Alaska Wildlife Allaince資料
原文:http://www.akwildlife.org/issues_campaigns/wolfhunting.html
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空からのオオカミハンティングが復活!
 2003年6月にムルコウスキーアラスカ州知事は飛行機によるオオカミの即日ハンティング(空から獲物を見つけて撃ち殺し、殺した死体の回収までを1日で終えてしまう方法)を復活させたばかりでなく、一般の人たちも空からオオカミを撃ち殺せることを法律で認めてしまった。

 州政府が容認したこの過激な殺戮プログラムによって、アラスカ州に生息するすべてのオオカミが今、危険にさらされている。この方法を認めた過去の法律では、カリブーやムーなどの被補食者の個体数が空からのオオカミハンティングが実行される以前の低い水準に減少していることを条件に定めていたが、現在の州政府が保証する空からのハンティングは、被補食者の数が安定したり増加している場合でも、今後の減少を抑えるための先制手段として実行することができる。

どうしてこうなったのか?
 アラスカ州の有権者は1996年に飛行機によるオオカミの即日ハンティングを禁止しており、州議会がこれを再承認した後も、2000年に再び反対している。州政府はこのアラスカ州民の意思を尊重し、民衆の評決をくつがえしているはずはなかった。ところが、フェアバンクスのラルフ・シーキンス上院議員は最後の議会会期中に上院法案155を提出した。この法案は本来、空からのオオカミハンティングに参加できる人間を特定することを目的とした内輪の実務法案として公表された。しかし無記名法案(Ballot Measure)6には、オオカミを実際に撃てるのはADF&G職員に制限されるものの、AS16.05.783のもとで州政府は今もオオカミコントロールプログラムを実行できることが明記されていた。

 さらに悪いことに、空からのハンティングに関する調査結果を集めるというアラスカ州漁類狩猟局(ADF&G)長官の権限を取り上げる条項が最終段階で上院法案155に追加されるに至って、チェックとバランスのシステムは完全に崩壊した。今やオオカミコントロールプログラムを計画するすべての権限は、オオカミ排斥主義のアラスカ狩猟局(Alaska Board of Game)の手中にある。

アラスカ州民の認識
 Alaska Wildlife Alliance(AWA)が依頼し、Dittman Research Corporationが実施した最近の世論調査によると、ハンターを含むアラスカ州民の72%はムースやカリブーを増やすための手段として、空からのオオカミハンティングを行うことに反対している。地方を含む州の主要地域はすべてこれに反対しており、ハンターの大多数までが反対している。有権者のこの圧倒的な反対意見にもかかわらず、アラスカ州政府のなかには未だにアラスカに必要なのは飛行機に乗ってオオカミを殺すことだと主張している者がいる。
 2000年11月の投票でアラスカ州民の53.5%にあたる有権者147,043名が空からの即日オオカミハンティングの実施に反対を表明した。しかし、オオカミハンティングの道具として飛行機の使用が廃止されて以来、アラスカ狩猟局の会議の席上では毎回のように「ムースの数はどこでも激減している。木のうしろには必ずオオカミがいる。アラスカ州の有権者はわれわれが仕事(オオカミの即日空中ハンティング)に利用していた唯一の道具を取り上げてしまったのだ。」との声が聞かれる。しかし、事実は違う。マクグレースは他のどこよりもムースの減少を憂える声が大きく、オオカミコントロールの要求が高い地域だが、ADF&Gは上空からの調査によって、この地域でもムースの数は最近減少していないことを認めた。実際、ムースの個体数は1996年の調査結果よりも増加しているようである。出生率とともに、子供の生時下体重や双子で生まれる子供の数まで増加している。

要するに
 飛行機による即日ハンティングは復活されるべきではなく、空からのハンティングも容認されるべきではなかった。その理由は以下の通りである。

・ 議員や知事といえども、やむを得ない理由もなく州民の意思を踏みにじることは許されない。こうしたあからさまな軽視は、政府とその州資源の管理能力に対する州民の信頼を根底から揺るがすことになる。
・ オオカミは生態系を構成する自然の一部であり、病気や老齢、衰弱のみられる個体を排除することによって健康な被捕食者集団の維持に寄与している。長年にわたる科学的研究から、捕食者が被捕食者の減少の原因になることはまれであることがわかっている。
・ 飛行機を用いてオオカミの居場所を特定し、空からあるいは地上に降りて撃ち殺すことは残忍な行為である。
・ 被捕食者の数が安定したり増加している時に、積極的な捕食者のコントロールプログラムを実行すれば、被捕食者、捕食者さらには環境に対して長期にわたる有害な影響を及ぼすおそれがある。収容力を超えて成長した被捕食者集団は環境に深刻なダメージを与え、最終的には集団自身が滅んでしまう。
・ 上院法案155条の承認以前には、空からのハンティングを含む捕食者コントロールプログラムの実行の権限はADF&Gに与えられていた(実際のハンティングは同省の職員に制限されていた)。
・ 飛行機による即日ハンティングは国家の管理下にないため強制力がなく、他の野生生物の濫用につながり、ハンティングに悪いイメージが加わることから、オオカミコントロールの手段として間違った方法である(ADF&G,2000)。
・ 飛行機によるオオカミハンティングを一般人にも認めれば、管理と責任の問題を避けられない。少なくともADF&G職員にハンティングの権限を制限すれば、状況ははるかに管理しやすくなる。一般人が参加すると、指定管理地域以外でハンティングを行うなどの権利の濫用を取り締まれなくなる。

アラスカのオオカミの現状
 飛行機によるオオカミの即日ハンティングが廃止されてからも、殺されるオオカミは減少していない。ADF&Gが発表したアラスカ州のオオカミ捕獲数によると、オオカミの殺害数は過去25年間に2倍に増加している。
 情報源:ADF&G年間狩猟記録サマリー

 オオカミの殺害数が増加した理由はたくさんある。アラスカ州の人口は過去25年間に50%以上も増加し、そのためにオオカミの生息地域が狭まり、狩猟が増え続けることで、オオカミはいや増す危険にさらされてきた。ハンティングの道具も新しく精巧なものが急速に普及してきた。手動式ライフル銃に代わって半自動小銃が主流となり、スノーモービルの数も500%以上と飛躍的に増加した。スノーモービルの速度や操作性が向上したために、開けた場所でハンターから逃げおおせるオオカミはもはや一頭たりともいなくなった。
スノーモービルによるオオカミの追跡はかつては違法でスポーツマンシップにもとると考えられたが、今やアラスカ州の広い地域で容認されている。オオカミ罠の季節は延長され、捕獲制限数も拡大している。マクグレースではオオカミの捕獲一頭につき100ドルという私的報奨金まで容認されている。さらに、ADF&Gが主催するオオカミ罠猟講習会など、一般人がオオカミの殺し方を学べる機会は増える一方である。

 アラスカがオオカミであふれかえっているなど過去の神話である。ミネソタ州に生息する1平方マイル当たりのオオカミの頭数はアラスカ州の2.5倍である。これは一体なぜなのか? 50年以上前にオオカミがほとんど絶滅したアラスカ州以外のアメリカ48州では、その後、絶滅危惧種保護法によりオオカミがほぼ完全に保護されることとなった。それまでオオカミを公式に害獣として取り扱ってきた連邦当局と州当局は膨大な予算をつぎ込み、社会生物学と関連づけながらオオカミが自然環境に果たす役割を解明し、国内牧畜業に与える影響を調査することに着手した(ミネソタ州は家畜生産者の多い州である)。こうしてわかったことを地域の講習会や出版、教育プログラムなどを通して最初は懐疑的であった国民に伝えたのである。

なにがわかったか?
 オオカミは他の捕食者と同じように、獲物とする動物よりも走る速度が少し遅く、ムースのように大型の動物を相手にする場合は、多少力が弱いように造られている。つまりオオカミは獲物を追う時、病気や衰弱した個体に狙いを定める以外にほとんど選択肢がないということである。これは結果的に捕食者だけでなく被捕食者にとっても利益となる。こうした営みが数百年も数千年も繰り返されてきたのである。

 オオカミが他の大型の陸上捕食者とともに担っている2つめの役割は、環境の収容力とのバランスを保てるように、有蹄動物の数の変動をできる限り小さくすることである。

 有蹄動物が増えすぎたり、逆に何年も続く大雪で餌にありつけず、捕まりやすい状況が起こった場合、オオカミは必要以上にこうした獲物を捕まえる傾向がある。これによって被捕食者の数は一定に維持されるとともに、生き残った有蹄動物の間で餌となる若葉の取り合いが起こることも少なくなる。
殺された個体も決して無駄にはならない。オオカミの食べ残しはワシやカラス、コヨーテ、キツネなど多くの動物が喜んで頂戴する。降雪量の少ない冬が何年も続いて被捕食者の食べ物が豊富になり、取り逃がす確率も高くなると、オオカミは殺した獲物を無駄にせず、胃の中の物以外は大きな骨まで残らず食べてしまう。

 「パック」は序列性の家族単位であり、変化にうまく対応する。メンバーの死や離脱を繰り返しながら、パックとパックのリーダーであるアルファのつがいは環境やハンティングの対象、場所、時期に関する知識を引き継ぐパイプ役として機能する。通常、パックのなかで子供を産むのは一頭だけだが、メンバー全員が子育てに参加する。
 
 オオカミたち自身の工夫によるのか、オオカミの個体数は比較的安定しており、獲物の数や降雪量などの影響をさほど受けない。あらゆる動物と同じく、生きるか死ぬかはほとんど若い個体に集中する。若い個体は知識や経験に乏しく、代わりは簡単に見つかる。

オオカミ教育を推進
 一般人向けのオオカミ教育は、ミネソタ州民にアラスカ州以上の密度でオオカミが生息することを容認させる大きな助けとなった。生物学者はオオカミの存在は被捕食者の増加にマイナスの影響を与えないことを示してきた。ミネソタ州のハンターはアラスカ州と同じく、毎年膨大な数の有蹄動物を捕まえることができる。また、われわれアラスカ州民にはほとんど関係のない問題であるが、かつて農家が懸念していた国内牧畜業についてもオオカミは
脅威とは認められないことが生物学的研究からわかっている。そしてこうした研究が示してきたのは、なにより人間とオオカミは共存できるということである。ミネソタ州の人口密度はアラスカ州の50倍に上る。

AWAの役割
 AWAは空からのオオカミハンティングを禁止する過去2回の有権者提案を先導したが、この方法は明らかに問題を根底から阻止するものではなかった。現在、アラスカ州全土、全米、さらには海外からも以前に増して大きな支援が集められ、当協会に寄せられている。AWAは教育とメディアによる宣伝活動を積極的に推進し、空からのオオカミハンティングの事実を一般の人たちに広く伝えていくつもりである。法律によるこの権力の濫用をくい止めるには、背景が様々に異なる人々のまとまった声が必要である。

 2003年春に上院法案155が最初に提案されて以来、いくつかの方策が復活し考案されてきた。アラスカ州以外の48州の団体はアラスカ州への観光旅行のボイコットを求めており、これはヒッケル政権が1回目の有権者提案を棄却しようと目論んだ際、心情的に大きな効果を上げた。しかしボイコットなどの手段は、バランスの取れた穏健な野生動物の管理にいつも第一線で協力しているアラスカの少数のエコツアー業者に打撃を与えるものであり、AWAはこのやり方を支持しない。代わりに、アラスカ州のオオカミが直面している脅威をアラスカ州民と世界全体がより良く理解し、オオカミの生存を保証するための妥協点を見いだせるように、AWAはすべての出資団体と協力して、マスコミによる大規模なイベントや一般の人たちが話し合える場を提供することを計画している。
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