ウリベ・モデル4年間への準備
コロンビア選挙後の継続性と変化

2002年5月30日
ジャスティン・ポドゥル&マヌエル・ロセンタル (ZNet原文


「威厳を備えた大統領、アルバロ・ウリベ・ベレス博士は議論の余地なく第一ラ ウンドで大統領に選出された。平和を求め連帯に基づく発展を求める祖国により、 そして祖国のために」(サルバトレ・マンクソ:コロンビア自衛軍連合司令官、 2002年5月26日)

コロンビア準軍組織が良く響く声でコロンビアの新大統領アレバロ・ウリベ・ ベレスを承認したことから、彼の政治的立場を心配するのは故無きことではな いことがわかる。準軍組織は、大統領選が行われた5月だけでも多数の暗殺を 実行した、残虐な人権記録を誇っているのである。ウリベが、AUCとは何の 関係も持ちたくないことを宣言し、AUCはウリベの友人ではなく、AUCの 承認はウリベがAUCを法のもとで裁き組織を解体することによりAUCを後 悔させるような恥ずべき振舞いであったと宣言することを、ウリベは期待され ていたかも知れない。

けれども、大統領選出後の講演で、アレバロ・ウリベ・ベレスは何も言わなか った。

人権についてたくさんの陳腐な発言をした。FARCに殺された天国の母と父 にウリベが感謝する感動的な瞬間があった(ただしAUCにより天国への旅を 早められたすべての母や父に対する言及はなかったが)。さらに、労働組合員 は暗殺されることを止めなくてはならないと彼が述べた瞬間すらあった。けれ どもAUCに対する決然たる批判は?皆無である。

というのも、ウリベとパラ(準軍組織)は全く敵同士ではないからである。パ ラミリタリズムは、向こう4年間にコロンビア人を待ち受けている「ウリベ・ モデル」の一環なのである。米ブッシュのテロリズムが、米国が歴史上世界に 加えてきたテロリズムのより攻撃的なものであるに過ぎないのと同様、「ウリベ ・モデル」は、コロンビア人を犠牲としてきたこれまでの体制のさらに攻撃的 なものに過ぎない。ほとんど環境は変わっていない。状態が多少なりとも悪化 しただけである。従って、コロンビアで平和と正義を求める運動は、これまで と同じように活動しなくてはならない。ただ、これまでより苦しいことはあろ う。


変わらないこと

コロンビアを含めアメリカ大陸を再植民地化しようという計画は、ウリベの 選出によっても変わらない。コロンビアに対する計画は、依然として「加速 的開発」である。人々を撤去してほとんど空にされた地方から、石油や木材、 水、商業農産物を持ち出すこと、コミュニティを追放し大規模ホテルの建て られた閑散とした海岸、保護も社会サービスも受けられない規律正しく絶望 していて無力化された労働者が飢餓すれすれの賃金で働く大都市。

こうしたビジョンに対する主な障害もまた存在する。コロンビアについて自 分たちの考えを持つ組織やコミュニティの間に。これらの人々のビジョンは、 アフリカ系コロンビア人や先住民、小農民コミュニティの自律性が尊重され る多民族、多文化の国であり、労働者の権利と尊厳、生活水準の賃金の必要 性を尊重する連帯の経済であり、また、食料の安定をもたらす農地改革とコ ロンビアの膨大な資源に対する妥当で環境に適した運営である。

エリートたちが自分たちの計画を実現するためには、人々のビジョンと希望 を粉砕しなくてはならない。そのために取られる戦略は、コロンビアの政治 をフォローしている人々にとっておなじみである。戦争、それも沢山の戦争。 農民を土地から追放するために毒薬を散布する麻薬戦争、労働組合員や平和 活動家、女性活動家、地方の指導者たちを殺害する汚い戦争、IMFの構造 調整と私営化、失業と絶望により人々を分断する経済戦争、人々を不可視化 し麻薬テロとゲリラに悩む政府という図式を提示する嘘偽りの戦争。こうし た戦争は、すべて、ウリベが当選した5月26日以前に存在し、そして現在 も続いている。


変わったこと

ウリベのもとで予測されるのは、こうした戦略が強化されることである。 「ウリベ・モデル」の輪郭は、選挙前の彼の記録から推測できる。ZNet 上の沢山の記事が、ウリベの素敵な経歴について紹介している(Al Giordano によるもの、Sean Donahueによるもの、そしてLazala/Ferrerによるもの)。 ここでは、いくつか主要なものだけ紹介しておこう。

絶望と無力化の創生:パラミリタリアンとして、ウリベは法律第50 を推進し、労働関係諸法と労働者の諸権利を保護する法律を廃止し、さらに、 ブッシュが米国に導入したがっているようん、社会保障の私営化を進める法律 第100を推進した。これは、有名な「底辺への競争」の一環である。そして、 底辺への競争においては、コロンビアが競争すれば、皆も追いつくために走り 始める。ブラジルから北米に至る働く人々のすべてが。

パラミリタリズムと暴力の推進:1995年から1997年まで、アン ティオキア州知事として、ウリベは「CONVIVIR」を推進した。これは パラミリタリズム(準軍組織の利用)を合法化する試みである。この間、労働 組合は弾圧された。1996年に、アンティオキア州では198名の労働組合員 が殺害された。1997年には210人。ウリベの州政下が終わるころ、ウリベ は、バナナ労働者が活発な労働運動を展開していた地域ウラバは「平定された」 と宣言した。この「平定」は、3年間で3500人の人々を暗殺することにより 達成された。1999年に、ウリベは、準軍組織と関係を持っていたとして停職 処分を受けたリト・アレホ・デル・リオ将軍とフェルナンド・ミラン将軍への 支持を宣言した。彼の大統領選キャンペーンは、パストラナ大統領とFARCと の「交渉失敗」に基づくものだった(ここで言っておかなくてはならないが、 パストラナとFARCの間に交渉といったものは実はなかった。双方とも、「交渉」 期間中、罪のない一般市民への残虐行為を続ける競争をしていたのである。この 競争で勝利したのは確実に政府の側であるが、FARCも接戦を展開していた。 ウリベは、自分の当選について、FARCに対しても感謝しなくてはならないと ころだろう)。ウリベは、ゲリラに対する強硬姿勢、さらなる100万人のコロ ンビア人の武装、そして外部の介入を約束している。

準軍組織を交渉のパートナーと認めること:ウリベが最も最近提案した のは、準軍組織を交渉のテーブルにつかせることである。我々は、これまでしば らくの間、これを恐れながらも予測していた(著者による「The War Foretold」 を参照)。手続きは次のようなものである。第一に、「テロリストとは交渉なし」 というブッシュ・ドクトリンをゲリラに適用し、準軍組織についてはあと知恵で テロリストのリストに付け加えるのみとする。第二に、気乗りしない様子で、 交渉は平和のために必要であると譲歩する。そしてこの原則を、交渉は選択的に 必要だというかたちで適用し、準軍組織は「交渉しなくてはならないテロリスト」 として扱い、ゲリラは「撲滅すべきテロリスト」とする。オットー・ライヒは 自らの過去を再開し(Turnipseed "Reich Reich"「ライヒ帝国」を参照)、この計画を承認している。準軍 組織を交渉に呼び込むことと、現在国会議員の3割以上が準軍組織と関係をもって いることを考えると、アルンダティ・ロイがインドについて述べた言葉を繰り返す のは有意義であろう:「そして、報道すべきものすごい虐殺があるというわけで はなかろう。ファシズムはまた、国家権力のあらゆる機構がゆっくりと着実に浸透 するということでもある」。これもまた、ウリベ・モデルの一環である。

麻薬商人と仲良くすること:1982年メデジン市長として、ウリベとそ の父は公然と、メデジン・カルテルのオチョア一族と関係していた。1989年に、 ウリベは麻薬商人の身柄引き渡しに反対した。

結局のところ、ウリベ政権に期待できることはこれまで通りのことであり、ただ それが悪化することだけである。


なすべきこと

コロンビアの社会運動がこれからウリベ政権下ですることは、これまでもしてき たことである。すなわち、自分たちに対する絶滅キャンペーンを生き延びること。 連帯活動がなすべき最重要事項は、やはりこれまでと同様のことを続け、それを 支援することである。嘘を暴き、FTAAに反対し、IMF/WB/WTOに 反対し、米国による軍事介入に反対し、コロンビアの人々と運動に付き添うため にコロンビアに行き、状況をフォローし、手紙キャンペーンやアピールに応え、 デモを組織し参加し、内戦に対する交渉による解決を求めることである。

長期的には、北米での運動を形作ることが、ウリベ・モデルにブレーキをかける ことになる。というのも、ウリベ・モデルはウリベの発明ではなく、北米のエリ ートたちの発明だからである。短期的仕事は、長期的運動を保証することにある。 すなわち、我々が運動をここでかたちづくる間、コロンビアの運動が生き延びる よう、それに同伴と資源と保護を提供することである。

ウリベは53%の票を得、対抗候補の最大得票は31.7%、左派候補ルチョ・ ガルソンは5.82%だったのではあるが、コロンビアの大統領選で実際に勝利 を収めたのは棄権票である。ウリベは2420万人の有権者票のうち580万票 しか得ていない。ルイス・ジレルモ・ペレス・カサスの言葉を使うならば、 「コロンビアでは、戦争を巡る国民投票も武力抗争に対する軍事的解決を巡る 国民投票も行われなかった。4400万のコロンビア人のうち6百万に満たない 票をもって、人々の意思と理解するわけにはいかない」。人々は闘いを止める わけにはいかない。そして、人々と連帯する側もまた。

ジャスティン・ポドゥル(justin.podur@utoronto.ca)とマヌエル・ロゼンタル (em_rosental@yahoo.com)は カナダ−コロンビア連帯キャンペーンのメンバー。


  益岡賢 2002年6月18日

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