オスプレイ配備と普天間移設の真相     

                               「世界」2000年2月号  ホットアングル

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SACO合意の段階ですでに計画されていた、新鋭機「オスプレイ」の沖縄への配備。普天間移設の本当の目的は、そのための基地機能強化にほかならない

 

 一九九五年九月、米兵の暴行事件による少女の痛みを共有した沖縄県民は、基地「整理・縮小」の声を大きくした。それを受けて日米両政府は「沖縄に関する特別行動委員会」(通称SACO)を立ち上げて、翌九六年十二月にSACOは最終報告を出した。

 沖縄の基地面積を減らすためと説明されている「SACO合意」の真意は、米軍基地の近代化であり強化だということを、米軍の文書で明らかにする作業を私たちのグループで行ってきた。

 その過程では、米軍が那覇軍港の浦添移転を三三年も前から計画していた文書を突き止め、マスコミに公開した。ここでは普天間基地を名護市辺野古にある「キャンプシュワブ沖」に移す米軍の意図を明らかにしていこう。

 海兵隊「キャンプシュワブ一九八七年マスタープラン」には、「辺野古弾薬庫から海上の船にヘリで弾薬を吊して運びたいが、米軍内部の安全基準で空輸を禁じられている。弾薬空輸を可能にすることが海兵隊の長期的な課題」と記されている。

 とすると米軍としては、念願の弾薬空輸も実現できる新たなヘリ基地建設候補地として「キャンプシュワブ沖」を求めるのが必然だ。そういう事情を隠して、日本政府は複数の候補地を浮上させて県民を引きまわしてきたのだ。

 「オスプレイ」は、従来のヘリコプターより三倍も荷物を積め、二倍の速度で飛び、沖縄から朝鮮半島までも行ける新鋭機だ。

 その量産を一九九四年一二月に国防総省は承認している。したがって、県民からの基地「整理・縮小」要求が強くなった九五年秋には、すでに海兵隊はオスプレイの配備計画に着手できるようになっていた。

 SACOの立ち上げが九五年一一月。そして「SACO合意」の最終報告は九六年十二月。一連の経過から、オスプレイ配備にともなう基地再編計画をSACO合意に盛り込んだことは疑いようがなく、普天間飛行場移設もその計画の一部なのだ。

 九七年度から始まるオスプレイの配備計画表(http://mv22.sra.com/)には、普天間にいる第三六海兵航空群を再編成して二〇〇六年に三機、翌年二四機のオスプレイを配備すると記されている。

 にもかかわらず、日本政府と沖縄県は九九年十二月議会でも、オスプレイの沖縄配備は聞いていない、と隠し続けている。

 オスプレイは、垂直に離着陸できるし、一五二メートルという短い滑走でも離陸できる新型機だ。短距離滑走の方が三・五トンも積み荷が増えるので、海兵隊は、その訓練場も欲しいはずだ。それは直径八五メートルほどの従来のヘリパッドではなく、「オスプレイパッド」とよぶべき長さ二〇〇メートルくらいの滑走路である。

 SACO合意にもとづいて新設するヘリパッド七カ所の配置計画図を私たちは手に入れた。二個ずつ眼鏡形に並んでいるのが目につく。この眼鏡の鼻のところをつなげると、端から端まで二〇〇メートル以上になるではないか。

 二つ並びのヘリパッドに見せかけて、実は「オスプレイパッド」を作る。それが真の目的であるのに県民の目をそらすために、すでに不用になっている訓練場の一部を返し、「返還にともなう代替ヘリパッド」だ、と県民をあざむいているのだ。

 オスプレイパッドのひとつは宇嘉川の中流域に配備されている。その河口部は、SACO合意で、米軍が新たに訓練場に組み入れた地域だ。断崖が続いているこの地域で、海に開けた唯一の場所である。海兵隊員が水陸両用戦車で上陸して川をさかのぼり、オスプレイで退避する、などという訓練もできるようになる。

 移設先として辺野古沖しか米軍は望んでいないことや、オスプレイの配備を隠してきた日本政府の情報操作から、次の推理が成り立つだろう。辺野古からの弾薬空輸を実現し、オスプレイ配備のための長期計画に、SACOを立ち上げる前から海兵隊は取りかかっていた。辺野古海上に新ヘリ基地を建設する。」それが海兵隊にとってふたつの課題を同時に満たすベストな案である。しかし、新たな基地建設を打ち出すと沖縄県民の反対にあうことは目に見えている。このオスプレイ配備用基地建設をうまくすすめる方策はないか。米政府は、基地「整理・縮小」を求めている沖縄県民のエネルギーを利用することに目をつけた。

 手はじめに日米両政府の意を受けた人物を通して、「普天間撤去」の可能性を沖縄側にささやき、九六年一月末、沖縄県に普天間返還を第一期とする「基地返還アクションプログラム」を発表させた。翌二月、橋本元総理とクリントン大統領は、そのプログラムを根拠にして「普天間返還は県民の要求だ」、とすり替えて今日に至っている。

 昨年九月、私たちは「SACO合意の背景を明らかにすること」などを求めた公開質問状を小渕総理に出したが、まだ回答はない。これが「推理の正しさ」を示してはいないか。正しい情報を持たないまま、世論を二分するのは愚かなことだ。稲嶺沖縄県知事の大事な仕事は、情報の開示を政府に求めることではないか。私たち県民とともに。

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