私たちは日本にオオカミを再導入する計画に反対します

 

日本で、オオカミが「害獣」とされ、絶滅状態に追いやられてから一世紀になります。日本の山野は開発にさらされ、国土面積の63%といわれる森林の中で、野生生物が生きてゆける自然林は、その27%に過ぎないとされています。しかも、この27%も分断化されています。残された自然林さえも、リゾート、宅地、産業廃棄物投棄場などの開発に脅かされています。

山林は、経済効率を優先させた林業により痛めつけられ、その結果、場所によってはシカが増えすぎるなど、アンバランスもみられます。ところが、シカを駆除することを理由のひとつとして、オオカミを日本に再導入しようという考えがあります。私たちは、この考えは、オオカミにとっても、生態系にとっても悲劇を招くものと思い反対します。「害獣」駆除のために、これまでにマングースなどの外来種が導入された結果、生態系のバランスが失われて、悲惨な事態を招いたことが何度もあります。オオカミが自由に生きている場所から、彼らを「強制連行」して危うい状態にある日本の山林に「移植」し、シカを殺させるような計画に、同意することは出来ません。シカの悲劇も、人間のしてきたことに原因があります。破壊されつつある山林の保全と復元など、まず私たち人間が始めるべき事柄をなおざりにしたまま、負担を負わされたオオカミが、仮に生き延びてシカを食べ尽くしたとしたら、その後はどうするのでしょうか?アラスカ、カナダにならって、オオカミを「コントロール」する、すなわち殺すのでしょうか?

自然の微妙なしくみについて、私たちが知っていることは、ほんのわずかです。生態系間「移植」をして悲劇を招くのではなく、これ以上の自然破壊を止め、残された命たちの回復に努めることこそ、私たちのなすべき事だと信じます。