忘れ去られた難民たち

2000年2月12日
ギャリー・M・リーチ
コロンビア・ジャーナル

1999年、我々は、コソボと東チモールで、国家による暴力を逃れる市民のニュースを見せつけられた。数週間にわたり、米国のテレビは、セルビア軍と親セルビア民兵から非難しようとする100万人近いコソボのアルバニア人のイメージで埋め尽くされた。また、インドネシア軍とその準軍組織が、東チモール人を虐殺しようとする光景を恐れおののいて見た。一方、コロンビアはどうであったろう?引き続く内戦により家を失ったり逃れたりした170万人のコロンビア人の苦痛を夜のニュースは扱ったであろうか。

コロンビア軍と左派ゲリラの内戦で家を追われた難民の数は、東チモール難民の数よりもおい。セルビアの弾圧を逃れたコソボのアルバニア人の難民数すら越えるものである。コロンビアの難民は、現在、スーダンとアンゴラに次ぐ、世界で3番目に多い数に上っているにもかかわらず、主流メディアはこの難民の困苦にほとんど注目しない。

1999年、28万8000人以上のコロンビア人が戦乱のため、家を逃れた。それにより、1985年以来の難民の数は170万人を越えることとなった。その一部は、援助団体が提供するキャンプに一時的に避難しているが、大多数は自ら何とかしなくてはならない状況に置かれているのである。地方の家を捨てた農民の家族たちは、コロンビアの都市部に形成されつつあるスラムで貧困生活を送ったり、また、隣国に逃げ出したり、さらには、米国に不法な難民として避難することを求めたりしている。

人々が難民になるのは、コソボや東チモールと同様、戦争によるものである。そして、やはり、政府よりの準軍組織が軍と密接な関係をもって、一般市民を標的にしているのだ。ヒューマンライツ・ウォッチによると、コロンビアの人権侵害の78%が準軍組織によるものである。こうした準軍組織はコロンビア軍と密接な関係をもって活動しているが、このコロンビア軍は、米国のますます増え続ける一方の援助を受け取っているのである。一般市民が自分の家を逃れ難民となるのは、主として、この準軍組織によるものである。

ゲリラを支援する主な基盤、すなわち農民、を弱体化させるために、コロンビア軍と準軍組織は、米国が提唱する対ゲリラ戦略として、「海を涸れされることにより魚を取り除く」作戦を行っている。この目標は、虐殺や失踪により達成されており、この戦略によるテロ攻撃の結果、標的となった地域からの大量の、農民流出が起きているのである。

クリントン政権が軍事的な解決を目指していることは、コロンビアに対する13億ドルという大規模な援助提案からもわかる。すでに、イスラエルとエジプトに次いで、コロンビアへの援助は第3位なのである。しかも、このうち80%は、コロンビア軍と治安部隊への援助である。コロンビアの難民危機をほとんど認めたことがないクリントン政権は、最近になって、故郷を逃れまた流出し続けるコロンビア人に対して、「一時的保護ステータス」を与えるべきという超党派要求を受け取ることとなった。これは、6万人から8万人のコロンビア人が、最大18ヶ月米国で暮らし仕事に就くことを可能にする内容を含むが、採択されるかどうかは保証の限りではない。

歴史的に見ると、米国は、自分の同盟国からの難民に亡命資格を与えることについて非常に消極的だった。1980年代を通して、エルサルバドルとグアテマラの難民に対して政治的亡命者の地位が与えられたのは2%に満たない。一方で、何万人もの市民が、両政府から虐殺されている状況であったにも関わらずである。こうした難民に政治亡命の資格を与えることは、米国がスポンサーとなっている政府が行っている弾圧を認めることになると考えられたのである。同時期に、命の危機はまれにしかなかったカストロ政権下のキューバからの難民にはドアを全開にする政策をレーガン政権は取っていたのである。これにより弾圧が認められ、だから弾圧が存在するという論理である。

米国の政策は、これと同じ方針で続いているようである。ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領とそのセルビア軍を悪く言い、コソボの難民を同情するのは容易である。長らく米国の重要な同盟者であったインドネシア軍による悪名高い弾圧を巡って、東チモールの人々の苦難を指摘するのも今やできる。けれども、コロンビアは別のカテゴリーに属するのである。エルサルバドルやグアテマラと同様、難民問題を公式に認めることにより、その主要な原因が準軍組織にあり、そしてコロンビアの難民と人権危機において最大の責任を負うその準軍組織が、我々が活発に支援している軍と緊密な同盟関係にあることが明るみにでてしまう恐れがある。

EUは、自らの分担として、コロンビアで追放された人々の新たなコミュニティを作ることを支援するために、700万ドルの支援を決めた。これは良い方向への一歩であるが、米国によるコロンビアへの大規模な支援を考えると特に、今後不可避的に悪化するであろう問題に対処するにはあまりに少額である。

コロンビア難民の困苦は、コソボ難民などと対照的に、伝えられないままとなろう。米国政府筋がコロンビア難民問題を認めない限り、主流メディアもそれを認めないように見える。それゆえ、問題は存在しないというのだ。

  益岡賢 2002年4月1日

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