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イスラエルでは学問の自由一般に対する締め付けが強くなっているようです。

今年4月にヘブライ大学で28人の教官が、良心的兵役拒否を行なっている学生に対する支援を表明しました。この声明は学内でも反発にであいましたが、政府からも「国家反逆罪」をちらつかせた脅迫を受けました。それにもかかわらず、この動きは他大学にも広がり、テル・アヴィヴ大学などからさらに225名の教官の署名が集まりました。これに対し、大学側も新聞広告などで対抗措置をとるという事態になっています。詳しくはこちら→ Neve Gordon, The Nation, May. 9, 2002, Support for Refuseniks

ハイファ大学を追放されそうになっているイラン・パペは、自分のケースは緒戦にすぎず、今後は大学内での統制がいっそう強化される恐れがあると指摘し、それを阻むための国際世論の喚起を要請しています。


イラン・パペからの公開書簡
2002年5月14日

友人たちへ


わたしは今日、自分の所属するハイファ大学から学内裁判を受けるために出頭せよとの案内状を受取りました。訴追側を代表するハイファ大学人文学部長は、カッツ事件に際してとった立場を理由にわたしを大学から追放するよう要求しています。「パペ博士の犯した犯罪を裁き、当法廷の法的権限を最大限に行使して彼を大学から追放せよ」と提訴しています。わたしの犯罪行為とされているのは、要するに、カッツ事件における大学側の行動を批判したという過去の事件です。カッツは修士課程の学生で、1948年のTantura村の虐殺事件を発見し、そのために学位を剥奪されました。大学側が今ごろになってこの措置に踏み切ることにしたのは、ここへきてイスラエルでは学問の自由を封じ込めるような行動をとる機が熟してきたためです。わたしが来年度の事業計画にナクバ[破局:1948年のアラブ系住民の追放]についての講義を予定していることや、イスラエルに対するボイコット運動を支持していることから、大学側はわたしを阻止するには追放処分しかないと判断するに至ったのです。

過去の事例からみて、これは要請というよりは、すでに決まった判決です。当該人物の大学における立場や、過去において物事が処理されたやり方を見ればそれは明らかです。「公正な裁判」の見かけをつくろう手続きも存在しないのであれば、マッカーシー流儀の茶番劇にあえてわたしが参加する必要も感じられません。

みなさんに訴えているのは、自分自身のためではありません。最終決定が下される前の今この段階で、みなさんの意見を表明して欲しいのです。どような形式でも、どの段階でもかまいません。また、わたしの追放を阻止しようとする必要もありません(現在のイスラエルの雰囲気からみれば、それが起こるのは今であり、たとえ今回それを免れたとしても後日必ず起こることです。なぜならイスラエルの学界は、政府を支持し、批判の声を封じるために協力することをほぼ全員一致で決定したのですから)。そうする気持ちのあるかたは、今回の事件をもって、現在のイスラエルの状況全般についての理解と、それに対する姿勢を定める一助にしてくださるようお願いします。この事件はまた、イスラエルの学界をボイコットするか否かという議論においても、ひとつのヒントとなるでしょう。

重ねて申し上げますが、これは決して個人的な救援をお願いするものではありません。わたしの置かれている状況は、占領地に住む同業者たちがイスラエル軍の日常的な嫌がらせや粗暴な虐待のもとで生きていることに比べれば、ずっとましなものです。わたしの事件は手始めにすぎず、多くの同業者たち、とくにパレスチナ系イスラエル人の同僚たちが次の標的とされることが懸念されます。わたしの大学の悲惨な環境について証言させてもらうならば、わたしにはこの文書を学内ウェッブサイトに配信しても何の役にも立たないことが分かっています。なぜなら、わたしの同僚はみな、従来から重大な瞬間になると、自分自身の大学での地位を危うくすることなしに、わたしを支援することはほとんどできないと(無理もない理由から)感じていたからです。

みなさんの多くには世界のメディアが開かれており、イスラエルが「中東で唯一の民主主義国家」であるという説明がすでにお寒い、詐欺のような主張になっていることを暴露するのを助けてくれることができるはずです。

イラン・パペ


カッツ事件の概要については、こちら(英文)


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