国際会議への弾圧に抗議し
インドネシア民主化の後退を許さない連帯活動のために
(タイトルおよび小見出しはHP管理者)

無条件帰国をかちとる
--パキスタン労動党の参加者には不当な差別的措置も

 アジア連帯講座の国富建治です。6月12日の早朝にインドネシアから戻ってきました。皆さんにいろいろご心配していただき、ありがとうございます。結局「国外追放」や「強制退去」という形ではなく、無条件で帰ることができました。これは一緒に逮捕・拘留され、パスポートを没収された32人の外国人参加者の粘り強い要求、オーストラリアを始めとする駐インドネシア各国大使館員の当局との交渉、会議を主催したインドネシアの仲間の責任を持った支援によるものです。インドネシア国内でもジャカルタポスト紙6月11日の1面記事‘Questioning of foreigners criticized'、同4面の論説‘Democracy in peril'に示されるように、人権団体だけではなく、政府部内からも警察のやり方に疑問の声が上がっています。ただし拘留された32人全員が無条件でパスポートを返却されたわけではなく、パキスタンから参加したファルーク・タリクさん(パキスタン労働党書記長)は、発行されたビザの停止、3日以内の国外退去という不当な差別的弾圧を受けました。

資本と軍事のグローバリゼーションに抗して開催された国際会議
スハルトと闘ってきた活動家や青年たちを交えて

 私の参加した会議は、インドネシアの労働者と草の根民衆の組織であるINCREASE(Indonesian Center for Reform and Social Emancipation) が主催する「新自由主義とミリタリズムに反対するアジア・太平洋民衆連帯会議」で、6月7日からジャカルタ郊外のサワンガン・ゴルフ・イン内の会場で開かれました。この会議は、名前からもわかるように現在の資本のグローバリゼーションと新自由主義、ならびにそれと結びついた軍事化現象の拡大に抵抗するアジア・太平洋地域の民衆運動の経験を交流し、国際的な連帯を強化する目的で行われたものです。私は4月初めにこの会議に参加を申し込み、主催者側の参加快諾と会議での報告の依頼を受けて6月6日の夜にジャカルタに到着しました。
 会議には、日本(私)、フィリピン、タイ、インド、パキスタン、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、ドイツ、オランダ、ベルギーからの海外参加者をふくめて100人以上が参加しました。インドネシアからは、PRD(民主人民党)のブジマン・スジャトミコ議長、FNPBI(インドネシアの左派労働組合)のディタ・サリさんら、スハルト体制の下で長期投獄の弾圧を受けていた著名な活動家をふくめて、多くの若い活動家たちが熱心に参加していました。
 1日目(7日)と2日目(8日)の討議は、資本主義の危機が労働者民衆にもたらす影響についての概括的な報告、そして「途上国」と「先進国」におけるグローバリゼーションの影響などについての全体討論と分科会が行われました。

「事件」--ライフルで武装した警官隊の突入に整然と抗議
40人の参加者がジャカルタ地区警察本部に連行される

 「事件」が起こったのは、8日の午後からのセッションで、まさに討論が佳境に入ろうとしていたところでした。激しいスコールの中で2時から始まった全体セッションでは、まず私が、日本経済の危機と新自由主義政策がもたらすその影響について、アメリカの仲間がアメリカ経済と労働者の反撃についてそれぞれ30分ほど報告し、タイの仲間が私の報告に短いコメントを行いました。だからちょうど3時を少しまわった頃でしょうか、まったく突然に数十人の警察部隊がライフル銃を携えて会場内に乱入し、参加者を包囲して机を押しのけ、海外参加者にパスポートの提示を求めました。私たちはそれを拒否し、警察に乱入の理由を明示するよう要求するとともに、整然とした抗議行動を歌やシュプレヒコールを交えて行いました。主催者側と警察部隊の隊長との交渉も続けられました。しかし結局午後4時すぎ、警察は、海外参加者32人(両親に連れられた4歳の少女をふくむ――ついでに述べればこれは海外参加者の全員ではない)とインドネシア側の8人(スジャトミコPRD議長もふくむ)を強制的に警察のトラックなどに乗せ、サイレンの音もけたたましく全速力でジャカルタ地区警察本部に連行し、会議室のような所に拘禁しました(インドネシア側の8人はその夜のうちに解放)。

二転三転する連行理由---会議破壊とPRD弾圧が本当の目的だ!

 すでに報じられているように、警察の説明では私たちの逮捕・拘留の理由は、インドネシアの出入国管理法ではショート・ビジティングのツーリストビザ(60日以内)で会議等に参加することは違法というものです。しかし、今までツーリストビザで入国した外国人が直接に反政府活動にかかわるものではない会議やセミナーに参加したという名目で逮捕されたことがあったのでしょうか。少なくともINCREASEの人びとはそうしたことは聞いたことはない、と言っていましたし、弁護士の話でもショート・ビジティングのビザでセミナーに参加することはなんら違法ではない、と語っています。ジャカルタポスト紙6月11日1面の記事では、入管当局の責任者自身が6月8日に警察が会議を急襲した時、ビザに問題があるという報告はなんら受けていないと語っています。
 こんなことでは、海外のNGOや研究者などがインドネシアでセミナーに参加するといったことはおよそ不可能になるでしょう。
 警察の言っていることは二転三転しています。ジャカルタ警察のスポークスマンは、警察による私たちの会議急襲は、8月から始まるワヒド大統領の弾劾問題を討議するMPR(国民協議会)の特別セッションに合わせてPRDがジャカルタで騒乱を引き起こそうとしているという疑いがあったためだとしています。つまり警察の行動は、明確に私たちの会議そのものを潰し、会議の組織化の中心を担っていたPRDに打撃を与えようという目的で行われたものであり、ビザ云々は口実に過ぎないということです。

警察と連携した右翼武装集団の襲撃を許さない!
「新秩序派」のクーデター的策動を許すな!

 現に私たち海外参加者が警察に連行され、警察が引き上げた隙をぬって、右翼の暴徒(thug)約五十人が刃物を持って、残っていた主催者のインドネシアの仲間に襲いかかり数人が重傷を負いました。会議場もメチャメチャに破壊され、4日間の日程で計画されていた会議は中断せざるをえませんでした。みごとなまでの警察と右翼暴徒の計画的連携プレーです。スハルト時代の「新秩序」勢力による暴力的挑発行為です。
 われわれ海外参加者はパスポートを没収され、入管当局による尋問を受けた後、逮捕されてから約24時間たった6月9日午後6時頃に身柄を解放されました。そして日曜日をはさんで2日後の6月11日に、ジャカルタ市警察本部ならびに入管局に出頭した上で、前述したファルーク・タリク氏を除く全員が無条件でパスポートを返却されて、それぞれが自発的に帰国の途についたわけです。警察が言っていた「国外追放」でもなく「一定期間の入国禁止」といった条件もついていません。これは、「ビザの不正使用」といった口実が通らなかったことを意味しており、成果ではありますが、もちろん問題はそれで終わりません。何よりもINCREASEの主催する会議そのものが弾圧によって中断のやむなきに終わったのであり、インドネシアに真の民主主義と民衆の人権を確立しようとする人びとへの弾圧が強まっているのです。8月に向けて「新秩序」派の民主主義に対する攻撃が策謀されています。緊張が高まっています。

インドネシア民主化との交流と連帯を継続するために

 私がインドネシアを訪れたのは今回が始めてであり、インドネシアの人びとに心を寄せ、ねばり強い連帯の活動を進めてきた方に比べれば、経験も知識ももちろんきわめて乏しいことは言うまでもありません。しかし、今回の短い体験を通して、会議を主催したインドネシアの皆さんの闘いに少しでもふれ、弾圧の実相をささやかながら感じることができたことは貴重なことでした。私自身忙しい身ではありますが、これからもできるかぎり交流と連帯と討論を続けていきたいと思います。
 そこで、そのための一歩として、緊急に今回の事態に対する記者会見や、インドネシア大使館に対するなんらかの行動を皆さんとともにできないかと思っています。民主主義や人権のために闘っているインドネシアの民衆への支援の一つの形態としてです。ぜひ相談に乗ってください。ご連絡をお待ちしています。

国富 建治
2000年6月12日

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