本国会召集日(平成十二年七月二十八日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。    会長 中山 太郎君    幹事 石川 要三君 幹事 高市 早苗君    幹事 中川 昭一君 幹事 葉梨 信行君    幹事 枝野 幸男君 幹事 鹿野 道彦君    幹事 仙谷 由人君 幹事 赤松 正雄君    幹事 塩田  晋君       太田 誠一君    奥野 誠亮君       久間 章生君    新藤 義孝君       杉浦 正健君    田中眞紀子君       中曽根康弘君    中山 正暉君       額賀福志郎君    根本  匠君       鳩山 邦夫君    平沢 勝栄君       保利 耕輔君    三塚  博君       水野 賢一君    宮下 創平君       森山 眞弓君    柳澤 伯夫君       山崎  拓君    五十嵐文彦君       石毛えい子君    大出  彰君       島   聡君    中野 寛成君       藤村  修君    細野 豪志君       前原 誠司君    牧野 聖修君       山花 郁夫君    横路 孝弘君       太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君       武山百合子君    藤島 正之君       春名 直章君    山口 富男君       辻元 清美君    土井たか子君       近藤 基彦君    野田  毅君 平成十二年八月三日(木曜日)     午前十時二分開議  出席委員    会長 中山 太郎君    幹事 石川 要三君 幹事 高市 早苗君    幹事 中川 昭一君 幹事 葉梨 信行君    幹事 枝野 幸男君 幹事 鹿野 道彦君    幹事 仙谷 由人君 幹事 赤松 正雄君    幹事 塩田  晋君       太田 誠一君    奥野 誠亮君       久間 章生君    新藤 義孝君       杉浦 正健君    田中眞紀子君       中山 正暉君    額賀福志郎君       根本  匠君    鳩山 邦夫君       平沢 勝栄君    保利 耕輔君       三塚  博君    水野 賢一君       宮下 創平君    森山 眞弓君       柳澤 伯夫君    山崎  拓君       五十嵐文彦君    石毛えい子君       大出  彰君    島   聡君       中野 寛成君    藤村  修君       細野 豪志君    牧野 聖修君       山花 郁夫君    横路 孝弘君       太田 昭宏君    斉藤 鉄夫君       武山百合子君    藤島 正之君       春名 直章君    山口 富男君       金子 哲夫君    原  陽子君       保坂 展人君    近藤 基彦君       野田  毅君     …………………………………    衆議院憲法調査会事務局長 坂本 一洋君     ――――――――――――― 委員の異動 八月三日  辞任         補欠選任   辻元 清美君     保坂 展人君   土井たか子君     金子 哲夫君同日  辞任         補欠選任   金子 哲夫君     土井たか子君   保坂 展人君     原  陽子君同日  辞任         補欠選任   原  陽子君     辻元 清美君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中参考人出頭要求に関する件  日本国憲法に関する件(今後の憲法調査会の進め方)     午前十時二分開議      ――――◇――――― ○中山会長 これより会議を開きます。  日本国憲法に関する件、特に今後の憲法調査会の進め方について調査を進めます。  本日の調査会は、委員間の自由な討議を行いたいと思います。  本日の発言について申し上げます。  まず、私から会長としての発言を一言させていただいた後、自由民主党の高市早苗君、民主党の鹿野道彦君、公明党の赤松正雄君、自由党の塩田晋君、共産党の春名直章君、社民党の原陽子君、21世紀クラブの近藤基彦君、保守党の野田毅君、この順序で一人約五分御発言を願うことにいたしております。  なお、従来からの取り決めによりまして、四分目になりますとブザーを鳴らさせていただきます。五分終了時にさらに一回ブザーを鳴らさせていただきますので、御協力を願います。  なお、最初に申し上げましたように、御発言の順序を明確に規定いたしました方々の御発言が終了しました後、二巡目以降は会長の指名といたしますが、御発言の希望者は、お手元にあります名札をこのように立てて御発言の御意思を明確にしていただきたいと思っております。  それでは、討議を始めるに当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。  本調査会は、本年一月二十日、国会の召集とともに設置され、以降、日本国憲法の制定経緯及び最高裁判所から戦後の主な違憲判決等を中心に調査を行い、制定経緯につきましては調査を終了いたしました。これまでの調査の概要につきましては、お手元に配付いたしておりますので、ごらんいただきたいと存じます。  総選挙後、新たな委員の皆様と引き続き調査を進めてまいりますが、これまでの調査の結果を踏まえ、一層議論を深めていただきたいと存じます。  御承知のように、冷戦の終結後、世界は、自由貿易による市場の拡大と国境なき大競争の時代に入ってきております。  しかしながら、日本経済の先行きは依然として不透明であり、国民も将来に対する不安を払拭できない状況にあります。  特に、二十一世紀の我が国の人口構造は、少子化と高齢化が同時に進行し、五十年後には国民の約三人に一人が六十五歳以上になるという超高齢化社会を迎えるわけであります。このまま少子高齢化が進みますと、労働力人口の低下、貯蓄率の低下等に伴う経済成長の鈍化、税、社会保険料など現役世代の負担の増大、基礎的な生活関連サービスの低下、地域社会に対する悪影響が見込まれており、二十一世紀の日本にとって国家の衰亡に関する喫緊の重要課題がここに存在をしております。  また、グローバリゼーションの進展する中で、我が国は、周辺諸国との水平分業の進行の問題、国内企業の保護の問題等を抱えておりますが、産業競争力の強化、雇用の創出と労働市場の改革、創造的な中小企業の創業や成長の支援など中小企業政策の見直しなど、抜本的な経済構造改革が迫られております。  さらに、世界の平和を守るために、国連加盟国として我が国の果たすべき役割、北東アジアに位置する国家として、地域の集団安全保障が構築された場合への対応、国家の危機管理のあり方、情報化社会に対応した個人のプライバシー保護の問題、その他、情報化社会における人間教育のあり方、科学技術の驚くべき進歩による生殖・遺伝技術に対する生命倫理の問題、地球環境問題への対応、男女が支え合っていける男女共同参画社会のあり方など、重要な課題が山積し、的確かつ迅速な現状把握と政治的判断が求められております。  会長といたしましては、このような我が国を取り巻く状況を踏まえ、憲法のあり方について、全国民的見地に立って、広範かつ総合的な調査、検討を進めてまいりたいと存じております。  なお、本調査会は、九月以降、二十一世紀の日本のあるべき姿について調査を進めていくことで幹事会の合意に至っているところでございますが、本日は、このような合意も踏まえ、今後の憲法調査会の進め方につきまして、委員各位の忌憚のない御発言をお願いしたいと存じます。  それでは、高市早苗君。 ○高市委員 自由民主党の高市早苗でございます。冒頭に発言をお許しいただき、ありがとうございます。  二月二十四日以降、十名の参考人の皆様より日本国憲法制定経緯について御意見を聴取し、質疑を行いました。これにより、会派を超えて共有できる認識が明らかになるとともに、一方で、見解が対立する点も見えてまいったことが大きな成果であったと考えております。  会派を超えて共有できた認識だと私が考えますことは、第一に、憲法と現実の乖離が存在するということでございます。前文、安全保障、地方自治、私学助成、政教分離、公共の福祉、知る権利、元首規定などについての乖離事例が各委員から指摘されました。  しかしながら、憲法と現実が乖離している原因については見解が分かれました。 憲法が時代の変化に対応できなくなったからという見解と、憲法の理念が実行されてこなかったからという見解が対立いたしました。  私は、これまで、時代の変化という前者の見解での発言をしてまいりました。通常国会の議論の中でも、プライバシー権、環境権、外国人の権利とその限界、首相公選制、情報化、グローバリズム、改正規定、衆参二院のあり方など、現行憲法では対応できない課題が数多く指摘されております。  しかし一方で、もう一つの見解、憲法の理念が実行されてこなかったからというのもまた事実であったと思います。翻訳調で不正確と思われる文言もありますし、解釈によって大きく結果が変わる条文もございます。さらに、現実問題として、現行憲法の理念の実行では既に国家国民を取り巻く環境への対応ができなくなっていたのだと思います。  会派を超えて共有できました認識の第二は、現行憲法の制定に当たってGHQによる押しつけがあったとの事実でございます。このGHQの行為がハーグ陸戦法規に違反するかしないかについては対立がございましたけれども、押しつけの事実については見解が一致したと思います。  しかし、私自身は、前にも申し上げましたが、制定経緯の正当性の有無を改憲の是非を論じる材料にはしたくないと考えております。むしろ、これからの時代の日本をどうつくっていくか、二十一世紀の国の形というのはどうあるべきか、そのためにどのような規範が必要かといった視点に立って議論することがこれからの本調査会の課題であると考えております。  中山会長が、憲法は国家存立の基本条件を定めた根本法であり、国民生活を支える最高の規範であると指摘されておりますけれども、憲法は、いわば国民に幸福な生活を保障するための国家運営マニュアルであると思います。  また、現行憲法は九十六条に改憲の手続を規定しています。つまり、もともと将来の改憲の可能性を前提につくられたものでありまして、起草した人々も、未来永劫にわたってこの憲法がパーフェクトな法であるなどということはないと考えていたことが読み取れます。  私たち国政の場で働く政治家には、時代の潮流を的確にとらえて、新しい時代に対応できる法規を整え、国家の繁栄と国民の幸福を実現する義務がございます。これまでの議論を経て私たちが共有できました憲法と現実の乖離の認識を重く受けとめ、私は憲法改正の必然性を再認識した次第でございます。  今後の進め方について中山会長にお願いしたく存じます。  この秋から年末にかけての本調査会での議論では、二十一世紀の国の形、つまりこれからの時代の国家のあり方、国民のあり方などを大きな切り口で語り合う機会を設けていただきたいと思います。その中で、直面する現実と憲法の乖離について、より具体的に、どの条文がどうであるといった議論も当然出てくると思います。そして、自民党の葉梨幹事より、その前に一度、憲法前文についての議論が必要であるとの御提案もございました。私もこれに賛成です。四段から成る前文には基本原理や原理確立のための決意が示されておりますから、大局的な議論の材料としては適切だと考えるからでございます。  そして、来年からは、いよいよ数カ月ごとに調査対象とするテーマを決めて、各章ごと各項ごとの具体的な検証にも取りかかっていただきたく思います。地方自治や外国人の権利、安全保障、財産権といった議論では地方公聴会の開催も当然必要になると思います。  とにかく、五年間の調査期間でございますので、各委員の皆様とともに欲張りに頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○中山会長 ありがとうございました。  高市早苗君に申し上げます。  九月以降の調査会の議論をするテーマといたしましては、二十一世紀の日本の形について大きく議論をいたしたい、このようなことで既に幹事会での合意を得ております。  それでは、鹿野道彦君。 ○鹿野委員 十回にわたって憲法の制定過程について自由濶達に調査研究し、審議をしてきたわけでありますけれども、この点につきましては、当然、歴史の検証、こういうふうなことであったわけですが、押しつけ憲法論の観点から憲法改正論議を起こす、いわゆる後ろ向きの論議というよりは、これから日本の国あるいは日本の国民が直面している新しい課題に向けてどのような前進をしていくか、そういう必要があるのではないか。いわゆる未来に向かって進んでいこう、こういうふうなことがおおよそ共通の認識ではないか、こんなふうに考えております。  そういう意味で、今後は二十一世紀の日本の新しい国の形について大いに調査研究し、国の基本となる憲法のあり方について骨太な議論を展開していくということが大事なことではないか、こういう考え方であります。とりわけ、新しい世紀を迎えまして、日本という国をどのように構想していくのか、あるいはどのような社会を目指すのかということを真剣に考え、そのもとで憲法の姿を議論していくということが重要なことだと思っております。憲法は、言うまでもなく国の基礎を形づくる基本法でありますゆえ、いかなる国づくりを目指すかとの構想に基づいて組み立てられるべきものである、こういう考え方であります。  そのようなことから、民主党といたしましては、今後、順次、この国をめぐるところの二十世紀の総括と二十一世紀の展望について本格的に調査会としても議論を進めていくべきであると思っております。  まず、地球規模の新たな課題の出現と国際協調の時代に対応する憲法の現代的なあり方について検討すること。とりわけ、基本的人権の尊重について、国際化時代により適合的な形で再整備するために必要な事項を検討すること。環境と情報の二十一世紀の入り口に立ち、持続可能で安定した社会経済秩序のあり方を検討して、憲法上とのかかわりについて整理すること。また、国際平和と自国の安全のために国がなすべきことを検討し、かつ多様な国際機構が作動していることを踏まえて、憲法上の課題を調査研究すること。  あらゆる分野においてダイナミックに生じている社会変化を受けて、どのような観点に立ち、これからの国の基本的な枠組みを再構築していくべきなのかということを検討すること。とりわけ、情報通信革命の時代にふさわしいプライバシーの保護、知る権利、表現の自由のあり方などについて、新しい権利の観点から検討すること。また、本格的な男女共同参画社会や高齢化社会、バリアフリー社会などを積極的に創出していくことの観点から求められる望ましい社会及び国のあり方について整理検討すること。  日本国の統治機構のあり方について、既存の憲法解釈にとらわれることなく、国民主権の実現、民主主義の深化、権力分立の確保、議院内閣制の発現を前提に、より望ましい姿を検討すること。とりわけ、国民主権を徹底するとの観点に立ち、国民参加と立法府の権限についてより明確にすること、及び首相の政治的リーダーシップと政治責任を明確にした議院内閣制についての調査研究を行うこと。議院内閣制が本来のあり方になっているかどうかというふうなこともさらに調査研究する必要があると思います。また、本格的な地方分権の時代に備え、分権型社会の姿を基礎づける憲法上の基盤を検討整理すること。  憲法が法規範として有効に作動させるため、違憲立法審査権及び憲法訴訟の現状について分析、評価し、必要な改革提案をすること。その際、今日の包括的な司法制度改革とあわせて調整し、改正すべきと思われる事項について整理し、その改革方向を検討すること。また、国際法体系及び国際司法の整備及び成熟に伴う憲法及び国内法の位置づけについて再整理することなどなど、論点に係るいろいろ議論の成果を得て、日本国憲法の基本精神を再確認し、新しい時代に対応するためにどうあるべきかを検討していくことが大事なことだと思っております。  これからの包括的な議論を進めることにあわせて、国のあり方について総合的な議論を展開する中で、国民の各界各層、幅広い人たちからの意見を聞きながら、公聴会等々も積極的に開催をして、国民とともに憲法を議論していくというふうな姿勢をとっていくことが最も必要なことではないか、こんな考え方に立つところであります。 ○中山会長 赤松正雄君。 ○赤松(正)委員 この憲法調査会に初めてこの国会から参加をさせていただくことになりました、公明党の赤松正雄でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  公明党を代表するというよりも、在籍する者の一人として、現在における憲法をめぐるありよう、そしてまた過去の私どもの考え方、そしてこれからの取り組み等について、簡単に報告をさせていただきます。  まず、この調査会におきまして、日本国憲法の制定過程につきまして極めて詳細に調査検討が前国会においてなされたことは、大変に重要な作業であったと高く評価をするものであります。過去の経緯については先ほど高市幹事からお話があり、またこれからの方向性については今鹿野幹事の方からありました。大変に順調な滑り出しをしているのだろうと思います。  私は、一九四五年十一月に、さきの大戦が終わりました直後に生まれました者として、今日までこの日本国憲法とともに育ってきたということの重みを十分に感じて生きてきたわけでございます。その誕生の経緯についてはともあれ、基本的人権の擁護、また国民主権、そして恒久平和主義という三原理を中核としたすばらしい中身を持つ憲法であるとも思ってまいりました。  公明党として、憲法に対する考え方につきまして、この際、重複するかもしれませんが、概略、これまでの取り組みについてお話を申し上げたいと思います。  まず、三つの段階を経てまいりました。  第一段階は、憲法を守るということと改正をするということについて、公明党としての見解を正確にまとめたのが昭和四十九年のことであります。  簡単に言いますと、憲法は、時代や社会の変化、進展に応じて変化するものであるし、国民は、その時代や社会の変化に応じて、国民総意の結集のもとに憲法を改正する権利を有しているという考え方を、公明党も一般的、普遍的な立場で認識している。こういう認識を明確にした上で、その前提のもとに、現行憲法を将来にわたって擁護すべきであるという主張をした。これが第一段階のことでございます。  第二段階は、昭和五十六年のことでございますけれども、憲法第九条についてどう解釈するのかということを正式に公表したものであります。  それは、国際紛争解決の手段としての国権の発動たる戦争、武力の行使あるいは武力の威嚇というものは放棄をした、しかし自国自衛の手段としては放棄されていないという認識を示しました。さらに言えば、国連憲章に言うところの集団的自衛権は認めないけれども、個別的自衛権は、急迫不正の侵略があって、ほかに守る手段がなく、最小必要限度の実力を行使することは合憲であるという解釈を明確に示した。これが第二段階、昭和五十六年のことでございます。  第三段階、これは最近というか、正確に言うと昨年でありますけれども、第三段階に今至っております。  それは、憲法の三原理は変えないけれども、時代の変遷に伴って憲法のありようというものを議論する、いわゆる論憲と言われる立場を明確にしたものであります。 さらにそれを少し進めまして、これからトータル十年くらいの過程の中で一定の結論を出そう、そういう立場を表明しました。この憲法調査会における五年の調査検討も、その中に重要な位置を占めてくるものだと私は理解をいたしております。  そのような過程を経て今日まで来たわけですけれども、私は、論憲といいましても、憲法をめぐる二つの大きな流れがあろうと思います。まじめなというよりも、三原理を補強、よりわかりやすく充実させる方向で手直しをしていく、そういう論憲と、それから、三原理についてはさわらないで、新旧文言整理的な角度の手直し、そういう格好にとどめる、こういうふうなことが論憲といってもあろうかと思います。論じたけれども何も変えないというのでは、論憲の論憲たるゆえんがない、そんなふうに今思っておるところでございます。  ところで、まずこれからの日本という国のあり方を大所高所から論じていこうという中山会長の御提案、賛成であります。  ただ、日本の憲法の最大の論点というか、これからの国のあり方を考える上で、先ほど鹿野幹事から、議論すべき課題が幾つか提案をされましたけれども、私は、やはり究極の課題は国の安全保障をどうするのかというものであろうと思います。これはそう簡単に合意を得られないテーマであろうと思いますが、であるがゆえに、先延ばしをしないで、この最も厄介なものから先に手をつけるべきではないかと考えます。もちろん、議論が分かれますから、後回しにして、合意できそうなところから議論をせよという立場があることも理解できますけれども、それではせっかくの憲法調査会の役割への期待を損なうものではないかと考えます。  以上、概略、考え方を申し上げさせていただきまして、私の報告とさせていただきます。  以上です。 ○中山会長 次に、塩田晋君。 ○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。  自由党の基本的態度といたしましては、現行日本国憲法を改正するという立場でございます。というよりも、むしろ二十一世紀を担う新しい憲法をつくるという基本的立場でございます。  現行憲法の制定経緯につきましては、いろいろと研究調査もなされ、またいろいろな議論があったわけでございますが、大体一致の方向に向かっているということは、先ほど会長が言われたとおりでございます。  それが、形式的には合法的な手続でもってつくられたということはございますけれども、当時の情勢からいって、GHQの強制的な力の働きかけがあったということも否めない事実であると思います。また、制定後五十三年を経ておるわけでございますから、国内外の情勢の変化もありますし、新たな課題も生じてきているわけでございます。そういった観点から、一言一句現行憲法の条文を変えない、そういう立場には立たないものでございます。  憲法調査会の今後の進め方でございますが、制定の経緯を経まして、次は、国のあるべき姿というものはどういうものであるべきか、これは決まっておるところでございます。九月以降検討されていくわけでございますが、続きまして、憲法条文と現実の乖離の問題、これも先ほど御指摘がございましたが、これを明らかにする必要がある。  そして、その中で、政府による解釈の変化、特に内閣法制局を中心にして、五十年間にかなり政府の解釈の変化があると思われます。いわゆる解釈改憲というような議論もあるわけでございまして、その辺をやはり明らかにする必要があると思います。  それから、前文、各章ごとに順次検討を具体的にしていくことが次の手続として必要ではないかと思います。そこには、自衛のための戦力保持の問題、それから集団的自衛権、あるいは国連平和推進のための国際協力、こういった問題ももちろん大きな問題であろうと思いますが、現行日本国憲法に盛られているところの具体的な三原則、人権の尊重とか三原則等につきましては、これは基本的に堅持していくという立場でございます。  それから、単にこの憲法調査会は論憲だけに終わるのではなくして、やはり改正あるいは新憲法をつくるという方向である一定の合意点を見出した中で、憲法改正の素案をつくるというところまでこの調査会でやるべきではないか。もちろん、憲法改正については、手続その他もまだはっきり決まっていないわけでございまして、そのような必要があろうと思いますけれども、そういったことを含めまして、やはり目標としては、この調査会ではある程度の改正の素案的なものをつくるのがいいのではないか、このように考えます。  私たちが考えております新しい国家目標といいますのは、何といいましても、日本の長い歴史と伝統を踏まえて、日本人の心と誇りを大切にする、自由で創造性あふれる、国民各自が生き生きと幸福な生活を送れる自立国家日本をつくるという、これが二十一世紀における日本国憲法のあり方ではないか、このように思います。  以上です。 ○中山会長 春名直章君。 ○春名委員 日本共産党の春名直章です。  今後の憲法調査会の進め方について発言します。  一つは、二十一世紀の日本のあるべき姿をテーマにする、こういう提案がされていますが、本調査会は日本国憲法の広範かつ総合的な調査を目的とするものでありますから、二十一世紀を問題にする場合にも、この調査会の目的に沿って、日本国憲法の理念と現実をしっかりと見据えて、それを二十一世紀の日本の政治と社会にどのように生かしていくのか、これを正面から調査することが大切であります。そのことを通じて、二十一世紀の日本のあるべき姿もおのずと浮き彫りになるのです。  日本国憲法から離れて国のあり方をあれこれ議論することになりますと、それ自身が調査会の目的を逸脱するだけではなく、結局、この議論の行き着く先が、あるべき国の姿に向けて憲法の方を変えていこう、つまり改憲の地ならしとなる危うさにつながるのであります。このような調査は本調査会の目的に反することを指摘しておきます。  第二に、調査の具体的な内容については、日本国憲法の理念と基本原則が、制定後五十年間の間に、現実の政治、社会の中にどう生かされて、あるいはないがしろにされてきたのかなど、日本国憲法の現実を文字どおり広範かつ総合的に徹底して調査すべきであります。  憲法の基本理念、原則として、各党とも、国民主権、恒久平和主義、基本的人権の尊重は将来にわたって堅持すべきものとしています。では、これらの三原則が今の日本の社会と政治の中でどう生かされているのか、現実との乖離がどこにあるのか、このことを調査してこそ初めて未来を展望できるのであって、また、そうしなければ地に足がついたものにならないことは明らかです。  私は、日本国憲法の平和と民主主義の原則は、君主主権から国民主権への転換、人権の発展とその豊富化、戦争の違法化など、二十世紀における人類の進歩の歴史の成果を先駆的、先進的に取り入れたものであると確信しております。また、今までの本調査会の議論を通じて、押しつけ憲法だから改憲をとの論も全く通用しないこともはっきりしました。しかし、歴代自民党政治のもとで、この原則を生かす国づくりが行われず、むしろ乱暴に踏みにじられてきたのがこの五十年間の歴史でありました。  二十一世紀を前にして、今我々がやるべきことは、この二十世紀の進歩の流れの先端にある日本国憲法の理念と原則を二十一世紀の羅針盤としてしっかりと据えて、政治、経済、社会に生かし、全面的に花開かせていくために努力を尽くすことだと思います。  三つ目に、広範かつ総合的な調査にふさわしく、日本国憲法の深く全面的な調査が保障される運営へと改善することを提案したいと思います。  各党一巡五分発言とか、参考人の意見をその場で初めて聞いて、短時間の質問を行うなど、これではふさわしい突っ込んだ調査とはなり得ません。専門家のお話を聞くのであれば、少なくとも、事前にその内容を各委員がよく理解をし、その上でまとまった時間をとって質疑応答をするとか、あるいは、各党各委員の意見表明も最低二十分、三十分程度のまとまった発言を保障するなど、一層の工夫が必要ではないでしょうか。  日本共産党は、現行憲法の先駆性を明らかにして、二十一世紀の国づくりの指針として全面的にこれを生かしていく、そのために今後も力を尽くしてまいりたいと思います。この立場を表明をいたしまして、私の発言といたします。 ○中山会長 次に、原陽子君。 ○原委員 社会民主党・市民連合の原陽子です。  本日、この憲法調査会で皆様方に日本国憲法に関する意見を述べさせていただく機会をちょうだいできたことに大変感謝をしております。よろしくお願いをいたします。  さて、私が生まれた一九七五年には既に日本国憲法があり、私は、この日本国憲法に守られた社会の中で、それが当然のこととして生きてきました。私にとっては、女性に参政権がないなどということは想像もできないことなのです。今こうして二十五歳の女性である私がこの場でお話しできているのも、まさに日本国憲法のおかげだと思います。そして、何より、戦争という悲劇を体験することなく今まで生きてこられたのも、これもまさに日本国憲法のおかげだと私は思います。  しかしながら、大学入学を機に、東京都の町田市や神奈川県相模原市に移り住んでから、本当に日本国憲法は私たちの生活に反映されているのかと疑問を持つようになりました。というのも、日本国憲法には明確に、日本は戦力を持たないとはっきりと書かれているにもかかわらず、私が今住んでいる神奈川県では、沖縄県やその他の県と同じように、米軍の基地が存在し、そしてその周辺の皆さんは、年に約四万回行われる飛行訓練、その戦闘機の爆音に悩まされ、そして低空飛行による墜落のおそれなど、訓練の余波による被害におびえていらっしゃいます。  また、先日、沖縄では、女性としての意識が芽生え、精神的にも最もデリケートな時期にある女子中学生がアメリカ兵からわいせつな行為を受けるという悲惨な事件が起こりました。沖縄では、このような想像を絶するような事件がこれまでにも繰り返し、かつ多く起こってきているのです。  これらの事件はもとより、それが及ぼす住民の方々への精神的な恐怖や負担はいかばかりかはかり知れません。先日、沖縄で行われた抗議集会には、女性、男性、子供、大人問わず、本当にたくさんの方々が参加していらっしゃいました。そして、だれもがこうした事件のことを自分のこととして、ともに米軍基地に対して抗議の声を上げたのです。これが現実なのです。  今、この私たちがなれ親しんできた日本国憲法を変えようという動きがあります。 第二次世界大戦後から今日までの間にも、日本の周辺で日本がいつ戦争に加担してもおかしくないような状況がなかったとは言えないと思います。それでも私たちが戦渦に巻き込まれなかったのは、まさに日本国憲法を何とか死守してきたからではないでしょうか。  私には憲法の第九条を変えるということの方が容易な道に思えてなりません。なぜなら、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重という三つの柱、中でも、世界で唯一、武力行使の永久放棄を規定した日本国憲法というものを真に実現することほど、高度な政治力、外交能力、尊敬され信頼される国民性など、高い知性と精神が求められることはないと思うからです。武力による安全保障ではなくて、理性や知性による安全保障を模索していくべきではないでしょうか。私たち日本人に根づいたこの九条が変えられるようなことが起これば、その変えられた憲法こそ、国民にとっては押しつけの憲法だと私は思います。  実際に二十一世紀を担うのは私たち世代です。私たち世代が担う二十一世紀こそ、この日本国憲法が制定された当時の皆さんが望まれたような社会、つまり、子供たちが子供らしく育ち、そして若者たちが自分らしく個性的に生き、また、女性が安心して子供を産み育てられる、そして高齢者の皆様方も安心して充実した生活を営める社会、人権や多様な価値観を互いに認め合える社会、そうした社会を実現していかなくてはなりません。そのためには、この日本国憲法が不可欠であり、今こそそれを本当に私たちの社会、生活の中で実現していくことこそが求められていると私は考えます。  以上で終わります。どうもありがとうございました。 ○中山会長 近藤基彦君。 ○近藤(基)委員 21世紀クラブの近藤基彦でございます。  私どもの会派は、でき上がりましてからまだ一月足らずでありますので、まだ十分に憲法論議を尽くしているとは言いがたい、これから一生懸命頑張っていきたいと思っております。  私自身も戦後生まれでありますので、もう既に現行憲法ができ上がった中で平和に暮らしてきたというのが事実であります。ただ、憲法制定過程において、前国会でかなり議論を尽くされて、事務局からも私ども御説明をいただきましたけれども、制定過程を問題にして、いわゆる押しつけその他で憲法を改正すべき、あるいはかたくなに改正を否定する、そういう立場で物を考えないように、そして我々自身、五十数年この憲法を使用し、守られてきた中で、現実と乖離をする部分がかなり出てきているということは事実であります。  そういった立場から、今後、この憲法調査会が、我々の次の世代あるいは将来の子供たちに対して、二十一世紀のあるべき姿、そしてその日本のあるべき姿の基本的な礎となるこの現行憲法を調査し、広く国民に憲法論議を行ってもらう。  そのために、一番最初に私自身が考えたことは、この条文が我々の世代にとって若干読みにくい条文である。まあ、厳粛でいいのかもしれませんが、もう少し平易な形の文体にできないものかということで、事務局から原文、いわゆる英文をいただきまして、私自身、英語が不得意なところでありますので、私どもの大学のグループに、この原文をできるだけ平易な言葉で訳してほしいということでお願いを申し上げ、返ってきた返事が、現在の訳が一番妥当な訳である、これ以上平易にすると解釈的にいろいろな問題が起きてくるということで、それならばこの現行憲法で勉強していかなければという思いで、ただし、一言一句も変えてはならぬとか、そういった立場にはありませんので、これからまたますます勉強させていただいてと思っております。  敗戦から恒久平和を願う気持ちでこの憲法が制定され、そして国民主権、平和主義、基本的人権、この三本の基本理念を柱として制定された。この理念はもちろん永久に続く理念として私どももとらえておりますが、二十一世紀のこの国の形を構想して、その上で憲法はいかにあるべきか、その二十一世紀の日本の姿の礎、そして骨格になるのがこの憲法でありますので、十分に調査をし、別に改憲をせよということではありませんけれども、乖離のある部分はきちんと直して、我々の次の世代にこの憲法が身近なものであるようにしていかなければいけないのだろうと思っておりますので、そういった意味では、十分に論議を尽くす。  そしてもう一つ、二十一世紀のあるべき姿の九月からの話し合いの中に、骨太のという鹿野幹事の方からのお話がありましたが、大いにそれは賛成でありますし、幹事会で公聴会の件が出ておりましたけれども、ぜひとも国民にこの憲法論議を広く起こすために公聴会を一日も早く行っていただいて、国民すべてとともに考えなければいけない問題だろうと思っておりますので、そういった意味では、公聴会の実施をできるだけ速やかに行っていただくことを我が会派としては希望をいたして、終わりといたします。よろしくお願いします。 ○中山会長 野田毅君。 ○野田(毅)委員 私は、この憲法調査会スタートのときに、冒頭、当時会派は自由党の代表として申し上げたことがございますが、ともかくできるだけ二十一世紀の早い時期に我々は新しい日本国憲法をつくるべきである、このことを保守党として立ち上げまして一貫して訴えておるものであります。  ちなみに、現行憲法、マッカーサー総司令部から三原則が提示されたのが昭和二十一年の二月ですね。そして、それをもとにしていろいろ議論をして、政府案として国会に出されたのがその年の六月の二十日でありまして、衆議院を通過したのが八月の二十四日であります。そして、貴族院で修正、成立したのが二十一年の十月の七日。したがって、国会における議論が約三カ月半、百八日間で成立をしているという、これは厳然たる事実がございます。  しかし、今いろいろ議論がある中で、それでも、憲法が戦後の日本の国づくりの中で果たしてきた役割を極めて高く評価する人たちがたくさんいるということも事実であって、要は、長く調査に時間をかけたら立派な憲法ができるかどうかということ、時間の関係と憲法の内容は別問題である、私はそう思っております。二十一世紀までもうあと半年もない、そういう状況に至って、私は、この憲法調査会が慎重な論議を重ねることは大変結構なことだとは思いますが、そのことがえてして、論議をするだけで結論が出ないという悪弊に陥ることを恐れておる一人であるということを冒頭申し上げておきたいと思います。  そこで、本調査会が九月以降、二十一世紀の日本のあるべき姿ということをテーマとして、年内五回程度調査をするということで幹事会で合意をなされておりますので、そのこと自体については結構だと思います。  ただ、大事なポイントは、日本の国内政治、内政のテーマとしての日本のあり方論というものはあっていいと思いますけれども、もう一つ大事な視点は、世界の中に日本は生きている、国際情勢というものは必ずしも今から展望できて、国際社会のあるべき姿どおりに世の中が動くとは限らない。したがって、我々日本国民、日本国としては、その中でどうやって柔軟に日本の国というものをつくっていくか、どうやって柔軟に対処していくか、そういったある種の日本の国家戦略的な発想ということがもう一つなければ、現実には我々は日本の国民の生命財産の安全に対する責任を全うすることにならぬのではないかということも指摘をしておきたいと思っております。  いろいろ今日まで果たしてきた現行憲法の役割は私も高く評価する一人でありますが、同時に、先ほど来いろいろ御指摘がありましたが、現行憲法と現実の間にかなりの乖離があちらこちらで見られるということも事実でありまして、既に幾つか指摘をされております。私学助成の問題、あるいは新しいテーマとしての、IT関連の発展による技術とプライバシー保護との問題、さまざまな視点があると思いますが、私は、何より現行憲法の乖離の一番の弊害のテーマは何かといえば、安全保障問題であります。  みずからの国を守る自衛隊というもの、みずからの国を守る軍隊を憲法上違憲だという位置づけをして訴訟をする、そんな国が世界じゅうどこにありましょうや。みずからの国の存立の根源にかかわる、言うならば、それを違憲だ合憲だということを議論すること自体が道義上の退廃につながり得る、私はそう思っております。  そういったことからも、私は、この問題に目を背けることなく、正面から論議をすべきテーマであると思っております。  そのほか、最近いろいろなテロあるいは大規模災害、さまざまな危機管理、緊急時対応、こういったことに対して、現行憲法の制約ということからなかなか十分な対応がし切れていないということも事実でありましょう。あるいは、人権の規定に関する枠組みといいますか、いわば国家権力から個人の権利をどうやって守るかということに力点が置かれている、これはこれで結構なことでありますが、一方で犯罪被害者の権利をどのように守っていくのか、あるいは未然にどうやってそれを防護していくのかという視点が結構欠けているのではないか。あるいは、家族のあり方論、そういった日本人のもともとあった伝統的な価値観というものの中に、もう一遍我々思い起こしてみて、位置づけをしてもいいものがたくさんあるのではないか。  そんなことを思いますと、私は、今回のこの調査会ができるだけ早く、二十一世紀のあり方論だけではなくて、そういう現実の日本の社会が崩壊の危機に瀕しつつあるということの不安といいますか、多少懸念を感じておるものでありますので、ぜひさらに突っ込んだ調査にできるだけ早く入ることを提案したいと思います。  以上です。     ――――――――――――― ○中山会長 これより委員各位による自由な討議に入りたいと存じます。  冒頭でも申し上げましたが、御発言を御希望される方はお手元にあるネームプレートをお立てください。 ○山崎委員 自由民主党の山崎でございます。御指名をいただきましたので、発言をさせていただきます。  総選挙が終わったばかりでございますが、総選挙におきまして憲法問題が主たるイシューにならなかったということは、大変残念に思う一人でございます。ただ、憲法調査会が始まりましたのが前々国会でございますし、その間、数カ月の調査が進められまして、いろいろ議論がございました。実り多きものであったと思いますが、制定過程の段階に議論が集中した関係もあったんじゃないかと思います。  今後、幹事会の議を経られて、先ほど中山会長から、今秋には二十一世紀のあるべき国の姿について大いに議論したいという御提案がございまして、大変結構なことだと思います。そうなりますと、新しい国の形について、必ずとお願いしたいわけでございますが、超党派的な合意が得られるということを期待いたしますが、もしそうなりました場合、当然それは国家基本法たる憲法の中に明記されることになると思います。つまり、憲法改正が必要だということだと思います。  各党の御意見を今承りまして、護憲のお立場での共産党や社民党の御発言がございましたが、私は、そもそもこの憲法調査会は新しい世紀にふさわしい国の形を定める憲法の調査を行っているわけでございますので、護憲の立場に固執されるということは憲法調査会の本旨にもとるのではないかと思います。  現に、日本国憲法は非常に古い憲法であるということが今までの調査の中で明確になりまして、たしか世界で十六番目の古い憲法である。日本国憲法より後にできましたドイツ基本法は既に四十数回の改正を行っている。各国におきまして、時代の変化あるいは時代の要請に従いまして憲法は適宜改正されてきたのでございまして、日本国憲法が今日もなお、一九四七年当時から一度も改正を見ていないということは、私は国会のむしろ怠慢とでも言うべきものではないかというふうに考えているものでございます。  そこで、公明党の赤松委員、お隣にお座りでございまして、私語してお話し申し上げてもいいのでございますが、せっかくの機会でございますので。  御発言、感銘深く承りました。その中で、安保問題を避けるべきではない、これが憲法論議の中でもやはり中心テーマであると。先ほど野田議員もおっしゃったのでございますが、そのことは非常に大切な御発言でございまして、私も大賛成でございます。憲法九条問題を避けて憲法調査を進めるということは適当でないというふうに確信をするわけでございます。  ただ、論憲十年というところ、どうしても私は納得できないところでございまして、この調査会では、高市議員が言われましたように、五年をめどに合意を得ようじゃないかという一応の目標を持ってこの論議が進められておるということを踏まえますと、この前も他の公明党委員がおっしゃったんですが、論憲十年という時間をお考えになるということは別の意味で適当でないというふうに考えますので、友党としまして、公明党さんがぜひ五年ということを念頭に置かれまして、憲法改正に前向きな姿勢で取り組まれるということを期待いたします。  最後に、次の総選挙、三、四年後になるかと思いますけれども、その総選挙におきましては、ぜひ憲法改正問題が各党の最大の争点、できれば各党が憲法改正試案をそれぞれ掲げて総選挙を戦う機会にしたいというふうに念願いたします。来年の参議院選挙におきましても、その前哨戦としての位置づけにはなると思いますけれども、やはり来るべき次期総選挙、二十一世紀最初の総選挙でございますので、そういう意気込みで、各党におきまして、この憲法調査会において熱心かつ前向きの論議が進められることを心から期待いたしたいと存じます。  以上でございます。 ○杉浦委員 会長、ありがとうございます。  幹事会におきまして九月以降の調査を二十一世紀の日本のあるべき姿について御調査をなさるということをお決めなされたことについては、全面的に賛意を表する次第でございます。  申すまでもなく、憲法は国家の基本法であります。国家を経営体とするならば、国家経営の基本マニュアルでございます。日本の二十一世紀のあるべき姿、形について調査、議論が行われ、広範な合意が形成されれば、それに沿って憲法を修正すべしとか、そういう論点も出てまいると思いますので、大いに期待しておるところでございます。  目下、来年一月から一府十二省庁、地方分権推進、司法、教育その他、改革へ向けて大きな変化の過程の中にあるわけでありますが、私が関係しております分野について二点だけ、現憲法上の問題点を指摘させていただいて、私の意見発表といたします。  一つは、司法の分野でございまして、司法改革、今内閣のもとで審議会ができまして検討しておりますが、憲法八十条で裁判官の任期が十年と法定されております。 この条項があるために、例えば、今でもそういう道は開かれておるのですが、人格、識見、経験ともに優秀な弁護士が、十年も事務所をあけることはできないということで、弁護士から裁判官になる人は極めて少ないのが現実であります。短期の裁判官あるいは非常勤の裁判官を登用できるよう、この条項はぜひとも将来、修正、検討されるべきだと考えております。  もう一つは、道州制の導入でございます。  前から議論してきたことですが、自民党の中に道州制を実現する会という議連が立ち上がりまして、現在その検討を議員内部でしております。これは、憲法九十二条とのかかわりで、都道府県を最終的に廃止して道州制を導入するについては憲法上疑義があるという学説があります。現行憲法のままでもできるという学者もおられますが、できないという学者、学説もございますので、この点について、私はできるという立場でありますが、憲法の改正が議論されるのであれば、ぜひとも検討していただきたい項目だと思っておるわけでございます。  以上、差し当たって二点だけ申し上げましたが、国政各般にわたりまして、二十一世紀のあるべき姿、形を、ことしいっぱいとお決めになったようですが、多少延びてもよろしゅうございますので、十分に調査、御審議いただいて、その姿、形のもとで憲法のあるべき問題点を検討するというふうに入っていっていただくことを期待申し上げる次第でございます。  以上でございます。ありがとうございました。 ○金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子哲夫でございます。  私は、この憲法調査会、これからの進め方も含めてでありますけれども、先ほど山崎委員の御発言もありましたけれども、この憲法調査会においては、何よりも、憲法が生まれてきた背景なり、そしてその憲法の理念、またそれが私ども国民生活にとってどれだけの影響、また政治がどういう役割を果たしてきたか、このことをしっかりと受けとめることが大事だというふうに考えております。既に有識者の皆さんの参考人招致をされて御意見をお伺いになっておると聞いておりますけれども、私は、その意味では、国民の声というものを、さまざまな階層の人たちの声を聞く場というものをこの調査会の中で行うべきだということをまず考えております。  そういう立場から少し御意見を申し上げたいと思いますけれども、御承知のように、広島はもうすぐ五十五回目の八月六日を迎えます。広島の原爆によって四五年末までに亡くなられた方は十四万人プラス・マイナスの一万人というのが言われております。残念なことですけれども、原爆による死没者の正確な数字が把握をされておりません。推計値でそのようなことが言われておるわけでありまして、残念ながら、日本の政府はこれまで広島なり長崎における正確な原爆被害というものを把握していないのが現状であります。  実は、私の住んでおります広島に中国新聞という新聞社がございますが、ここ三年間におきまして、一九四五年八月六日の午前八時十五分に、今広島の平和公園となっております爆心地一帯の住民や勤労者、そしてとりわけ国の命令によって建物疎開に動員されていた動員学徒などの皆さんが、一人一人がどういう状況で被爆したのかという調査の作業を進めております。  わずか三名のスタッフでこれが行われておりますが、遺族や級友の皆さんの協力によって、二千三百六十九名の死没者の状況が明らかになっておりますし、そのうち千八百八十二名の皆さんの遺影がその中国新聞社に寄せられたと言われております。その中で、その当時どんな生活をして、どんな子供たちが、その朝どんな様子で家を出ていったのか、そういうことがその新聞には記載をされております。私は、きょうその新聞の一部をこちらにお持ちしておりますけれども、この記者の皆さんの努力というものは大変なものがあったというふうに考えております。  六月二十九日の中国新聞の紙面の中に、これまで寄せられました千八百八十二名の皆さんの遺影が一面に掲載された写真が新聞に報道されております。それ以前に、先ほど申し上げましたように、各故人の皆さんのそれぞれの家族の、遺族の皆さんのそういう思いが私はつづられておると思います。  私は、この皆さんの努力によって初めて、あの原爆の中で本当に大切な命を失われた人たちが、一人一人の人間としてこの思いを語りかけているように感じているわけであります。そして、それは同時に、その戦争が私たち市民にとって多くの犠牲をもたらしたということも訴えているわけであります。戦争の愚かさと、大量殺りく兵器である原爆の非人間性を私たちに伝える歴史の証言者としての役割を果たしていると私は思います。  中国新聞は、この紙面の中で、「平和の世紀へ声なき伝言」というタイトルをつけております。私は、五十五年前のこの広島で起きた出来事というものをもう一度しっかりと見つめ直していくことこそ、これからこの日本国憲法が生まれた背景というものをもう一度思い起こす時代に来ているのではないかと考えております。  二十一世紀は、戦争の世紀から、核兵器も戦争もない平和な世紀にしなければならないというのが世界の共通の願いであります。私は、日本国憲法がこうした日本の国民の、あの、とりわけ、広島だけではありません、長崎、沖縄を初めとする大変悲惨な体験の中から日本国憲法が生まれたことをしっかりともう一度把握をし、この歴史的一人一人の国民の事実として受けとめる中で憲法調査会の作業が進んでいくことを、強く私ども自身も進めていかなければならないと考えております。  平和の世紀への声なき伝言にしっかりとこたえて、私は、先ほど申し上げましたように、戦争も核兵器もない二十一世紀をつくるためにこそ、今の日本国憲法やその中に盛られている前文、第九条こそが大切な役割を果たしていくのではないか、果たしていく。そういうことをむしろ世界に広げていくための、そういう日本の役割というものをこの憲法調査会の中で明らかにしていただければ幸いだということをお訴えして、私の発言を終わらさせていただきます。 ○奥野委員 憲法調査会の進め方を議論したいというお話もございました。できれば、憲法調査会の進行において、時々、取りまとめたようなものを発表する、国民とともに憲法調査を進めていくんだという努力が必要じゃないかな。今までもそういうつもりでおやりになっているんだろうとは思いますけれども、取りまとめを我々にも見せていただいて、またそれについて意見を言う機会も与えていただくというような方向でやっていったらどうかな、こう思ったわけであります。  私がそんな感じになりましたのは、今の憲法が押しつけであるとか押しつけでないとかいう議論、この議論が私はナンセンスのように思っているわけでございます。  日本がポツダム宣言を受諾して戦闘が終わった。二十年の九月二日に降伏文書に署名をした。それから連合軍が日本を占領した。日本占領軍総司令部が東京に置かれた。総司令官には、最初にマッカーサー元帥が指名された。日本は無条件降伏したんだ、天皇及び日本政府の権限はこの総司令官に従属するんだと決めつけられたわけでございます。そして、主権は総司令官が持ったわけでございますし、いろいろな制約が課されて占領行政が進んでいった中で、アメリカが書いた憲法を、おまえたちがつくったような顔をしろと。しかも、憲法と総司令部とのかかわり合いに触れてはならないという検閲項目もあったわけでございまして、触れますと処罰を受けるわけでございます。  そういういろいろな経緯から、私は、むしろ総司令部がつくったんだと言った方が率直でいいんじゃないかな、こう思っているわけでありますけれども、今それを論議しようとは思っておりません。ですから、できる限り取りまとめをやっていただいたらありがたいな、こんなことを思っているわけであります。  同時に、昭和二十一年というときと今とは、世界も日本もアメリカも大変な違いであります。日本は、恐らくその当時は衣食住にも事欠いておりましたし、日本の経済総生産は世界の一%前後だったんじゃないだろうかな、こう思います。世界からは全く注目もされない日本だったと思います。今は一五%前後つくっているわけでございましょうから、世界から評価されているとは言いませんが、大変な注目を受ける存在になっているんじゃないかな、こう思います。  そうなりますと、やはり世界に対する日本のあり方もいろいろ工夫していかなきゃならない、こう思っているわけでございまして、国際連合も当時は、世界の平和のために国連が軍事力を持つことになっておって、いまだにそれはできておりません。その間にPKOが生まれてまいってきているわけでございまして、昭和二十一年当時と現在と、いろいろな意味で大きな変化があるわけでございますので、この変化を踏まえて議論をしていかないと空回りするんじゃないかな、こう思いますだけに、私は、事務当局にそういうものをつくってもらったらいいんじゃないかな。  二十一年当時と今とどう変わっているんだということを、経済力とか軍事力とか国連の規約とか、いろいろなことがあると思いますので、参考になるようなものをひとつつくって配付してもらうというようなことを考えていただくように会長にお願いをしておきたい、こう思います。  今、日本はあらゆる改革をしなければ生き残れないというような話があるわけでございまして、あらゆる改革なら、やはり基本法の憲法に議論が進まなければおかしいじゃないか、こう思うわけでございます。二十一世紀における日本の姿を求めていくんだというお話、まことに結構なことだと思うわけでございまして、今の憲法から離れてはいけないんだというような意見もあったようでございますけれども、そんなことにとらわれないで、独立国らしい議論をしながら、独立国にふさわしい憲法をつくり上げたらいいんじゃないかな、こう思っておるわけでございます。そんな希望を申し上げておきたいと思います。 ○山口(富)委員 日本共産党の山口富男でございます。  私は、二十一世紀の日本のあるべき姿について調査を行う場合は、やはり主権在民の問題、それから恒久平和主義、基本的人権の尊重、こういう日本国憲法の大事な諸原則を踏まえて、二十一世紀の日本のあるべき姿に接近することが求められていると思うんです。ちょうど年内五回程度の調査ということになりますから、本当に二十一世紀に入るごく手前のところでこの問題を考えることになります。問題を考える際に、先々どうなるかだけでなくて、今をどうするかというアプローチが大事だと思うんです。その点で、私、二つの問題を取り上げて発言させていただきたいと思います。  第一は、二十一世紀の平和の問題です。  ことしに入ってからでも、南北朝鮮の首脳会談、それからNPTの再検討会議を初めとして、二十一世紀の世界の平和と安定への真剣な探求が相次いでいると思うんです。こうした中で、今、戦争をしないという大原則を徹底しました憲法第九条が、二十一世紀の平和を考える際の確かなよりどころとして世界から注目を浴びていると思うんです。  昨年五月に、オランダのハーグで世界百カ国以上のNGOが参加して平和市民会議が開かれました。そこで採択された公正な世界秩序のための十の基本原則は、その第一項目で、すべての国家の議会は、日本国憲法第九条が定めているように、政府の戦争参加を禁止する決議をすべきであると世界に訴えました。二十一世紀の日本の姿を憲法九条を中心とする恒久平和主義の先駆的内容を踏まえて考えれば、世界とアジアの平和に貢献する二十一世紀の日本に接近できると思うんです。  第二は、二十一世紀の国民の生活と人権にかかわる問題です。  日本国憲法は、第三章「国民の権利及び義務」で、三十条にわたって極めて詳細に基本的人権の尊重を定めております。これは、他国の基本法に比べた際の日本国憲法の際立った特徴の一つとされていて、憲法学会では、明治憲法下で国民が無権利状態に置かれた、このことへの反省に根差したものだとされております。  そして、具体的には、第二十五条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」こうしていわゆる生存権を明記して、国の責任として社会福祉、社会保障の向上、増進に努めるとしました。それから、第十四条、二十四条では、男女の同権、平等を詳細、厳格に規定しております。そして、第十三条での生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利の保障、これは今日、プライバシーの権利や環境権を憲法上根拠づけるものになってまいりました。  二十一世紀の日本社会が真剣に取り組まなければならない問題は、皆さんからお話がいろいろありましたけれども、私も、税の負担の問題や社会保障と高齢化社会の問題、男女平等、環境や情報化の問題を初めとして、実に多くの課題があると思うんです。そして、ここでも、憲法の規定に照らしてこれらの課題を考えていくことがやはり骨太の議論を進めていく上での大きな土台になるんじゃないか、こう考えております。  最後になりましたが、私、憲法調査会の新しい委員でございますので、皆さんと大いに議論を重ねながら、この調査会の目的に沿う形での実りある調査が進むように、力を尽くしてまいりたいと思います。  どうもありがとうございました。 ○島委員 民主党の島聡でございます。  この憲法調査会、制定過程の議論を進めていく中において、本当にいろいろな共通的な基盤も出てきたことを非常にうれしく思っています。共通的な基盤というのは、やはり今の憲法では時代の変化になかなか合っていないところも多いんじゃないかというようなことは、多くの方が思っていただいていると思うんです。  きょうは、今後の進め方ということでありますから、それについてお話をしたいと思っておるんですが、憲法調査会が始まりまして、一点、私は物足りないなと思っておりますのは、ここでは当然議論をされているわけでありますが、どうも国民的な議論にいまだなかなかなりにくくなっているんじゃないかというような思いがいたします。  もちろん、調査会でありますから改正を前提でないということはよくわかっておりますけれども、やはり大きな方向性のもと、一体国民がどのように今の憲法を考えて、そしてどのような形にしていくのが望ましいと思っているかということについても当然これから考えて、いろいろな意見を聞いていかなきゃいけない。もちろん、公聴会等を開いてはどうかというような御提案があることも知っておりますけれども、より深く今後は国民の意見を聞くようにする。例えば、将来、二十一世紀は半分の直接民主主義、半直接民主制というのがIT革命とともに起こると言われているわけでありますから、そういうものを使った形でのいろいろな形式を議論していただいてもいいのではなかろうかと思います。  最も申し上げたいことは、今、どうもこの憲法調査会の議論、本当に国民的に関心を呼ぶまで、もちろん至っていると判断される方もいるでしょうが、私にはまだそこまで至っていないように思えますので、それを随時考えていく必要があるのではなかろうかというふうに思います。  それから、後半部に、二十一世紀日本の新しい国の形というものを考えていくべきだろうと私ども、今私どもの鹿野議員から御提言させていただきました。  ことしの後半部というのはまさに二十世紀最後の年でありますから、そのときに二十一世紀の国の形を考えるということは大きな意義があると思いますが、それも、拡散するんじゃなくて、憲法というのは当然人権と統治機構に分かれるわけでございますので、いわゆる今後の人権というものが一体どうあるべきなのか、どう考えていくべきなのか。  今、プライバシー権とか環境権とか新しい権利について議論をすべきだという提案は幾つかの議員からございましたけれども、それにそういう人権というものが新しい時代においてどうあるべきなのかということを考えることが一点であると思います。 そしてもう一つ、当然統治機構でありますけれども、その人権と統治という二つのテーマにきちんと分けた上で、新しい国の形というものがどうあるべきかということを考えていくのが、より憲法調査会の議論としては望ましいのではないかというふうに思う次第であります。  そして、さらにもう一点申し上げますと、ここでこのような自由討議、中山会長の御発言で私どもも随分議論させていただいておりますが、どちらかというと、これだけのたくさんの議員の中で五分間発言をしてやるというと、その次の方が何か意見を言われても、それについて私はこう思うという追加質問というか追加討議という形がなかなかできにくくなってきます。できるならば、先ほど私はテーマを設けよと申し上げましたが、テーマを設けていわゆる小委員会的な方式でもっと深い議論をすることもお考えいただいた方が、より議論を深めるという意味ではいいのではないかと私は思います。  今後の進め方ということについて意見を申し上げました。  以上です。 ○中山会長 国民的な議論にまだ達していない、公聴会をやるべきであるという御指摘につきましては、幹事会等においてもいろいろと議論を進めております。その点は私どもも同じ考え方で進めてまいりたいと思います。  なお、テーマごとに議論をすることにつきましては、幹事会におきまして、テーマをどのように絞って、そして総括的に議論をするかというようなことも一度協議をしなければならない、このように考えております。  以上です。 ○柳澤委員 三点申し上げたいと思います。  一つは、これまで諸先生の議論を聞いておりましても、この国のかたちという司馬遼太郎さんのワーディングが随分普及しておるわけですが、私が少なくとも彼の本を読む限り、この国のかたちというのは、単に形式あるいは器の形のことを言っているのじゃなくて、日本人の、場合によっては土俗的ともいうべき心情がどういう制度やどういういろいろな物的な、物の形として表現されているかということをむしろ言っているというふうに思いまして、ぜひ我々は、この形という言葉を単なる器というような次元でとらえないようにしていかなければいけない、このように考えます。  これは、中曽根委員は最近、さすがだなと私非常に感心したのですが、形と心ということを言われております。この国の形と心というふうに言っていらっしゃるわけですが、これも非常に敬意を払うべき見解だと思います。少なくとも、形を形式的にとらえないことが非常に重要で、我々の論議の中でもそのことを念頭に置いてぜひ進めていくべきだと私は思っております。  それから第二番目でございますけれども、我々の国の憲法の理念あるいは憲法の条章と現実との乖離を考えていこうじゃないかというようなことで、これはこれで非常に大事なことだと私も思って、賛成でございます。  例えば、私は、議院内閣制の運用というようなものが、随分国によって違うんでしょうけれども、我が国においても、少なくとも私の議院内閣制の理解からすると、これが議院内閣制かしらというような感じがする例が非常にたくさん起こっております。 その意味でも、今言ったようなアプローチも有効だと思いますが、そういう観点からすると、同時に、諸外国の立法の例と現実との関係についても注意を払って、我々がそこに学んでいく点を見つけていくということが必要ではないかと思います。  この問題はさしずめ、先ほど中山会長が冒頭おっしゃられた、我々の国際関係を地域的な集団安全保障体制を視野に置いて考えていくことも必要だということ、この点、私全く賛成で、かつてこの委員会でもその発言をしておりますけれども、その場合でも、近隣諸国の憲法の立法例というものを我々が知らずしてそういう議論を進めていくということは、私はできないと思っております。  この点は、例えば中国と台湾の関係で、これは憲法次元ではないかもしれませんけれども、台湾が内戦条項というものを放棄しておるにかかわらず、中国側はこれを放棄していないというようなことが現実にあるわけでございまして、そういったことも頭に置いて地域的な集団安全保障体制というものを考えなくてはならない。そういうことを考えますと、このあたりのことについても、地域的集団安全保障体制をとる場合の客観状況を知るためにも、近隣の国の立法例というものをよく研究しておく必要がある。  そういうことで、現実との乖離と同時に、諸外国の立法例と諸外国の現実の姿ということについても、時間があるという前提で申し上げますが、ぜひお取り上げいただきたい、このように思います。  それから、今回は総論からアプローチするということで、私はそれは賛成でございます。やはり総論的なアプローチで各論を念頭に置いて位置づけていくということが、どうしても、論理的あるいは構造的に整合した憲法をもう一回考えるということのためには必要だと思います。同時に、総論を念頭に置いて各論自体を論ずるということも非常に必要なので、それは恐らく相互作用の議論になっていくと思いますので、これは交互にやってもいいくらいの問題だと思いますけれども、そういう双方的なアプローチということをぜひ御勘案いただきたい。  以上でございます。 ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  この憲法調査会は、九月から、二十一世紀の日本のあるべき姿について五回程度の調査を行うという大枠が設定されておりまして、きょうは、そのことをめぐりまして、今後の進め方というような位置づけになっているのかというふうにも思います。  二十一世紀の日本のあるべき姿という命題を見ましたときに、例えば、二十一世紀というのはどういう世紀として展望されるのか、あるいは展望していくべきなのかというような、そうした論点の立て方もあると思います。例えば、二十世紀は戦争の世紀、二十一世紀は人権の世紀へという、そうした命題を立てる方もおられますし、それから、グローバリズムの一層の進展という立て方もあると思いますし、またそのほかにもあるのだろうと思います。  そしてまた、そのこととの観点でとらえますと、日本のあるべき姿という、この日本のというのは、日本の、例えばこの憲法調査会で現憲法の制定過程についての議論、あるいは憲法条文の現実との乖離ということがしばしば指摘をされているわけですけれども、一国の日本の国内での歴史と現実、そしてその条文との乖離という視点ももちろんあるわけですけれども、見方を変えますと、世界の国際的な現実の中での日本の位置づけは一体どうなのか、あるいは日本の位置づけをどう求めるべきなのかというそこの視点は、二十一世紀に向けてこの国のあり方あるいはこの国に暮らす人々の生活を展望していくときに、大変重要な枠組みの設定だと私は考えます。  ですから、総論としては、まず抽象的にしか今の時点申し上げられませんけれども、世界ではさまざまな課題がどのような現実になっていて、そして国連を初め国際機構はそれをどうとらえ、各国はそれをどうとらえて、法文、憲法、どのような反映のさせ方をしているのかどうなのか、こういう枠組みをぜひ置いていただきたいというふうに思います。  例えば食糧危機の問題一つとりましても、それでは日本の食糧自給を初め、社会資本ほかの整備のあり方が問われてくるでしょうし、それから国際的に、生命操作の問題ですとかあるいは生命倫理の問題、遺伝子操作の問題を考えれば、そこから例えばその問題をどう考えるのか、人権擁護の問題をどう考えるかということもあるのかもしれませんし、地球規模で人間が移動する時代に、一国の、その国に暮らす方々の人権の保障のあり方というのはどうあるべきかということもあると思いますし、それから、これから冷戦が終結した段階で国際紛争はどのように動いていくのかというようなことも、ある意味での賢察といいましょうか洞察はし得ることでございますから、そうしたことを幅広くとらえていく中で、その世界的な動向と日本の現実、あるいは憲法、個別法の条文が乖離しているのかどうか、その検証も非常に大事だというふうに思います。  ですから、私の感じでは、五回では足りないのではないかという思いがいたしますということをつけ加えさせていただきまして、発言を終わります。ありがとうございました。 ○山花委員 民主党の山花郁夫でございます。  先ほど、野田委員の方から、現行の憲法は百八日間でできたものであるという御指摘がございましたけれども、これだけ短期間の間でできた現行の憲法が半世紀以上改正がなかったということについて、いろいろ御意見はあるかと思いますけれども、基本的には多くの国民の方が支持をしてきているものであると認識しております。  また、制定当時は非常に先駆的な内容を持っていたものではないかと認識している次第でありますけれども、その後、多くの時を経過いたしまして、現実との間に多くのギャップが出てきたということは、先国会でも参考人の方から御意見がございましたし、冒頭多くの委員の方から、これは共通の認識であるという指摘があったわけであります。  こうした現実とのギャップについてですけれども、しかしながら思いますに、それでも改正がなかったということについては、ある程度学者の方等の努力もありまして、これを解釈などで埋めていくという作業があったからだというふうに考えております。  高市委員からは、八十九条で、私学助成について疑義があるという御意見がございましたが、これについても、公の支配という言葉の解釈を広くとる、あるいは狭くとるかによって結論が異なってくるかと思いますけれども、そういった点についても解釈の技法によって解決がされたりしているわけであります。  そしてまた、プライバシーの権利であるとか知る権利も憲法上のものにして位置づけようではないかという御意見がありましたけれども、現在、学界では、知る権利もプライバシーの権利も憲法二十一条あるいは十三条の中でも憲法上のものとしての位置づけがされているわけであります。こうした中で、あえてこれを憲法上のものとして明記する必要があるのか、あるいは法律上のものとするのかということについて、法律上のものとしたときとあるいは憲法上明記したときとの具体的な違いということについてひとつ検討を願いたいと思います。  仮に、例えば知る権利であるとかプライバシーという権利を憲法上明記したとしても、その間の調整というものについては依然として憲法以下の法令にゆだねられることになるわけでありますし、その点について、どういうメリットがあるのかということについて御検討いただきたいという要望がございます。  そして、もう一点でありますけれども、柳澤委員と石毛委員の御発言に関連して、私もちょっとお願いしたいことがあるのですが、諸外国の例と比較して日本国憲法の姿を見るということが必要なのではないかと思っております。  論点は二人の委員の方とは少しずれるところがあるかもしれませんが、山崎委員の方から、諸外国では、ドイツの例を挙げられたかと思いますけれども、頻繁に憲法の改正というものがなされているのだという御指摘がございました。しかし、法改正については、我が国では諸外国と比べると、これは憲法に限らずほかの法令においても改正の少ない国であるというふうに言われているわけでありますが、回数だけを問題とするのは私はいかがなものかと思う次第でありますが、マスコミ等の論調でも、この回数の少ないことを取り上げて何か問題視するような論調もないわけではないわけであります。  そうであるとすると、よその国で改正がなされたということについては、その回数を問題とするのではなくて、その内容について、一体どういう政治的あるいは歴史的な状況の中で改正が行われたかという背景について、その原因というものを検討していただきたいと思います。  そういった意味で、比較憲法の学者の方などを参考人としてお呼びいただいて意見を聴取するということをお願い申し上げたいと思います。  以上です。 ○鳩山(邦)委員 会長に御質問してよろしいでしょうか。  先国会、この憲法調査会が始まりましたときは、ちょうど私は議員を辞職しておりましたので、つまびらかにいたしておりません。  そこで、お尋ねしたいことは、日本国憲法のかたさ、比較的かたい憲法であって、改正規定九十六条、なかなか微妙なことが書いてあるわけでございます。私も宮沢俊義先生のコンメンタールの内容等をもう既に覚えてはおりませんし読み直してもおりませんが、憲法改正の具体的な手続ということについてはさまざまな意見や解釈があるように聞いております。  この憲法調査会が、さまざまな御意見がありますが、せっかくいいものができていよいよ改正をしようというときになって、憲法改正の手続について意見が全く異なったというようなことでは大変残念な結果になりますし、憲法が時代に合うような改正をされてこなかったいきさつは、一つはイデオロギー的な対立があったという不幸な歴史に加えて、日本国憲法が比較的硬性憲法、かたい色彩の憲法であるがために改正が行われなかったという面もあろうかと思っておりまして、そういう意味で、憲法改正、具体的にやっておりませんから先例が全くありません。先例集ももちろんないわけでございまして、具体的に憲法を改正する場合の手続について調査をお進めになったことがあるのか、あるいはこの場で意見交換をされたことがあるのか、あるいは今後そのような御予定があるのか、ぜひ会長に承りたいと思います。 ○中山会長 鳩山議員のお尋ねにお答えをさせていただきます。  本調査会は、御案内のように、現在の憲法を広範かつ総合的に調査をするということを目的にしてスタートしておりまして、今日までいろいろと幹事会で協議の結果、まず第一に制定経過について勉強をしようということで、十回、十人の参考人を呼んで、各党から相当な数の方が御質問になり、意見をお述べになりました。なお、続いて最高裁判所を呼びまして、戦後の違憲判決についての報告を求めました。  私の調査会長としての立場でお答えをいたしますとすれば、いろいろな御調査をいただいた上で、この憲法の問題点が明確に、これはおかしいということがいろいろと議論の中で固まってまいった段階で、どのようにして改正をするかというような具体的な手続論が出てくるものだと思います。  そのところにはまだ至っておらないと思っておりまして、私どもは、これから先生方の御議論を通じていろいろな意見をいただき、また二十一世紀のこれからの国際的あるいは地域的あるいは国内的ないろいろな諸課題について議論をいただいた上で、現在の憲法との問題がどこに問題点として存在するかということが明らかになった時点で、その問題については改めて別途幹事会でお諮りをいたしたいと考えております。  以上でございます。 ○鳩山(邦)委員 もう一回いいですか。  それは、いきさつはよくわかりましたが、九十六条も憲法の規定の一つでございますので、ぜひとも、これが具体的にどのような手続でもって改正が進められていくかということについての検討というものは、他の中身と同時並行してお進めいただきたいと強く希望をいたしまして、終わります。 ○中山会長 鳩山議員の御希望は十分承りました。  なお、先ほど、一般国民ともう少し距離を縮めた議論が必要ではないかということでございました。  衆議院では、憲法調査会のホームページを既に開設をいたしております。今日までに衆議院ホームページ憲法調査会関係へのアクセス件数としては、二万三千百二十二件ございました。  なお、今までの御議論の要約をすべて英文化いたしまして、英文のホームページも作成をしておりまして、これは英訳する手続もかなり時間を要しましたので、その結果、ようやく七月の五日から始めました。それについては、既に十日間で百七十八件のアクセスがあったことを御報告申し上げておきたいと思います。 ○森山委員 既にいろいろお話がございましたのに一言つけ加えたいと思います。  憲法の問題を話し合う場が衆議院と参議院にそれぞれできております。衆議院では、我々が今日までやってまいりましたし、これからの方針も決まったようなことで、ある程度の方向がわかってまいりましたが、参議院でも恐らくその立場でお進めいただいていると思います。  しかし、衆議院と参議院、ともに憲法の中に決められたものでございまして、両者が、違うということはないと思いますが、行く先、やり方が食い違う、あるいは考え方が多少ずれるというようなことがありますと、両方で一生懸命やっても、なかなかそれをまとめるのは難しくなるのではないかというふうに思いますので、適当な機会に、折々、衆議院の憲法調査会と参議院の憲法調査会とで合同の議論をする場をお設けいただくのもよろしいのではないか、ぜひそのようにお願いしたいということを申し添えます。  ありがとうございました。 ○中山会長 森山委員の御意見を私どもも十分参考にさせていただきまして、適当な機会に、衆参両院の憲法調査会の幹事並びに委員の先生方との協議の機会をどのように持つべきか、これをまた諮らせていただきたいと思っております。  ほかに御意見ございませんか。 ○太田(昭)委員 憲法調査会が発足をして、具体的に話がここまで来たということは、私は大変いいことだというふうに思っておりますし、会長初め、御尽力に感謝を申し上げたいというふうに思っております。  私は、憲法を論ずるのは国家を論ずること、国の形を論ずることだと思う。そしてまた、国の形といえば憲法というものを論ずることになるだろうし、人の形というならば教育基本法の理念というものにもやはり触れざるを得ない。二十一世紀のスタートに当たって、そうした根本的な思想、哲学の次元というのは非常に大事だと思っております。  論点としては、憲法制定経過ということが一応綿密に行われましたものですから、ぜひとも、これから国の形ということについての論議というものが必要不可欠であろうというふうに思っております。  二つ論点があるとするならば、一つは、今世界は明確にグローバリズムの流れの中にある。一九〇〇年代を考えてみると、最初の五十年が覇権の争い、領土のとり合い、テリトリーゲームであったとするならば、後半は富の分配の争い、ウエルスゲームということが言えるかもしれないが、二十一世紀ということを考えると、間違いなく私はアイデンティティー競争の時代になるというふうに思っております。  そういう意味では、グローバリゼーションという中で、日本の国とは一体何であるのか、日本人とは何であるのかということの確認ということは、国ということにおいて、これから二十一世紀に発車するに当たって根本的な議論でなくてはならないというふうに思っておりまして、憲法の条文の背後にある思想、哲学、文化、歴史観、そうしたものについての研究というものが、この憲法調査会では特に必要であるというふうに思っております。ジャパン・アズ・ナンバーワンということが言われた時代がありましたけれども、やはり日本のアイデンティティー、ナショナルアイデンティティーという意味からいいますと、ジャパン・イズ・オンリー・ワンという、そのオンリー・ワンというのは一体何であるか。  同時にまた、山崎正和さん等が言っておりますけれども、そうした観点と同時に、二十世紀というのがネーションステートということが言われておりますが、ネーションはネーション、ステートはステーツ、ネーションステートというふうに言われている中に二十世紀の一つの欠陥があったという分析があります。  ネーションというのが文化とか伝統とかそうした固有のものであるとするならば、ステートというのは仕組みとか枠組みという中でのものである。このネーションとステートが同じ国家として形成されて、それが二十世紀というものの国のあり方としてきたということについて、もう一度そこで、文化とか思想とか歴史観というものと同時に、枠組みであるステートというものの分析をしながら、国家のアイデンティティーというものを考えていかなくてはならないということは、私は非常に示唆に富んだことであろうというふうに思っておりまして、私は、山崎さんの今のさまざまなところで書かれている論文というのは、かなり国家の根源というものにかかわる問題提起をされているのではないかというふうに思っております。  今度は、もう一つ、十一章、百三条にわたる条文ということについては、やはりこれは時代とともに大きく変わっているということで言われているんですが、時代の変化とともにというのを、過去を振り返っての時代の変化とともにという憲法調査会の論議だけでなくて、そこから出てくるのは、これからの国の形はどうなるのかというときに、私は四つの大きなマグマが今二十一世紀の前にあるような気がします。  一つはITのマグマ、一つはゲノムのマグマ、一つは環境というマグマ、そしてもう一つ言うならば住民参加というマグマ、四つのマグマというものが、法制度のあり方とか国家のあり方とか社会のシステムのあり方あるいは諸制度、いろいろなことのあり方ということに影響を与えてくるということで、未来に向けて、二十年後、三十年後の日本の社会というのは一体どうなるのかという観点から、現時点において、五十年間で違ってきていますよということの中から環境権とか知る権利とかプライバシー権ということを論ずるというだけでなくて、二十年後、三十年後の日本の社会というのはそうしたIT社会であったり、ゲノムというものがあったり、あるいは環境というのがもっと重要視される国家であるとか、あるいは住民参加というような、そういう二十世紀型の国家と違う国家というものの大きなマグマがあるという観点から憲法というものを検証していくことが大事なことであろうというふうに私は思っております。  以上でございます。 ○中山会長 ありがとうございました。  ほかに御発言ございませんか。――ほかに御発言がないようでございますので、これにて自由討議を終了いたしたいと思います。  本日は、二十名の方に御発言をいただき、大変有意義な御意見を開陳していただきましたことを心から御礼を申し上げます。  これからの調査会の進め方について、皆様方の御意見を反映させて、十分御期待に沿うように努力をしてまいりたいと思います。      ――――◇――――― ○中山会長 次に、閉会中におきまして、調査会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○中山会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十九分散会