オオカミについて

ハローペットno.68「オオカミに学ぶ」より抜粋
    
    住んでいる場所/ 体の大きさ / 食べ物と狩り / 行動範囲 /
強いメス/ 群れ/ 子育て/ コミュニケーション


   
*どこにいるの?
      かつてオオカミは、北は北極圏から南はアフリカの北部まで、たいへん広い地域に住んでいました。 これは、オオカミの順応する能力がとても高く、さまざまな気候や食物に適応できることを示しています。 このような動物はそう多くはありませんが、残念なことに、ちょうどオオカミと重なる生活域で同じような 食べ物を取る生き物がいたために、オオカミはその住処を狭め、数を減らし、多くの地域で絶滅していきました。その生き物とは「ヒト」です。 今では、カナダ・アラスカや、ヨーロッパと中国の一部の地域で
しかオオカミは生息していません。戻る

*体の大きさは?
北にいるシンリンオオカミの大きさは、シェパードと同じくらいですが、足が細くて長く、胸幅は狭く、 逆に足跡は大きめです。毛は、首まわりや尻尾ではずっとふさふさして長く、身体を被う上下の下に、 びっしりと下毛が生え、厳しい寒さにも耐えられるようになっています。
南に下ると体は小さくなり、アラビアオオカミの大きさは、シンリンオオカミの半分くらい。明治時代に 絶滅したと言われる日本のホンドオオカミは、頭から尾までが1.2〜1.3mくらいでした。 毛の色は、灰色、黒、白、ベージュ、金色、黄土色、茶など、とても変化に富み、中には斑や縞模様が 認められるものもいるそうです。戻る

*食べ物と狩りの方法
 オオカミはシカの仲間などを狩りして食べますが、他にもウサギやネズミ、リス。鳥や昆虫、ある 種のベリーまでずいぶん雑多に食べます。一日に食べる肉は2〜5kgにもなります。が、一方で何 も獲物が無くて、14日間も食べないで過ごしたという記録もあります。また、肉といっても狩りの獲 物ですから、内蔵から骨、皮にいたるまでまるごと食べて消化します。
オオカミに限らず、野生の肉食動物は、効率よく食物を得るために、比較的捕らえやすい個体を 狙います。つまり、ケガをしていたり病気にかかっている動物や子供、年寄りの動物です。アラスカ の先住民たちはこのことをよく知っていて「オオカミはカリブーの群れを強くする」と考えました。また、 カナダのイヌイットもアメリカ・インディアンもオオカミと同じような獲物を狩りましたから、オオカミ ことも、その狩りのこともよく知っていて一目おいていました。オオカミのようになることは、彼らの いでした。戻る

*広い行動範囲
 オオカミは、一日に平均8〜10時間かけて40kmくらいを移動するそうです。その距離は時には 200kmにも及ぶそうですが、これは東京から静岡間の距離に相当します。戻る

*力強いメス
 オオカミは、大変高度な社会性を持つ動物です。この性質は、獲物が比較的大きくて手強く、とても一 頭では手に負えないため、何頭かで協力して狩りを行う必要があることから発達したと考えられています。 サルやアリ、ハチなど、自然界の社会性を持つもつ生き物の社会とその構成は、よく人間社会と比べられます。最近は、こうした生き物たちの生態を、人間と比べるよりも、できるだけありのまま見ようとする姿勢から、かつては「ボス」と呼んでいた群れのリーダーを「アルファ」と呼ぶように変わってきました。 しかし、それでもオオカミについては型にはめた固定的な見方が強く「強いアルファが厳しい階級制を維 持する」というような見方が往々にしてあります。これに対してバリー・ロペスは「オオカミと人間」の中で「メスが群れを率いる例もあるし、そうでなくても メスは常に群れの活動に強い影響をおよぼす。人間と多くの共通点をもっていうように思われるオオカミ のような動物について、私たちはしばしば人間社会の例にあてはめて考えがちであるが、西洋の社会でも、女性はだいたいにおいて従属的な地位に甘んじているから、オオカミのメスを人間の女性の引き合いに出すことは適切ではないだろう」と延べています。戻る

    

*群れの構成  
 オオカミの群れの構成は、アルファオスを頂点としたオスの順位と、アルファメスを頂点としたメスの 順位、そして季節によって一時的にできる性別に関係のない順位があります。群れは、だいたい親とその何代かの子供たちという家族単位で構成され、ひとつの群れの大きさは、2〜20頭くらいです。子供を生むのはアルファメスだけです。父親は多くの場合アルファオスですが、もっとも下位のオスが父親になることもあります。また、狩りのリーダーも、必ずしもアルファオスとは限らないようです。オオカミのアルファは、力で制圧してその地位にあるのではなく、他のものがそう認めるからなるのだとロペスは言っています。ロペスは、オオカミは社会的な動物だからこそ、闘争的ではなく協力によって、その社会が成り立っているのだ、と言っています。
 また、オオカミたちはとても個性的です。あるものは勇敢、あるものは慎重、足の早いものもいれば、ち伏せのうまいのもいるというふうに。そして、多くの研究者が「オオカミは互いにとても仲がいい」と報告しています。戻る

*子育ては群れが協同で
  アルファメスだけが子供を生むと先に述べましたが、巣穴の場所もアルファメスが決めます。繁殖時期の群れの生活は、この巣穴を中心に営まれます。けれども、何らかの理由でオオカミの数が激減したような場合には、群れは小さく分かれ、他のメスも出産の機会を持ちます。また、逆に、近くに子供が多い群れがあると、その影響からか、まったく子供を生まない年もあるようです。その地域の仲間の数を自分たちでコントロールしているのかもしれません。
 オオカミの巣穴は、乾いた土手の斜面や崖などに掘られます。子供は春に生まれ、一回に4〜6頭くらいです。生まれたばかりの子供は耳も立っておらず、目も見えませんが、2週間ほどすると、よちよち歩いて巣穴から出てきたりします。生後5週間ほどで乳離れし、ものが食べられるようになると、狩りをしてきた大人にねだって、食べ物を吐き戻してもらいます。この頃には、若いオオカミが交代で留守番をし、子守を引き受けます。子供は、大人のオオカミに遊んでもらったり、子供同士で遊ぶ中から、だんだんと社会性を身につけます。狩りの仕方も同様にして覚えます。中には、成長すると群れから離れて独立するオオカミもいますが、普通はそのまま群れに残ります。単独で生きるのはなかなか大変なことなのです。戻る

*コミュニケーションの方法
 オオカミのコミュニケーションの方法は、大きく分けると3種類です。「鳴き声」と体や顔つきによる「ボディランゲージ」、そして「匂い」です。オオカミは、イヌのように連続して吠えることはほとんどありません。甲高い声でクンクン鳴いたり(親子間でよく使われる)、短く吠えたりはします。また、有名なのは遠吠えです。狩りの前後、互いに離れていて位置を確認するときなどによく遠吠えをするそうです。絆を強める作用をしているなどとも言われます。
 オオカミの表情はとても複雑ですが、耳、鼻先、口の開き具合などの顔つきで威嚇や恐怖の度合 いがわかると言われています。顔だけでなく、尾や首筋の毛、体の格好や足の運び方など、体全体を使ってことばを表現します。
 オオカミのコミュニケーションの方法は、イヌたちにも受け継がれています。イヌはよく飼い主の口のまわりをなめたがりますが、これは自分より順位の高い仲間に敬意を表している態度です。お腹を見せてひっくり返るのも同じで、これらは、子供が大人にエサをねだったり、挨拶するときの格好からきていると考えられています。 匂いによるコミュニケーションの方法は、基本的にはイヌと同じです。イヌは散歩の途中でさまざまな目印におしっこをかけます。オオカミも同じように匂い付けをします。また、通り道で匂いを嗅ぐのは、自分の縄張りを確認するだけでなく、自分のいる位置も確認していると考えられています。
あるオオカミが外から帰ってくると、他のオオカミは匂いを嗅ぎまわります。これは、体についた匂いから、そのオオカミの行動の情報を知るわけです。オオカミの嗅覚は非常に優れていて、たくさんの匂いをかぎ分けることができます。戻る