対労働組合戦略としてのテロ

コロンビアにおける労働者の権利の暴力的弾圧
アナスタシア・モロネー
2005年6月27日
ZNet 原文


グロリア・ラミレスは、コロンビアで名の知れた労働組合指導者であることの危険を知りすぎるほど知っている。30年にわたり労働組合運動に参加してきたという印象的な経歴を通して、彼女は、暗殺未遂を生き延び、亡命を余儀なくされた。いまでも日常的に、電話や郵便、インターネットを通して殺害峡ハウを受け取っている。一度、彼女の名前で縁取られた予告の花輪が欧kられたこともある。最も最近の殺害脅迫は、右翼準軍組織の傘グループであるコロンビア自警軍連合(AUC)が署名した手紙で、彼女の護衛はもうこれ以上彼女と二人の息子を守ることができないだろうと警告していた。

コロンビア最大の労働組合連合であるコロンビア中央労働組合連合(CUT)の執行部委員であり、コロンビアで最も強力な教員組合コロンビア教育者連合(FECODE)の元代表でもあったラミレスは、防弾ベストなしで家を出ることは決してない。彼女は、目を光らせた三人の護衛に囲まれた強化ガラスの車で移動する。

「コロンビアでは、脅しは実行に移されます」と彼女は言う。「これまでは生き延びてきましたが、壊れやすい箱の中の生活を余儀なくされてきました」。

CUTにおける彼女の同僚の多くはそれほど幸運ではなかった。昨年、94人の労働組合員が暗殺されたが、そのうち87人はCUTの組合員だった。今年の最初の2カ月で、少なくとも5人の労働組合員がコロンビアで殺されている。

コロンビア大統領アレヴァロ・ウリベは、すぐさま、過去4年間で殺されたり誘拐された労働組合員の数が減っていることを強調するが、2002年8月にウリベ政権が発足して以来、労働組合員を標的とした別のかたちの暴力が増えていることについては、政府はそれほど熱心に指摘したがらない。メデジンを拠点とする非政府組織の研究所である全国労働組合スクール(ENS)は、2003年から2004年に、労働組合員個人に対する強迫の数が50%、恣意的逮捕が57%跳ね上がり、強制移送させられた労働組合員数は16%増えたことを記録している。

「全体として、ウリベ政権の初年度と第二年度の間に、労働組合員に対して犯された不法行為の数は、報告されているだけで62件増えました」とENS人権部門の研究調整担当フアン・ベルナド・ロサドは言う。

政府の軍兵士が、労働組合員に対してますます多くの暴力を加えている。恣意的な拘留や家宅襲撃捜索、政府要員によるいやがらせなどである。とりわけ、昨年8月、コロンビア軍はコロンビア北東部のアラウカ州で3人の著名な労働組合指導者を殺している。

ラミレスは、こうした最近の傾向は、労働組合の活動と抗議を押さえつけようという政府の意図的な政策を反映したものであると述べる。「政府は常に、労働組合の正当性と権利を破壊し、私たちの名声を汚そうとしてきました」と彼女は言う。

政府の活動は反労働組合の文化を生み出し、それにより、組合指導者や活動家への暴力が認められ当たり前と見なされているとラミレスは言う。「ウリベ氏が創設した民間人通報者のネットワークは、不法行為やゲリラ・グループの情報への見返りに金を受け取ることができ、そのために、政府軍が選択的に個別の労働組合員を標的とし、反労働組合文化を広めることができるようになっています」と彼女は言う。

国際自由労働組合連合(ICFTU)の労働組合権利部門代表アグリース・ジャネット・クチュキュウィクスは、次のように言う:「労働組合指導者や活動家、組合員への暴力の風潮が広まっているため、労働者の間には心配が蔓延している。労働者たちは、しばしば団体交渉やストの際、脅迫されたり脅されたりしている」。

労働組合員によると、政府機関が日常的に労働組合活動を妨害するという。2004年、労働問題を担当する社会保護省は、新たな労働組合の結成をほとんど認めず、ストの大多数を不法であると宣言した。その際、しばしば「公共の秩序」を理由にあげた。組合は、最近、労働法が変更されたことで、労働者が団体交渉をしたり組織の自由を行使したりすることがますます難しくなったと言う。

こうした制約を見ると、コロンビアの経済活動人口のうち約5%しか労働組合に所属していない理由がわかる。

新たな「反テロリズム法」の導入で、労働組合活動を犯罪と見なすことが容易になった。ENSは、政府が労働組合の抗議を制限し汚名を着せるためにこうした法律をますますたくさん持ち出す傾向にあると強調している。ウリベ政権下で、ますます多くの労働組合指導者たちが、「テロリズム」と「反逆」の罪状で逮捕されている。昨年、石油と農業の労働組合に属する二人の著名な上級労働組合指導者が、「反逆」を非難され、ストの際に逮捕された。

ICFTUは、ストに参加している労働者の逮捕と不法解雇は頻繁に起きており、それは昨年、コロンビア国営石油企業エコペトロルの労働者数百人の抗議行動の経験にも示されていると言う。

労働組合は、石油・電力・保健部門を私有化しリストラしようという政府の試みを、労働組合の力と組合に参加する労働者の数を減らそうとするもう一つの方法であると見なしている。ENSによると、全国規模の国有電話通信会社テレコムがリストラされたとき、「もっぱらその意図は、6000人の労働者からなる組合を破壊することにあった」。

準軍組織の脅し

労働組合員に対して犯罪行為を加える者の半分以上については身元がわかっていないが、労働組合員を特に取り上げて標的にするのは準軍組織である。

ENSによると、昨年、労働組合員に対して加えられた暴力の32%はAUCが行なったものだった。

1万3500人規模の部隊である準軍組織は、かなりの部分、保守的で裕福な土地所有者の子どもたちから構成されており、当然のごとく労働組合を敵視する。準軍組織は、労働組合員の大部分は転覆的なマルクス主義イデオロギーと関連していると見なし、コロンビア革命軍(FARC)や民族解放軍(ELN)といった左派ゲリラ・グループと共謀していると主張する。準軍組織の支配地域に暮らす労働組合員は、危険な生活を送っている。

2003年にAUCが石油労働者組合(USO)のある組合指導者に送った脅迫電子メールは、準軍組織の労働組合員に対する態度と、組合所属労働者の家族に対する脅迫の増加傾向を明らかにしている。「我々は、USO組合の指導者全員とUSO組合員の子どもたち全員を軍事標的であると宣言する」とこのメッセージは言う。「我々は、すでに、労働者の子どもたちに対する行動を開始した」。

過去2年間に、組合に所属する女性への準軍組織による、あるいはその他の暴力も大幅に増えた。以前より多くの組合に所属する女性が、とりわけ教育部門で、脅迫を受け、殺され、強制追放されている。ENSによると、昨年、組合に所属する女性への暴力は20%増加した。

ラミレスによると、準軍組織が教師を標的とするのは、ゲリラのシンパと疑われるからだけでなく、とりわけ地方のコミュニティでは教師が社会の中で高い地位と影響力を持つからだと言う。教師の多くはコミュニティの指導者にもなり、貧しい人々や先住民グループの利益を守るため、さらに目立った標的となる。昨年、教員組合は組合員38名を失った。そのうち13名は女性だった。

ENSは、女性に対する暴力の増加を、「テロ戦略」の一部と見ている。ENSのベルナドによると、組合に参加する女性への攻撃は、国家的な恐怖のレベルを高める意図を持つという。「コロンビアでは通常、男性が暴力の矛先になります」と彼は言う。「女性を殺害することは、コミュニティにより大きな衝撃を与え、大きく知られることで恐怖を生み出します」。

教員組合は最もひどい攻撃の対象となっている部門であるが、CUTはまた、農業労働者に対する、恣意的な集団逮捕などの迫害が、特にスクレやトリマ、アラウカの肥沃な農地で増えていることも心配している。

不処罰の文化

コロンビアで労働組合の指導者になることは、命を危険にさらすことである。汎米人権委員会(IACHR)の勧告で、政府は、危険にさらされている労働組合員をも対象とした保護政策を開始した。このプログラムで、安全対策、ボディガード、携帯電話、防弾ベストなどのチェックリストが提供されている。IACHRの2003年年次報告は、政府がこのプログラムの継続を決めたことを賞賛しながらも、「この機構を改善する必要があり、いくつかの状況では、保護対策の実行に問題や遅れが出ている」と指摘している。

プログラムの一部であるラミレスは、極めて多くの保護された労働組合指導者が、保護にもかかわらず、暗殺され続けていると言う。

コロンビアでは、労働組合員に対する犯罪の実行犯は、ほとんど完全に不処罰のままである。過去15年間に約3500人の労働組合員が殺されたにもかかわらず、調査されたのは600件についてだけであり、その結果有罪となったのはたった6件に過ぎない。人権団体によると、問題の一部は、準軍組織と政府軍の共謀にある。

政府は、労働組合員への暴力はコロンビア内の武力紛争の一部をなす暴力に巻き込まれただけだとして、目を向けないことを正当化する。政府官僚たちは、政府の治安部隊をはじめとする実行犯たちが体系的に組合指導者に狙いを付けているのではないと主張する。

「私たちはそうした見解に強く反対します」とICFTUは言い、「昨年労働組合員が受け取った殺害脅迫の60%以上は、団体交渉やストの際に起きた」ことを指摘する。2004年に殺された労働組合員の19%は、労働争議の際に殺されたとENSは言う。

労働組合活動に対して世界で最も敵対的な国であるというコロンビアの名声は、論争すべくもなく維持されている。ICFTUによると、昨年世界中で起きた労働組合員殺害の80%以上がコロンビアで起きている。

コロンビアの労働組合員は困難な年に直面している。彼ら彼女らは、政府の年金リフォームや来年のウリベの再立候補----憲法が二期目を禁止しているにもかかわらずなされるもので問題がある----といった危急の問題に立ち向かわなくてはならない。労働組合員はまた、莫大な防衛支出----組合員たちは、それが社会投資、とりわけ保健と教育、土地改革への投資を犠牲にしてなされていると言う----についても憂慮している。アンデス自由貿易合意----労働組合指導者たちは、それがコロンビアで労働者の利益をさらに損ねると危惧している----をめぐる最終交渉も待ちかまえており、それは労働組合の政府との関係をさらに悪化させる。

グロリア・ラミレスの体験は、コロンビアのすべての労働部門と労働領域で労働組合員が面する苦しみを示している。けれども彼女はまた、迫害を前にした労働組合指導者の不屈さと頑強さを示してもいる。「私は台風の目の中にいます」と彼女は言う。「けれども、私たち全員が身を隠したり逃げたりしたら、この国は、そして社会正義を求める闘いはどうなってしまうでしょう?」

アナスタシア・モロネーは、コロンビア在住のフリーランス・ジャーナリスト。


「グローバル化」の叫び声や「民営化」の名のもとでの私有化と労働者の諸権利の切り捨てが進む日本の状況を思いつつ、コロンビア情勢を見ると、暴力の過酷さは異なるとはいえ、構造的なパターンの類似性に驚かされます。日本では、1年間の自殺者が3万人を越えており、職や家を失う人々もかなりの数にのぼっています。

肥田舜太郎・鎌仲ひとみ著
『内部被曝の脅威----原爆から劣化ウラン弾まで』
ちくま新書

自らも被爆者として被爆者の救援を続け被曝の問題を追い続けてきた医師肥田氏と映画「ヒバクシャ」の監督鎌仲さんの共著で、たくさんの大切な事実と考えるための問題提起がなされています。
益岡賢 2005年6月30日

一つ上] [コロンビア・ページ] [トップ・ページ