法)を行った結果 158匹であった.この個体数推定によると, すでにクサガメの85%にマークがついていることになる. しかし,もし池のなかで個体ごとの行動範囲の選好性があるとしたらならば(実際の ところはわかっていない),これは定置網2基周辺に生息すると思われるクサガメの 個体数推定であって,池全体での個体数はこの限りではないであろう. これを確認するためにも来年は定置網以外の場所でわなかけをしてみる 必要がありそうだ.
クサガメのみの結果であるが,雄が98個体,雌が38個体で性比は♂ : ♀=1 : 0.38 と雄が雌より倍以上多い.ちなみに他の調査地でもクサガメの 性比が雄に偏っていることが確認されている.
上の2つの調査地と比べて,深泥池のクサガメの雄へ極端な性比の偏りの理由として, 一つには,性別での行動習性の差が捕獲方法や場所に反映されたことが考えられる. 深泥池以外では岸辺の浅いところでのカゴワナによる捕獲であるのに対し, 深泥池では池の中ほどに設けた定置網であることが雌の捕獲数の減少につながった 可能性がある(これも定かではないが). いずれにせよ,3調査地ともに雄に性比がかたよっているが, その理由ははっきりとはわからない.
再捕獲は最高10回,3個体(個体No.201♂,204♀,207♀)において確認された.以 下,再捕獲9回が1個体(個体No.207♀),再捕獲8回が0個体,7回,6回がそれぞれ4 個体,5回が11個体,4回が4個体,3回が26個体,2回が30個体,再捕獲されなかっ た個体が52個体(うち30個体は9月以降に捕獲されたものである)であった.
今年捕獲された3匹のミナミイシガメのうち, 2匹は定置網で,残りの一匹は浮島に仕掛けたねずみ取り用のワナ (8月の網上げ中に試験的に一回仕掛けてみたもの)で捕獲された. このことから,ミナミイシガメの捕獲数は,捕獲方法や場所をかえることで 少しは上がることが期待される. また,道路で轢かれて死亡したと思われる個体1個体が見つかっている.
60匹中,背甲長などのデータをとったものは38個体であった.そのうち背甲長100mm 以下,200mm以上がそれぞれ8個体ずつであった. アカミミガメは研究用に横浜国立大学環境科学研究センターの 竹中氏に引き取っていただいた.
4匹のうち,3匹はそれぞれ京都府立鴨沂高校の成田氏, 大阪市立博物館の和田氏,琉球大学熱帯生物研究センターの 安川氏に引き取っていただいた.残りの1匹は捕獲後逃げられてしまった.
クサガメの背甲長最頻値は,雄155mm,雌175mmであった. 雄のほうが雌より小さい.これはイシガメも同様である. 背甲長80mm以下の若齢個体は捕獲されなかった(図1).
クサガメ,イシガメ,アカミミガメ3種ともに9.10月の捕獲が多い. 8月は網を上げていたため,試験的に一回だけかけたカニ捕り用の カゴワナによる捕獲の結果である.よって,捕獲数は少なく, 他の月と対等に比べるとはできない(図2).

クサガメ雄全体98個体中,黒化しているかかどうかを記録したものは82個体であった. そのうち86%の71個体において完全な黒化が確認された. 黒化は雄の老熟した個体に多くみられる(千石 1979)ことから, 捕獲されたクサガメ雄はほとんどが老熟個体であるといえる(図3).

雄,雌とも7?10歳で成長が飽和しているように見えるが,実際は雌は背甲長200mm以 上成長する.しかし,そのころには年輪もすり減っているものが多く, 齢が確定できなくなっているのでこの図のデータからは省いた(図4).

雄,雌ともに秋のほうが春よりも有意に肥満度があがっている. 冬眠明けした春は痩せていて,春,夏,秋と徐々に栄養を蓄え, 11月から12月にまた冬眠にはいる,というサイクルの結果であると思われる(図5).

深泥池のカメ類のデータを集めるにあたって深泥池水生動物研究会の多くの方々の ご援助とご支援をいただいた.そのなかでも特に毎回のように網上げ作業にたずさ わっておられた井上庄助氏にはカメ類の捕獲の細かい記録作業を,伊藤昭雄氏, 田末利治氏には,魚の調査にはやっかいものの臭くて重くて,そしてなにより かわいいカメ類の網あげ,いけすでの保管に関して全面的に協力していただい ただけでなく,データのまとめ方への貴重なアドバイスをしていただいた. 末尾ではあるが,これらの方々に厚く感謝したい.