ハイチ:魔女狩りが激化

Justin Felux
ZNet原文
2004年6月29日


ハイチでは、民主活動家への「魔女狩り」が激化し、今週(6月27日の週)にはイヴォン・ネプチューンが逮捕された。ネプチューンは、民主的に選挙で選ばれたジャン・ベルトラン・アリスティド大統領のもとで首相を務めていた。

アリスティドを大統領の座から追放した暴力クーデターのあと、ネプチューンは反政府の戦闘分子の間で最大の標的となった。彼の自宅は略奪され放火された。

反乱部隊の指導者ギ・フィリップは暴徒を率いてネプチューンの事務所を襲った。ジェラール・ラトルトゥーの傀儡政権が設立されたあと、ネプチューンは、他の元政府高官と同様、国外退去を禁じられた。命の危険を感じたネプチューンは身を隠した。彼の逮捕状が発行されたというニュースが伝わったのは、彼が新政府の政策を公に批判したあとである。

現在の政府当局は、ネプチューンが2月にサンマルクで起きた「虐殺」の首謀者だったと主張している。この主張の唯一の根拠は、ハイチ人権全国協議会(NCHR)が発表した報告である。NCHRは、ラバラの反対派とワシントンと密接な結びつきを持つ「人権」団体であり、政治的偏向およびあからさまな嘘をつく傾向で悪名を馳せている。NCHRの代表ピエル・エスペランスは、この「虐殺」で50人が殺されたと主張するが、その後の調査で明らかになったのは5人の遺体だけで、これらの5人が死亡した状況についても不明な点が多い。遺体が無かったことについてのAHPの質問に答えてエスペランスは、お腹を空かせた犬が貪り食ってしまったのだと答えた。「骨も同じように貪り食われてしまった」と彼は言った。

サンマルクで過去数カ月の間に暴力沙汰が有ったことは確かだが、実際の所、ほとんどはラバラスの反対派が行なったものである。アリスティド支持派からの報復があり、人々が交戦に巻き込まれた可能性も高い。けれども、サンマルクで起きたことの全貌が明らかになれば、死者がどのように発生したのか理解しやすくなるだろう。

1月から、RAMICOSという反乱部隊側の組織がアリスティド政府の支持者に対して暴力的なデモと攻撃を開始していた。RAMICOSは、米国の支援を受けハイチのエリートたちが支配する政治組織である民主コンバージェンスの加盟団体でもある。1月15日、RAMICOSはラジオ・ピラミドの事務所および何人かのラバラ活動家の家に放火した。RAMICOSはまた、サンマルク刑務所に拘束されている犯罪者を解放しようとした。

RAMICOSがサンマルクの警察署を襲撃し税関を略奪し放火した2月、暴力は激化した。どうやら反乱部隊と通じていたらしい警察は、銃と弾薬を後に残したまま、戦わずに撤退した。警察が共謀していたという告発は、警察署の司令官の一人が元ハイチ軍兵士で、ダニー・トゥーサンに近い人物だったという事実からも強められている。ダニー・トゥーサンは、ラバラに反対する者たちと同盟しているギャングの指導者として悪名高い人物なのである。ハイチ人人権防衛委員会によると、RAMICOSはサンマルクを制圧した後、ファンミ・ラバラのメンバー数人を拷問し殺したという。

アリスティド政府はすぐに反撃を開始し、地元の人々の助けを得て街を取り戻すことができた。イヴォン・ネプチューンはヘリで街を訪問し、群衆に歓迎された。「虐殺」が起きたとされるのはこのときであるが、当時のメディアの報道は、政府支持者と反乱部隊の間に「衝突」があり、双方に少数の死者が出て、交戦に巻き込まれた人もいると曖昧に書いていただけであった。現在入手できる証拠からは、50人の「虐殺」というのはピエル・エスペランスの想像の産物のように思われる。

現政権が本当に不処罰や人権侵害を許さないのなら、アリスティドが追放された後のRAMICOSの行動を見るのがよいかも知れない。街から逃げ出さざるを得なかった難民達は、ジャーナリストのキム・アイヴスに、次のように述べている:「若い兄弟二組を含む7人の若者が、親クーデター部隊に山刀や銃で殺された。切り刻まれた遺体は街を引き回され、トラックの後ろにロープで引きずり回された。街の住人を怯えさせるためである。それから、遺体は燃やされた」。こうした残虐行為の後で、街の人々は恐怖のために従順になった。このため、RAMICOSのメンバーが電話会社、税務署、港湾当局を則って、地方政府を自らのものとして統制しようとしたのである。

現在の「暫定政権」がわずかでもサンマルクの「虐殺」に憂慮しているというのなら、RAMICOSのメンバーを拘束しているはずであるが、そうはしていない。彼らが標的にしているのはネプチューンをはじめとする、ラバラに関係していた多くの元政府職員や活動家たちである。それは、自分たちが不法に権力を掌握したことを実質的に正当化しようという試みの一環である。

Justin Feluxは米国テキサス州サン・アントニオ在住の著述家・活動家。メールアドレスは、justins(at)alacrityisp.net。


ハイチに関しての記事です。現在、いくつかの情報源から、アリスティドを支持した人々への弾圧が激化しているとの情報を受けています。

イラク人女性のウェブ日記『バグダッド・バーニング』(アートン刊・1500円)が出版されました。『ファルージャ2004年4月』とともに、イラクで起きていることが体系的に隠蔽されたメディア環境の中、ぜひ広く読んで欲しいと思うものです。

7月4日(日)のワールド・ピース・ナウで警察が数人を不当逮捕したようです。「非国民」は逮捕する、という体制が次第に強まっているようです。それについての情報と小泉首相の「反米マスコミ」発言(ここまでキてます)の分析がこちらにあります。

7月11日の選挙をめぐる情報がJANJANにありました。
2004年7月7日

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