コカコーラと「死の部隊」

コカコーラは死の部隊を使って労働組合指導者を標的としていることで告訴される

2001年7月23日
ギャリー・リーチ
コロンビア・ジャーナル原文

米国フロリダ地裁に提出された訴訟で、コカコーラ社とそのコロンビアの子会社そして提携会社が、準軍組織の「死の部隊」を使って、この多国籍清涼飲料会社のコロンビア瓶詰め工場の労働組合指導者たちを殺害し、拷問し、誘拐し、脅迫しているとして告訴された。訴訟が提起されたのは7月20日で、米国鉄鋼労組と国際労働者権利基金が、コカコーラ・コロンビア瓶詰め工場の労働者の権利を代表する労組であるSINALTRAINAL、殺害された労組指導者の権利者、コカコーラで働き準軍組織による脅迫・誘拐・拷問を受けた他の5名の労組員のために行ったものである。

コロンビアは労働組合員にとって世界で最も危険な国であり、過去15年間に4000人の組合活動家が殺害されている。昨年(2000)年1年だけで、128名の労働組合リーダーが暗殺された。殺害のほとんどは右翼準軍組織AUC(コロンビア自衛軍連合)によるもので、AUCは労働組合組織者を反逆者とみなし、それゆえ、コロンビアのゲリラ活動に対する「汚れた戦争」の中で「合法的」な標的とみなしている。世界中で殺害される労働組合活動家の5名に3名はコロンビア人なのである。最も最近の労働組合リーダー殺害事件は6月21日にコカコーラのコロンビア瓶詰め工場ニオケル、オスカル・ダリオ・ソト・ポロの射殺事件である。

コロンビアの企業は、準軍組織が労働者を脅迫し労組組織の効率が落ちることから利益を得ている。けれども、コカコーラ社に対してなされた告訴は、コカコーラが単に準軍組織の暴力から利益を得ているだけではなく、会社自身がそれを仕組んでいると主張している。

ワシントンDCに本部を置く国際労働者権利基金(原告の共同顧問)のテリー・コリングワースによると、「コークがコロンビアの瓶詰め工場で起こった体系的な労働組合弾圧について知っており、それから利益を得ていることについえては疑問の余地がない。そしてこの訴訟はコカコーラ社の責任を明らかにできるだろう」とのことである。原告は賠償と、コカコーラ社員・労組員に対する人権侵害の防止を求めている。

訴状では、コカコーラ社は、そのコロンビア子会社であるコカコーラ・コロンビア、そしてパンアメリカン・ビバレッジとそのコロンビア子会社パナムコ、それからベビダス・イ・アリメントスが行うビジネスのすべての側面についてをコントロールしているという。告訴によると、パナムコとベビダス・イ・アリメントスは、コロンビアでコカコーラ製品を瓶詰めし配布するためだけの会社である。ともに、フロリダに本拠地を置き、「瓶詰め契約」を結んでいる。これにより、両社は、その活動と労使関係において、コカコーラ社の行動規範に従うことが要請されている。

原告は、米国の外国人不法行為訴訟法(Alien Tort Claims Act: ATCA)に従い、米国の管轄下に本件があるとしている。同法は、国際法に反する行いをした米国市民に対して非米国市民の告訴を認めるものである。この訴訟における米国鉄鋼労組の役割について、レオ・ジェラルド代表は「我々はこの訴訟を、コロンビアの熱心な労組への連帯のもとに行っている」と述べる。米国鉄鋼労組の立場は、1980年代にAFL−CIO(米国の労組連合)がとった立場とは全く異なっている。AFL−CIOは、レーガン大統領が中米政府に軍事支援を行い、労組活動家を暴力的に弾圧することを公に支持していたのである。

この裁判での多くの告訴事項の一つに、1996年、ベビダス・イ・アリメントスのカレパ(コロンビア)瓶詰め工場の工場長アリオスト・ミラン・モスケラが、公に、「自分は準軍組織に対して労組破壊の命令を与えた」と宣言したことがある。労働組合員によると、モスケラはしばしば準軍組織兵士との社交の場に出、準軍組織の祝祭にコカコーラ製品を提供しすらしていた。モスケラの宣言のすぐ後に、SINALTRAINALの現地組合員は、準軍組織からの脅迫を受けるようになった。

1996年9月27日、SINALTRAINALは、ベビダス・イ・アリメントスとコカコーラ・コロンビア双方の本社に手紙を送り、労働組合に対するモスケラの脅迫について知らせ、社員と労組指導者に対するさらなる人権侵害を防止するよう介入することを求めた。

それから2ヶ月半後の1996年12月5日朝、ベビダス・イ・アリメントスの社員で現地のSINALTRAINAL評議員であるイシドロ・セグンド・ジルが、カレパの瓶詰め工場内で準軍組織に殺害された。他の労組評議員たちも、町を去らなければ殺害するという脅迫を受けた。そして12月7日、準軍組織は工場に入りこみ、労働者に3つの選択が残されていることを告げた。労組から抜けるか、カレパから去るか、殺されるかである。訴状によると、それから労働者は工場長の事務所に連れていかれ、会社が準備した労組脱退状への署名をさせられたという。労組はうまく破壊されたのである。

コカコーラ社が労組員を殺害し脅迫するために準軍組織を使っていることについて質問を受けた、ベビダス・イ・アリメントスのオーナーであるリチャード・キルビー(彼はこの訴訟の被告でもある)は、次のように述べた。「我々が彼らを使うのではない。逆だ。誰も、準軍組織に何をすべきか言いはしない。」彼はまた、イシドロ・セグンド・ジル殺害の事実関係がゆがめられているとも述べた。「ある日準軍組織が工場に現れた。彼らは工場を閉鎖し、全員を壁に向かって並ばせ、撃ち始めた。それを今になって、我々の責任だというかたちにされている。」

けれども、労働組合の指導者たちが標的とされるのは、カレパ工場だけではない。訴状によると、他のいくつかのコカコーラ瓶詰め工場でも、労組の役員たちが脅迫と嫌がらせを受けている。1996年に、パナムコのブカラマンガ工場で、SINALTRAINALの現地組合員が、同社が職員の医療保険をなくそうとしていることに抗議して120時間のストライキをおこした。

ストライキが終わった後、「ブカラマンガ工場の治安担当主任ホセ・アレホ・アポンテが、工場に爆弾が見つかった」と述べたと訴状は言う。それからアポンテは、現地SINALTRAINALの5名の評議員を、爆弾を設置したと非難した。この5名の労組評議員−その3名はこの訴訟の原告でもある−は、公式の記録によると「COCA COLA EMBOTELLADORA SANTANDER」による告発に基づき6ヶ月間刑務所に入れられた。

これらの労組指導者たちは6ヶ月後、−訴状によると−地方検事が「原告たちは告発されたような工場に爆弾を仕掛けることに何の関係もなかったばかりでなく、実際には、そもそも会社が主張したような爆弾は工場には存在しなかったと結論した」ため釈放された。

コロンビアの瓶詰め工場で労組指導者たちへの人権侵害が行われていることについて聞かれた、アトランタのコロンビア本社報道官ラファエル・フェルナンデスは、コロンビアでも他のどこでも人権侵害があることを否定した。彼は、「コカコーラには厳密な行動規約があり、コカコーラ社のすべての子会社とコカコーラ製品の提携会社はそれに従わなくてはならない」と述べた。けれども、コリングワースは、「コカコーラの「行動規約」が同社が法的責任を負うことを示している。これらの会社は行動規約を持ち出しながら、それを実施しないのであるから」という。

訴訟はまた、パナムコのバランカベルメハ工場の工場マネージャーが「隠しもせずに、バランカベルメハで激化している内戦下で準軍組織の側についている」という。また、パナムコ・コロンビアがSINALTRAINALの組合員がゲリラであると公に非難していると述べる。コロンビアの最も激しい都市内戦が行われているバランカベルメハの危機的状況を考えると、そのような非難は、死刑宣告に等しい。

同地のSINALTRAINAL組合長、フアン・カルロス・ガルヴィスは、準軍組織から脅迫電話を受け、労組活動を止め、コカコーラ社の職を放棄しないと殺害すると脅されたと述べた。訴状によると、準軍組織の脅迫は工場内の壁にも書かれていたという。2000年6月には、「コカコーラからガルヴィスは出ていけ。AUC」と書かれていた。

フェルナンデスは、「コカコーラ・コロンビアは、コカコーラ社及びそのすべての瓶詰め工場のすべての職員に対して特別な安全対策がある」という。けれども、同社が、イシドロ・セグンド・ジル殺害の2ヶ月以上も前に書かれたSINALTRAINALの手紙に対応しなかったこと、そして、労働組合指導者たちに対しての脅迫や嫌がらせが続いていることを考えると、コカコーラが職員、特に労働組合活動を行っている職員を保護するために尽力しているという主張には大きな疑問が残る。

WTOは、製品がどのように生産されたかに基づき貿易の制約をかけることを基本的にWTOルールに基づけば不当なものとしているようです。イルカを同時に殺害する漁法で取ったマグロも、イルカを巻き込まないようにして取ったマグロも、同じように扱うべきということのようです。奴隷労働による製品も差別してはいけないということを含意しています。その観点からは、本稿が述べる訴訟で争われているような状況は、WTOにとっては全くOKというものなのでしょう。。。
  益岡賢 2002年2月23日

一つ上へ] [コロンビア・ページ] [トップ・ページ