イラク分割統治という幻想

ロン・ジェイコブズ
2007年9月28日
ZNet 原文


イラクが自由な主権国家であると信じている人が今でもいるとしても、最近米国政府がとった二つの行動が、そうした考えに永遠にとどめをさすだろう。第一は、ブラックウォーター社の傭兵たちが最近起こしたイラク人虐殺事件に対する対応であり、第二は米国上院が2007年9月26日に決議を採択し、バグダードのグリーンゾーンにある米国の雇われ政府の決める準自治地区にイラクを分割するよう求めたことである。

グリーンゾーンの雇われ国家は、ブラックウォーターの殺害に対し、最初は強く抗議していた。内務相はイラクからの傭兵撤退と殺人者たちの訴追を要求した。それから、米国政府が圧力をかけ始めたため、グリーンゾーンのイラク人の激しい言葉ははるかに軟化した。この原稿を書いている時点で、イラク国会は、米国の戦争を戦っている民営傭兵をペンタゴンの責任範囲と見なす法律の採択を検討している。そうなれば、傭兵たちは制服を着てたくさんの勲章をぶら下げた軍人に対して責任を負うことになる。このことは、傭兵たちが犯す殺人が処罰されることを意味するのではなく、ペンタゴンが処罰を行うということである。上級米軍士官の中に、その地位が米国政府版イラク戦争サクセス・ストーリーと関連していない者はほとんどいないため、指令系統をこのように変えたとしても、ブラックウォーターの傭兵たちのふるまいはほとんど変わらないだろう。

さらに、イラクにおける米国政府の目的が、直接ないしは何らかの従順な政府を通してイラクを全面的に支配することにあるという事実を考えると、傭兵たちはしばらくの間イラクに留まることになるだろう。イラク分割を求めるジョン・バイデンの決議案が現地の戦略となるにしても、傭兵は留まり続けるだろう。

この決議の最も不快な点は、その傲慢さにある。イラク国家の起源がどうであれ(第二次世界大戦後英国をはじめとする植民地主義勢力の策謀もそれに含まれる)、事実としてイラクは一つの国家であり、その分割について発言権を持つ唯一の人々はイラク人である。アメリカ合州国がイラクの解体を望むなどというのは、傲岸の極みである。実際、それ以上に傲慢なふるまいとして考えられるのは、イラクを侵略し占領することくらいだろう。といっても・・・・・・もうそれはしてしまったわけだが。

このことは、米国政府が自分たちが世界を支配していると信じていることを証明している。米国の二支配政党はこの信念を持っており、米国が世界で現在振舞っているように振舞う理由を理解するためには不可欠な点である。1990年代にデイトンでビル・クリントンとそのお仲間たちが米国のニーズと望みにしたがってユーボスラビアを分割したのと同様、バイデン決議も、米国の支配に屈しようとしない場所を支配可能にするための試みである。ユーゴスラビア、そしてそれが外部勢力によって分割されたことは繰り返し言及されてきたが、分割政策が始まったのはユーゴスラビアでではない。実際、米国が(国連安保理を用いて)同じ分割戦略を第二次世界大戦後に朝鮮とベトナムで用いたというのが妥当だろう----その結果は混乱したものだった。朝鮮は分断されたままだし、ベトナムは1975年に米国の軍事的敗北の結果統一国家になった。両民族ともに、恐ろしい戦争で何百万人もの市民が命を落とした。

イラクでの虐殺はまだ朝鮮やベトナムの規模にはなっていないが、米国政府が自分の都合のよいようにイラクの将来を決めようとしたことで出なくてよい犠牲が出ていることは否定できない。繰り返すが、米国の要求に屈しようとしない国家/民族を米国政府が分断しようとした過去の事例を見るならば、イラク分割がなされたときにあり得る帰結は二つあるように思われる。第一は朝鮮型----完全武装した米軍が国内に長期にわたって駐留を続けるタイプ----である。さらに言うと、このシナリオには常に戦闘再開の可能性が伴っている。ベトナム型のシナリオが示しているのは、民族解放レジスタンス運動が維持されれば、最終的には民族が再び団結し、占領者を追い出すことができるということである。ユーゴスラビア型シナリオははるかに陰鬱である。ボスニアとコソボは今でも国連の委任統治領であり----それはすなわち、国連平和維持軍という仮面を付けた外部勢力に今も支配されているということである。経済的には、両地域とも極めて高い失業率と非常に低い経済成長率に苦しんでいる。

イラク分割は、ワシントンがなすべき決断ではない。米国上院が最近行なった投票は誤った方向を向いている。さらに、兵士を帰国させたいという米国の人々の望みをかなえるためにもまったく役に立たない。そうではなく、イラクが分割されれば、米軍はあらたに砂上に引かれた分断線を維持するために駐留を続けることになるだろう。バイデン上院議員の決議は解決ではない。これもまた、ブッシュ政権がこれまでやってきたあらゆる試みと同様成功の見込みのないイカサマのアプローチである。失敗するように出来ている。


ファルージャ2004年4月ブログとの同時掲載です>。

9月26日、米国上院は、イラクを連邦制のもとで、民族と宗派にそって分割するよう求める決議を、賛成75、反対23で可決しました。本文で言及されている「バイデン決議」はこれを指します。

また、ブラックウォーターの虐殺は9月16日、混乱して迷い込んだ若い両親と子どもを爆殺した事件を指します。

■ 辺野古情報

辺野古からの緊急情報(随時更新)辺野古からの緊急情報携帯版基地建設阻止(毎日更新)基地建設阻止携帯版高江の現状をご覧下さい。

■ 『在日朝鮮人「慰安婦」宋神道のたたかい「オレの心は負けてない」』上映

日時:2007年10月14日(日曜日)18時開場、18時半上映
場所:東京都文京区民センター3A会議室
上映作品:在日朝鮮人「慰安婦」宋神道のたたかい
  「オレの心は負けてない」(2007制作、95分)
資料代:500円
主催:ハイナンNET
 http://blog.goo.ne.jp/hainan-net

■ 戦争あかん!基地いらん! 07関西のつどい

日時:10月14日(日) 12時開場〜13時開始  ◆集会後デモ
場所:大阪城野外音楽堂(JR環状/地下鉄森之宮下車)
発言:グァムから(チャモロネーション)/沖縄から/岩国から(大月純子さん)
  沖縄民謡(まーちゃんバンド)
資料代:500円
主催:戦争あかん!基地いらん!07関西のつどい実行委員会
連絡先:06-6575-3131(全港湾大阪支部) 06-6364-0123(中北法律事務所)
呼びかけ団体:おおさかユニオンネットワーク/大阪東南フォーラム平和・人権
 ・環境/沖縄とともに基地撤去をめざす関西連絡会/しないさせない戦争協力・
 関西ネットワーク/日朝日韓連帯大阪連絡会議(ヨンデネット大阪)/南大阪平
 和人権連帯会議
協賛団体:大阪平和人権センター

■ 阿曽山大噴火さん(大川豊興業)が語るお笑い日本の裁判所?!
 「日の丸君が代」裁判について弁護士2人が語る
 「都立学校の驚きクイズ」

日時:2007年11月15日(木)午後7時〜(6時半開場)
場所:東京中野ゼロ小ホール(中野駅徒歩5分)
参加費:500円

■ 朝鮮の水害復旧支援カンパに御協力を!

8月上旬に朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を襲った大水害はここ十数年で最大の規模と言われ、約600名の死者・行方不明者、60万名の被災者が発生したそうです。更に全国の水田の20%、トウモロコシ畑の15%が被害を被ったとのことです。

それに対し、ハンクネット(北朝鮮人道支援ネットワーク)・ジャパンが、郵送により物資を届けるめどがついたとのことで、人道支援カンパを募っています。カンパは粉ミルクその他支援物資(哺乳瓶や離乳食、栄養剤)と運搬費にあてるとのこと。カンパ先は下記の通りです。

郵便振替 00930−6−154275
百五銀行上野支店(普) 566120
名義 北朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン

北朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン(ハンクネット・ジャパン)
Humanitarian Aid to North Korea, Network in Japan
代表世話人:竹本昇  副代表世話人:李修二(韓国籍) 李在一(朝鮮籍)
〒518-8799 上野郵便局私書箱37号 042-379-7790(上野)

■ ゲバラ没40周年記念フォーラム

日時:2007年10月8日(月・休)13:30〜16:45
場所:生活産業プラザ「ECOとしま」多目的ホール(8F)
   東京都JR池袋駅東口より徒歩7分・豊島公会堂横
内容:講演 「現在の中南米情勢をめぐって」太田昌国さん、富山栄子さん
   キューバ音楽・DJ福田カズノブ、その他
参加費:500円
賛同費:一口1000円 賛同された方は、当日の参加費は無料
主催:「10・8ゲバラ没40周年記念フォーラム」実行委員会
共催:キューバ大使館
連絡先:キューバ連帯の会
    Guevara_10_8@yahoo.co.jp

■ 関西クィア映画祭

関西クィア映画祭サイトをご覧下さい。
益岡賢 2007年10月1日

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