シェイダさんを救え!ニュース・アップデイト
Save Mr. Shayda! The News Update

第4号 2000年9月20日発行(不定期刊)

発行元 チームS・シェイダさん救援グループ
編 集 チームS・電子オフィス        


 イラン人同性愛者・シェイダさん救援グループからのお知らせです。現在シェイダさんの状況は、東京入管第2庁舎(十条)〜牛久市・東日本入国管理センターへ移送されております。彼の長期的な収容を一刻も早く改善するための入管宛の嘆願書および、法務省への難民認定をもとめる嘆願書をアップデイト3号に掲載してあります。ひとりでも多くの方々に嘆願書にサインしていただきたいと思っています。ニュースの配信を希望される方、または他のHPや機関紙で掲載される方は、チームS・電子オフィスまでご一報下さい。



今号の目次
(1)ニュース速報
(2)「レズビアン&ゲイパレード2000 in 東京」に参加しました
(3)シェイダさん嘆願書・「シェイダ基金」の集約状況
(4)「難民・移住者フォーラム」との対話


(1) シェイダさんニュース速報

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<速報1>
シェイダさんに激励を!仮名でも手紙が着くようになりました


 現在シェイダさんは茨城県牛久市にある「東日本入国管理センター」に収容されています。シェイダさんというのは仮名であり、別に本名がありますが、イランは革命政権だけあって駐日イラン大使館が活発に諜報活動を行っていること、日本のイラン人コミュニティの中でもホモフォビアが強いことなどの問題があり、「シェイダさん」という仮名を使っています。
 このたび、シェイダさんとチームSで、本名を書いていない「シェイダ」宛の手紙についてもシェイダさんに差し入れて欲しいと申し入れたところ、東日本入国管理センターの方も快諾してくれました。(「他にシェイダという名前の人が入ったら困る」とも言われたようですが)
 ということで、シェイダさん名義でも手紙が差し入れられることとなりましたので、彼に手紙を出したい人は激励の手紙を書いてみてはどうでしょうか。なお、手紙はカタカナにてお願いします(漢字混じりや英語は×)。東日本入国管理センターの住所は、茨城県牛久市久野町1766です。

<速報2>
東京地裁、シェイダさんの退去強制の執行停止を決定!


 7月4日、法務省はシェイダさんの難民不認定と、退去強制に対する異議申し立てに関して「理由無し」とする裁決を行い、シェイダさんに退去強制令書を交付しました。シェイダさんはこの処分について、東京地方裁判所に行政訴訟の提起と退去強制の執行停止申立を行っていましたが、9月19日、東京地裁はシェイダさんの退去強制について、第一審判決までその執行を停止する決定を行いました。
 これにより、シェイダさんは少なくとも、第一審判決の言渡しまでは、退去強制を執行される危険性はなくなり、日本に在留できることとなりました。
 今後は、法務省を相手取った行政訴訟がどうなるか、また、難民不認定に対する異議申し出に対して、法務省がどういう決定を下すかが大きな焦点となってきそうです。




(2)  「レズビアン&ゲイパレード2000 in 東京」で
Team-Sもブースを出展

〜シェイダさんの難民認定、仮放免を求める嘆願書も着々と集約される〜


 8月27日、レズビアン&ゲイパレード2000が開催されました。会場となった代々木公園B地区はパレードがはじまる前から色とりどりな着こなしで自分の存在をアピールする姿も見られ、華やかな雰囲気の中パレードが1850人の規模で開催されました。
 シェイダさん救援グループ(Team-S)もブースを出展し、現状を訴えるダイジェスト版とシェイダさんの難民認定および仮放免を求める嘆願書を作成しました。Team-Sのブースは、外から見ると机を出し、パラソルを立て、パラソルのフリルの部分にメッセージプラカードをレインボウカラーで施すという手の加えよう(!?)で、バランス感覚はともかくとしても、夏の感じさせるものがあり目立ってたと思います。チョットびっくりしたのは、開設当初からチラシを渡すまでもなく、次から次へとのぞいて行く人がいて、嘆願書にサインしていく人たちがいたことでした。これも、パレードが同性愛者の人権を守るという視点から関心を寄せる人たちが多いと感じさせるものでした。
 また、法務省が裁判所に提出した意見書の中で、退去強制処分の正当化の理由としてあげている、「(シェイダさんが参加した)札幌のパレードは社会的知名度がない」という主張をしていましたが、これを札幌のパレード関係者に伝えたところ憤慨していました。札幌の同性愛者グループとも法務省への怒りを突きつける一つのきっかけとなったと思います。
 シェイダさんの難民認定と仮放免をもとめる嘆願書は、あらゆるメッセージと共に60名近くが集約され、激励、カンパなども寄せられました。スタッフがパレードに参加している友人関係や通行する人たちに配りまくったのもありますが、当初印刷した800部がほぼなくなりました。また、シェイダさん救援グループのスタッフでない人たちも駆けつけてくれ、一日を通して、ブースの周りにスタッフが欠けるということもなく終わることが出来ました。
 パレードでは、プラカードを持ち、イラン人同性愛者シェイダさんを難民として認めろと沿道で歩いている人にも訴え切りました。とにかく、一日も早いシェイダさんの入管からの一時釈放、そして難民として認定を求める大きな意味を持つものでした。来年の札幌パレードは、シェイダさんが何としても参加できるように! と決意を新たにしました。(S)




(3) シェイダさん嘆願書・「シェイダ基金」の集約状況


 「ニュース・アップデイト」第三号でお知らせしたとおり、現在、チームSではシェイダさんの難民認定と仮放免を求める嘆願書を集めています。また、シェイダさん救援のための資金として、「シェイダ基金」を設置し、寄付を募っています。現在、集まっている嘆願書数および寄付金は以下の通りです。

(嘆願書数)現在までに125通
(寄付金)呼びかけてからの入金 45000円

 嘆願書も、現状では、まだまだ必要とする数に足りない状況です。
 シェイダさんの難民認定の異議申し出についての決定は、もしかしたら10月中にも出るかも知れません。チームSとしては、9月中に嘆願書200通を目標に収集し、10月初旬に法務省への提出を行うことを予定しています。
 ぜひとも、ご協力をお願いいたします。集約先は以下の通りです。

(郵送)175-0083 東京都板橋区徳丸2-18-32-204清水方
(ファクス)03-3550-6024(同上)
(電子メール)shayda@da3.so-net.ne.jp(チームS電子オフィス)

 また、基金については、以下の要領でご協力・ご出資をお願いいたします。

「シェイダ基金」ご協力ご出資の方法
●一口1000円(複数口でのご寄付、一口以下でのご寄付、いずれも歓迎いたします)
●以下の郵便振替口座まで、お振り込み頂ければ幸いです。
(口座名称)シェイダ基金
(口座番号)00100-2-554626
●郵便振替用紙等については、ご住所を「チームS電子オフィス」まで頂ければ、資
料等とともに郵送いたします。もちろん、郵便局等に備え付けの郵便振替用紙にご記
入の上振り込んでいただいても構いません。




(4) 「難民・移住者フォーラム」との対話


 9月15日と16日の2日間、東京四谷にある麹町イグナチオ教会(カトリック)にて、「日本カトリック司教協議会国際協力委員会」の主催で「難民・移住者フォーラム」が開催されます。東ティモールからノーベル賞受賞者のベロ司教が来日講演することもあり、難民問題について多くの人が集います。チームSとしても、この機会に難民問題に関心を寄せる多くの人に「シェイダさん問題」を共有してもらおうと、集会担当者宛に、シェイダさんについてのパンフレット、嘆願書を同封したうえ、経緯の説明とパンフ頒布の依頼についての手紙を送りました。
 そうしたところ、9月8日に主催団体の担当者より、以下のような電話が入りました。

(担当者)今回のフォーラムは教会関係の主催であって社会的問題についての統一した見解がないのでお断りします。また別の機会にどうぞ。こういう問題には個人的に理解の差がありますので。
(チームS)こういう問題とは『難民』問題に関してのということでしょうか?
(担当者)こういう問題というのは同性愛問題。それに関しての統一した見解がない状態なので。

 担当者の見解はすなわち、シェイダさんの問題を「同性愛問題」としてとらえたうえで、「同性愛問題」については統一した見解がないから、パンフの頒布を断るというものでした。
 シェイダさんは、同性愛を理由にイラン国家から迫害を受ける十分な理由があるために日本政府に保護を申請している難民であり、その問題は「難民問題」です。チームSとしては、主催者の考え方には納得できなかったため、以下のような文書を作成し、難民・移民問題に関するメーリングリストに投稿しました。

「同性愛者難民」は難民じゃない?
〜日本カトリック司教協議会国際協力委員会の奇妙な論理〜

チームS・シェイダさん救援グループ


 私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、現在、茨城県にある東日本入国管理センターに収容され、日本政府に難民認定を申請しているイラン人同性愛者、シェイダさん(仮名)を支える活動をしているグループです。
 イスラム原理主義政権下のイランでは、「同性間性行為は死刑」という刑法の下、同性愛者への処刑・殺害が行われています。シェイダさんは、祖国での迫害から逃れるため、1991年に来日。昨年の6月、あるイベントで自分がゲイであることをカミングアウトし、イランの同性愛者政策を批判しました。そして、日本のゲイ・コミュニティと積極的に交流してきましたが、本年4月、オーバーステイで逮捕され、難民認定を申請。7月4日、法務省はシェイダさんを難民不認定とし、特別在留許可も認めませんでした。シェイダさんは現在、難民不認定に対する異議申立てと、特別在留許可に関する行政訴訟、退去強制の執行停止申立てを行っています。

 このような状況のもと、私たちは、9月15日、16日の「難民・移住者国際フォーラム」の開催を知り、難民の問題に深くご関心を持ち行動なさっている方々に当件をお知らせするうえで、またとない機会と考え、シェイダさんの難民認定と仮放免を求める嘆願書を会場内に置いてもらうことを、フォーラムの主催者である「日本カトリック司教協議会国際協力委員会」にお願いいたしました。

 ところが、お願いの手紙を送らさせて頂いた翌日の9月8日13時50分頃、主催団体の方より、チームSのメンバーにあてて以下のような内容のお電話がありました。

「今回のフォーラムは、教会関係の主催であって、同性愛問題に関しての統一した見解がない状態で、個人的に理解の差があるので、(ゲイ難民である)シェイダさんについてのちらし・嘆願書等を難民移住者国際フォーラムの会場に置くのはお断りします」

 私たちは、この連絡を聞いて、失望感を禁じ得ませんでした。
 主催団体は、「同性愛問題」について統一した見解がない、と言っていますが、「難民問題」という文脈の中で、「同性愛問題」はどのような問題として位置づくのでしょうか。
 難民条約・難民議定書では、難民とは、特定の人種・宗教・国籍・社会的集団の一員であること、もしくは政治的な理由によって、迫害を受けるおそれが十分に存在するために、祖国に帰国できず、または帰国することを望まない人のことをいいます。「難民」と、それを保護しようという考え方は、「いかなる根拠があろうとも、それを理由に迫害を行うことは許されない」という前提の上に成立しています。難民問題の文脈の中では、同性愛者も、迫害を受けて保護を求める一人の人間に過ぎないのです。
 こうした難民条約の規定を前提とした上で、先の見解を見てみましょう。主催団体は、同性愛者難民の救済を求める嘆願書を置くことすら断る理由として、「フォーラム」が「教会関係の主催」であること、「同性愛問題」が存在し、それに対する「個人的な理解の差がある」ことをを挙げています。これは、「難民の擁護」を主張する団体としては、極めて奇妙な見解です。なぜなら、これは機械的に解釈すれば、主催団体の中に、同性愛を理由とする迫害から逃れようとする人を「難民」として認めたくないという意見を主張する人が存在しており、さらに、主催団体自身が、そういった考え方を容認しているということを意味するからです。
 もし、こうした考え方を容認するなら、次には、「××教の信者の迫害は構わない」「○○集団は難民として保護しなくてもよい」という主張を認めることにつながり、結果として、近代が産み落とした崇高な思想の一つである「難民の保護」は、「同性愛」というアリの一穴を起点として、とめどない堕落に陥ることでしょう。
 また、この考え方は同性愛を「罪」とする近代キリスト教の倫理観すらも逸脱しています。キリスト教は、「罪人」ならば野放図な迫害にさらされても構わないと教えているのでしょうか?そんなことはないはずです。
 国連の機関である「国連難民高等弁務官事務所」(UNHCR)は、「同性愛者」が「特定の社会的集団」の一つであるという見解を、以前から確立しています。「日本カトリック司教協議会」は、同性愛についてことさらに嫌悪的な態度をとるのではなく、UNHCRなどが示している見解、そして、どんな理由であれ、「迫害」は許されないという、難民問題の原点に立ち返るべきです。


 これを投稿した日、「難民・移住者フォーラム」の主催団体より再び連絡がありま
した。その内容は以下のようなことでした。

>今回のことについて、本当に申し訳ない対応をしてしまいました。
>カトリックとして立場というか教義の捉え方できちんとしていない
>ことはあるのですが、頂いた手紙にあるように難民を護る立場
>からは間違った対応でした。申し訳ありませんでした。
>ひとつ、M-netに出される前に事前に直接抗議を頂ければという声があった
>ことをお伝えしておきます。


 このような形で、主催団体の当初の見解は撤回され、チームSとしてシェイダさんのパンフを配布することができるようになったわけです。当日は、パンフレット、嘆願書を配布することができました。
 チームSとしては、主催団体との討論というプロセスを抜いて、批判文をただちにメーリングリストという言論の場に流したことについては、配慮が足りなかったことを認めます。また、私たちの問題提起に対して、直ちに適切な対応をとった主催団体に敬意を表します。
 これを契機として、より多くの、実りある議論と協働を作り上げていきたいと思っています。


『Team.S(シェイダさん救援グループ)』

  電話 070-6183-5165(田中) FAX 03-3330-0324
  メールアドレス cbo51340@pop12.odn.ne.jp(庄子)
  シェイダさん救援グループHP http://www.fairy.net/~power/teams.htm




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