ヨーロッパ旅行（報告編）

＜　フランクフルト　ユダヤ博物館　＞

名残惜しくライプチヒをあとにして、一路フランクフルトへ。
今晩は2年ぶりの英国スコットランドへ移動の予定だった。
あまり時間もなかったが、どうしてもドイツに来たからには・・と
複数ある「ユダヤ博物館」のうちの１つを訪ねる。
ここは旧ロートシルト（英語読みだと「ロスチャイルド」）家の建物で
内部ではドイツにおけるユダヤ人の歩みと
その差別と迫害の歴史を学ぶことが出来る。

それまで旅でご一緒していた牧子さんが移動中の車中から
少し体調がすぐれない・・ということで、
フランクフルト駅で別れてしばし別行動にした。
一人で河沿いを歩きながらユダヤ博物館を見つける。
フランクフルト駅からも徒歩15分以内で着く。

かつての栄華をとどめる廊下や階段。
ロスチャイルド家は
マイアー・ロスチャイルド（1743-1812）をはじめとして、
国際金融資本を築いた一族として知られますが
それ故に「反ユダヤ感情」さえ招いたという説もあります。

モーゼス・メンデルスゾーン（1729-86）。
音楽家メンデルスゾーンの祖父で、哲学者でした。

『公共の幸福をみだすことがなく、法治政府に対し従順であり、
他の市民に向かって正しくふるまう人間にはだれであろうと、
自分の考えを口に出し、自分のあるいは父祖の流儀で神に祈り、
自分がそれを見いだせると考える場所に永遠の救いを
求めることが許されるべきである。』
Ｍ．メンデルスゾーン

「世界を動かしたユダヤ人100人」
マイケル・シャピロ（著）・大谷堅志郎（訳）
2001年講談社より引用

（前　略）
改革者としてのメンデルスゾーンの関心は、
ドイツの社会にだけ向いていたのではない。
メンデルスゾーンは、ふたりの重要なユダヤ思想家のほぼ同時代人である。
敬虔と集団礼拝を重んずるハシディズムを創始したバール・シェム・トフ（1700-60）、
ハシディズムに反対したヴィルナ（現リトアニア共和国のビリニュス）の
ガオン（1720-97）である。が、メンデルスゾーンのほうは、
自分の哲学を通じてユダヤ人社会を物理的にも精神的にも
ゲットー（隔離居住区）から解放し、外の近代的で世俗的な世界に
つれだそうとした人間なのである。
18世紀の前半、ドイツやイタリアのユダヤ人社会にも
「ハスカラ（ユダヤ啓蒙運動）」と呼ばれる、
啓蒙主義の動きが高まっていく。メンデルスゾーンは
その中心的な唱導者だった。
「ハスカラ」は、ユダヤ教の教えしか知らないユダヤ人に、
ヨーロッパ文化にも興味をもたせ、ヨーロッパ人としての教養を
身につけさせることによって、ユダヤ人差別も解消していこうとした。
この志向は、当時のユダヤ人のあいだにドイツ文化に対する
愛着が生まれていたことの表れである。
「まずドイツ人、つぎにユダヤ人であれ」というのが、
ユダヤ啓蒙主義者たちのモットーだった。彼らは、
ユダヤ人に課してきた移動や衣服に関する中世的な制限をやわらげたことで、
ドイツ人のユダヤ憎悪もやわらいだのだと誤認したのである。
この致命的な幻想は、芸術と幻想が誇らかに栄えたその後の150年間
つづき、第3帝国の業火のなかで完全に消滅することになる。
メンデルスゾーンが最大の目標としたのは、
世俗生活と宗教思想との融和にほかならない。

（中　略）

アメリカ独立戦争の勃発は1775年であるが、イギリスに対する植民地の反抗は
60年代からはじまっている。こうした革命的な時代に生きたメンデルスゾーンは、
ユダヤ人の公民権獲得に強い関心を寄せていた。
生まれ故郷デッサウを再訪したとき、
メンデルスゾーンは屈辱的な経験をしたことがある。市に入ろうとして、
家畜とユダヤ人に課される「頭数税」を要求されたのである。
この事件に出くわしたメンデルスゾーンは、
アメリカが範を示した政教分離の卓越性を確信したのだった。

「世界を動かしたユダヤ人100人」
マイケル・シャピロ（著）・大谷堅志郎（訳）
2001年講談社より引用

こちらもモーゼスの展示だったと思います。

メンデルスゾーン家について記された書物。
左のイラストは、フェリックス（作曲家メンデルスゾーン）。

作曲家メンデルスゾーンと文豪ゲーテの図。
ゲーテの晩年、二人は親交がありました。
また祖父モーゼス･メンデルスゾーンから
ゲーテも影響を受けています。
「ドイツ語の解放、普遍的な理性主義哲学の定着は
メンデルスゾーンに負うところが大きい」と認めているそうです。