拷問生存者の回想

エルサルバドルからアブグレイブへ
フアン・ロマゴサ
CounterPunch原文
2004年8月30日


エルサルバドルで行われていた拷問を生き延びた者として、私は、米軍兵士による拘留者の虐待を聞いて心が張り裂けそうだった。

1980年12月12日、私はエルサルバドル国防隊に連れ去られた。国防隊は、まず、私が所属する保健ワーカのグループが、一時的な診療所を設置している場所にいた群衆に向かって発砲し、それから私を連れ去ったのである。

24日間にわたって、私は、ゲリラに参加していることを自白すべく強要され、身体的・心理的・感情的な拷問を受けた。私には何一つ認めるべきことはなかった。それでも私は殴られ、電気ショックを加えられ、手の腱を砕かれるなど、様々な恐ろしい拷問を受けた。

解放されたとき、体重は30キロちょっとに減っており、体の傷は化膿していた。それから20年以上たった今でも、私はそのとき被った心理的傷を癒そうと試みている。

中米における戦争のトラウマは、ここ米国の他の移民たちにも苦痛に満ちた代償を強いている。ギャングと暴力、アルコール中毒、家庭崩壊、永続的恐怖と猜疑により、多くの人々が、意識的あるいは無意識に、戦争をいつもいつも追体験しながら暮らす状況に置かれている。

ワシントンDCで私の働く診療所では、しょっちゅう、拷問の傷を受けたりトラウマによる精神的傷を負った人々を診療している。

戦争で最も深い犠牲となる人々の中には、自ら残虐行為を行なった者たちもいる。多くの元エルサルバドル軍兵士が、現在、道ばたで酔っ払って酩酊して寝ている。これらの人々にとって、アルコールが、過去の悪魔を宥める唯一の方法なのである。

拷問は多くの影響を生み出す----拷問を受けた人々に対してだけではなく。

2002年7月、私はエルサルバドルの元将軍2人に対する民事訴訟に参加した。1970年代後半から1980年代にかけて、彼らは、エルサルバドルの大部分の人々が抱えていた貧困状態に挑戦する革命集団に対して残忍な弾圧を加えていた軍を統括していた。冷戦が続く中、これらのグループおよびその支持者を鎮圧するために必要なあらゆる手段を後押しするために、米軍援助と訓練が、エルサルバドル軍に潤沢になだれ込んだ。

ブッシュ1世大統領のときに発効した米国の拷問犠牲者保護法は、自分の監視下で犯された犯罪をめぐって責任を問うことを可能にするものである。司令責任原則のもと、これらの将軍が拷問を行なっている兵士たちに実効的命令力を発揮していたならば、将軍たちは何が起きているか知っていなくてはならず、止めなくてはならない。兵士の行動に最終的責任を負うのは司令官たちである。

悲しいことに、イラクの現状は、私がエルサルバドルで経験したことに似通っている:反対派の活動を弾圧するために疑わしい人々からなる集団を大規模に狩り出す。法の適正な過程など何もなしに、被拘留者たちから自白を取ろうとする。軍の責任者たちは、自分たちは知らなかった、調査報告はまだ読んでいない、別の集団の影響で一部の兵士が血迷っただけだ、などと言う。

ブッシュ大統領やワシントンの他の高官たちは一部の兵士が為した行動に嫌悪を表明したが、拷問の生存者としての私自身の観点から見ると、アブグレイブの拷問は、私たちの多くが信じたくなかったことが実際に起きていることを確実に示している。

私は、ジョージア州のスクール・オブ・ジ・アメリカズのような場所で米軍が何も知らないなどという主張について何ら幻想を抱いていない。こうした場所では、米軍教官たちが各国からやってきた兵士たちに自国市民を拷問にかけ、テロ行為を加えるべく訓練を行なっているのである。けれども、私は、米軍が、米国自ら遵守すると主張する人道的プロセスに従うという期待を捨てきれなかった。また、米国の指導者たちが、基本的な文明の原則を無視しながらテロと闘うことなどできないと認識していることを期待していた。

イラクで拷問と虐待を受けた被拘留者の写真を見ながら、私は犠牲者への共感と同情を強く感じている。そして、犠牲者集団の中には拷問者自身が含まれていることも思い起こす。拷問者の恐れ、パニック、混乱について想像し、回復までの長いプロセスに思いを馳せる。

兵士たちが他の人々を動物のように扱うことができるまでに人間性を失うことは、その経験を経た生存者に、深く、苦しく、冷たい影響を与える。

道は長く困難だが、犠牲者たちがそうした暗い場所から戻ってくる強さを持っていることを望む。

フアン・ロマゴサはワシントンDCにある診療所ラ・クリニカ・デル・プエブロの所長で、メールはpmproj(at)progressive.org. この記事はTidings (南カリフォルニアのカトリック週報)に掲載されたもの。


イラクの最新情報は、いけだよしこさんが中心に益岡とやっている『ファルージャ2004年4月』ブログで紹介しています。サーバが重くアクセスできないことも多いですが、是非めげずにご覧下さい。

エルサルバドルの背景については、「人権・ワシントン式」をご覧下さい。

国内では、沖縄でのヘリ墜落、ミサイル防衛予算の拡大、日の丸君が代の強制、東京都の「つくる会」教科書採択強行の動き、クルド人難民をめぐる政府の対応問題、辺野古基地建設のためのボーリング調査開始強行など、非人間的な動きが並列して進められています。順次、リンク・アクション等も紹介できればと思っています。

明後日9月1日は関東大震災から81年目です。10万人を越える犠牲者、そして、組織的なデマにより殺された6000人を越える朝鮮人。弁護士会の勧告を無視して、日本政府はこの虐殺についても謝罪していません。

2004年8月30日

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