弘前学院大学　キリスト教音楽　講義レジュメ

弘前学院大学講義レジュメ
キリスト教音楽（Ｂ）

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次回以降の準備やメモ、
キリスト教芸術のＢＢＳです

＜　第１回講義　＞

テキスト：「よくわかるキリスト教音楽の歴史」
　今橋朗・川端純四郎・長谷川朝雄編（キリスト新聞社）

●プロローグ　（３Ｐ）
○１８５３（嘉永６）年　ペリー来航
　船上での礼拝　賛美歌を歌う（日本で最初にプロテスタント賛美歌が歌われた日）
　　→西洋音楽の近代日本への伝来の始まり

▽参照：讃美歌２１「まえがき」より
　日本の賛美歌の歴史～４５０年前にローマ･カトリック教会の宣教師によって福音がもたらされた時、日本で初めての賛美歌が歌われる。
　続く禁教と迫害の時代を経て、19世紀末にプロテスタント教会の宣教が始まる。

○その後の日本のキリスト教音楽への影響
　プロテスタント賛美歌への偏り
　（日本のキリスト教伝道が、プロテスタントによって再開されたため）
　カトリック音楽の根幹であるグレゴリオ聖歌に対する理解がおろそかになる
　ようやく最近になって、一種のグレゴリオ聖歌ブーム　→「癒しの音楽」

　カトリック聖歌を聴こう　

　
讃美歌21にも収録　７２番「まごころもて」　Adoro　devote　フランス教会旋律

（ピアノで演奏）
　十字架上で人の罪を贖われる主イエスを歌ったもの。
　本来は聖餐への瞑想の歌としてラテン語で書かれた。

ＣＤ演奏「グレゴリオ聖歌集」　“われは御身を敬虔にあがめ”　（４ｍ16）
　聖モーリス修道院＋聖モール修道院　ベネディクト派修道士聖歌隊
　グレゴリオ聖歌は、中世以来歌い継がれてきたローマ･カトリック教会の典礼聖歌であるが、現在私たちが接しているものは、19世紀に始まったフランスのソレム修道院によるグレゴリオ聖歌復興運動の影響を受けている。　※ソレム唱法

ＣＤ演奏　フランスのソレム修道院のオルガン

ＣＤ演奏「サルヴェ・レジナ　～オルガン・オーボエ･フルートによるグレゴリアン～」
　“Ａｄｏｒｏ　Ｔｅ”　（３ｍ24）

ＣＤ演奏「グレゴリアンの調べ　～パンフルート即興曲」
＊パンフルートについて（別紙参照）　（参考資料：「楽器」）
　　口で吹く小さなパイプオルガン　「シュリンクス（シリンクス）」
＊パンフルートとギリシア神話

ＣＤ演奏「ドビュッシー（1862～1918）：シリンクス」　（２ｍ27）
　フルート独奏のための小品
　ガブリエル・ムレの戯曲＜プシュケ＞　付随音楽　1912年作曲

●テキスト　「グレゴリオ聖歌」　（Ｐ２５）
　キリスト教音楽の起源はグレゴリオ聖歌　９世紀頃にアルプスの北で成立？
　それ以前の教会の音楽については、詳細は分かっていない（記録や楽譜がないため）
東方の音楽：こぶしをきかせて、半音以下の音程を自由に歌う。（日本の民謡など）
　　　　　　無限に豊かな旋律が生まれる。　
　　アナログ音楽　→　楽譜に記録が困難。口伝えによる伝承
西方の音楽：半音を最小単位とし、それ以下の小さな音程を使わない。
　　　　　　音楽が合理化され、楽譜に記録することが可能。
　　デジタル音楽　→　誰でも学ぶことが可能。公開性と合理性
モーツァルトの言葉「グレゴリオ聖歌の1節となら、私の全作品ととりかえてもよい」

○カトリックとプロテスタントの違い
　→別紙「カトリックＶＳプロテスタント」を参照
　（参考資料：「マリアのウィンク」）

○修道院について　　テキスト　Ｐ２６
エジプトで生まれる　→　西方に伝えられて、合理化
　東方の修道院：個人の隠遁と厳しい禁欲と神秘主義が特徴　
　西方の修道院：集団生活を基本とし、極端な禁欲や神秘主義を排除　
　　　　　　　　祈りと労働を組み合わせた合理的な信仰訓練が特徴
　　聖ベネディクト（480？～550？）によって、モンテ・カシーノの丘に創設された
　　ベネディクト会が西方修道制の手本となる。

ビデオ鑑賞　「尼僧物語」　主演：オードリーヘップバーン
　　　　　　　　　　

　ベルギーの修道院に、ヘップバーン扮するガブリエルが尼僧として入ることを決意。
　珍しい修道院の生活を、映画を通して垣間見る。
○関連サイト　→　

＜　第２回講義　＞

テキスト：「よくわかるキリスト教音楽の歴史」
　今橋朗・川端純四郎・長谷川朝雄編（キリスト新聞社）

　カトリック聖歌を聴こう　

　（前回からの続き）
○讃美歌21に収録　339番「来たれ聖霊よ」
　Komm,　Gott　schopfer（Veni　Creator）　

ピアノ演奏：「来たれ聖霊よ」　短い変奏曲
　　Ｐ．プラニアフスキー（1９４７～）作曲　　ウィーンのシュテファン聖堂オルガニスト

　グレゴリオ聖歌VENI　CREATORは、10世紀頃から歌い始められる。この力強い旋律を借用し、ドイツ語歌詞に合わせてルターが創作した旋律がKomm,　Gott　schopfer。この歌は日本最初の典礼書の中に収められている。1582年に伊藤マンショら4人の天正使節団がローマ教皇に会うために、日本を出発。1590年に帰国するが、その際に数々の楽器や西洋土産を持参。中でも重要なのが活版印刷機で、翌年には和漢字の字母を使ってキリスト教の教義を書いた「どちりなきりしたん」が印刷される。1605年に長崎のコレジョ（神学校）で出版された典礼書「サカラメンタ提要」には、日本最初の印刷楽譜が含まれている。19曲のグレゴリオ聖歌が収録中、このVENI　CREATORも収録。
　（「讃美歌21略解」　日本キリスト教団出版局より）
　

ビデオ鑑賞　「尼僧物語」"VENI　CREATOR"のシーンだけもう一度

▼　関連箇所　テキスト第1章ｃｏｌｕｍｎ「秀吉の聴いた西洋音楽」（Ｐ９の前）　
　天正遣欧使節は、ローマでパレストリーナ、ヴェネツィアでガブリエーリ、マントヴァでモンテベルディの音楽を聴いただろう。

ビデオ音楽鑑賞　
モンテベルディ（1567～1643）「聖母のための夕べの祈り」より　　
　イムヌス（賛歌）　「めでたし海の星」　（１２－３分）

▼　関連箇所　テキストＰ２６～２７　「２．聖務日課」（Ｐ９の前）

▽前回の復習：「グレゴリオ聖歌」（Ｐ２５）
　キリスト教音楽の起源はグレゴリオ聖歌　９世紀頃にアルプスの北で成立？

●映画「尼僧物語」の舞台　こちらのサイトから引用

＜　尼僧物語　＞

１９５９年のアメリカ映画。フレッド・ジンネマン監督。オードリー・ヘプバーン主演。ベルギーの医師の娘が看護尼になり、コンゴで医療活動に献身する。やがて第二次大戦が起き、ナチス・ドイツ占領下の祖国で、父親が銃殺されたことを知る。彼女は尼僧服を脱ぎ、レジスタンスに身を投じる。

ベルギー・ブルッヘ / 運河、石畳…中世の面影
　アメリカ映画初主演作の「ローマの休日」（１９５３年、ウィリアム・ワイラー監督）で妖精のようにスターダムに駆けのぼり、翌年の「麗しのサブリナ」（ビリー・ワイルダー監督）でかれんなイメージを定着させ、スターとしての地位を不動のものとしたオードリー・ヘプバーンが、黒い尼僧服に身を包み、神への義務と人としての義務の間に揺れる生身の女性を演じた。「尼僧物語」は、ヘプバーンが演技派女優としての一歩を踏み出した秀作である。３０歳だった。

　作品の舞台とされるのは、ベルギー北西部の古都ブルッヘにある１３世紀に創設されたベギン会修道院。ブルッヘは「フランドルの水の都」とも呼ばれ、中世の面影を残す運河や石畳、街並みは、作品にも登場する。寄る辺のない女性たちが安心して暮らせたのは修道院だった。高い堀に囲まれた修道院で共同生活をしながら、刺しゅうや看護などの労働で生計を立てた。ベギン会修道院の建物は今日は、ベネディクト会修道院になっている。白壁の前を足早に通りすぎる黒服の修道女たちの姿を見て、ふと中世に戻ったような感覚を味わった。

　ベルギーはヘプバーンが生まれた国である。第二次大戦中、両親が離婚し、ヘプバーンは母親エラの母国オランダに住み、ナチス・ドイツ占領下の苦労を味わった。ヘプバーン自身、レジスタンス運動に協力したが、この体験は「尼僧物語」の主人公の姿と重なる。

　ヘプバーンは１９５０年、イギリス映画で映画女優としての道を歩み出した。以後、欧州での少女時代を語りたがらなかったという。英国人の父親ジェイムズは、英国の親ナチス運動に加わり、当局に拘禁された過去があったためとも言われる。５０年代、「魔女狩り」のようなマッカーシズムが吹き荒れた米国の芸能界で、父親の親ナチス運動が公になることは、彼女の女優としての経歴にとって危険だった。

　ヘプバーンの父方のいとこ、ウォルター・ラストンさん（８５）はブリュッセルに住む。ヘプバーンに初めて会ったのは「尼僧物語」制作の年、１９５９年のことだ。彼女はベルギーでの映画公開に合わせ、訪問していた。
　「『お父さんに会わせて』と彼女は開口一番、私に頼みました。長い間、口に出せなかった願いを、いとこの私に打ち明け、助けを求めたのでしょう」　ラストンさんの手引きで、父と娘は２０年ぶりに再会を果たした。この作品は、人間ヘプバーンにとっても転機となった。

　日本では、死後八年たった現在も、ヘプバーン人気は衰えを見せない。だが、ベルギーではヘプバーンが地元出身であることすら、あまり知られていない。ブリュッセル市イクセル区にある生家は廃虚と化したままだ。地元の歴史研究グループが作った小さな記念パネルだけが残る。　　
　（文：三井美奈　こちらのサイトから引用）　

ビデオ鑑賞　
高田三郎と典礼聖歌　　「賛美歌は祈り」　
　日本語の典礼聖歌　ローマの教会やイスラエルの教会の風景　（１３分）
1960年代の第２ヴァチカン公会議以降、各国の言葉で典礼が持たれるようになる。

●テキスト　第２章ｃｏｌｕｍｎ「リードオルガン」（Ｐ25の前）　ｏｒ　60－61P
　ヨーロッパではオルガン＝パイプオルガン　持ち運び不可能な巨大な楽器
　19世紀フランス、ハルモニウムが登場（圧縮型）　　※別紙参照
リードオルガン（吸入型）～主にアメリカでよく使われた
　石川啄木と佐藤泰平氏　そして　宮沢賢治

●佐藤泰平氏について　→　別紙参照

ＣＤ演奏　「３つの祈り　アメイジングリードオルガン」　
　Amazing Grace　（7分）　リードオルガン（佐藤泰平）＆チェロ

ＣＤ演奏　「平和への虹（なないろ）の響きⅡ」　　
ファンタジア「越天楽」（7分）　パイプオルガン（児玉麻里）＆邦楽のライヴ録音
　日本固有の宗教である「神道」の儀式に使われるテーマ音楽が「越天楽」。儀式の始めに天から神を呼ぶ唸り声があり、同じく終わりに神を天に送る唸り声がある。この作品は、邦楽の旋律、和音で創られ、日本の伝統芸能である雅楽の楽器「笙」、能楽の楽器「小鼓」、「太鼓」を巧みにからませている。　（CD解説より引用）

ＣＤ演奏　「地球交響曲第2番　サウンドトラック」　佐藤初女さん
「Ａｖｅ　Ｍａｒｉａ」（３分）　バッハ／グノー
　「Ａｖｅ　Ｍａｒｉａ」はローマ・カトリック教会で＜天使祝詞＞と呼ばれる祈り。この聖母マリアの讃歌は、古くからキリスト教の典礼に取り入れられた。最初は単旋聖歌（グレゴリオ聖歌）でとなえられていたが、ポリフォニー音楽（多声音楽）が礼拝に採用されるようになると、多くの作曲家が競ってこの讃歌に作曲をした。

●宮沢賢治の音楽作品について　　及川　茂　　（こちらのサイトから引用）
　私達は宮澤賢治という名を耳にすると、まず童話作家としてのイメージを思い浮かべます。
岩手県を理想郷「イーハトーヴ」と名付けこよなく愛し、様々な場所を題材に多くの童話や文語詩を創作しました。一方、詩人としても同郷の先輩「石川啄木」に憧れ、作品集『春と修羅』等優れた作品を数多く残しました。初めのうちは宗教家としての道を模索した時期もありましたが、やがては自らも農民と化すことを望み、晩年は凶作に悩む地元の農民のために精力的に地質学に基づいた地質改革の指導をし、その疲労もたたって３７歳という短い生涯を終えました。その生涯は知れば知るほど実直で情熱的で、現在の私達の画一的な生き方に比べ何と魅力溢れる生涯かと感銘を受けます。

　賢治の童話作品は後世の作家にも大きな影響を与えています。例えば、松本零士の『銀河鉄道９９９』は『銀河鉄道の夜』がベースになってますし、宮崎駿の『となりのトトロ』は『どんぐりと山猫』にヒントを得て作られました。

　賢治は童話作家、詩人、地質学者、教師として一般に知られていますが、音楽や絵画にも特別な興味を示していました。絵画は実に独創的な水彩画を数点残しています。音楽についてはクラシック音楽や当時流行していた浅草オペラを好んでいたといわれ、『飢餓陣営』には浅草オペラの影響が色濃く出ています。クラシック音楽愛好家としての賢治はレコード収集に現れています。その数は数十枚と、当時としてはかなりの数でした。花巻一のレコード収集家として知られていたそうです。羅須地人協会で賢治は生徒や知人を集め度々レコード鑑賞会を催したと言われています。そのような中でドヴォルザークの『新世界交響曲』やウェーバーの歌劇『オペロン』、グノーの歌劇『ファウスト』等を知ったのでしょう。これらの音楽のなかで気に入った旋律に歌詞をつけたのが、『種山々原』であり、『火の島の歌』であり、『角礫行進歌』でした。童話『セロ弾きのゴーシュ』で町の音楽会のために練習をしていた『第六交響曲』とはベートーヴェンの交響曲第６番『田園』であったとされ、賢治が最も気に入っていた音楽だったということです。

　賢治は自身で概ね９曲の作曲をしています。また、賢治は前述のようにお気に入りの既製の音楽に歌詞を付けて楽しみました。そのような曲が１２曲ほど残されています。（『風の又三郎』のみ日活の映画音楽からのものなので賢治の関連音楽との判断を致します。）若い頃はベートーヴェンやドヴォルザークなどのクラシック音楽に傾倒し、晩年は地元の音楽に目覚めて作曲をしました。賢治の音楽作品に西洋的なものと日本の土俗的な（イーハトーヴ的な）ものを感じるのはそのためだと思われます。賢治の音楽作品は総て歌詞が付けられており、歌曲として作られていますが旋律自体がとても美しいので、しばしば器楽のみでの演奏もされます。（こちらのサイトから引用）

ＣＤ演奏　「宮沢賢治の世界　～イーハトーヴ・光と風の贈りもの」
　"種山ケ原"　日本語詩：宮沢賢治　　原曲：ドヴォルザーク

＜　種山ヶ原　＞　（こちらのサイトからの引用）
春はまだきの朱(あけ)雲を　
アルペン農の汗に燃し
縄と菩提樹皮(マダカ)にうちよそひ　
風とひかりにちかひせり。
　　四月は風のかぐはしく　
　　雲かげ原を超えくれば　
　　雪融けの草をわたる。

繞(めぐ)る八谷に劈靂(へきれき)の　
いしぶみしげきおのづから
種山ヶ原に燃ゆる火の　
なかばは雲に鎖(とざ)さるゝ。
　　四月は風のかぐはしく　
　　雲かげ原を超えくれば　
　　雪融けの草をわたる。

＜　語注　＞：まだき＝夜明けの薄明どき。朝まだき。
菩提樹皮(マダカ)＝菩提樹の皮で作った蓑。（東北方言で、菩提樹をマダという。）
劈靂＝雷。（種山ヶ原あたりは雷が多く、雷神を祀った石碑がよく見られる）

（こちらのサイトからの引用）
　「遠き山に日は落ちて…」で知られる「家路」の翻訳歌詞は、第二次大戦後まもない1946年に、堀内敬三氏が発表したものです。その後この詞は、ドヴォルザークの旋律の魅力ともあいまって、日本中で広く親しまれてきました。宮澤賢治が、同じこのドヴォルザークの交響曲第九番「新世界より」の第二楽章の主題に、自分の詩をつけて「種山ヶ原」として歌っていた時期は、少なくとも1924年夏にまでさかのぼることができます。

　当時の友人斎藤宗次郎氏の自叙伝によると、この年の8月27日の項に、「農学校に立ち寄り宮沢賢治先生の篤き好意により、職員室に於て蓄音機によれる大家の傑作を聴いた、最初先生の作詞を New-World Symphony の Largo の譜に合せて朗々と歌うを聴いた実に荘厳なものであった」と記されています。堀内敬三氏に先立つこと20余年、賢治はこのメロディーを日本語の歌曲として歌った、最初の人だったのではないでしょうか。

　さて、賢治が上記のような歌詞を、「新世界より」と題された交響曲に付けたのは、たんなる偶然ではないのだろうと思います。そこには、アメリカの大地に科学的で合理的な農業を根づかせた、彼の地の開拓者たちへの、賢治の思いがこめられていたのではないかと、私は思います。

　「銀河鉄道の夜」のなかで、いちめんのとうもろこし畑からこの旋律が流れてきて、女の子が「新世界交響楽だわ」とつぶやき、ジョバンニが「さうさうこゝはコロラドの高原ぢゃなかったらうか」と思うとき、実際の汽車の動きは、あたかも岩手軽便鉄道で北上山地を西へ、花巻の方へ向かっているところのような描写になっています。

　賢治は、種山ヶ原を含む北上の高原を、アメリカのコロラド高原に重ねあわせていたのではないでしょうか。そして、農業には不向きなこの地の酸性土壌を、いつの日か新大陸の農業技術も応用して開墾し、豊かな稔りの土地へと変えることを夢見て、この歌に託していたのではないかと思います。　（こちらのサイトからの引用）
　

（岩手にある「風の又三郎」の像）

　　　ひとつのおとに　ひとつのこえに　みみをすますことが
　　もうひとつのおとに　もうひとつのこえに　みみをふさぐことに　ならないように

（谷川俊太郎「みみをすます」より）

　　

～　2001ＨＧキリスト教音楽　竹佐古真希　～

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