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暫定滑走路の実態

成田暫定滑走路運用の実態

大原 隆
 四月一八日に供用が開始されようとしている成田・暫定滑走路は、具体的にどのように運用されるのか、空港公団は三月後半にいたっても正確には公表していない。これ自体は絶対に許してはならないことであり、供用開始によって生活に重大な影響を受ける東峰、横堀住民に詳しく説明することを要求しなければならない。
 しかし暫定滑走路からの航空機運行を生業とする航空各社は各自にスケジュールを発表し始めた。集客して金を稼がねば大赤字になるのだから当たり前の話だが。
 そこで我々は、これらのデータをまず整理し、政府公団が明らかにしたがらない暫定滑走路の破綻空港ぶりを検討しよう。最初に、具体的な数値データをあげる(次ページ参照)。いまだに運行の具体的な予定を公表していない航空会社もあるので、この数値は最終的なものでなく、もっと増えるものと考えられる。

 傾向@ 日本の航空会社の使用頻度が多い
 この集計を行った時点(四月二〇日)で毎日運行便が三七便、週単位の運行便が合計二五八便となっている。両者を合計して計算すると一日平均約七四機の航空機が暫定滑走路に離発着することになる。この滑走路の極端な短さに規定されて離着陸する航空機は東北、東南アジア区間を飛ぶ。その関係で離着陸は朝八時代から夜八時代までの一二時間に集中する傾向が見られ、この時間帯に今わかっているだけで七四回、一時間に六回近く爆弾同様の轟音が降るのである。
 次に、この暫定滑走路使用の当初の状況を見ると、いくつかの傾向が見えてくる。第一は、日航、全日空、JAS、JAA、ANKからなる日本の航空会社による使用が一日あたり四二回と顕著に多いことがわかる。今わかっている限りだが全体の六〇パーセントを占める。

 傾向A ワールドカップ需要増加の嘘を暴露
 逆から言うと、国外航空会社の乗り入れが少ないということだ。暫定滑走路が短いために東アジア地域以外には直行できないことから北米、欧州航路が少ないのは当然だ。しかし、暫定滑走路供用のうたい文句であったサッカーワールドカップの関係で言うと、日韓間便がNWとUNITEDの各一便/日、それにアシアナの四便/日だけであることは、ワールドカップ需要という公団の打ち出しの手の内―薄っぺらさの程度が明らかになっているということだ。
 アシアナ航空は羽田からソウル便三便、釜山便一便(各毎日)を運行している。羽田の沖合い滑走路が今夏始動すれば大韓航空同様、羽田増便に向かい暫定滑走路発着路線をやめる可能性は高い。欧米各社が成田増便の意思を示さないことも、羽田枠を狙ってとも考えられる。

 傾向B 旧「大東亜共栄圏」をカバー
 これも滑走路の短さから自明だが、暫定滑走路に離着陸する便の区間はかつての大東亜共栄圏地域にほぼ限定されている。日本本土からの航空作戦可能地域全般を暫定滑走路発着機はカバーするということで、周辺事態法、および現在準備されている「有事法」の趣旨に沿った出兵用滑走路として使用される危険はきわめて大である。

 傾向C 新規開設便の多くは旧社会主義国に割り振られた
 暫定滑走路に新規参入する目玉ラインは、ベトナム航空ホーチミン(旧サイゴン)便、ハノイ便、モンゴル航空ウランバートル便、中国各社の北京その他便だ。一概には言えないが、ベトナム、モンゴルは日本観光客の海外旅行先としては、それほどポピュラーでなく、その理由はふたつ、ひとつは便数が少なく不便であり旅行費用が高かったこと、もうひとつは旧社会主義国であることだ。資本主義世界の論理からすれば「遅れてきた」これら諸国に金満日本が東京圏乗り入れを許可したということ。

 傾向D 東アジア便を無理やり割り振る
 確定的ではないが従来のA滑走路離発着便のうち東アジア便を全部暫定滑走路に移しているきらいがある。空港需要増大にともなう拡充、という公団の言い方に従うなら、空いたA滑走路には北米便、欧州便などが増便されるはずだが、その兆候はない。昨年九・一一ショックは抜きがたく、北米便、欧州便需要が近々に増えるとは考えにくい。とすると、この措置はひとえに東峰(横堀)住民を爆音で立ち退かせるためだけの措置ということになる。

 傾向E 台湾便の新規、および増便
 これまで羽田を使っていた中華航空(台湾)台北便五便が移ることをはじめ、他社の台北、高雄便が暫定滑走路を使用することになった。中華人民共和国の各社も暫定滑走路を使うことになっていて、北京、台北両政府系が暫定滑走路でかちあう。これは一九七二年「日中国交正常化」以来のことだ(成田開港以来、中国はひとつ原則に基づき、成田使用は北京政府にのみ認められてきた)。この意味することは不明だが、中国、台湾両政府が歩み寄った結果、と解釈することは早計だ。ブッシュ「悪の枢軸論」のごとく米国は中国敵視、親台湾色を強めており、暫定滑走路への双方謔闢れcw、ブッシュ路線に従う両政権離反策の一環である可能性がある。
 現段階の結論的見解―アジアへの旅行者を東峰・横堀住民追い出しに動員することは許せない!
 私は成田空港存在そのものに反対だが、日本民衆がアジアに出かけること自体に反対ではない。買い物とか物見遊山がほとんどだろうが、日本の庶民がアジアの人々の暮らしぶりを我が目で見、実感し、ついでにお金をアジアで使ってくることは、お互いに悪いことではないと考えている。
 しかし、目下のところアジア便のほとんどが暫定滑走路発着に割り振られようとしており、アジアに出かける観光客が東峰、横堀住民の頭上を飛んでいくとなれば性格が変わる。戦術的期待は大きくないが、日本の民衆に暫定滑走路発着アジア便ボイコットを呼びかける方法を考える必要があると思う。

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東峰騒音測定報告 

鈴村多賀志
 2002年4月2日、17日、18日に三里塚物産の平野靖識さんのご協力をいただき、東峰にて飛行機の騒音調査を実施しました。
 測定場所は三里塚物産らっきょう工場の東側の空き地。暫定滑走路中心線からは約100m西側にあたります。また、らっきょう工場の一階作業場内においても測定を行いました。いずれも騒音計の高さは地表や床から1.5mとしました。騒音計の動特性はA特性・SLOWとしました。
 各日の測定状況は以下のようになりました。

2日  晴れ:テスト飛行で南から進入し滑走路上空150mまで降下する二便について、屋外および屋内で測定。
17日 南風強風:離陸の二便(成田の商工会議所のチャーター便)と、暫定滑走路に向かって出荷場脇を自走する一便について、屋外でのみ測定。
18日 曇り:屋外では朝七時から夕17時までの離陸5便、着陸8便、自走3便を測定。着陸時には滑走路に着地した後、逆噴射の騒音が発生(東峰上空を通過してから約二五秒後)。屋内では13時から15時までの離陸3便について測定。
 二日のテスト飛行を着陸とみなして三日間の測定結果をまとめました。
 屋外の測定では、離陸時は最大値95dB(A)、最小値78dB(A)、平均値92dB(A)となり、着陸時は最大値93dB(A)、最小値82dB(A)で平均値89dB(A)となりました。逆噴射の騒音は最大値70dB(A)、最小値63dB(A)、平均値68dB(A)、出荷場脇を自走するときでは最大値72dB(A)、最小値66dB(A)、平均値70dB(A)となりました。
 一方らっきょう工場内では、離陸時の最大値80dB(A)、最小値76dB(A)、平均値79dB(A) また着陸時の最大値79dB(A)、最小値70dB(A)、平均値77dB(A)となりました。
 なおここで言う平均値とはdB計算ですので一般の算術平均とは異なります。
 発生する騒音は機種により異なるうえ、まだデータの数もまだ少ないのですが、概ね上空を通過する時の騒音は90dB(A)前後となり、離陸時の方が大きな騒音を発生させると言うことができます。自走音や逆噴射の騒音は60後半から70dB(A)程度となっています。
 らっきょう工場内は屋外に比べて10dB(A)程度下がっています。
 人が会話をするときの大きさが60dB(A)程度ですので、70dB(A)をこえると人はうるさく感じます。電話のベルが70dB(A)程度といわれています。
 暫定滑走路はジャンボ機が離発着できず、A滑走路と比べると、思っていたより音が小さいという声も聞きました。しかし通常の町中で90dB(A)もの大きな音がするのは、コンクリート建造物をブレーカで破壊するときなどで、会話や考え事などは中断せざるを得ません。東峰の現状は騒音のピーク時間が数秒で頻度もまだ多くないため、ようやく何とかなっている状態だと思います。より条件の悪い場所を引き合いに出して議論するのは間違いです。飛行機が上空を飛ばないときには騒音は50dB(A)以下に下がります。

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